ド素人が行く 高尾山~陣馬山縦走
- GPS
- --:--
- 距離
- 14.5km
- 登り
- 915m
- 下り
- 489m
コースタイム
12:40影信山12:50ー13:30明王峠13:35−14:15陣馬山14:30−15:10高原下バス停
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
素人に安全な山はないよね |
写真
感想
さて、前回すっかり高尾山をやっつけた気分になってしまった愚か者の私ですが、
実は山登りを続ける気持ちは全くございませんでした。
山は大好きなのです。車やロープウェイで行ける山はしょっちゅう行きますし、まとまった休みの時は基本的に山がそばにないと元気にならないくらいです。
NHKで深夜にぼんやり流している山の映像などを見ながら「いつか行けたらいいなぁ〜」なんて思ったりはしますが、なにせ登ると言う行為が辛すぎる。山登りは私にとって別次元の行為でありました。高尾山はあくまでも 暇だったから手軽な山に行ってみた レベルの行いであったのです。
しかし私はもう一度高尾山に登ろうと思いました。
理由はゲスであります。 あのいかにも普段渋谷のクラブで夜通し遊びまわってる風のオネエちゃん(イメージ)に「おっさん この程度で死にそうになってんじゃねぇよ」的な目で見られながら(思い込み)軽々と追い抜かれて行ったこと(事実)が悔しくて仕方なかったのでした。
確かに私は山好きを公言する男。それなのに高尾山ごときゼーゼー言いながら登っているようでは全くなっていないな、と思うわけです。
よし、次は終始大笑いしながら登ってやろうと家の近所の坂道を登ったり下ったりし始めます。幸い私の住む町は坂の多い町。1キロくらいのウォーキングの中で、なかなかの勾配の坂をピックアップして10本くらい歩き回ってみます。
すると5日目くらいには、最初ヒーヒー言いながら登っていた坂がすいすい登れるようになってしまいます。
「あれ?俺なんかすごいメキメキ成長してない・・?」
私はまた勘違いをします。
この調子だと高尾山なんか片足ケンケンで登れてしまうのではないか?
それだとわざわざ行くのももったいないな。
そう言えば高尾山は縦走路の起点で奥に山がいくつかあったな。
だったらそっちまで行っちゃおうか。
と言うわけで陣馬山行きが決定します。
岡目八目とでも言いましょうか。山をやらない私の周りの人々にその話をすると
「いやいや、やめとけって」とか「無茶すぎ」とか冷静にコメント。
奥さんにいたっては「絶対無理だって。やめときな」とド真剣。
しかし残念ながら負けず嫌いな私にとってそんな言葉は無謀にチャレンジする原動力になる以外の何物でもないだけなのでした。
そうと決まれば多少の準備はしなくてはいけません。
まず靴を買います。山登り用の靴がどんなものなのか私は全く知りません。
かと言ってショップに行ってちゃんとした靴を買うと言うのも、別に今後山登りを続けるつもりもない私には違う気もします。 だからアマゾン。 便利です。
トレッキングシューズで検索。どう見ても他の商品に比べて安物ですが、「アルパイン」と言うメーカーの靴を5990円で購入。ド素人には十分かと判断します。
ついでにファーストエイドとポンチョも購入。
デイパックは悩みます。写真だけでは解りかねるところが多くて保留していると、
後日たまたま寄ったドンキホーテ方南町店にて「クライミング」と言うこれまた聞いたことのないメーカーのデイパックを発見。2990円と言う格安ながらポケットも多いし中もファスナーで2層式になっていていかにもそれっぽい。購入。
なんだか装備が整ってくるとそれだけで気分は山屋になった気がして山登りの日が楽しみになってくるものです。
そんなこんなでいよいよ当日。
私はしっかりと動きやすい服装にピカピカの装備を身にまとい意気揚々とケーブル清滝駅の前に立ちます。
「さあ、やっつけてやるか!」
なにせ私は町の坂道を軽々と登る男。高尾山ー陣馬山縦走など朝飯前の気分なのです。
まずは前回いきなり私を苦しめてくれた1号路へ。今回は一回も休まず山頂まで行っちゃおうかな、などとズンズンと行きます。
