【日光】稲荷川七滝沢偵察・アカナ沢遡行・雲竜沢下降
- GPS
- 13:54
- 距離
- 9.9km
- 登り
- 2,301m
- 下り
- 2,301m
コースタイム
天候 | 晴れ時々曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・七滝沢は、大滝の下までは問題なく遡行できる。大滝は左から巻けそうだが、その上流は脆い壁に取り囲まれ、稜線まで詰めることが困難ではないかと思われる。 ・アカナ沢は、2009年の大西さんの遡行図では数々の悪そうな滝が描かれているが、2022年現在では特に難しいところは無い。 ・大鹿落しの詰めは、通常とは異なり右のルンゼからとしたが、記録で読むほど悪いとは感じなかったため、右ルンゼは推奨できる。これを登った後、雲竜沢の源頭をトラバースすれば登山道の2080m付近に出られるはずである。ただし、アカナ沢上部を遡行したいのであれば、大回りとなるため推奨できない。 ・雲竜沢の無氷期の下降は、脆い壁の途中でピッチを切る羽目になり非常に危険であるため、絶対に薦められない。 |
写真
装備
備考 | ・ラバーソール推奨 ・ロープは、雲竜沢の下降がなければ50m1本で十分。雲竜沢を下降するなら120m×2本あるべき。 |
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感想
【計画の経緯】
折角の3連休だが、またしても天気が悪い。新潟県からくるyamakurumiのことも考え、天気が安定しそうな場所の中では新潟に近く、登り応えもありそうな、雲竜渓谷を選択した。
【山行】
○稲荷川遡行
ラッキーなことに車で奥まで入れたので(ここで時間を使っていれば、雲竜沢下降なんてせずに済んだのだが)、林道歩きはせずにすぐに入渓。土石流検知用と思われるワイヤーがあり、いかにも砂防の現場という雰囲気。すぐにゴルジュ状になり、立派な側壁には水が滴り、これが冬には立派な氷柱になるのだなと実感できる。
少し進むと雲竜瀑が見えてくる。でかい。が、左岸には樹林帯もあり、懸垂下降できなくもなさそう…
雲竜瀑を見送るとすぐに胎内岩&胎内滝。その大きさに圧倒される。シャワークライムだと嫌だなとは思っていたが、幸い、滝の右の凹角には水がなく、多少高度感と脆さはあるものの、フリーソロ(ここで時間を使っていれば、雲竜沢下降なんてせずに済んだのだが)。
次第にゴルジュは狭くなり、滝も出てくるが、一番厳しいところにはありがたいことに虎ロープがあり、そこはゴボウ。問題なく七滝沢とアカナ沢の出合に至る。
○七滝沢偵察
時間に余裕があるので、予定通り七滝沢に入ってみることにする。最初の黒岩滝もあわよくば登ろうかと思っていたが、そういう滝ではなかったので、左から巻く。誰がいつ設置したのだろうか、立派な鉄梯子がありありがたい。踏み跡も思った以上に濃い。その上流、暫くはゴーロだが、立派な側壁と始まりかけの紅葉が目を楽しませてくれる。
ゴーロに飽きた頃に七滝沢F2が現れる。これを大滝とする説もあるようだが、小さいのでここでは採用しない。右岸枝沢の滝と相まって、景観はなかなか。最初、右壁を登ろうかと思ったが、左に近づいてみるとこちらの方が易しそうで、tamoshimaリードで登攀。見た目以上に易しく、ロープも要らないほどだった(ここで時間を使っていれば、雲竜沢下降なんてせずに済んだのだが)。
F2が終わるとまたゴーロ。側壁は立派で滝もあり、景観は良いが、本当に逃げ場のない地形である。進んでいくと大滝があり、前衛滝はかなり脆い右を巻き気味に登って、大滝の滝壺へ。35mの立派な滝で、見ごたえはあるし、振り返れば枝沢の滝や市街まで見通せ、ロケーションも素晴らしい。左から巻けそうにも見えたが(ここで時間を使っていれば、雲竜沢下降なんてせずに済んだのだが)、アカナ沢遡行もあるので、暫し堪能してから下降開始。
F2は立木で懸垂下降し、あとはゴーロを歩き、また黒岩滝を右岸から巻いて、アカナ沢出合に戻った。
○アカナ沢遡行
