【白山】四ノ又谷から奥三方岳〜三方崩山
- GPS
- --:--
- 距離
- 17.5km
- 登り
- 1,802m
- 下り
- 1,742m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【荒川沿いの林道(アプローチ)】 ・ 国道から入ってすぐのところに鍵付きのゲートがあり,車での進入はできない。これまで積雪期にしか歩いたことがなく知らなかったのだが,非常に良く整備されたきれいな林道(小谷付近まで舗装されている)で,大白水谷と奥原谷の出合付近まで問題なく通行可能。小谷の橋も復旧されている。自転車の使用がおすすめ。 【四ノ又谷(荒川支流)】 ・ 積雪期の山スキーでの滑降記録はあるものの,沢登りの記録がなかったため入ってみたのだが,最大3m程度の小滝が数か所出てくる程度で,平凡な谷でした。ただ,水は清らかで周囲の樹林も美しく,ほとんど人が入ることがないと思われるエリアでもあるため,静かな谷の逍遥を求める人にとってはこれ以上にない谷であると思われる。今回は奥三方岳のすぐ南東側に突き上げる枝谷を辿ったが,詰めは稜線直下まで沢形が続いており,あまり苦労せず稜線に上がれるのでありがたい。 【奥三方岳】 ※無雪期の状況です。 ・ 登山道のない藪山で,通常は積雪期に登られている。今回,下山時に奥三方岳〜三方崩山の区間を歩いたが,藪が続くものの,無雪期でも三方崩山からの登頂は十分可能と感じた。三方崩山〜奥三方岳南東のca2120mピークまでの区間は,ほとんどの区間でひざ丈〜腰丈程度の笹で,意外に苦労せず歩行できる(稜線の南縁は笹の背が低いので南縁を辿るとよい)。ca2120mピーク〜奥三方岳山頂までは,藪が濃く歩きにくくなるが,オオシラビソの下は若干藪が薄いので,オオシラビソの下を選んで歩くとよい。山頂は胸丈程度の笹に覆われており,切り開きも皆無で,プレートなどはなかった。 ・ 三方崩山と奥三方岳の間にある鞍部は,気持ちの良い草原が広がっており,とても良いところ。 |
写真
装備
備考 | ・ フェルトソール沢足袋使用。ぬめりはそれほど感じなかったのでラバーでも可だが,源頭に行くほどぬめりが強くなるので注意。 ・ ロープは携行したが,使用場面なし。四ノ又谷は穏やかな谷なので,なくても大丈夫。 |
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感想
白山山系の中でも,三方崩山の北あたりに広がる庄川左岸の谷々は,完全に冬季の山スキーの世界で,無雪期の沢登りの記録はほぼ見たことがない。おそらくその理由は,(1)既に遡行されて凡谷という評価が定まっているためか,(2)単にこれまで人が入っていないか のどちらかであり,たぶん(1)の可能性が限りなく高いのだろうと思いつつも,特に奥深い位置にあり地形図上の見た目で何となく変化に富んでいそうな四ノ又谷を辿ってみることにした。四ノ又谷も,この山域の例によって,冬季に上部をスキー滑降した記録がわずかにあるだけである。
四ノ又谷は,思った通りほとんど滝のない穏やかな谷で,地形図上でゴルジュがあるかなと思っていた箇所も,わずかに両岸が立って3mほどの滝が出てくるだけであり,アトラクション的要素は薄い谷であった(だからこそ,スキー滑降に適しているのだろう)。しかし,白山北部の奥まった位置にあるだけに,深い森の中,渓魚が群れ遊ぶ明るい流れが続く美しい渓谷であり,清澄な水に洗われた白い岩を踏んで歩いているだけで満ち足りた気分になる。この谷は禁漁区であり釣り人の出入りもないと思われ,おそらくほとんど人が立ち入ることのないエリアだろう。人擦れのない静かな谷の逍遥を求める人にはこれ以上にない谷であると言える。
また,今回の山行で特に印象に残ったのは,奥三方岳の南東の小ピークから三方崩山との鞍部にかけて広がる気持ちの良い高原的な草原と,丈低い笹原の斜面だった。奥三方岳は登山道のない藪山であり,三方崩山からこの山までの区間は深い藪が途切れることなく続いているものだと思っていたら,こんな快適な別天地が隠れていた。眺望もよく,時間に余裕があれば寝転んで昼寝していきたいくらいだった。山頂手前で藪が少し濃くなるので,奥三方岳まで行くのは少し気合が必要だが,この鞍部前後の小さな高原へはもう一度行ってもいいと思う。ときどきこういう楽園にばったり行き当たることがあるので,藪山は面白い。
今回の山行は10月1日,秋のはじめの日であった。気が付くと,山の雰囲気はがらりと変わってしまっていて,空も水も,全てのものが澄んでいた。陽の光も急に透けたようになって,体を温める能力を大幅に失ってしまったようだ。先週よりも一枚多く服をはおらないと,渓水に長く足を浸けていられない。それなのに,谷に光が差し込むと,瀬や梢がへんにきらきらして,かえって真夏以上に眩しく感じるのが不思議だ。
雲はやけに平たくなって,風に流されるでもなく,その場でゆっくりと回転しながら,次第に形を変えていくように見えた。今までどこに隠れていたのか,おびただしい数の赤や橙色の蜻蛉の群れが,谷筋に沿って稜線へと絶え間なく舞い上がっていった。それらのものは,秋の訪れを喜んでいるというよりは,なんとなく,過ぎ去っていく夏を未だに惜しんでいるように見えた。
毎年のことだが,夏山に登っているうちに,夏山はずっと続くと思い込んでしまう。そしてある日,山の上でばったり秋に出会って,慌てて一週遅れで厚手のシャツや毛糸の手袋をザックに詰め込むのだ。新しい季節の訪れは喜ばしいが,その喜びに追いつくには少しだけ時間が要る。沢足袋を物入れの奥にしまうのは,もう少しあとにしよう。
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