こんな坂に ハァ やられるとは ハァ
俺も ハァ ずいぶん ハァ 青かったな ハァハァ
まあ ハァハァ しかし ハァハァ 今回は ゼーゼー
そうは ゼーゼー 問屋が ゼーゼーゼー 卸さ・・・ ゼーゼーゼーゼー
あれ?なんかイメージと違う・・。
前回とあんまり変わってないんですけど・・。
見るとまだ前回堪らず座ってしまったベンチまで半分くらい。
こんなはずじゃない、と気合で歩を進めますが息は切れまくる一方。今回も同じベンチにヘタりこむことになりました。
そうか。町の坂は長くてもせいぜい50m。登れば休めるが、山は登り続けなきゃいけない。疲労の度合いは別次元なんだと改めて認識。
この後も2度ほどベンチで水分補給しながらようやく高尾山頂。この時点でまるで頭からバケツで水をかぶったかのように全身汗ビショビショでございます。
しかし時間を見ると1時間10分。この平凡なタイムが再び私に元気を与えてくれる事になります。
「おー、前回よかだいぶタイム縮まってるじゃないかー。
やっぱ練習の成果出てんだな。すごいすごい」(単純ばか)
山頂で10分ほど休んでからいよいよ陣馬山へ向かいます。
山頂から西へ丸太階段をグングン下ると奥高尾と5号路の分岐に。奥高尾方面には3方向くらいに道別れしていますが私は真ん中を進みます。ほどなくグッと登るとすぐにモミジ台の休憩所、さらにうんうん唸りながら歩を進め広々とした一丁平園地に到着。ベンチやトイレがあってここで堪らずまた休憩。しかしド素人の皆さん、ここは実はもうひと階段頑張って登ると大変眺めの良い展望デッキがあり、そこの東屋で休憩ができるのです。目の前に現れたベンチに安心してすぐ休んでしまうと、行軍を再開した瞬間に好展望の休憩場所がすぐそばにあったのかと気づくと大変ショックを受けますのでご注意ください。
ここから城山までも、それほどキツくない登りを進んで辿り着けます。
茶屋もありベンチも豊富な大きな休憩場所です。
ここで私は足に違和感を発見いたします。なんだか足首が痛い。 どうやらシューズのミドルカットの上部が当たるのか、両足首くるぶしの上辺りに打撲的な鈍痛があるのです。しかし私は今までトレッキングシューズなど履いて山道など歩いたことの無い男。「きっとこれくらいの痛みは山男的に当たり前のモノなんだろうな」
とお気楽に受け止めました。
城山からはグッと下るとすぐに小仏峠。
かつて昔の人が旅をする時にここを通って行ったのだなと思うと、感慨深い気持ちを押さえ切れなくなるようないい雰囲気を持った場所です。
江戸時代の人になったような気持ちになってここでも休憩。
さらに景信山に向かいます、が ここからすぐに今まで見たことの無いような急登が待ち受けておりました。(ド素人的に)
ジグザグの急な登りを休み休み気合で登るとそのあと東側が切り開かれた爽やかな尾根道が。ここでは「おー!気持ちいいー!」とか言っていかにも景色を楽しんでいますよ的な雰囲気を周りの人々にアピールしながら実は破裂寸前の心臓をしっかり休ませます。
しかし私の負けず嫌いが因となす「私全然平気です」の演技は景信山山頂直下の最後の急登で脆くも崩壊を迎えることとなりました。
ほうほうの体で山頂にたどり着いた私の顔面は、恐らく真紫色に変色していたに違いありません。なにせ先に山頂で休んでいらしたたくさんの方たちが、私の方を一瞥するとすぐに見てはいけないモノを見てしまったと言う表情をしてあさっての方向に目をむけるのです。もはや私にもダメージを隠そうと言う気力もございません。そばにあるベンチにへたり込むとテーブルに突っ伏してしまいました。
そして何より、足首が痛い。
城山から進むにつれ増し続けていた痛みはここ景信山で最高潮を迎え、まるで一歩ごとにハンマーで殴られているかの様です。歩いているだけで両足首粉砕骨折!みたいな愉快な事件を巻き起こしてしまいそうなくらいです。
さらに水がない。
出発時に500mlペットボトルのお茶を2本持参して高尾山でポカリ500ml追加していましたが、実は城山の段階で残り300mlくらいになっていました。
よほど城山茶屋で補充しようかと思いましたが、景信山に行けば茶屋で補充できると考えやめていたのです。ところが、景信茶屋休み! ガーン!
