(旧)東北百名山最難関!津軽半島の袴腰岳に挑む 最終章「昇天」


- GPS
- 06:19
- 距離
- 6.1km
- 登り
- 570m
- 下り
- 570m
コースタイム
天候 | 曇り 気温:スタート12℃、その後は記録する余裕なし |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
砂防工事のため、丸山林道が途中まで再整備されています。車の通行に関してもそうですが、登山口へ歩いて行くためにはどうしても砂防工事現場のど真ん中を歩く必要があるので、通行に関しては必ず業者へ事前に問い合わせ下さい。 相内建設:0174-35-2027 なお令和4年度の工事は10月末までで終了、日曜日は休みとのこと。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
登山口から山頂まで、全編に渡って「猛烈な激藪」です。 大事なのでもう一度言います。 全編に渡って【モウレツなゲキヤブ】です。 楽に歩ける箇所は1ミリもありません。少なくとも「自称ヤブマイスター」くらいの称号と体力が無い限りは安易に入山すべきではありません。 そうなると「残雪期に〜」と考えるかもしれませんが、よく見ると地形はかなり急峻です。恐らくナイフリッジになる箇所もあると思う。それも含めて残雪期に計画するのもかなり慎重になるべきと思いました。 また駐車スペースから登山口まで辿り着くだけでも非常に大変です。(前回はそれで一度撤退している) |
その他周辺情報 | 電波状況:docomo 85% / au 取得エラー / softbank 36% https://chizroid.info/denpa/ex/map?tid=DkWCwBk6hH |
写真
感想
「あいつ、ついにイッちまったな。」「あぁ、そうだな、、。」
自分として、何としてでもケリを付けなければならない山だった。呪縛から逃れたかった。登ってる最中、何度も何度も何度も何度も心が折れかけた。不安だった。帰りたかった。発狂しそうだった。諦めなければ夢は叶うと言うが、諦めないって何?無謀だと思っても続けること?だったら植村直己は正しいの?コロンブスは、、??
山頂に立った時に感じたのは、達成感よりもむしろ恐怖だった。登ってしまったけどこれは本当に良かったのか?開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまっただけではないのか、、?
下山後、車を走らせ、平舘の海が見えた瞬間、とめどなく涙があふれ出た。車の中で大泣きした。自分では全く気付かなかったが、それほど極限の緊張状態だったんだろう、、。
というわけでレコなので詳細情報を書ける範囲で書きます。皆様の安全登山に少しでもお役立て頂ければ幸いです。
■砂防工事について
前回撮った写真から工事業者を特定できたので、事前に電話をして状況を伺うことが出来た。登山がしたい旨を伝えると担当の方は丁寧に色々と教えてくれた。
・R4年度の工事は10月末までで終了、日曜日は休み
・8月の豪雨の影響はあったが工事のために林道は復旧済みで通行可能
・登山、山菜取りの方は結構いて、我々としてそれを止めるものではない
・車は少なくともダンプ等の工事車両が通れるようにしてもらえば駐車も可
・工事は恐らく来年再来年も続くが別途入札になるので別会社になる可能性もある
とのこと。
今回訪れたのは日曜日でしたが、前回同様バリケード的な個所は3ヶ所ほどあったけど全て解放されてました。
■登山口まで
丸山林道を車で登り、前回と同じ登山口約1km手前の駐車スペースに駐車。そこから登山口までは林道が崩壊していて前回大変な思いをしたので、なるべくそこを通らないよう地形図とにらめっこし、一つの秘策を思いついていた。それは崩落地点手前から左手の山に入り、丸屋形岳登山口あたりの林道まで森の中をショートカットするということ。そうすれば崩落地を通らずに先の林道へたどり着けるはず。
