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記録ID: 5236772
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
東海

【奥美濃】徳山から能郷白山(ゴンニョの道)

2023年03月04日(土) [日帰り]
情報量の目安: S
都道府県 福井県 岐阜県
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GPS
--:--
距離
20.5km
登り
1,960m
下り
1,966m

コースタイム

日帰り
山行
12:10
休憩
0:30
合計
12:40
5:10
70
本郷望郷広場
6:20
180
村平
9:20
100
11:00
50
11:50
12:20
30
12:50
140
15:10
120
17:10
40
村平
17:50
本郷望郷広場
天候 晴れ時々曇り
過去天気図(気象庁) 2023年03月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
・ 徳山ダム以北の国道417号線の冬季通行止めは3/3(金)に解除済み(ただし,奥の方の林道塚線はまだ通行止め中)。
・ 本郷カンタク隧道の西口付近にある本郷望郷広場に駐車。水没した本郷地区の石碑と白山神社跡地があり,広い駐車場がある。
コース状況/
危険箇所等
 能郷白山への一般的な登路は,現在ではほぼ能郷からの能郷谷ルートや温見峠ルートのみとなっているが,かつては山を一つ隔てた旧徳山村(現在は徳山ダムにより水没)からも同村の住民たちによって登られていたと言われている。資料から推測するに,三等・村平(△881.2m),三等・鴨(△1212.3m),磯倉(P1541m)を経由する長大な尾根が登路であったと思われる。かつては白山権現参りの道,通称「ゴンニョ」と徳山村民に呼ばれており,現在は徳山ダムによる水没によって失われてしまったこの往古の信仰の尾根を,再び辿ってみようというのが今回の山行。令和のゴンニョ参りの結果やいかに。

【ルート状況】
・ 三等・村平(△881.2m)までは雪はほとんど残っていない。それ以降は雪がつながり始めるが,比較的よく締まっているのでツボ足で歩ける(ただし,午後になり気温が上がると沈み込み始めるため,ワカンは持っていたほうが無難)。
・ 基本的に全区間,正規の登山道のない藪尾根だが,三等・鴨(△1212.3m)の手前のP1037m付近までは藪がほとんどなく,雪がなくてもほぼ問題なく歩ける。それ以降の区間は,雪が解けた箇所に笹やシャクナゲなどの濃い藪が露出しているのが見受けられたため,無雪期は濃い藪に包まれている様子。
・ 総じて致命的な悪場はないが,念のため注意が必要な箇所は,〇暗・村平(△881.2m)の北側の露岩地帯,P1394mと磯倉の間にある痩せ尾根区間,0訌卷面未旅点禝渕侈漫,呂曚榿根通しに獣道がありそれを辿るが,両側が地味に切れ落ちているため,木の根を掴んで慎重に通過。△呂舛腓辰箸靴織淵ぅ侫螢奪絃になっており,雪庇も出ているため注意。また,無雪期はシャクナゲが密に茂る岩峰になっていると思われ,雪が切れると難渋するかもしれない。は北面のため雪が硬く,特に下り注意で,アイゼン・ピッケルがあったほうが無難。
本郷望郷広場の白山神社跡地(能郷白山山頂の奥宮に対し,これは里宮にあたるわけだが)で山行の無事を祈願した後,広場から50mほど戻ったところの斜面にあるアルミハシゴから尾根に取りつき,暗闇の中を登っていく。登り出しでは雪はほとんど残っていない。
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本郷望郷広場の白山神社跡地(能郷白山山頂の奥宮に対し,これは里宮にあたるわけだが)で山行の無事を祈願した後,広場から50mほど戻ったところの斜面にあるアルミハシゴから尾根に取りつき,暗闇の中を登っていく。登り出しでは雪はほとんど残っていない。
鉄塔通過。
明るくなってから気が付いたが,比較的新しいピンクテープが。もしかして三等・鴨まで続いているかも? と思ったが,三等・村平の手前で終わっていた。マーキングの目的は不明。
