御嶽山噴火遭遇顛末
- GPS
- 05:15
- 距離
- 4.0km
- 登り
- 881m
- 下り
- 143m
コースタイム
- 山行
- 2:59
- 休憩
- 2:11
- 合計
- 5:10
天候 | 晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
Sさんの車で4名同乗した |
写真
感想
御嶽山噴火に際して現場がどのような状況であったのかを記録しておく必要があると考え、本件をできるだけ詳細に記録します。
なお、いまだ現場では行方不明の方、また心肺停止の方もおられ救助活動が実施されている中、できるだけ多くの方が少しでも早く発見または回復に向かわれ、救助活動されている方々の安全を願ってやみません。
1 噴火日時
平成26年9月27日(土) 11:53AM
2 噴火当時の私たちの場所
御嶽山王滝頂上山荘北東約200mまごころの塔前
3 噴火遭遇者
4名(会社同僚(S氏、M氏、I氏)3名及び私)
4 経緯
(1)噴火当時、爆発音がボン、ボンとして噴煙が上がりカメラで1枚撮影後、黒煙(いわゆる低温の火砕流)が当方に向け迫ってきたため、S氏は王滝小屋方面へ私はまごころの塔に向け退避した。まだM氏とI氏は山道にいたため、「走れ」と呼びかけ当方に呼び寄せた。
(2)噴火口に向かって右から私、M氏、I氏の順番でまごころの塔基礎部分に頭をつけひざまずくとすぐに黒煙に巻かれた。
(3)黒煙に包まれ全く何も見えない。火山灰が口に入るのでタオルで口を覆うがすぐに灰まみれになる。とにかく息が苦しい。
(4)熱風が30秒から1分程度、時間をおいて3回以上きた。息ができないほど熱くて仕方がないので息を止めた。あれが長時間続けば息ができず死んでいた。
(5)火山灰を含んだ強風が吹き石が周囲にゴトゴトと音をたて落下していた。背中に背負っているザックに1回、ドスッと石が当たる。ザックを頭部保護のためかぶろうとしたこともあったが、もしそうしていたら背中にダメージを負ったかもしれない。
(6)その後、小石が雨のように降った。とにかく頭を両手で覆い保護した。時折冷たい風が吹き始め息がしやすくなる。
(7)目をつぶっているため何も見えないので、2回安否確認のため声を掛ける。M氏とI氏からは応答あるがS氏からは反応なし。
(8)「おーい」と呼ぶ声がする。I氏がまず反応しS氏が呼んでいるのがわかる。「早く小屋まで来い」と呼びかけるため、初めてここで目を開けると周囲はうっすら明るく王滝小屋方面が見える。移動を開始するが、灰が30cmほど積もり足が沈んでとにかく歩きつらい。小屋までの道中、周囲に何度も石が落下している。
(9)王滝小屋には既にたくさんの方が避難していた。当初は50名程度だが少しづつ増えてきた。水とタオルを小屋の方からもらいありがたかった。
(10)小屋内は比較的落ち着いておりパニックになる方もおらず冷静に皆が待機している。避難当初、小屋の北側にいたが石が飛んできてガラスに当たると危険だから南へ移動して下さいと指示があり移動する。そのうち、屋根にゴツゴツと石が当たり始め小屋内は騒然となる。危険なので下の階へ移動するよう指示あり。皆、粛々と指示に従い、移動は整然と行われる。
(11)そこでしばらく待機していると出所不明の下山指示があった。続々と下山開始する人が多いが、石が飛んできており危険だし下山指示もデマの可能性もあると判断ししばらく待機する。再度、別パーティーの方が山小屋の方に下山指示の確認を取ったところ、王滝村役場からの下山指示とのこと。下山も危険だが小屋に留まる方が危険であるという指示内容のため、下山開始。
(12)下山途中でバラバラになると危険なので、当方パーティー4名、親子3名、30歳男1名の8名で固まって下山する。その直後、30歳男1名(M氏)が右足首をひねったため移動速度が落ちる。当方パーティーにも左足大腿部に噴石を受け歩行困難になっていたI氏がいたため、当方パーティーのM氏に先に下山するよう依頼する。親子3名の女性(母)が右足をひねったM氏に自分の使っていた足首のサポーターとストック2本を貸し、当方パーティーS氏が使用していた登山靴右を貸すと何とか歩行可能とのことで下山を開始した。私はM氏のザックを担いで下山。移動速度は上がらないので親子3名の方には先に下山していただくこととし、私、M氏、S氏の3名で下山。一口水の所で、王滝小屋従業員のA女史と合流する。