アカナ沢は、超立派なゴルジュの中を流れるが、ゴーロばかりで滝は少なく、何の障害もなく大鹿滝に着く。2009年の大西さんの遡行図と見比べてみると、滝の減り具合に驚かされる。楽に遡行できて嬉しいやら、楽すぎて悲しいやら(ここで時間を使っていれば、雲竜沢下降なんてせずに済んだのだが)。
大鹿滝も、岩が脆い以外は割と快適で、1回ロープを出しただけでスムーズに通過。その先の滝も水流際が快適に登れ、また沢はゴーロとなる。が、枝沢は凄く、絶対登れないCS滝の上に滝を連続させる沢と、大瀑布の鉄鉱泉滝がある沢が連続して合流してくる。
鉄鉱泉滝を過ぎると本沢滝が見えてくる。これもまたでかい滝だが確かに登れそうにも巻けそうにもなく、定石通り大鹿落しを登ることにする。地形的に右のルンゼが楽そうだとわかっていたので、途中で右へトラバースしていくが、これが結構悪かった。最初から右へ行っていたほうが良かったか。右ルンゼに入ってしまえば、大して悪くはなく、順調に登っていく(ここで時間を使っていれば、雲竜沢下降なんてせずに済んだのだが)。最後の尾根へ出るところだけ3m程度、脆い岩のクライミングとなったが、ロープが必要なほどではなく、無事に詰めあがった。
○雲竜沢下降
七滝沢の偵察とアカナ沢の遡行が順調に進みすぎてしまったので、このまま車をデポしておいた霧降高原に向かっても早すぎるであろう。ということで、雲竜沢を下降してみることにする。これが、大失敗であったのだが…
まずは、本沢滝と大鹿落しと鉄鉱泉滝が一望できる景観を楽しみながら尾根を下り、適当なところで沢へ入っていく。最初はゴーロが長く続き、何の変哲もない。右から2つ枝沢が入ると滝が出始め、最初はクライムダウン、次は懸垂下降と、問題なく下っていく。
だんだんとゴルジュは深くなり、立木もなくなって、CSに紐を残置して懸垂下降。ここまでは頑張れば引き返そうであったが、ひやひやしながらハーケンを残置して下った雲竜瀑直前の18m滝は、ロープを抜いたら登り返せない。しかし、雲竜瀑の懸垂下降用残置が見つかったことから、これに従えば下れるだろうと判断し、18m滝のロープは抜く。もう、引き返すことはできない。
雲竜瀑の残置(右岸)にロープをセットし、シャワーを浴びながら懸垂下降していくが、次の残置が見つからない。これはまずいと思い、右岸の灌木帯に入るが、傾斜は急だし、太い灌木はないしで、ピッチを切りやすいところがない。
悩みながら下り、40mくらい下ったところで漸く狭いテラス状の地形が出てきて、親指程度の太さの灌木も複数あったことから、ここでピッチを切る。ロープを引くと、重いながらも少しは動いた気がした。
続いてyamakurumiが懸垂下降してきて、怪しげなセルフビレイをとって、ロープを抜こうとするが、非常に重い。ロープにアッセンダーを付け、2人で何度もジャンプしながら少しずつ引き、1時間くらいかかって漸くロープは抜けた。時間がかかりすぎて、暗くなってしまう。
これまでセルフビレイをとっていた怪しげな灌木を支点とし、2ピッチ目の懸垂下降用にロープをセットし、tamoshimaから下ろうとするが、体重をかけた瞬間灌木が抜け、バランスを崩す。しかし幸いにも下に落ちることはなく、別の灌木2本から独立分散でロープをセットし、改めて下降。相変わらずピッチが切れそうな灌木はない中、下までロープが届いている保証もなく、下まで降りられないのでは、という物凄い不安に駆られながら下っていく。途中で空中懸垂となり、しかも結び目通過まで出てきて、灌木よ抜けるなよ、と祈りながらひやひや下降していくと、幸いにも左側にテラスが出てきて、必死でトラバースをすると、何とかテラスに乗ることができた。これは幸いと、ここでピッチを切るが、ロープは引けない。が、上からロープが引かれたのでyamakurumiが下降を開始するのだろうと思い、ロープからはいったん離れてテラスをさらに左へ進んでみることにする。