明るくなってから気が付いたが,比較的新しいピンクテープが。もしかして三等・鴨まで続いているかも? と思ったが,三等・村平の手前で終わっていた。マーキングの目的は不明。
三等・村平(△881.2m)に到着。この辺りまで来ると,雪がつながり始める。実は,「点の記」によると,このピークの三角点の俗称は「ゴンニョ」。明らかに白山権現参りの道(ゴンニョ)に由来する俗称だ。ここで南西の小尾根から登ってくる旧来のゴンニョの道(現在は徳山ダム湖のためトレース困難)と合流し,本格的な「ゴンニョ参り」の始まりとなる。
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三等・村平(△881.2m)に到着。この辺りまで来ると,雪がつながり始める。実は,「点の記」によると,このピークの三角点の俗称は「ゴンニョ」。明らかに白山権現参りの道(ゴンニョ)に由来する俗称だ。ここで南西の小尾根から登ってくる旧来のゴンニョの道(現在は徳山ダム湖のためトレース困難)と合流し,本格的な「ゴンニョ参り」の始まりとなる。
白谷左岸尾根から日が昇る。あれは高層(△1112.0m)のあたりかなぁ。
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白谷左岸尾根から日が昇る。あれは高層(△1112.0m)のあたりかなぁ。
雪解けが進んでいるが,大きな雪庇が連続して残っており,厳冬期の積雪の多さを物語っている。
雪解けが進んでいるが,大きな雪庇が連続して残っており,厳冬期の積雪の多さを物語っている。
三等・村平(△881.2m)から少し北へ下ると,ちょっとした露岩地帯が現れる。左右が地味に切れ落ちており,残雪が凍り付いていることもあり,木の根を掴みながら慎重に通過した。
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三等・村平(△881.2m)から少し北へ下ると,ちょっとした露岩地帯が現れる。左右が地味に切れ落ちており,残雪が凍り付いていることもあり,木の根を掴みながら慎重に通過した。
前方にひときわ白い峰が浮かび上がった。磯倉の一つ南の小ピークだ。この尾根を辿った徳山の人々も,まずはこの山を目標に能郷白山を目指したに違いない(この時点では,まだ能郷白山自体は見えない)。
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前方にひときわ白い峰が浮かび上がった。磯倉の一つ南の小ピークだ。この尾根を辿った徳山の人々も,まずはこの山を目標に能郷白山を目指したに違いない(この時点では,まだ能郷白山自体は見えない)。
左手の眼下には,昨年12月に歩いた漆谷の深い谷間が見える。今はまだ雪に埋もれているだろう。懐かしいなぁ。
左手の眼下には,昨年12月に歩いた漆谷の深い谷間が見える。今はまだ雪に埋もれているだろう。懐かしいなぁ。
あっ,漆谷本流に滝が見えるな…。二段の滝で,結構大きそうだ。また雪が解けたら行ってみよう。
あっ,漆谷本流に滝が見えるな…。二段の滝で,結構大きそうだ。また雪が解けたら行ってみよう。
日が昇るにつれて,ガスが晴れ,青空がのぞき始めた。
日が昇るにつれて,ガスが晴れ,青空がのぞき始めた。
雪はよく締まっており,ワカンなしでも快調に進める。ただ,ところどころで10cmほどの新雪が吹き溜まっていた。おとといの悪天候で雪が降っていたようだ。
雪はよく締まっており,ワカンなしでも快調に進める。ただ,ところどころで10cmほどの新雪が吹き溜まっていた。おとといの悪天候で雪が降っていたようだ。
奥に進めば進むほど,立派なブナの木が現れ始め,心が浮き立つ。
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奥に進めば進むほど,立派なブナの木が現れ始め,心が浮き立つ。
三等・鴨(△1212.3m)の手前の,P1037付近。写真が分かりにくいが,大きな窪地があり,無雪期は小さな池になっていそうだった。「美濃徳山の地名」によると,三角点「鴨」の名前の由来は,「むかし池があり,鴨がいた」ことだそうで,「ほんまかいな…」と思っていたけれど,もしかしてこれのことか!? と一人で色めき立った。