(13)途中何度も休憩をしお互いに励ましあう。山頂付近からは白い煙が立ち昇り、時折、何度もドーンドーンと噴火する音が聞える。しばらくすると上の方に石がバラバラと降り注ぐ音がしていた。当たったら死ぬかもと思ったが不思議と焦らなかった。
(14)あかっぱげまで到着し生還を確信した。
(15)田の原駐車場付近の砂利道1kmは軽トラックで移動させてもらいすごく助かった。軽トラ乗車時に山荘のA女史と別れた。山に詳しいA女史のおかげでとても安心でき心強かった。
(16)駐車場は警察や消防車両が複数台停まっていて騒然としている。負傷有無を確認される。負傷者は救急車やマイクロバスで木曽病院まで搬送されている。手を洗いお茶をもらう。右足負傷し一緒に下山したM氏と別れ、彼はマイクロバス方面へ移動していった。
(17)ようやくザックを降ろし着替えをしたが、体中が火山灰で白く薄汚れている。山は雲に隠れているが、消防のやり取りを聞いているとまだ下山してくる方がいるらしい。
(18)I氏は左足大腿部打撲のため木曽病院へ搬送されたとのこと。残り3名は負傷ないので駐車場でしばらく休憩後、I氏を迎えに木曽病院へ移動開始(約40km)。
(19)病院到着、騒然としている。私を含め3名も受診するよう指示され、レントゲンを撮影する。異常ないが、火山灰を大量に吸い込んでいるため、咳がしばらく続くとのこと。今後、息苦しくなった場合はすぐに病院へ行くよう指示される。
(20)I氏は診断の結果、喉がヤケドしている可能性があるらしく、救急車で松本の病院まで搬送されるとのこと。本人と面会するが、松本には奥さんが来るらしいので私たちは帰宅することにした。病院玄関前で朝日新聞記者1名の取材をいきなり受けるが早く帰りたいのでとてもイライラした。
(21)帰宅途中の車中で、なぜ今回無事だったのかを話すが結局、運が良かったということだけしかないととりあえず互いの無事を確認した。
(22)22:10帰宅する。家族の出迎えを受け、すでに夕飯が用意されていてホッとした。シャワーを浴び夕食を摂りながらテレビを見ていると噴火直後の映像が流れている。あの黒煙の中にいてよく助かったなと思い返した。
(23)翌日、出勤する。体調は悪くないがセキとタンが多い。セキをすると鉄、血の味がする。
5 時系列
0713 登山開始
1008 剣ヶ峰着 1140下山開始
1153 噴火 1218頃避難開始
1220 小屋着 1330下山開始
1700 田の原駐車場着 1730発
1830 木曽病院着 1930発
2210 自宅着
6 王滝小屋から田の原まで
火山灰は八合目避難小屋付近にはほとんど積もっていない。途中、負傷などで動けない方はいない。ただし、山頂昼食の際にご一緒した山梨から来られた60歳代のご夫婦は私たちよりも10分ほど早く下山されたが王滝小屋まで会っておらず、小屋内に避難もされていなかった。下山する際に剣ヶ峰頂上小屋でお土産を買ってトイレに行くといっておられたので、もしかすると噴火当時、頂上小屋におられたかもしれない。お名前を伺っていないので詳細はわかりませんが、ご主人は眼鏡の上にオーバーグラスをしておられました。御嶽の前には唐松の八方池に行かれたとおっしゃっておられました。本当にご無事をお祈りしております。
7 噴火総括
周囲が真っ暗になる、火山灰が口に入り息苦しい、熱風で息ができない、噴石が止まらない、地鳴り(地面下を何かが動いている得体の知れない怖さ)と雷。
8 さいごに
まだ下山されていない方々の無事なご生還を本当にお祈りしてます。私たちが接触した方で安否不明なのは、山頂で別れた山梨のご夫婦2名だけですが、お心当たりのある方で当時の詳細につきましてご不明な点がございましたら、当方までお問い合わせ下さい。
なお、コメントをいだだいてもお返しできないと思いますが、すみません御了承下さい。
同じ山を登るものとして、他人事には思えないです。私も10月入ったら家族4人で紅葉を見に行こうと計画を立てていたところでした。私の娘は小4です。今現在小5の女の子の生還を待たれているご家族がいるようですし、、、
