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Yamareco

記録ID: 4754847
全員に公開
沢登り
槍・穂高・乗鞍

【遭難事故報告】伊藤新道死亡事故

2021年10月09日(土) ~ 2021年10月10日(日)
 - 拍手
もっち kun_pu その他4人
体力度
3
日帰りが可能
GPS
12:58
距離
24.2km
登り
647m
下り
661m
歩くペース
ゆっくり
1.21.3
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
2:55
休憩
0:01
合計
2:56
距離 9.4km 登り 187m 下り 78m
10:03
42
高瀬ダム
11:03
27
11:30
11:31
88
2日目
山行
5:36
休憩
3:59
合計
9:35
距離 14.7km 登り 464m 下り 598m
4:47
26
5:13
51
6:04
6:05
27
6:32
10:17
21
10:38
35
11:13
11:14
16
11:30
11:32
28
12:00
12:01
44
12:45
12:46
23
13:09
13:16
18
14:15
ゴール地点
天候 2日間とも快晴
過去天気図(気象庁) 2021年10月の天気図
アクセス
利用交通機関:
タクシー 自家用車
七倉山荘前に駐車し、タクシーで高瀬ダムへ。
乗り合いで2400円
コース状況/
危険箇所等
この時点では新吊橋は1本もかかっていなかった。
事故の翌日に新第一吊橋が架橋された。
晴嵐荘への橋は、2019年の台風で流失。下流側で渡渉しないと晴嵐荘へ行けなかった。2022年に吊橋が再架橋され、渡渉せずとも行けるようになった。
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晴嵐荘への橋は、2019年の台風で流失。下流側で渡渉しないと晴嵐荘へ行けなかった。2022年に吊橋が再架橋され、渡渉せずとも行けるようになった。
高巻きを降りたところ。このすぐ上流が、新第一吊橋の架橋予定場所。
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高巻きを降りたところ。このすぐ上流が、新第一吊橋の架橋予定場所。
そこからまもなく、事故現場のガンダム岩。翌年の写真と比較すると一目瞭然だが、ガンダムの下の水量はかなり少ない。

翌年のガンダム岩
https://yamareco.org/modules/yamareco/upimg/480/4806215/3ddd463e7da90917cf21f01d91e7d3cd.jpg
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そこからまもなく、事故現場のガンダム岩。翌年の写真と比較すると一目瞭然だが、ガンダムの下の水量はかなり少ない。

翌年のガンダム岩
https://yamareco.org/modules/yamareco/upimg/480/4806215/3ddd463e7da90917cf21f01d91e7d3cd.jpg
左奥のガレ場。高巻きルートとして検討された。
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左奥のガレ場。高巻きルートとして検討された。
正面の土壁も同様に検討された。
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正面の土壁も同様に検討された。
後で識者に訪ねたところ、この土壁は5.6程度のグレードであるそうだ。
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後で識者に訪ねたところ、この土壁は5.6程度のグレードであるそうだ。
結局、大高巻案も却下となり、リーダーが小高巻きのルート工作を始めた。
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結局、大高巻案も却下となり、リーダーが小高巻きのルート工作を始めた。
事故から約45分経過。既にサブリーダーが警察へ通報し、私が身体評価と応急処置を施した後。
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事故から約45分経過。既にサブリーダーが警察へ通報し、私が身体評価と応急処置を施した後。
事故地点。左が事故発生前で右が発生後。
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事故地点。左が事故発生前で右が発生後。
県警の救助隊が到着し、A氏の収容作業中。右側に写っている、赤と白のチェックの着衣が私。この時点ではまだA氏は呼びかけに応じていた。5分後にホイストでヘリコプターへ収容された。ヘリが去った後、残った5名で自力下山した。
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県警の救助隊が到着し、A氏の収容作業中。右側に写っている、赤と白のチェックの着衣が私。この時点ではまだA氏は呼びかけに応じていた。5分後にホイストでヘリコプターへ収容された。ヘリが去った後、残った5名で自力下山した。
それから4時間後に高瀬ダムへ下山した。その間、警察署からの携帯電話への不在着信が多数入っていたが、実際に鳴動したのはサブリーダーの1回と私の1回だけだった。高瀬ダムも携帯電話は圏外であり、タクシー会社へ連絡するには、この10円玉専用の公衆電話を使う必要がある。
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それから4時間後に高瀬ダムへ下山した。その間、警察署からの携帯電話への不在着信が多数入っていたが、実際に鳴動したのはサブリーダーの1回と私の1回だけだった。高瀬ダムも携帯電話は圏外であり、タクシー会社へ連絡するには、この10円玉専用の公衆電話を使う必要がある。