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三等・鴨(△1212.3m)の手前の,P1037付近。写真が分かりにくいが,大きな窪地があり,無雪期は小さな池になっていそうだった。「美濃徳山の地名」によると,三角点「鴨」の名前の由来は,「むかし池があり,鴨がいた」ことだそうで,「ほんまかいな…」と思っていたけれど,もしかしてこれのことか!? と一人で色めき立った。
この辺りまで来ると,雪が解けて地面が露出した箇所に濃い笹藪が見られるようになった。三等・鴨の手前から能郷白山までは,恐らく濃密な藪に包まれているのだろう。徳山の人々が権現参りのために能郷白山まで通っていた当時は,切り分け道があったのだろうか(でないと,とても日帰りで行き来できると思えない)。
この辺りまで来ると,雪が解けて地面が露出した箇所に濃い笹藪が見られるようになった。三等・鴨の手前から能郷白山までは,恐らく濃密な藪に包まれているのだろう。徳山の人々が権現参りのために能郷白山まで通っていた当時は,切り分け道があったのだろうか(でないと,とても日帰りで行き来できると思えない)。
三等・鴨への急登を喘ぎ登っていく。うーん,とっても良いブナ。
三等・鴨への急登を喘ぎ登っていく。うーん,とっても良いブナ。
あっ,あれは,能郷からの通常ルートが通っている前山! ガスかぶってるな…。晴れてくれるといいなぁ。
あっ,あれは,能郷からの通常ルートが通っている前山! ガスかぶってるな…。晴れてくれるといいなぁ。
右手眼下の白谷も,徳山ダムによって閉ざされてしまった谷の一つ。ところどころの枝谷に大きな滝が落ちているのが望見され,興味をそそられる…。
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右手眼下の白谷も,徳山ダムによって閉ざされてしまった谷の一つ。ところどころの枝谷に大きな滝が落ちているのが望見され,興味をそそられる…。
あそこにもでかい滝があるな…。うーん,気になる。ダム湖で閉ざされているから,なおさら。
あそこにもでかい滝があるな…。うーん,気になる。ダム湖で閉ざされているから,なおさら。
ときおり立ち止まって休憩し,大きなブナの木をつくづくと眺めながら,ぼちぼちと急登を登っていく。
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ときおり立ち止まって休憩し,大きなブナの木をつくづくと眺めながら,ぼちぼちと急登を登っていく。
素敵な尾根じゃないですか。
素敵な尾根じゃないですか。
三等・鴨ももうすぐだ。
三等・鴨ももうすぐだ。
三等・鴨の南側直下に来ると,ここにも窪地が。このあたりは池ができそうな地形が多いな。「美濃徳山の地名」にあるとおり,本当に池があって鴨がいたのかもしれない。
三等・鴨の南側直下に来ると,ここにも窪地が。このあたりは池ができそうな地形が多いな。「美濃徳山の地名」にあるとおり,本当に池があって鴨がいたのかもしれない。
三等・鴨(△1212.3m)に到着。さすが徳山の秘境三角点の一つ,マーキングもプレートも全くなかった。今度は無雪期に藪を漕いで訪問して,三角点と対面してみたいな。
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三等・鴨(△1212.3m)に到着。さすが徳山の秘境三角点の一つ,マーキングもプレートも全くなかった。今度は無雪期に藪を漕いで訪問して,三角点と対面してみたいな。
さあ,能郷白山まで,まだ先は長い。穏やかにうねる尾根を,さらに北へ。
さあ,能郷白山まで,まだ先は長い。穏やかにうねる尾根を,さらに北へ。
立派なブナ巨木。
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立派なブナ巨木。
次第に無木立の雪面が広がる区間が多くなってきた。高度が上がってきたせいだろうか,それとも白谷側からの過去の伐採のせい?