と思って実践してみたがやはり現実はそう甘くはなく、進みたい方向は猛烈な笹薮で身動きすら取ることが出来ない状態だったので、少しでも歩けるところを進み、どんどんと目的地から離れることに。さらに土砂によってえぐれた谷も出てきてなかなか対岸に渡れない。結局、かなり上の方で丸屋形岳登山道と合流するところまで来てようやく下ることが出来た。相当な遠回りだった。
というわけで、意図せず丸屋形岳の登山道と登山口も調査することになってしまったのだが、結論から言うと道は全くありません。踏み跡さえない。わずかにピンクテープが残っているだけでした。
逆に言うと、もし丸屋形岳だけを目指すのであれば今回自分が辿ったルートで良いと思う。無理に登山口に行こうとしても難しいのでこのルートで途中の登山道に合流して山頂を目指す方が良い。ただ、さらに上の方の状況は全く分からないけど。
■元林道の状況
崩落地点の手前も奥もそうだけど、元林道とは思えないほど藪化してます。これほど歩き辛い元林道は初めて。場所によっては立って歩くことも出来ず、下の方にある獣道を四つ這いで進むところもあった。今回、丸屋形岳登山口〜町境までは歩いたけどそれ以外の部分(袴腰岳登山口〜丸屋形岳登山口)は歩いてないので状況不明です。
■2つのルート
丸山林道から袴腰岳へ登るルートは、今別町との町境を進む「町境ルート(西)」と、林道途中から登る「林道ルート(東)」の2つがある。町境ルートのほうが古く、後から林道ルートが切り拓かれたので、町境のほうを旧、林道のほうを新と呼ぶ場合もあるらしい。この2つ、どちらを通るか悩んだが、過去レコでは町境ルート(西)のほうの情報として2015年にyama194さんが「ここからなら、普通の山」、2021年に sunaokunさんが「下を見ればまだ道があります」とのことだったので、こちらが本命かと思っていた。
というわけで、町境ルート(西)から登り始めたが、付近の林道も含めて激藪でどこから登り始めたかも分からないくらいで、当然登山道の痕跡など全くない。ピンクテープはかろうじていくつか見つけたのでルートであったことは間違いないんだけど。また激藪に続く激藪で本当に苦労した区間だった。
それに比べて、下山で使った林道ルート(東)は意外にも全区間の半分くらいは薄〜い踏み跡があり、またピンクテープも多数で、(西)に比べて遥かに歩きやすかった。と言っても所々踏み跡は無くなるし、激藪区間で方向感覚も分からなくなる区間もあるにはあるけど。また地形図ではこのルートの登山口のすぐ上が崖マークになってて不安だったけど、その部分は実際には全く崖っぽくもなく、普通にルート通りに歩けました。
■山頂稜線部
東西のルートが合流してから先、南峰の手前あたりでかなりの細尾根がありました。藪でも少し緊張する区間だったけど、残雪期はかなり苦労するんじゃないかな。また南峰〜北峰間は東側に元の登山道が藪化した道(のようなもの)がありますが、かなり崖に向かって傾いてるし、藪も濃いので歩き辛いし危険です。実際すこし歩いてみたけど怖くて歩けなかったので、自分は反対の稜線西側の樹林帯の中を歩きました。かなり足元傾いてますがチェーンスパイク装備だったので普通に歩けました。こっちのほうが安全だと思う。
■袴腰岳登山口〜駐車スペース
林道を50mほど歩くと崩落して無くなってます。そこから左手に沢が始まり、砂防ダムの工事現場まで沢が続いています。基本的にはここを歩くことになります。危険なのは林道直前、沢の源頭部が「ほぼ崖」で、しかも非常に足元が脆くて崩れやすい。そこを登り切らないと林道に上がれないし、登山口まで辿り着けません (行きの場合)。ピッケルあったほうがいいのかな〜。でも脆いしな〜。微妙。自分は下りでしか使わなかったので何とか降りれましたけど、登るのはちょっと苦労するかもしれない。またもちろん、大雨直後は大変危険です。
さらに下ると、工事現場のまさに今工事しているど真ん中を歩くことになります。迂回は出来なさそう。なので事前に業者への確認は必要と思います。
■最善ルート
というわけで今現在の最善のルートをまとめると、
・丸山林道を車で行ける最終地点 (登山口1km手前) まで行く
・工事用作業道を辿って沢に下る
・砂防工事のど真ん中を通過
・沢を遡上
・沢源頭部で脆い崖を登って旧林道に上がる
