若狭駒ヶ岳☆知られざる秘池を探して三椏の谷を巡る
- GPS
- 03:48
- 距離
- 7.7km
- 登り
- 695m
- 下り
- 705m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
国土地理院の地図で若狭駒ヶ岳のあたりをみると、その北東の斜面にポツンと小さく池の印が記載されている。しかし、ネットで検索してみても、この池の記述はどこにも全く見当たらない。果たして本当にここに池があるのだろうか、と気になるところである。久しぶりに長男も山に行くというので、この池を探索しに行くことを話すと長男も興味を示す。
長男が山に行くのは雪山の若狭駒ヶ岳から千石山へと周回した山行以来だ。家内のスノーシューが破損して、長男が家内にスノーシューを貸与したものの途中から長男が股関節周囲の大腿の筋肉を痛めたせいで動けなくなり、千石山からかなりの時間を要して下山したのだった。
まずは熊川宿から河内川ダム
ダム工事の建設は2012年、運用が開始されたのは2019年の6月である。流石に現代に作られたダムと感心するのは工事はしっかりと安全管理されていたのだろう。このダム建設に伴う殉職者はいないようだ。
ダムの左岸を南下するとすぐにピクニック広場への標識が現れる。このピクニック広場はかつてダムに水没した河内集落の最上部に相当する。駐車場のある広場の一角にはかつての集落の地図を表した案内板が設けられているが、山深い谷筋に沿ってかつては長閑な山村が広がっていたことが想像される。
駐車場からは森林公園に上がるための林道を歩き始める。林道がヘアピンカーブで折り返すところで、谷に入る。この谷には本谷という名称があるらしい。
植林の谷を渡渉を繰り返しながら進んでゆく。左手の自然林の明るい斜面に三椏(ミツマタ)の群生があることに気がつく。三椏の群落はもっぱら植林地の中にあることが多かったが、自然林の中の群落はなかなかお目にかかることはない。まずは三椏の群落を訪れる。前週に綾部の老富の三椏の群生地を訪ねたところであり、最盛期のように思われた。今週は三椏はもう終盤であることが予想されたが、ここは三椏はまだ花の盛りのようだ。
三椏の群生地の中を通行することは困難なので、その上で斜面をトラバースすることにする。尾根を越えると広々とした谷が現れた。この谷にも三椏の群生が続いている。
池を目指して谷を遡行することを考えていたが、三椏に惹かれて斜面を辿るうちにいつしか谷から離れてしまっている。このまま右岸の斜面をトラバースすることにする。しかし、三椏の咲く谷を過ぎてその左岸の尾根を越えると、その先には現れたのは鬱蒼とした植林の急斜面であった。さすがにこの植林の急斜面に入ってゆくのは気が進まない。尾根を登ることにする。
トラバース気味に右手の斜面に進むと、その上には古い林道が走っているのが見える。林道にまで上がろうかと思ったが、斜面をトラバースする鹿道が現れたので、鹿道に誘われるがままに斜面をトラバースする。植林の尾根を越えると目に飛び込んできたの広々とした草原の斜面だった。斜面に疎らに点在する三椏はまるで黄色い羊のようだ。どうぞご自由に歩いて下さいと斜面が誘っているようだ。
エンゴサクやスミレの花が咲く草原の斜面を登るとまもなくその上を横切る廃林道に出る。水平な林道を辿って池の記号の上部に出るが、辺りに広がっているのは植林の斜面だ。果たしてこんなところに池があるのだろうかと怪訝に思いつつも植林の斜面を下ると、突然、植林が切れて、平坦な草地が現れる。
GPSを確認すると確かに池の記号のあるところだった。かつては池があったのだろうが、完全に干上がってしまったのだろう。周囲が植林地となってしまったことで斜面の保水力が喪失して、池が乾燥したのかもしれない。平坦地の中央には円形に苔の生えたところがあり、かつての池の名残をとどめているようだ。池は失われてしまったものの、植林地の中にあってここだけポツンと完全な異空間となっていた。
池を後に再び植林地を辿り廃林道にたどり着く。植林はここで終わり、若狭駒ヶ岳の山頂にかけて尾根とその左手にまっすぐに谷の源頭が続いている。尾根を辿りはじめたもののすぐにユズリハの藪が尾根芯を塞ぐ一方、左手の谷は藪ものなくスッキリとしているので、谷を登ることにする。