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次第に無木立の雪面が広がる区間が多くなってきた。高度が上がってきたせいだろうか,それとも白谷側からの過去の伐採のせい?
ブナの疎林がたたずむ雪斜面を登っていく。
ブナの疎林がたたずむ雪斜面を登っていく。
また一つ急登を登り終えて小ピークに立ち,やれやれと前方を伺うと…あっ。
また一つ急登を登り終えて小ピークに立ち,やれやれと前方を伺うと…あっ。
あの特徴的な尖りは,見間違えようのない,磯倉! やっと磯倉を視界に収めた。
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あの特徴的な尖りは,見間違えようのない,磯倉! やっと磯倉を視界に収めた。
能郷白山の前衛峰である磯倉が見えたことで逸る心を抑えながら,目の前の雪の丘を登っていく。やっぱりアップダウン多いな…。
能郷白山の前衛峰である磯倉が見えたことで逸る心を抑えながら,目の前の雪の丘を登っていく。やっぱりアップダウン多いな…。
いや,それにしても,素敵な雪の丘陵。
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いや,それにしても,素敵な雪の丘陵。
振り返る。
心惹かれる雪の丘陵を夢見心地で登り切ると…ついに!
心惹かれる雪の丘陵を夢見心地で登り切ると…ついに!
能郷白山が見えた! 長い長い尾根の果て,ついにここまで来た。
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能郷白山が見えた! 長い長い尾根の果て,ついにここまで来た。
端整な白銀のピラミッド,磯倉。
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端整な白銀のピラミッド,磯倉。
そして,重厚な山体を横たえた,堂々たる能郷白山。
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そして,重厚な山体を横たえた,堂々たる能郷白山。
まずは磯倉を目指して,前進。
まずは磯倉を目指して,前進。
って,あれ…あそこ,ヤバくないか? 岩が露出して岩峰のようになっており,明らかに尾根が細くなっている。さすが南面に険しい岩場(昨秋に探索済み)を擁する磯倉,一筋縄では行かないようだ。
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って,あれ…あそこ,ヤバくないか? 岩が露出して岩峰のようになっており,明らかに尾根が細くなっている。さすが南面に険しい岩場(昨秋に探索済み)を擁する磯倉,一筋縄では行かないようだ。
恐る恐る狭いコルから急登を這い上がると,やはりちょっとしたナイフリッジになっていた。でも思ったより大分マシで,少し安心。ピッケルとアイゼンを装着し,慎重に通過していく。
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恐る恐る狭いコルから急登を這い上がると,やはりちょっとしたナイフリッジになっていた。でも思ったより大分マシで,少し安心。ピッケルとアイゼンを装着し,慎重に通過していく。
痩せ尾根通過中。
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痩せ尾根通過中。
痩せ尾根に続いて,イソクラの南ピークへの急登。ここが結構急で疲れる。
痩せ尾根に続いて,イソクラの南ピークへの急登。ここが結構急で疲れる。
眼下には雪に埋もれた磯谷源頭。あのどこかに,ベロリ穴が…。
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眼下には雪に埋もれた磯谷源頭。あのどこかに,ベロリ穴が…。
急登を見下ろす。
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急登を見下ろす。
急登を登り切ると,そこは霧氷の花咲く天国でした。
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急登を登り切ると,そこは霧氷の花咲く天国でした。
霧氷の木々と,その向こうの磯倉。
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霧氷の木々と,その向こうの磯倉。
そして,息を呑む風景が。
