鳥海山BC[事故報告あり]
- GPS
- 12:27
- 距離
- 21.2km
- 登り
- 1,816m
- 下り
- 1,816m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
中島台駐車場から橋を渡るまでの15分ほどは雪がなく板を担いで歩き そこからは藪っぽい箇所もあるが山頂まで雪が繋がっている |
その他周辺情報 | 中島台の駐車場にチップ制のトイレあり |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
ズボン
靴下
ヘルメット
帽子
グローブ
防寒着
バラクラバ
着替え
ブーツ
ザック
ビーコン
スコップ
ゾンデ
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
日焼け止め
保険証
携帯
時計
サングラス
ゴーグル
ストック
板
シール
スキーアイゼン
(山頂へ向かう人はアイゼン&ピッケル)
|
---|---|
共同装備 |
ツェルト
|
感想
鳥海山BCのビッグルート 千蛇谷にお誘いを受けて行ってきました。
快晴で雪も良く下までずっと滑って来れる良いルートでした。ただ山頂までの行程は長かったです。片道約10km、標高差で約1800m
そして今回7人パーティーで行ったんですが、メンバーの1人が滑走中に転んで怪我をしてしまいヘリで救助されましたので、そのときの事故報告も下にまとめました。
まず今回救助に携わっていただいて警察や消防、病院の方々に迅速に救助、搬送、診察していただいて大変感謝しております。
電話のときにやりとりがうまくいかずイライラしてしまう場面もありましたが、無事その日のうちに怪我人が病院までいき適切な診察処置を受けることができました。
自力で下山になっていたら、当日の下山は難しくビバークやさらなる怪我の悪化の可能性が十分にあり大変助かりました。
<通常の山行の感想>
スタートは中島台の駐車場
5時半ころに到着したがすでに車がたくさんあり、皆バックカントリーの装備で続々と出発していく 学生組と合流し出発
スタートは雪がないので板をザックに括り付けて出発
15分ほど歩くと橋が出てきて、そこを渡ると雪が出てきたのでシールを装着
珍妙な形のブナ林内を歩いていく。あがりこ大王もそんなブナ達の中の1つだ。
そこから鳥海山を望みながらひたすら歩いていくき、しばらく行くと林内を抜け広い雪原へとなっていく
広い雪原ではどこでも行けそうで逆にルート選びが難しい。トレースもたくさんあるのだが、きつそうなトレースも見受けられる。どこを選ぶかあみだくじのような感じだったが、以前にこのルートを歩いているメンバーがいたので心強かった。
ちなみに今回のメンバーは社会人3人、大学生4人
滑走用具はテレマーク2人、スプリットボード2人、山スキー3人
今回の山行途中で私が先頭を歩いていたのだが、その際にオーバーペース気味であった。学生達は元気はつらつで体力があり余っており、そこを基準にペース配分してしまったので反省している。←言い訳であるのだが(^_^;)
千蛇谷に入る前の急登を気合で登りきり、だだっ広い千蛇谷に入る。下の雪原のときもそうだったが、山のスケールが大きく海外の山のようだな〜
この辺りはからは先の登っていた人達がチラホラ滑走してくる
少し硬いところもあるが広い千蛇谷を気持ち良さそうに滑っていく。
その爽やかさとは反対にこちらは汗だらっだらで日焼けで顔が痛く、サングラス着けているのに目が痛いという状態だが、「山頂までもうちょっと頑張ろう」という気持ちになる。
事前の情報『山頂へ向かうならアイゼン・ピッケルが必要』だと聞いていたが、天気が良く、風もほぼなかったので雪が緩みシール登行のまま山頂へ着くことができた。
山頂からは日本海や月山方面など景色を楽しみつつ、お昼休憩
滑走では北壁へ行くという案もあったが、北壁下ったあとルートの復帰にするのが大変そうだったため、当初の予定通り千蛇谷を下ることに
ビンディングのトラブルで少し時間がかかったが出発
(道具の使い方やキックターン、2〜3時間程度のハイクアップをする講習会があってもいいなと思った)
千蛇谷はザラメ雪でなかなか快適 広い谷をガンガン滑る。千蛇谷の広い斜面が終わり、登ってきた急登の(上から見て)左にノートラックの沢があり、皆でそこへ滑り込んでいるときにメンバーの1人が転んで怪我をした。詳細は下部へ
メンバーが無事ヘリにピックアップされてから下山開始
怪我した人が履いていたスキー・ブーツなどの荷物を手分けして下山していく
17時を過ぎ気温も下がってきたためか雪の滑りは良くなっているなーと思っていたら思いっきりこけた!雪が硬くなってエッジが引っ掛かりやすくなってきている。
板を担いでバランスが悪くなっていたためだとと言い訳しておこう(笑)
このときかこのあと転んだときかわからないが、ブーツのパーツとボルトが飛んでいったようでブーツの固定が効かなくなっていたのに、下山後に気づいた。
やけにブーツが柔らかいなと思っていたが、そういうことだったかw
そんな感じだったためその後ハの字でずっと滑っていったがかなり太ももに来た。
もう一度転んでしまったため、担いでいたスキーを別の人に持ってもらう
他のメンバーは特にボードの二人は快適そうに滑っていく。
そこから日没と競争しながら標高を下げていく そのうちに藪が出てくるが、スキーを担いでもらった人は滑りにくかろうに巧みに藪を交わして先頭を滑っていく。
しゅ、、しゅげー!! スキー上手くなろう!
