滝谷第四尾根
- GPS
- 29:44
- 距離
- 27.6km
- 登り
- 4,328m
- 下り
- 4,413m
コースタイム
- 山行
- 12:57
- 休憩
- 0:37
- 合計
- 13:34
天候 | 10日 晴 11日 晴 深夜に雨 12日 朝小雨のち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
昨年からずっと考えていた滝谷第四尾根、パートナーも見つかり、漸く実現する事ができた。滝谷は想像通りの素晴らしい場所だった。アプローチの困難さを忘れさせてくれる素晴らしい絶景の中、ひたすら稜線に向けて詰めて行き、最後は大岩壁を登り稜線へ抜ける。本当に良いルートだ。しかし、上部のツルムの頭以降は、崩落が激しく、近々、ツルムの頭もDカンテもなくなってしまうだろうと思える状況だった。悲しい事だが、また新しいルートができるのだろう。
1日目
福山でパートナーを拾い、20時過ぎに出発、3時前に新穂高へ到着するが、まさかの駐車場がいっぱい。暫くウロウロするが結局、鍋平の駐車場へ。1時間ぐらい仮眠ができるかと思ったが結局、殆ど眠る事もできず4時の起床時間となった。眠くてフラフラする感じで準備をして出発、さらに鍋平から新穂高登山センターまでも、なかなか遠いし暗闇の下り道は気を使う。幸先が悪いスタートになり先行きが不安になるが、まあしょうがない。予定より1時間遅れで新穂高登山センターを出発、ここから滝谷出合までも退屈な3時間の登山道歩きだ。しかし今回の相棒は初めてロープを結ぶ相手だ。2度の飲み会で意気投合をした仲間だ。まだまだ積もり話しもたくさんあり、退屈は少ない。広島から道中に睡眠が取れなかったのも、このせいだ(笑)
3時間ほどで、滝谷出合に到着、乾いた喉を潤す。
暫く休憩のあと、いよいよ滝谷へ向かう。少し先には豪快に水を落とす雄滝が見えている。もう眠気も喉の渇きもない。誰もいなくなった谷をどんどん詰めて行く。靴を濡らすほどの渡渉もなくガレた箇所を少し登ると雄滝の右岸側の小さな尾根の末端にたどり着いた。ロープを出さなくても登れる程度かと考えていたが、実際に目の前に行くと、なんの躊躇もなくロープを出す事にした。かなり砂もついていて、滑りそうで怖い。1ピッチ目から、スリル満点だ。登りきると踏み跡が残る草付きに出た。ここからトラバースかと思っていたが、木登りをするような感じで尾根の頂上を目指す。ロープはお互い10巻きぐらいコイル巻きをして支点を取りながらコンテで登る。少し開けた稜線に出てからトラーバースを開始する。足下は広いがザレてるので注意、暫く進むと5mぐらいの崩落箇所が現れる。ロープを繋いでリードでいけない事もないが、怖いので少し上に登り、まあまあの木でラッペル。この木にロープを掛けに行くのも、なかなかだった。。。崩落箇所を越え少しトラバースすると落口へラッペル。このラッペル支点もあまり良い場所がなく慎重に下る。第一関門を突破で少し気分が楽になる。落口から上流を見ると、荒々しい両壁の向こうに稜線が見える。ゆっくりと休憩をしたあと再スタート。次は第二関門、滑滝だ。谷は当然、ガレているが想像していた程でもない。先が見えないコーナーを曲がるたびに「次はどんな景色が見えるのか?」と考えていると楽しくてしょうがない、あまり時間も感じる事もなく滑滝の基部に到着、真ん中あたりで二人で何処から登れるかなーと相談して右岸から行くことを決め、右岸側に移動してから少しあと、上から強烈な落石が起きる。デカい石が砕け散り、煙りが出ている。落石の音も凄まじく、こっちに飛んでこないように祈りながら岩壁に身を寄せる。さっきまで二人で相談していた場所に、まだいたら死んでいたかもしれない。二人とも顔を引きつらせ、本当に肝が冷えた。。。さすが滝谷である。今一度、気を引き締め右岸を登攀、ナメリ滝は前日の雨で少し水量が多く、登攀ラインが濡れていて、どうしても一歩が出ず私が敗退、相棒が巻きラインで、渾身の登攀で抜けてくれて心から感謝!滑滝を越えガレ場を詰めて行くと、遂に第三難関の出合だ。AからFまである沢のC沢に間違いなく入る事だが、ガスもなく、事前によく調べていたおかげで、簡単にC沢に入る事ができた。ここからが長かった、行けども行けども目指す景色は現れず、しかし景色は最高、好きな景色だ。時間も差し迫ってきた頃に漸く右上気味にトラバースして踏み跡を行くとスノーコルへの到着した。想像していたよりスペースは狭く、2〜3人用のツエルトでもギリギリだ。動かせない石もあり、寝転がりごこちも自分側は悪かった。ツエルトを張り終えると同時に日が落ちた。ノンビリした訳ではないがギリギリだった。広島から寝ずに来て13時間行動は流石に疲れたが、気持ちの良い疲れだ。小量だが背負ってきた梅酒とウィスキーを呑み、満月の滝谷を楽しんだ。
2日目