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そして,息を呑む風景が。
美しすぎる,能郷白山と磯倉が並び立つ光景。ここまで歩いてきて良かったと,心から思えた。
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美しすぎる,能郷白山と磯倉が並び立つ光景。ここまで歩いてきて良かったと,心から思えた。
左手眼下には,旧徳山村の山々が広がる。
左手眼下には,旧徳山村の山々が広がる。
徳山ダムも良く見える。あそこから来たんだなぁ。
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徳山ダムも良く見える。あそこから来たんだなぁ。
磯倉の南に広がる台地は,一度来てみたかったのだが,本当にいいところ。一種の天国です。
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磯倉の南に広がる台地は,一度来てみたかったのだが,本当にいいところ。一種の天国です。
この美しい雪面をこれから歩くのだと思うと,感謝しかない。
この美しい雪面をこれから歩くのだと思うと,感謝しかない。
小さな別天地,磯倉南台地。
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小さな別天地,磯倉南台地。
そして,磯倉の真っ白な尖りの,その先端へ。
そして,磯倉の真っ白な尖りの,その先端へ。
磯倉に到着。背景はもちろん能郷白山。
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磯倉に到着。背景はもちろん能郷白山。
歩いてきた磯倉の南台地を見下ろす。
歩いてきた磯倉の南台地を見下ろす。
足元から,冠山方面へと延々と続く稜線。
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足元から,冠山方面へと延々と続く稜線。
先日登ったアラクラと,若丸山も良く見える。
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先日登ったアラクラと,若丸山も良く見える。
南西には,ひときわ尖って,蕎麦粒山。
南西には,ひときわ尖って,蕎麦粒山。
さあ,能郷白山へのラストラン。でも,この区間の往復が,きついんだよなぁ…(能郷白山〜磯倉自体は何年か前に能郷谷から登ったことがあるので,その時に身を持って味わっている)。
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さあ,能郷白山へのラストラン。でも,この区間の往復が,きついんだよなぁ…(能郷白山〜磯倉自体は何年か前に能郷谷から登ったことがあるので,その時に身を持って味わっている)。
磯倉から急降下。北面なのでところどころ硬い斜面があり,アイゼンを効かせながら慎重に下る。
磯倉から急降下。北面なのでところどころ硬い斜面があり,アイゼンを効かせながら慎重に下る。
遠のいていく磯倉。やっぱり磯倉は絵になる山だ。
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遠のいていく磯倉。やっぱり磯倉は絵になる山だ。
フィルムクラストがきらきら光る斜面を,能郷白山へ。
フィルムクラストがきらきら光る斜面を,能郷白山へ。
たおやかな能郷白山の山体はやはり大きく,取りついてからの登りが長い。山頂台地に着いてからも,また長い…。
たおやかな能郷白山の山体はやはり大きく,取りついてからの登りが長い。山頂台地に着いてからも,また長い…。
そしてようやく,能郷白山神社の奥宮とご対面。残念ながら積雪期のためブルーシートに包まれているが,深く頭を下げて合掌礼拝し,ゴンニョ参りの宿願を果たした。あとは無事下山して,徳山の白山神社(跡地)にお礼参りをするだけだ。
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そしてようやく,能郷白山神社の奥宮とご対面。残念ながら積雪期のためブルーシートに包まれているが,深く頭を下げて合掌礼拝し,ゴンニョ参りの宿願を果たした。あとは無事下山して,徳山の白山神社(跡地)にお礼参りをするだけだ。
能郷白山山頂。
白山もよく見える(自分のカメラの貧弱ズームではこれが限界ですが…)。手前の山は荒島岳かな。
白山もよく見える(自分のカメラの貧弱ズームではこれが限界ですが…)。手前の山は荒島岳かな。
