蒜場山に紅葉狩り
- GPS
- 07:39
- 距離
- 10.0km
- 登り
- 1,190m
- 下り
- 1,183m
コースタイム
天候 | 曇り・霧 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・登山口にポストがある。 ・登山口から岩岳までは灌木の中の尾根道。最初は急登だが、その後は全体的に傾斜はゆるやか。 ・岩岳から山頂までは大小のアップダウンが続く。烏帽子岩と兎戻しの2か所に鎖場がある。全体的には痩せた尾根道を行く。展望はいい。 ・山頂はそれなりのスペースがある。晴れていれば、飯豊連峰の絶好の展望台になる。 ・温泉は加治川治水ダムから15キロほどにある日帰り温泉、城山温泉がなかなか良い。 |
写真
感想
蒜場山は飯豊連峰の最高峰大日岳に遠く連なる峰のひとつで、ここに初めて登山道が開かれたのは、わずか16年前の平成9年(1997)だという。それだけに、あまり人に知られていない山かもしれない。しかし、変化に富んだ登山道といい、山頂の展望の素晴らしさといい、魅力にあふれた知られざる山といっていいのではないか。
特に秋は、山腹を彩る紅葉といい、冠雪した飯豊連峰の眺望といい、この時期になると足を向けたくなる山だ。
登山口の加治川治水ダムの駐車場には、既に2台の車がとまっていた。空は曇っていて、特に蒜場山の山頂部分はガスで蔽われてしまっている。
ダムの堰堤を左岸に渡って、突きあたりが登山口になる。ダム事務所の人が、建物の2階から蒜場山の方向を見て、
― ああ、ガスってるね、と声を掛けて来た。
― 晴れないですかね、と言うと、
― 予報では、これから良くなるはずだけどね。
その言葉に励まされるように、登山口を登り始める。最初はいきなりの急登で始まる。しかし、それも長くは続かず、ゆるやかな灌木の中の尾根道になる。
道の傍らに、トロッコや線路の残骸が転がったりしていて、初めてこの山に登った時は驚いたものだ。ここにはかつて、かなりの規模の鉱山があったという。こんな険しい山で、多くの人々が働いていたのかと思うと、その労働の過酷さが思いやられた。
登るにつれ、灌木の茂る尾根の右手には、俎倉山がどっしりとした双子峰の姿をあらわしてくる。後ろを振り返ると、ダム湖の上に、焼峰山や赤津山の峰々も見えている。
周りの木々の紅葉の色が濃くなり始める頃、岩岳(930m)に到着する。ここからは、山頂に連なる稜線が一望できるのだが、あいにく、烏帽子岩から上は相変わらずガスが掛っていて、何も見えない。
北の方の、焼峰山、赤津山、そしてその向こうの飯豊の峰々は雲がはれて、時折、陽も射しているのに、蒜場山の上部だけは頑固に雲が居座っている感じだ。
登るうちに晴れて来ることを祈って、山頂に向かう。一旦、鞍部まで下る。そこには黄色に色づいた見事なブナ林が広がっている。水場の標識があったので、ブナの林の中を下ってみた。しかし、かなり下っても、なかなか水場はあらわれないので、途中で引き返すことにする。
ブナ林からひとつ峰を登り下りすると、烏帽子岩の鎖場になる。このように、岩岳から山頂までは大小のアップダウンの繰り返しとなる。慎重に鎖場を登ると、烏帽子岩の山頂に立った。相変わらずガスは晴れず、山頂は厚い雲に覆われている。しかし、見下ろすと烏帽子岩周辺の山腹の紅葉は盛りで、曇り空の元でも、しっとりとしたあざやかさを誇っている。
烏帽子岩を下り始めたら、前方で、熊避けの鈴の音がする。年配の男の登山者が下って来るのに出会った。
― 早いですね、と声を掛けると、
― 上はガスって寒いよ。雨も降って来たし…、と言いながら、足早に下って行った。
確かに雨が降って来た。これは最悪だな、と思いながら、雨具を着る。
しかし、「兎戻し」という標識がある鎖場を過ぎる頃に雨は、幸い雨は止んだが、確かにかなり冷えて来たので、雨具は着たまま登ることにする。
兎戻しを過ぎると、割と緩登になるが、なかなか山頂までの道のりは長い。登っても登っても山頂に着かない。途中、山伏峰の手前に、水場の標識があったが、とてもそこに寄ってみる余裕などない。ガスで見通しが悪いので、余計、疲労が募って来る頃、やっと山伏峰に到着。
ほっとする。ここから山頂までは確か10分位だったと記憶している。緩登を続けること15分、ようやく山頂に着いた。ダムから3時間45分かかった。5年前の秋に登った時は、山頂までで、3時間を切ったはずなので、足が随分衰えたなと感じた。
ガスの中に「蒜場山標高一三六三M」と彫られた立派な石柱が立っていた。展望は全くきかず、吐く息が白く、確かに寒い。もちろん、登山者は他に誰もいない。
急いで、コッヘルに湯を沸かし、インスタントラーメンを煮て食べる。少しは温まったものの、じっとしていると、寒さが募り、体が強張ってくるので、早々に下山することにした。
下り始めて直ぐに何でもないところで、転倒する。道に敷き詰められた落葉の下に、樹の根や石が隠れていて、しかも霧で湿っているので、非常に滑りやすくなっているのだ。どうも寒さのせいで、体が硬く強張っていて、歩きが不安定だ。
続いて、急斜面で、落ち葉の上に置いた足が滑って、激しく転倒。気が付いたら、右側の灌木の枝にひっかかるように仰向けになっていた。リュックは肩から外れそうになり、眼鏡も顔から外れて辛うじて頭の上に残っている。痩せた尾根で、両側は険しい谷。灌木がなければ、谷底に転落するところだった。胸をなでおろし、以後は慎重に、ゆっくり下ることにする。
烏帽子岩のあたりまで来ると、ガスは晴れ、体も温まって、足の運びも安定して来た。紅葉を眺める余裕も出て来た。
岩岳を下ったあたりで、男性の登山者とすれ違った。これから、山頂を往復するとなると、下山は夕方になるだろうか。
ブナの葉の黄色が次第に青みを増してくると、ダム湖も大きく眼下に見えて、登山口も近くなって来た。小さく駐車場にとめてある車も確認できる。最後の急傾斜を下り、無事、登山口に到着した。
振り返ると、相変わらず、蒜場山の山頂はガスに閉ざされていた。天候にはいまひとつ恵まれなかったが、烏帽子岩の北面の谷を彩る紅葉は見事だった。絢爛としていながらしっとりとした色彩のパッチワークは、下山後も目に焼き付いて離れなかった。
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