もう水分残量はペットボトルの底にピチャピチャ言う程度。これは困った。
ここで賢明なド素人の方でしたらば撤退を考えたでしょう。
しかし残念ながら私は愚か者のド素人でございました。
私の頭は見栄と体裁でいっぱいです。こんなところでもし止めてしまったとしたら、私を薄ら笑いを浮かべながら送り出した奴らから「やっぱりな」とか「だから言ったじゃん」とか言われてしまうのです。 冗談じゃない。
私は更に前へ進むのです。
私は疲労で頭がクラクラしていますから、当然明王峠までの道の記憶がほとんどございません。おそらくさほど厳しいアップダウンは無かったと思います。ただ突然目の前に現れた堂所山の山頂への急登に気絶しそうになったことを覚えております。これから同じルートにチャレンジしようと思っているド素人の方、もしいらっしゃったらどうかご安心ください。ここには巻き道(ピークや障害物の迂回路)がございます。私もここは急登を見なかったことにしてそそくさと巻き道を行きます。
明王峠に着きました。
ここにも小さな茶屋が備わっておりますが案の定閉まっております。景信山の茶屋ほど大きな茶屋がやってないのですからここは想定内。しかしここでいよいよ水分残量はゼロになります。陣馬山までここからあと2キロ。陣馬山まで行けば何とかなる、と言う想いでラストスパートをかけます。
が、この2キロが長かった・・・。
もう足の骨割れるくらい痛い・・。
のど渇きすぎて目まいする・・。
疲労で真っ直ぐ歩けない・・。
古傷を持つ右膝まで痛くなってきた・・。
私はもはやリビングデッド状態で、今思うと大したこと無かった気がする山頂直下の階段も、一段上がっては休み一段上がっては休みと すれ違う人々をもれなく気の毒そうな表情にさせてしまう始末です。
さらに陣馬山頂に辿り着くと私は泥のように疲れて叫ぶようにゼーゼー言っていますから、キャッキャ言いながらハイテンションで陣馬像と記念写真を撮っていた二人組の山ガールを一気にシラけさせてしまいました。
あの時の山ガールズ。 ごめんなさい。
いやいや、それよか 水、水!! 水飲ませてくれー!
茶屋を見ると・・・、 お・や・す・み。 なんでやねん。
平日は登山者が少ないからやってないのだろうか。
だったらもっと広く広報していただきたい、と私は涙チョチョ切らせながら思うわけです。
そして私はしばらく地蔵のように身動き一つせずベンチで休んでおりましたが、心の中は早くおウチに帰りたくて仕方ありません。 必然的に下山へと行動は移行します。 山頂には陣馬高原下バス停の時刻表が貼られております。満身創痍の体を持ち上げて見に行くと、次のバスの出発は15時25分。現在14時30分。
案内では下山の目安は1時間。 私の頭は疲労によってまるで薬物中毒者の様に一つのことしか考えられません。「早くおウチ帰る」 絶対に間に合わせるつもりで歩き始めます。
下りは「新ハイキングコース」と銘打たれた道を行きます。
一歩下るごとに激痛の走る足の痛みに耐えながらしばらく土の登山道を進むと、私は驚愕の光景を目の当たりにしました。
もの凄い急下りなのです。 と言うか、その斜面全体にまるで迷路のように縦横無尽に張り巡らされた木の根が張り出しているのです。 これは恐い。
踏み下ろす足の位置を少しでも間違えれば足首をグネグネに捻って動けなくなる、
あるいは 木の根につまづいて斜面を転げ落ちて全身の骨を少なくとも116か所はポキポキ折ること受け合いで、想像しただけで恐怖でおしっこ漏らしてしまいそうなのです。 しかし私はこの時「早くおウチに帰りたい」男。
私はあり得ない程集中して、慎重 かつ 急いで山を下る下山マシーンへと化すのです。
ところが、この下山マシーンの最中に私の頭に突然突き上げるように考えが押し寄せてきたのです。
「俺、何やってんだろ・・?