で橋の手前で皆板を担いで、歩いて駐車場まで
暗くなる寸前だった。荷物を片付けていると警察が事情聴取にやってきて今回のリーダーであるOさんが対応、その後もOさんが1人で病院へ向かい対応
我々は申し訳ないが帰路につく。Oさんほんとにお疲れさまでした。
以下は事故時のものをまとめたものである。
<事故発生時の時系列>
※時間はGPSログ情報と写真撮影時間、通話履歴から算出・推測
14:45頃 S君が転倒 標高約1700m地点の沢形状内 ※写真参照
14:50-15:05 S君の膝の処置し、動けるか様子をみる
15:05頃 警察110と消防119にそれぞれの救助要請
15:30頃 警察と消防どちらもヘリの調整・手配を進めるため電話が切れる
16:01 ヘリで救助を行う旨の連絡が入る
16:11 (消防防災ヘリコプターが出発)
16:22 ヘリが16:11に出発したとの連絡が入る
16:25 S君の介助としてOさんが残り、他の5名は少し離れた場所へ移動する
16:35頃 ヘリが現場付近へ到着 しかしS君Oさんを発見出来ず、一度離れて再び戻ってきて現場の二人を発見
16:40 救助隊員1名がホバリングしたままのヘリから現場へ降りる。
16:50 S君のピックアップ完了・ヘリ出発
16:56 Oさんが他の5名と合流し下山開始
17:20 S君の搬送先等の連絡が入る
18:02 下山完了(中島台駐車場)・荷物の片づけ・これからの行動の相談
18:30頃 駐車場まで警察が来てくれてOさんが状況などを説明
18:42 事情聴取が終わり、駐車場から車で出発
救急要請開始からピックアップ完了までおよそ1時間50分
<私の視点の事故状況>
14:43分 S君転倒
なんてことはない転倒だろうと思い、私はS君のところへは行かずに沢形状の脇の尾根筋を滑った。
14:45分 最後尾だった私皆がいる地点まで滑り降りる。
上を見上げるとS君がまだ上にいた。立ち上がり一度滑ろうとするがすぐに転倒しなかなか滑ってこないので様子がおかしいことに気づく
N君がS君のところまで走っていく またS君が滑り始めたがすぐに転倒
14:50分 S君のところまで皆で駆けつける。
転んだ際に左脚の膝部分を負傷したようで、滑ろうとすると「膝が外側に抜けてしまう」感じがあるという。膝関節だったため固定してしまうと歩けなくなると思い、伸縮タイプのテーピングを靭帯に沿わせて処置するが、数mほど行ったところで歩けなくなってしまった。今度は別の者がサムスプリント(添木のようなもの)と非伸縮のテーピングで膝関節を固定して再び歩き出すがまたすぐに歩けなくなってしまった。
あと2〜3時間ほどで日没を迎えること、怪我の状況(自力で歩けない)、登山口までかなり距離があり(標高差で-1250m、水平距離で約8km)などを鑑みて我々パーティだけでは今日中の下山は難しいと判断して救助要請することにした。
15:05分ころ Oさんが110番へ救助要請 秋田県警へ繋がる 秋田県警からの指示で私が119番(救急)へ にかほ市の消防?へ繋がる
登山口は秋田県だったが、事故現場が山形県内だったためおおまかな情報を伝えた後で山形県の酒田市の消防本部へ電話が転送される。ここの署員の方の対応は素晴らしかった。遭難場所など話していてトントン拍子に話が進む。その後ヘリが手配できるか調整するためということで電話が切れる。
その後、警察から電話が来たのだがその前に2度くらい話した個人情報などをもう一度求められ、イライラしてしまう。そして要救助者本人と話したいということでS君に電話を代わる。
怪我をしたS君は他のメンバー3〜4人で介助しており、足の痛みはあるのだろうが日射があり風もほぼないため、低体温症など二次的な症状もなさそうである。
16:01 ヘリで救助を行う旨の連絡が入る
その後にヘリが出発したと連絡があった。その際にヘリが来る際に我々はどうしたらいいか聞いたら、介助で1人残り他のメンバーは離れていた方がいいとのことだったので、OさんがS君の介助として残り、他の5人は少し離れた場所へ移動する。
16:35頃 ヘリが現場付近へ到着
ヘリが来て私たち5人を見つけるが、S君Oさんの方へ行って欲しかったので手は振らずに現場の方を指差すがうまく伝わらずにヘリが一度下部へ行ってしまう。その後もう一度戻ってきて再びS君の方を指刺すとそちらへ移動し、S君を発見してホバリングをし、救助隊員の一人がヘリから降りてきた。
ヘリから水平距離で150mほど離れていたが、それでも雪煙がすごく顔が冷たかった。ヘリの真下にいた2人はもっと寒かっただろう。少々不謹慎と思いつつも救助の様子を記録するために動画を取った。
16:50 S君が無事にピックアップされヘリが出発していく。
それを見送ったのちにOさんが我々のとこまで降りてきて一緒に滑走を再開する。