感想

2021年10月10日朝、長野県大町市の北アルプス、湯俣川沿いの伊藤新道を遡上中の6名パーティ(私motchとkun_puを含む)のうち、1名が旧第一吊橋跡(当時)上流側左岸(下流から見て右)、標高約1480m付近の岩場(通称「ガンダム岩」)付近にて10数m墜落する遭難事故が起こった。
遭難者(以下「A氏」)は約3時間半後に県警山岳救助隊によりヘリコプターへ収容され、県内の病院へ搬送されるも、出血多量により昼前に死亡が確認された。

伊藤新道は、高瀬ダムから約10kmほど奥に進んだ、高瀬川が湯俣川と水俣川とに分岐した地点から始まる。湯俣川に入ってまもなくの所にある噴湯丘から、湯俣川の右岸(下流から見て左)を遡上すること約30分でガンダム岩に到着する。3枚目の写真にある、高さ5mほどの巨大な岩である。
翌2022年の三俣山荘のご関係者による整備前まで、この場所を通過する手段は「ヾ笋硫爾龍洞を水線沿いにくぐる」のが主流で、増水時は「岩右側の土壁を超える」か、「左岸のザレ場を高巻く」かする必要があった。

私たち6名全員が、ガンダム岩は初見だった。事故現場の川面は急流、右岸は垂直の岸壁に阻まれ、左岸は急峻なザレ場であった。
そこで、経験豊富なクライマーであるパーティリーダーのA氏を中心として、メンバー間でルートファインディングを10数分間に渡って協議した。その結果、ガンダム岩を小さく高巻くルートを選択した。その後、フォロワーのビレイによりロープを伸ばしてルート工作を行ったA氏だが、ランニングビレイをかけた岩が突如崩れ、10数m下の岩場へほぼ垂直に墜落した。

事故発生から11分後に県警への連絡を行なうとともに、応急処置を施したものの、複数箇所の骨折や大量出血があると見受けられ、事故から1時間半ほどで意識レベル低下の徴候が顕れ始めた。
県警ヘリコプターへ収容される直前まで辛うじて意識があったものの、収容時に心肺停止状態に陥った。

A氏を除いた5名は、A氏がヘリコプターに収容された後、自力下山を開始した。サブリーダーのみ先行して病院へ、残り4名は管轄警察署で事情聴取を受け、夕方にA氏のご家族(以下「A夫人」)とメンバー5名が搬送先の病院にて合流し、A氏と無言の対面をした。

A夫人から事故報告書の提出を求められたため、メンバー間で協議の上、サブリーダーと私が中心となって報告書を作成し、事故から4日後に第一版を提出した。その後、A夫人による校閲、修正依頼を経て、事故から2週間後に完成させた。

事故から約3週間後、ご対応いただいた警察署と病院へ、A夫人、サブリーダー、私の3名で訪問し、事故報告と、ご迷惑をおかけしたことに対する謝罪を行なった。
私は、そこで交わされた意見を元に内容をまとめ、山岳遭難救助の実態と遭難防止の観点、事故による身体状況や応急処置、救助活動による身体的影響などについて考察した文書を作成し、翌年1月下旬にA夫人に提出した。

以上をもって、本事故の一通りの事後処理は終了となった。
翌年秋に、私とkun_puが伊藤新道を再訪したことで、一区切りとなった。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4806215.html

追記
2023年4月、上記の報告書と考察文書を基に、再度考察を加えた文書を作成した。
https://drive.google.com/file/d/1Ovr1vXeLCuG4QmmcX2nsn1U8hX-i0jcV/view?usp=drivesdk

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体力レベル
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