軽量化の為にモンベル♯5のハーフ寝袋に上着にダウンで寝た。何度か寒くて目が覚めたが、比較的よく眠れ、疲れも殆ど取れた。朝から最高の天気の中、いよいよ四尾根の登攀開始だ。スノーコルからノーロープで岩稜をあがり少しハイマツ漕ぎをすると、テントが2張りほど張れそうなビバーク地に出る。先ほどまで居た場所より、かなり快適そうだ。また来る機会があれば次はここにしようと思った。そこから、少し細くなってきた岩稜帯を行く。ロープを出そうか迷ったが大丈夫そうなので、そのまま進んで行くと、ハーケンが数本打ってある1ピッチ目の取付らしい処にでる。ジャンケンで、どっちが先に行くか決めようと思ったが、相棒がここは先に行くという事で遠慮無く譲る。ビレイをしていても絶えず、小さな落石もあるし気をつけなければならない。そして、噛んでるのか刺してるのかわからないが、また小さな虫も増えてきた。2ピッチ目はロープの流れが悪く短めに切る。3ピッチ目、フェイスを登って左上していくと、遂にAカンテの取付に到達、想像していたより寝ていて簡単そうだ。その後もB、Cと楽しく続き、ルンゼを2ピッチで登りきるとツルムの頭に出た。ここまでは順調だった。ここから崩落具合は本当に恐怖だった。まずツルムの頭の基部は崩落した岩で災害現場のようになっている。しかもラッペル支点が、崩落して抉れた頭上に付いている。他にも安全なラッペル支点があるのではないかと思い探すが判らず(コルに降りてから頭上を見ると2箇所あった)しかたなくラッペルをするために頭へ数メートル登る、この登りの時も岩がメチャメチャ動くし体重を掛けるのが怖かった。身体を乗り出すような感じで、ラッペル支点にセルフを取り漸く体重をかけるがツルムの頭そのものが崩れたらどうしようと本気で思っていた。落石を起こさないように気をつけてラッペルしコルに到着。残すは最後の2ピッチ、案外早く抜けれそうだなー、あそこに見えるデカいフレークが剥がれたら怖いねーとか話しながらノンビリ休憩。そして相棒がスタート。最初の棚に登り、さっき話してたフレークに最初の支点、1番のカムを入れようとした時、上から「ヤバイ!」と引きつった顔で「そこからロープ持って離れて!」と声がかかる。かなりの大きなフレークがカムを入れただけでフワッと動いたのである。私もビレイ地点を変え、落石でロープ切れないように守りながらの真剣ビレイに変わる。それ以外の石も全部動くし、どんどん剥がれていく。。。相棒が心折れ、リード交代、私の方が体重も荷物も軽いので、岩が剥がれる可能性も低くなるのではないかと考えてしまうほど、危険な状態だ。なんとか効きそうなスキマにハーケンをうち、スカイフックまで使い、神頼みまでしながら、なんとか登り、ピッチを切る。もう1ピッチもヤバそうというか、さっきより岩がどんどん岩が剥がれていく。登ってる途中に剥がれたらヤバイので、先に剥がしながら登る。落ちていく落石の音が恐ろしい。どんどん剥がれるので、デカい岩がバランスを失って、崩れてきそうで怖い。なんとかバランスと全ての摩擦を使い、ようやく安全地帯へ。早く崩落地帯から逃げたい一心である。もはやクライミングではない。無事に稜線に抜ける事が目標になっている。最後は3級+50mの方に巻くことにして相棒に任す。安全地帯で心を落ちつかせながらビレイをする。ロープはスルスルと伸びていき、終わりが見えてきて安心していると、ロープが停まった。そこからハーケンを打つ音と、巨大な落石の音がずっと続く、ロープも殆ど進まなくなってきた。暫く経って、ロープ一杯でようやくビレイ解除で最後のピッチを終えた。終了点で2人でがっちり握手、稜線の方を見ると、もうロープもクライミングシューズじゃなくても大丈夫そうだ。装備を解除し登山道を目指す。登山道に出た処で、もう1度がっちり握手。漸く安心ゾーンに到着だ。ここから高速道路のように感じる登山道を歩き穂高山荘に到着。久しぶりに見る、たくさんの登山者にナゼか安心安全を感じる。テン場代を払い石垣の上でビールで乾杯。最高の気分だ。
3日目
深夜に雨が降り出し、ツエルト寝の我々は、殆ど眠れず。。。しかも標高3000なのに暑い、、、あまり眠れないまま、30分寝坊の2時半起床、まずは合羽を着てから片付けのパッキングをして3時15分に出発、眠い、、、当然、真っ暗の中、初めての白出沢ルートを下るのは、なかなかの核心。ヘッデンの光で白い矢印や踏み跡を探しながら下っていくが、やはり時々間違える。でも、だんだん、この路を整備した人の癖が判ってきて、良い感じで下って行くが、アルプスの谷はやっぱり長い。GPSで現在地を確認するたびにショックを受ける。明るくなる少し前に大休憩、お湯を沸かし朝食とする。気がつくと遠くの山まで見えている。漸く眠気も取れてきて元気になってくる。心配していた崩落箇所も安全に復旧されていて本当に感謝で頭が下がる。時々、休憩しながら長い長い林道を歩き、遂に新穂高登山センターに到着。ここからタクシーでも呼んで鍋平まで車を取りに行こうかと思っていましたが、4社ぐらい電話しても、全部ダメ、、、しかたない登るかと考えていたら相棒が、「荷物ここに置いて走ってとりに行ってきます!」恐るべし体力である。今回、初めてロープを組んだ相棒だが、良いパートーナーと出会えた。また一緒にどこか遠くへ行こう!
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