<事故時の感想・反省>
〇まず計画書あって良かったと思った。救助要請をした際に怪我の状況とともに真っ先に要救助者の名前と生年月日、住所、緊急連絡先(家族)のことを聞かれたので計画書がなければそこでもたついていただろう。紙地図も1枚は印刷しておくべきだと感じた。スマホで計画書を保存でも良いかと認識があったが、電話をかけているときはスマホの画面を見ながら話すことが難しい。他の者のスマホ画面を借りながらでも良いが、バッテリーの節約や少人数だとスマホを借りれない場合もあるので紙地図が1枚あると良い。
〇パーティーの人数が7人と多かったことも心強かった。救助要請の電話を2人でしている際も要救助者のサポートを他の者が行っていたので、迅速に救助を待つ態勢が整えられた。また、パーティーのメンバーで救急用品やツェルト、マット、寝袋などの装備を持ってる者がいたのでビバークに突入していたとしても要救助者の保温などには困らなそうであり、心強かった。
ただ寝袋を持っていくかは要検討が必要である(笑)
例えばシュラフカバーにするとか、非常時用にパーティーで1つ軽量コンパクトな夏用シュラフを持っていくなど打ち合わせてもいいかもしれない。
まぁ俺も昔日帰りBCで持っていってたことがあるので何とも言えないのだが
〇天候や地形に救われたとこも多きかった。ほぼ無風快晴状態だったので、ヘリが救助に来れてその日のうちに病院へ搬送され、また樹林などもなく見晴らしが良かったので要救助者をほとんど移動させずにそのまま救助を待つことができ、またヘリが来た時にも比較的すぐに発見された。
〇普段からログデータや現在地を把握するのにGPS地図アプリ(ジオグラフィカ)を利用していたので、現在地の標高や緯度経度がすぐに伝えられたことは良かった。
反省
〇登りときに途中から先頭でペースを作っていたが、少しペースが速すぎたのではないかと反省している。学生達は体力があり遅れずに付いてきたが、行程の長さやペースが速いことによる足への疲労が滑走時にも影響が出た可能性もある。また途中でペースを乱して速く歩きすぎた場面もあったので反省。
今後の参考として今回の移動速度
標高差1770mを6時間20分で移動(休憩時間も含む)
時間あたりの獲得標高が280m/h 水平移動距離が1.6km/hであった。
計画書では一時間あたり250m/hで計算していた。
<S君の負傷の状況>
左前十字靭帯損傷と骨挫傷
5月中旬に手術し、3週間ほどの入院を予定
<現場での処置について>
その後、関節や靭帯の専門家の方からテーピングを教えてもらう機会があり、その際に今回の処置や対応などを聞いたところ、膝関節は負荷強く固定が難しく、また前十字靭帯損傷では怪我した直後は歩ける場合もあるが、もし歩けたとしてもその後に急激に悪化する可能性が高いため、歩かせないで救助を呼んで正解だったのではないかとのことでした。
以上です。
S君へ 怪我が良くなったらまた鳥海リベンジしに行こう
でも焦らずゆっくり治してください。
ではお疲れさまでした。書く体力が、、、尽きたw
コメント
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yoru1988jpさん、初めまして。以前、平標山のレコでお見かけしたようですが…。
事故について詳しく記載されており、地元の山ゆえに真剣に読ませて頂きました。色々参考になりましたが、紙ベースの地形図、計画書の携行は必須ですね。事故現場は、上から見て夏道との合流点を過ぎ、急激に沢が落ちる場所と思われ、足に大きな負荷がかったのでしょう。
何れにせよ、詳細なアップ、ありがとうございました。お友達の一日も早い回復と登山復帰をお祈りします。
matayannさん、記録見ていただいてありがとうございます
あれ、以前に平標のレコも見ていただいてましてか?
今の時代、デジタル化が進んでいるので携帯やGPSあれば紙ベースは要らないかなーとも思っていたのですが、いざというときにアナログなものがあるとやはり心強いなと思いました。
全員が持ってるのが1番望ましいですが、パーティーで話しあって半数が持つようにするとかでもいいのかもしれむせんね
事故現場はまさにその地点です
僕自信も登りも含めて足に来ていたので他のメンバーもそれなりに疲労がたまっていたことありそうです
転んだときはそんなに重大なことでないと思ったんですが、その後にヘリを呼んでの救助になってしまったので、ふとしたことで遭難は簡単に起きてしまうのだと感じました。そして、もしかしたら怪我していたのは僕だったのかもしれなくて、決して他人事とでないなとも。
復帰のお気持ちありがとうございます
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