山頂雪庇と温見峠への尾根,そしてその向こうの姥ヶ岳,銀杏峰・部子山。
山頂雪庇と温見峠への尾根,そしてその向こうの姥ヶ岳,銀杏峰・部子山。
冬の平家平・姥ヶ岳も登ってみたい山の一つだが,アプローチがねぇ…。
冬の平家平・姥ヶ岳も登ってみたい山の一つだが,アプローチがねぇ…。
この尾根もきれいねぇ,と地図で調べると,白谷(温見川の支流のほう)に落ち込む尾根でした。
この尾根もきれいねぇ,と地図で調べると,白谷(温見川の支流のほう)に落ち込む尾根でした。
山頂には前山方面からいくつかトレースがついており,何人かの方が登られていたようだ。山頂で休んでいる間も,一人登って来られ,しばらく立ち話をした。
山頂には前山方面からいくつかトレースがついており,何人かの方が登られていたようだ。山頂で休んでいる間も,一人登って来られ,しばらく立ち話をした。
さあ,下山も長い。名残惜しいが,急がないと。何度も振り返りつつ,能郷白山を後にする。
さあ,下山も長い。名残惜しいが,急がないと。何度も振り返りつつ,能郷白山を後にする。
磯倉へリターン。
磯倉へリターン。
磯倉の急斜面,やっぱキツイ…。
磯倉の急斜面,やっぱキツイ…。
磯倉のピークに再び立ち,能郷白山を振り返る。(能郷白山の山頂でお会いした方も,磯倉を目指して登ってくるのが見えた。)
磯倉のピークに再び立ち,能郷白山を振り返る。(能郷白山の山頂でお会いした方も,磯倉を目指して登ってくるのが見えた。)
トンガリ磯倉さん,さようなら。
トンガリ磯倉さん,さようなら。
磯倉南台地から,磯倉と能郷白山を何度も振り返りながら,自分のトレースを引き返していく。
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磯倉南台地から,磯倉と能郷白山を何度も振り返りながら,自分のトレースを引き返していく。
さあ,戻ろう。
痩せ尾根も慎重に通過。気温が上がってアイゼンが団子になり,行きよりちょっと怖い。
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痩せ尾根も慎重に通過。気温が上がってアイゼンが団子になり,行きよりちょっと怖い。
ここが能郷白山が最後に見えるポイント。さようなら!
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ここが能郷白山が最後に見えるポイント。さようなら!
右手には,磯倉南西尾根が雪庇を連ねつつ,すらりと磯谷に落ち込んでおり,登ってみたい気に駆られるが…
右手には,磯倉南西尾根が雪庇を連ねつつ,すらりと磯谷に落ち込んでおり,登ってみたい気に駆られるが…
まあ,末端がこんな岩場になってるから,積雪期はちょっとヤバそうよね(それ以前にアプローチがね)
まあ,末端がこんな岩場になってるから,積雪期はちょっとヤバそうよね(それ以前にアプローチがね)
アップダウンのある長い尾根を延々と引き返し,ついに眼下に徳山ダムが。次第に雪も切れ,ゴンニョ尾根の魔法も解けていくようだ。
アップダウンのある長い尾根を延々と引き返し,ついに眼下に徳山ダムが。次第に雪も切れ,ゴンニョ尾根の魔法も解けていくようだ。
さて,この尾根の最後の下りは,ルートを外すとダム湖や擁壁に出てとんでもないことになるため,慎重に下らないといけない。最後の下りに入るとこんな謎のコード?が地面を這っているので,それを追っていくとスムーズ。しかし,最終的にはこのコードも外れ,やや左手の小尾根に入っていかないといけない。
さて,この尾根の最後の下りは,ルートを外すとダム湖や擁壁に出てとんでもないことになるため,慎重に下らないといけない。最後の下りに入るとこんな謎のコード?が地面を這っているので,それを追っていくとスムーズ。しかし,最終的にはこのコードも外れ,やや左手の小尾根に入っていかないといけない。
もう少しで尾根末端,というところで,こんなロープが出てくるので,それを辿る。
もう少しで尾根末端,というところで,こんなロープが出てくるので,それを辿る。
ロープを辿っていくと,今朝取り付いたアルミハシゴに行きつき,一安心。なんとか日のあるうちに帰ってくることが出来た。
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ロープを辿っていくと,今朝取り付いたアルミハシゴに行きつき,一安心。なんとか日のあるうちに帰ってくることが出来た。
今朝,出発時に山行の無事をお祈りしたばかりの白山神社跡地に帰着し,能郷白山の奥宮に詣でて来たことをご報告,感謝の祈りを捧げた。令和のゴンニョ参り,これにて完結!
