【遭難事故報告】伊藤新道死亡事故
- GPS
- 12:58
- 距離
- 24.2km
- 登り
- 647m
- 下り
- 661m
コースタイム
- 山行
- 2:55
- 休憩
- 0:01
- 合計
- 2:56
- 山行
- 5:36
- 休憩
- 3:59
- 合計
- 9:35
天候 | 2日間とも快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
乗り合いで2400円 |
コース状況/ 危険箇所等 |
この時点では新吊橋は1本もかかっていなかった。 事故の翌日に新第一吊橋が架橋された。 |
写真
感想
2021年10月10日朝、長野県大町市の北アルプス、湯俣川沿いの伊藤新道を遡上中の6名パーティ(私motchとkun_puを含む)のうち、1名が旧第一吊橋跡(当時)上流側左岸(下流から見て右)、標高約1480m付近の岩場(通称「ガンダム岩」)付近にて10数m墜落する遭難事故が起こった。
遭難者(以下「A氏」)は約3時間半後に県警山岳救助隊によりヘリコプターへ収容され、県内の病院へ搬送されるも、出血多量により昼前に死亡が確認された。
伊藤新道は、高瀬ダムから約10kmほど奥に進んだ、高瀬川が湯俣川と水俣川とに分岐した地点から始まる。湯俣川に入ってまもなくの所にある噴湯丘から、湯俣川の右岸(下流から見て左)を遡上すること約30分でガンダム岩に到着する。3枚目の写真にある、高さ5mほどの巨大な岩である。
翌2022年の三俣山荘のご関係者による整備前まで、この場所を通過する手段は「ヾ笋硫爾龍洞を水線沿いにくぐる」のが主流で、増水時は「岩右側の土壁を超える」か、「左岸のザレ場を高巻く」かする必要があった。
私たち6名全員が、ガンダム岩は初見だった。事故現場の川面は急流、右岸は垂直の岸壁に阻まれ、左岸は急峻なザレ場であった。
そこで、経験豊富なクライマーであるパーティリーダーのA氏を中心として、メンバー間でルートファインディングを10数分間に渡って協議した。その結果、ガンダム岩を小さく高巻くルートを選択した。その後、フォロワーのビレイによりロープを伸ばしてルート工作を行ったA氏だが、ランニングビレイをかけた岩が突如崩れ、10数m下の岩場へほぼ垂直に墜落した。
事故発生から11分後に県警への連絡を行なうとともに、応急処置を施したものの、複数箇所の骨折や大量出血があると見受けられ、事故から1時間半ほどで意識レベル低下の徴候が顕れ始めた。
県警ヘリコプターへ収容される直前まで辛うじて意識があったものの、収容時に心肺停止状態に陥った。
A氏を除いた5名は、A氏がヘリコプターに収容された後、自力下山を開始した。サブリーダーのみ先行して病院へ、残り4名は管轄警察署で事情聴取を受け、夕方にA氏のご家族(以下「A夫人」)とメンバー5名が搬送先の病院にて合流し、A氏と無言の対面をした。
A夫人から事故報告書の提出を求められたため、メンバー間で協議の上、サブリーダーと私が中心となって報告書を作成し、事故から4日後に第一版を提出した。その後、A夫人による校閲、修正依頼を経て、事故から2週間後に完成させた。
事故から約3週間後、ご対応いただいた警察署と病院へ、A夫人、サブリーダー、私の3名で訪問し、事故報告と、ご迷惑をおかけしたことに対する謝罪を行なった。
私は、そこで交わされた意見を元に内容をまとめ、山岳遭難救助の実態と遭難防止の観点、事故による身体状況や応急処置、救助活動による身体的影響などについて考察した文書を作成し、翌年1月下旬にA夫人に提出した。
以上をもって、本事故の一通りの事後処理は終了となった。
翌年秋に、私とkun_puが伊藤新道を再訪したことで、一区切りとなった。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4806215.html
追記
2023年4月、上記の報告書と考察文書を基に、再度考察を加えた文書を作成した。
https://drive.google.com/file/d/1Ovr1vXeLCuG4QmmcX2nsn1U8hX-i0jcV/view?usp=drivesdk
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