日光・雲竜渓谷(稲荷川アカナ沢)
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- GPS
- --:--
- 距離
- 24.0km
- 登り
- 1,944m
- 下り
- 1,946m
コースタイム
パーティー;成瀬陽一、松原憲彦
8/22 ゲート発(600)堰堤入渓(700)Y字峡(915)本沢滝下(1400~40)滝上右俣(1540)稜線鞍部(1700)女峰山(1915~40)唐沢小屋(2000)
/23 小屋発(545)東照宮(930)
過去天気図(気象庁) | 2003年08月の天気図 |
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アクセス | |
ファイル |
(更新時刻:2018/09/11 22:07)
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写真
感想
渓谷の認識を改めさせられる結果となった、今回の遡行であった。
雲竜渓谷は、ナルっさん共々以前から気には掛かっていた沢ではあったれど、記録によれば日帰り山行だというし、実際女峰山頂2483mからの標高差もさして無い(約千m)、集水域はどう五万図でみても札幌近郊程度のスケールだ。
がしかし、現実は違った。
今山行のアカナ沢は、本沢滝をコンパスの中心に赤薙山〜女峰山〜黒岩を取りまく稜線に囲われたたかだか半径一キロの円内に収まる範囲に過ぎない。ところがどうだ、雲竜瀑出合から早々と始まった実質的核心部はやがてその本領をいかんなく発揮し、沢は無遠慮にも両岸をすっくと屹立させ、それはそれは大きな岩を沢なかに落とし込み、癖のある滝を幾つも垂らした。この円の上流半分はありふれた樹林に覆われた唯の荒れた沢なのに対し、「扇の要」である本沢滝落下を境に両岸の脆い壁は一気に薙落ち、余りに細く深い峡谷のために谷芯は両岸壁に覆い隠されて稜線や支尾根のどこからも其の内院を窺うことは叶わない。この小さな集水域にしてこのスケールの大きさは、深くより深く刻み込まれた本谷の底深さに拠って感ぜられるものなのだろう。と同時に、世界遺産である日光東照宮をも脅かさんばかりの膨大な量の崩壊土砂が谷中に溜まることなく下流へと押し流されること(岩石の浸水による粉砕作用)もこの立派な峡谷地形を成す重要な一要素であるとも、稜線上の黒岩から眺めたときに考えた(これにより、過去の記録と比べてゴーロ滝に多少の変化が見られた模様)。何でも一〇年は保つであろうと設計された中流大堰堤は、僅か三年にしてその役割を終えてしまったのだという。
さてその内容だが、泳ぎこそなかったものの大鹿滝とそれに連なる滝の辛い登攀や、脆そうに屹立する両岸壁から常に与えられ続ける緊張、流れが消えたかのように両岸を立てた砂岩床ゴルジュ、ガス立ち込める本沢滝周辺の一種独特の雰囲気、他では経験したことのない落ちられずピンとれずの脆い崖トラバース、本沢滝を越えた渓相の穏やかな変貌ぶりと、実に内容豊かである。ちなみに、側壁は確かにボロく悪そうに見えるが、流芯部の滝の登攀部分に脆さは無く、逃げ腰になってひとたび高捲きに入ればこの谷から受ける印象も随分と違ったものになるであろうことは他の谷同様である。
ただ、この沢を万人に薦めることはできない。こういう谷を単にボロくて気色悪いという評価しか下せない遡行者もいるだろうし、何より落石の危険が回避できる確たる根拠が無い(現に夏のこの地は日光雷と呼ぶ落雷が名物という)。なお、この沢を日帰り山行とする意味は余り無い。本沢滝上流には幕営適地も有り、二日割いてじっくりと取り組むべき対象に思う。また「関東周辺の沢」アカナ沢の文中には事実無根のええ加減な部分が有り(大鹿滝の記述は出鱈目)、成っさんは随分とおかんむりでしたよ、アサギ同人の岡田さん。
しかし、素晴らしい。殊に景観的見地から日本の渓谷を代表する一つのスタイルを成している。限定的立体空間が、人間にとって最大限の威圧空間を作り上げた自然営為の一例であろう。
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