・登山口から林道(東)ルートで山頂往復
と思われます。
登山口から山頂までは林道(東)ルート一択で間違いないだろうけど、車〜登山口まではもしかしたらまだ開発の余地はあるかもしれない。というのも今回ショートカットを試みたところで沢を進まずに稜線に上がれば、もしかしたらもっと楽に登山口に行けたかも、と思ってる。実はここの稜線方向にピンクテープあったし、後で気付いたけど7月の「第一章」の軌跡ではここを稜線に上がってしばらく進んで丸屋形岳登山口のけっこう近くまで行っていたので。というわけでもし余力がある方、ご確認頂ければ幸いです。
■装備
今回はスキー用ヘルメット&スキー用ゴーグル、ゴアテックスのレイン上下の完全防備で行ったため、体へのキズ等は特になかった。しいて言えばザックが引っ張られ過ぎて鎖骨辺りが痛くなったくらい。物損で言えばチェーンスパイク片足紛失とザックの金具が一ケ所破損した。藪を歩くとどうしても持ち物に傷がついたり壊れたり無くなったりするけど、だからと言って古いものを持っていくのではなく、「命とどっちが大事なの?」という観点で持ち物は決めて欲しい。
その他、手袋、チェーンスパイク、ザックのポケットには何も入れない、ぶら下げない、スマホ等GPS機器を複数台(壊れたり落としたりした際の予備)、予備の食糧、ビバーク用具、スマホバッテリー、ケーブル、ココヘリ、登山届など。
■GPS
自分はどの山行でも基本的にAndroid3台+iPhone1台持っていきます。Androidはdocomo、au、softbankの電波状況記録用だけど、もし1台が壊れた際のバックアップとしての意味合いも強い。今回は3台中2台のGPSが死んでた。これがホントに1台しか持っていなく、しかも故障やバッテリー切れや奈落の底に落とした等でGPSが使えなくなったらと思うと本当に恐ろしい。ここは本当に金に糸目を付けず、最善の準備をお願いします。
■体力
改めて言うまでもありませんが、ヤブでは体力切れ=遭難です。体力低下→思考低下→道迷いに繋がります。特にここのヤブは本当に深いので本当に注意してください。
以上。必ず生きて帰って来て下さい。必ず。生きて。
過去レコ
(旧)東北百名山最難関!津軽半島の袴腰岳に挑む 第一章「挫折」
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4500103.html
(旧)東北百名山最難関!津軽半島の袴腰岳に挑む 第二章「絶望」
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4500104.html
コメント
この記録に関連する登山ルート
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私が新旧東北百名山のうち、登っていない唯一の山、袴腰岳。4年前の9月、遭難者が出る2〜3週間前に、オドシ山ハイキングコースから入り猿ヶ森辺りまで進むも激藪で撤退。下りで道をロストして笹藪(ほぼ竹)の中を迷い、何とか見えた丸屋形岳から自分の位置を把握して何とか下山。下った先の温泉で、強烈な藪漕ぎで脛から出た血を見ながら安堵したのでした。当時はGPSも無く地図とコンパスで挑んだのでしたが、今までで唯一遭難が頭をよぎった山でした。もう残雪期しかないかなと思っていました(^_^;)藪にしろ雪にしろ、薄れていた袴腰岳への意欲を思いだしました。ありがとうございます。
そうですか。minicabさんほどの方でもそんな難しい状況になってたんですね。今回は砂防工事のために車で近くまで行けたのが何といっても大きかったと思います。麓からだと自分には間違いなく無理だったでしょうね。
コメント、大変ありがとうございました。
イッちゃったのね!
何年後…いや何十年後?にチェンスパ拾って来てあげますよ
はい、果てて来ました。(笑)
何だかね、もっと崇高な気持ちにでもなるかと思っていろんな二文字も考えてたけど、全然そんな気持ちにもならず。まだまだ修行が足りないということかな。
出来れば是非回収をお願いしたいです。やっぱ登山もSDGsだべっす。
あと、モバイル4台持参ってのも!