源頭部の斜面はもうしばらくするとイワヒメワラビの緑のカーペットに覆われることになるのだろう。ここでもまだ所々で三椏が咲いていた。
谷を詰めて稜線に登りきったところで単独行の男性に出遭うが、その顔には見憶えがあった。昨年、雪の横山岳への行き帰りのバスでご一緒になった男性である。「お久しぶりです。」と声をかけると、先方もこちらを憶えておられたようだ。すかさず「山猫さんですね」とお応答が返ってくる。若狭駒ヶ岳には小浜の市場から千石山を越えて長い尾根を歩かれて来られたようだ。
「今年は山毛欅の新緑が早いですね」と仰る。確かにこの稜線上でも山毛欅の樹々の新緑が見られるが、この時期にしては早いのかもしれない。
若狭駒ヶ岳の山頂に到着すると可愛いビーグル犬を連れた女性が出発されるところだった。山頂からは三十三間山、三重獄、武奈ヶ嶽と野坂山地の山々を望みながら、家内が用意してきた弁当でランチ休憩をとる。青碧の琵琶湖の彼方には伊吹山、霊仙山、御池岳との湖東の山々を望むことが出来る。
ランチの後は江若国境尾根の山毛欅の回廊を辿るが、すぐに森林公園への分岐となる。明神池への往復を提案したが、長男は池には全く食指が動かないようだ。家内も山行距離が短ければ短いほどよいたちだ。
森林公園を向かって尾根を下ると急速に山毛欅が少なくなってゆくが、尾根上には快適な自然林が続く。まもなく尾根には真新しい林道が現れる。先程の犬を連れた女性に追いつく。
林道のチェーンの張られたゲートには一台の車が停められていた。すぐに森林公園へと入る。公園とはいえ、既に廃園となり、管理を放棄されて久しいのだろう。錆びついた建物の遺構が目立つ。後ろから先程の犬を連れた女性の車が我々を追い越して行かれた。
公園には桜並木が現れるが八重桜と思われるほとんどの樹はまだ蕾であった。今年は桜が早いとはいえ、この標高ではさすがに八重桜には早いのだろう。
尾根筋にはタムシバの樹々の群生があり、花につられて林道を離れて尾根筋を歩く。尾根の周囲は落葉松の美しい新緑が広がっている。やがて展望のよい広場に至り、周囲の好展望が広がる。背後には若狭駒ヶ岳の稜線を望むことが出来る。ここではヤマザクラや一部のサクラは満開の花を咲かせていた。広場の一角では先程の犬を連れた女性がランチの用意をしておられた。
森林公園を過ぎて東に進むと登山道が続いている。登山道から離れて車を停めたピクニック広場へと向かう尾根を下降する。尾根の西側は植林、東側は自然林となっており、作業道と思われる踏み跡か続いている。
尾根の末端は湖岸の林道との間にフェンスが張られており、林道に出られないことを心配したが、左手の谷に下降すると難なくフェンスを切れ目から道路に出ることが出来た。
車に戻り、足元を確認すると私のズボンにはマダニがしっかりと取り付いていた。ダニを気にしなければならない季節になったようだ。
池は消失してはいたものの思いがけず三椏を堪能することになった山旅であった。若狭駒ヶ岳の東側斜面は他の季節にも魅力がありそうなところだ。
綾部より近くにミツマタ群生地があったとは。今週末は雨予報だし来年行ってみたいと思います。
ところで、明神池を駒ヶ池と名前を変えたのは誰が何のためかとずっと気になっていました。ダム湖の名前が明神湖だと知ったとき、もしやそのためではと疑ってしまいました。はたして真相はいかに。
私もこんな場所にミツマタの群生地があったとは驚きです。しかも谷から谷へとミツマタの群落が続きます。
鈴鹿のミツマタで有名な場所も綾部もいずれも植林の中なのですが、樹林のない広々とした斜面に一面にミツマタが咲くのは全く違う趣きでした。
ところで駒ヶ池・・・と名称が変わったのではなくて、誰かがネットでそのように呼称したのが広まっただけではないかと思っておりましたが。
昔は「明神池」と書かれた立て看板があったのですが、誰かがそれを引っこ抜いて「駒ヶ池」の看板を立てたんです。それを見た登山者がヤマレコの地図などに登録し、それが一般化してしまいました。誰か「明神池」に戻してくれないかな。
そういう事情は知りませんでした。
昔から呼びならわされてきた名称を改めるのであればそれなりの理由がある場合は別でしょうが、恣意的な改名は賛成できないですね。
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