denemonさん、お疲れのところ、詳細にわたる貴重な体験談の投稿、ありがとうございます。貴殿の勇気と思いに感謝するとともに、貴殿及び御嶽山に関する他の投稿者の方々の行動を支持したいと思います。また、今回お亡くなりになられた方々に対してはご冥福をお祈り申し上げます。こんなことってあるんだなと、正直ショックを隠せません。お亡くなりになられた方々は見知らぬ方々とは言え、仲間を失った感じがして、非常に残念な気持ちでいっぱいです。
そして、危険をかえりみず救助活動に従事されている皆様、またその他の関係する作業に従事されている方々にも感謝の意を表したいと思います。疲労と緊張の中、何かと大変だとは思いますが、何とか頑張ってきただきたいと思います。
私自身、今回のこの噴火のことをしっかりと頭に焼き付け、教訓とし、これからの登山活動を進めていきたいと思います。
まごころの塔で噴火に遭遇したということは直ぐ真横で大噴火が起きていたということですね。
お疲れの中、レコのアップ本当にありがとうございます。
denemonさんのパーティーが全員生還できたのは冷静な判断の結果だったと、詳細なレポートを拝見して思いました。
頭が下がります。本当にお疲れ様でした。
あのような自然災害のなか、パーティー全員無事に下山されたのですね。無事でよかったです。
11時52分八丁ダルミの画像は貴重ですね。
私も眠くなければ行ってるはずでした
山頂と八丁ダルミ、もっとも被害の多い場所からの生還
テレビではほんの少し上で倒れてる方たちがいますが
ほんの数分の差で大きく変わりますね。
denemonさんこんばんは。
ただただ驚きました。まさか噴火に直面されていたとは…。
とにかくご無事で本当に安心しました。
でもまだ手放しでは喜べないですよね。鉄(血?)の味のする咳…不安です。
火山灰で傷が付いているのでしょうか。
くれぐれも無理はせずにお大事にしてください。
こちらの 登山コースは 噴火時 火口が登山道が500メートル近くにあった場所があると伺いました。ガスや噴石 被害負傷者の多い中 貴重な体験 載せていただいたことに感謝します。体験者しかわからない事を伝えることにより 事故予防にもなり 次に繋がります...生かされた方には役目があると思います。
お体もですが 心も 休んでくださいませ。
行方不明の方のご親族の心配は計り知れません。最後に、お亡くなりになった方々の儀冥福をお祈りいたします。
denemonさん。
はじめまして。
九州在住のmaltenと申します。
まずは、無事に帰ってこられて何よりです。
九州では阿蘇山や桜島がたまに噴火するので、ニュースを最初聞いた時は「そのくらいのレベルかな?」と思っていましたが、今、思えば飛んでもない事でした。
あの中でCLやメンバーの的確な判断があり、多少の運にも恵まれたことで、このようなレポートを読ませていただいていると感じています。
貴重な体験を詳細に記述して頂き、感謝致します。
ありがとうございました!
ありのままのレポート…ただただ、生還されたことで一安心です。
何も言葉が出ません。
「生命」あっての「登山」です。
本当につらい投稿ありがとうございました(._.)登山は自己満足なのか、この噴火で疑問になっていました。自分もなんで登ってるんだろうと思った登山もありました🙍でもそれがささやかな癒しでもあり、生きる励みでもあり、本当に人それぞれだと思います。私は病んでた心が登山で助けられました。登山は迷惑をかけるのか?なら家にいて携帯ゲームしてるほうがいいと言う人もいました😢
人それぞれの考え方ですが、私は今回
被害に遭われた方と同じ気持ちです。私も日にちがあえば御嶽山に登ってたし10月4日に登る予定でした😢
自衛隊の方々の日々の訓練、心意気には本当に凄いと感じました。
登山は気軽では登りません。
今までもこれからも。
捻挫した男性にサポーターを貸したものです。あの後、皆さん無事下山されたんですね。先に下山させていただいたので、ずっと気になっていました。
一つだけ訂正させてください。私達は親子ではなく、友人同士です。紛らわしいあだ名と、身長差からそう思われたのかな?と、思いますが、実は同級生です。
とにかく、本当にご無事でよかったです。このコメントがお目に止まらないかもしれませんが、思わず書き込みさせていただきました。
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