そのおかげで、ハラハラドキドキの報告が読める訳よね。
お疲れ様でした!
確かに策はあった。「頑張る」ということ。(笑)
歩いている間は「こんなとんでもないレコは上げないほうが世の為人の為かも」なんて考えてたけど、そういう自分だって他人様の上げてくれた情報でこうやって歩いてるわけだから、自分だけ登頂して情報上げないってのはさすがにあり得ないかな、と途中から思った。
また情報上げたからってみんなが登るわけではなく、登る人は登るし、登らない人は登らない。morizaemonさんがあんなレコ上げてもみんながそこ歩くわけじゃないし。だったらその「登る人」が少しでも安全になるようにすることが自分のすべきことなのかな、と。
これで東北百名山も89座。残りもがんばるじぇ〜。
ブドウやコクワを探しての道のない、藪漕ぎの経験があり
大変さが分かります。
この山は青森の分県ガイドでも2010年版では紹介されてましたが、このような状況なので2017年版では消えてしまいました (隣の丸屋形岳も同様)。良い山なので色々復活してくれると良いんですけどねぇ。
下山後に涙が出てくる気持ち
わかります
私もそんな涙は何度か経験がありますが
ろくでもない山行ばかりですね
本当にお疲れさまでした
この辺りの山は、一般的な人は登ることができないと思いますが
非一般的な人のための情報として、一つ書いておきますね
対藪用としての手袋は、作業用の革手袋が私はお気に入りです
藪が突き抜けにくく怪我をしにくい
なおかつ滑りにくく、向かってくる藪を掻き分けつつ、掴んで体を進めやすい
人による好き好きがあるので、判断は各個人様にお任せします
あとひとつ、ゴーグルで目を保護するのは、非常に良い選択だったと思います
サングラスでいいだろうと思うかもしれませんが
私は一度、藪の登りでサングラスの上の隙間から藪が目に入り
(登りだと、どうしても顔は下を向き、上目づかいで先を見る)
激痛にもだえながら、その後の山行、帰宅、次の日の通院をした経験があります
幸いに何とか復活しましたが
眼科の先生曰く「あと数ミリで失明したかも」と言われた時はゾッとしました
藪に突入する方は、くれぐれも様々な対策をして
万全な状態で望んでいただきたいと思います
何度も書きますが、本当にお疲れさまでした
ヤマレコ上ではshun-sさんの2018年の捜索登山以来5年ぶりになりますかね。私も今回の登山に当たっては、shun-sさんの情報は何百回と読ませて頂きました。改めて御礼申し上げます。
もしかしたら、自分がこのように詳細情報をネットに上げることに対して懸念を抱く方もいらっしゃるかもしれません。ただ、この山は「あおもり110山」や「東北百名山」に選ばれている名峰であり、どうしても危険を承知で山頂を目指す人間は後を絶たないだろうという現実もあります。であれば、そういう人達にしっかりと現実を伝え、確度の高い自己判断をしてもらうことが大事なのではないかという思いで今回書かせて頂いております。また書く上でも「危険を伝える」という事については最大限配慮したつもりですので何卒ご了承頂ければ幸いです。
サングラスの上の隙間から藪が入ってガリッ、私も経験があります。地元山形の白太郎山に無雪期に登ったときでした。ただその後のヤブ歩きもサングラスで何とかなってましたが、ここは本当に何ともならなかったですね。7月にオドシ山ルートで登った際に、顔からサングラスが無くなってることさえしばらく気付かないくらいの激藪でしたから。ちなみに shun-s さんのときは竹の子平まで行けると書いてありましたが、今年7月に行った際には尾上で限界でしたので、山情報をそのように修正させて頂いてます。
というわけで、今回私が無事戻って来たのも皆さまの情報のおかげであり、本当にそれ以上のものはありません。何度も書きますが、改めて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。それと今後山頂を目指される方、くれぐれもご注意くださいませ。
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