テラスを歩き回ってみると、どうやら歩いて滝壺まで降りられそうなことが判明し、少なくとも自分は生還できそうなことが分かって、一安心。しかし、yamakurumiがいつまでたっても降りてこない。時折落石の音が聞こえ、ヘッドライトの光が崖中に見えるばかりである。後で分かったことだが、この時、ロープの回収を考慮して1つだけにした支点が崩壊し、5m程度落下して停止し、別の灌木で支点を作り直していたとのことだった。5mの落下ですんだのが不幸中の幸いだが、生きた心地がしなかったことだろう。tamoshimaが下降中に支点が崩壊しなかったのも幸運だった。
かなり待ったところで漸くyamakurumiが下りてきて、何とかテラスに上がり、2人とも生還できそうと、一安心。しかし、やはりロープは引けず、テラス上では足場が悪いので、ありったけのスリングを連結して、滝下に降りて引っ張ってみることに。tamoshima、yamakurumiの順でトライしたが、一瞬動いた気がした後は一向に引けず、どうにもならないのでロープは10mほどだけ切って回収し、残りは残置。こんな有名な滝にロープを残置するのは不名誉そのものだが、仕方がない。
さて、雲竜瀑は命からがら下降できたが、この下にもクライムダウンは不可な滝があるし、ロープは10m×2本しかない。しかも真っ暗。さっきほどではないが、充分やばい。唯一地形的に巻ける可能性があるとみていた、雲竜瀑下流左岸の斜面へ入ってみると、踏み跡発見、これはありがたい。暗さもあり、時々踏み跡を見失ったが、何とか辿って、雲竜沢の出合まで歩いて下ることができた。今度こそ、助かった。
あとは、生還の喜びを噛みしめながら、ゴーロを歩いて車に戻った。
【総評】
アカナ沢は脆さで有名な沢だが、側壁と滝は圧巻の見応えで、一見の価値がある。かつては困難な滝もあったようだが、2022年時点ではなくなっており、あまり濡れずに遡行可能であるため、紅葉の時期にお薦め。
七滝沢はゴーロが続くものの景観が良く、アカナ沢のついでに見に行くのは良いが、無雪期に稜線まで詰めた記録は見当たらず、雲竜渓谷の最終課題かもしれない。
雲竜沢は無氷期は遡行不能だが、下降も極めて危険なため絶対に薦められない。
【感想】
七滝沢、アカナ沢は景観が良く、不快な場所もなく、とても良かったが、順調すぎて、欲張って雲竜沢を下降したのは失敗だった。今回は生還できて良かったが、次も大丈夫とは限らない。これを教訓として、1ピッチで降りられないと想定される滝の懸垂下降は厳に慎もうと思う。
【備考】
残置したロープは、雲竜瀑が氷結したら回収を試みる予定であるが、それまでの間にもし回収できた方がいらっしゃったらご連絡を頂きたい。
<2023.4.20追記>
2023.1.28にロープは自力回収した。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5133616.html
【感想】
個人的に狂ってると思う沢ヤ筆頭のtamoshimaさんとの顔合わせ山行。
自分もそこそこ好奇心旺盛な方だが、雲龍沢の下降は自分には出てこない発想で、この人には敵わないなと感じた(今回に関しては完全に悪手だったが…)。
日本離れした景色を見られて沢自体はとても楽しかったが、ロープを残置してしまったのは非常に申し訳なく思う。
回収に行かなければならないのは承知しているが、正直もう二度と雲龍瀑は下降したくないので、tamoshimaさんが冬に安全に回収してくれることを祈るばかりです。
壮絶な顔合わせ山行となったが、行きたい沢の志向がかなり近いことが判明してしまったので、変な沢に行くときはまたご一緒できたら嬉しい。
記録にナナイタガレという単語が出てきたが、身延の大春木沢という沢にあるガレ場だそう。kumassiyさんの記録がとても面白いのでおすすめ。文才ありすぎ。そして記録を読んでこの沢には手を出すまいと心に決めました。
https://www.bunanokai.jp/archives/19759
大春木沢にて「百回行ったら一回は死にますねぇ」とtamoshimaさんが言ったそうだが、今回の沢では「10回行ったら1回は死にますねぇ」が聞けたので私は満足です。
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