もしかして やっちゃいけない事やっちゃったんじゃないか・・・?」
先に申し上げたように私は山が大好きなのです。
花や木や昆虫や動物や、山は常に無数の生命に満ちていて、何より山自体が地球の生命を形として我々に見せてくれてるような、そんな風に思うのです。
そんな山は、私はいつも遠くから眺めているだけなのに、たくさんの事を教えてくれて、たくさんのものを与えてくれていたのです。
「山はいいぞー」「山はスゲーぞー」なんて周りに言っていたのです。
自分の体力や脚力に見合った山の中を歩いているだけ。それだけで楽しいことが一杯ある。私はそれを知っていたはずなのに。 謙虚さのかけらも無く、我や欲のためだけでこんなところまで来て、そして今恐い思いをしている。
私は急に自分が恥ずかしくて仕方なくなりました。尊敬、畏敬の対象であった山をコケにするような事をしたような気になったのです。
とは言え結局十分バスに間に合う時間にバス停に到着してしまった私ではありましたが、私の中に達成感や充実感はかけらもございません。(ちなみに水分補給はバス停手前にある、ヤマレコの先輩方の間では有名らしい なんとか商店だか、なんとか屋とかでたっぷりいたしました)
なかば落ち込むくらいの勢いの帰路の途中、もちろん私は疲労で即身仏のようになりながらですが、私は考えていました。
本来なら私は山の神の怒りを買って、下山途中に木の根に引っ掛けられて転ばされ首の骨でもポッキリ折られても文句の言えないような事をしたのに こうして無事に帰れているのは、山の神が「もう一回チャンスやるよ」と言ってくれてるような気がする。そう思うと私は ちゃんと山に登りたい と言う気持ちになりました。
こうして、わたしの山人生がスタートするのです。
心を入れ替えた私は次に何をするのか?
次回 山修行 南高尾山稜 編 お楽しみに
最後に、これから山を始めようとしてる方、あるいはバリバリの初心者の方。
今回の私のような愚かな山をやる方はいないでしょうが、どうか思い切り謙虚に そして思い切り楽しんで、一緒に充実した山をやりましょう。
そして記録として「高尾ー陣馬 縦走」と今回こちらにアップさせていただきましたが、私の中でこれは無かった事になっています。いつか近いうちに改めて、次回は楽しみながら同じルートを歩くつもりです。山の神、待っててね。
それでは さようなら
初めましてgonzouと申します。
山中で水切れ。。。
とても辛く悲しい体験をされてしまいましたね。
心中お察し申し上げます。
8時間累積高度1000M14KM以上ですね。
オイラだったら水3L使いそうです。
これから、涼しくなり良い季節突入です。
マイペースで水ある程度余裕をもった量を持って楽しんでください。
突然のお邪魔お許し下さい。
良い山行を。
gonzouさん、はじめまして。
いつもgonzouさんのレコを、その健脚ぶりに垂涎の思いで拝見させていただいています。
コメントいただき感激です。
実は思うところあって最近自分の山行を最初から書き始めているところなのですが、その後も月2〜3回のペースで山は続けております。奥多摩に出掛ける時はgonzouさんのレコを大変参考にさせていただいているのですよ。
gonzouさんも基本的に平日ハイクをなさっているようですから、いつか月曜日にどこかの山でバッタリお会いできることを期待しております。
gonnzouさんもどうぞよい山行を。
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