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今朝,出発時に山行の無事をお祈りしたばかりの白山神社跡地に帰着し,能郷白山の奥宮に詣でて来たことをご報告,感謝の祈りを捧げた。令和のゴンニョ参り,これにて完結!

装備

備考 ・ワカンは携帯したが,雪が比較的よく締まっていたため使用せず。ただし,午後になると雪が緩んで沈み込むようになるため,最低でもワカンは携帯していたほうが無難。
・ピッケルとアイゼンを携帯。磯倉の手前のP1394mの北側にある痩せ尾根区間と,磯倉の北斜面の硬雪急登箇所で使用。

感想

 現在は徳山ダムに沈んでいる旧徳山村の住民の方々が,かつて,はるばる徳山村から尾根伝いで能郷白山まで登っていたらしい,ということを初めて知ったとき,少なからず驚かされた。
 「美濃徳山の地名」(水資源開発公団,平成9年刊)には,「本郷(注:旧徳山村の中心的集落)から能郷白山に通じる尾根道筋をゴンニョという。これはゴンネの上の尾がなまってできた名称で,本郷の江口権祐家はゴンネと呼ばれ,代々能郷白山の禰宜を務めていたようで,この尾根道筋をしばしば能郷白山まで参詣していた。」とある。また,水資源機構のホームページでも,国道417号線の「クツ尾ゴンニョ橋」の名称の由来として,「本郷から能郷白山に参詣するゴンニョと呼ばれる山道から名付けました。徳山村の人たちはきつい山道『ゴンニョ』を登り,能郷白山神社にお参りするのが習慣でした。ゴンニョは権現のことで,徳山村では能郷白山のことを権現山と呼んでいました」と紹介されている。
 徳山の本郷集落から尾根伝いで能郷白山に参詣するとしたら,三等・村平(△881.2m。俗称ゴンニョ),三等・鴨(△1212.3m),磯倉(P1541m)を経由する尾根しか考えられないのだが,地形図を見れば一見して分かる通り,この尾根は相当に長い尾根で,しかも大半が深い藪に覆われた藪尾根である。この尾根を,日帰り(参詣目的で,しかも藪尾根の途中で野宿するとは思えないので,おそらく日帰りだろう)で,しかも登山家でもない普通の村人が行き来するなどということが,本当に可能なのだろうかと正直思ってしまった。
 しかしその一方で,確かに魅力的なルートではある。その妙に愛らしい名前に惹かれて一度行ってみたいと思っていた徳山の秘境三角点の一つである三等・鴨を踏むこともできるし,端整なピラミッド型の山頂が魅力的な磯倉と,その南側に広がる台地(地形図で見て前々から気になっていた)を経由することもできる。そして何より,本当にこのルートを日帰りで行き来することが出来るのか確かめてみたい。「美濃徳山の地名」によると,この「ゴンニョの参詣道」は,正確には三等・村平の南西の小尾根から取り付くのが旧来のルートのようなのだが,現在は徳山ダムに阻まれてしまっているので,本郷望郷広場から三等・村平の西尾根に取りつくことにした。本郷望郷広場には,かつて本郷にあった白山神社の跡地があり,ここから登ることで,徳山の里宮と能郷白山山頂の奥宮をつなぐこともできるので,参詣という目的からしても意義深いものになると思われた。
 能郷白山までの道のりは,やはり長かった。何より,アップダウンの連続が体力を奪っていく。道中の素晴らしいブナの森に励まされるようにして遅々とした歩みを続けた。そして,ようやくたどり着いた磯倉の南台地から能郷白山のたおやかな,神々しいまでに白く輝きわたる山体を眺めたとき,本当にここまで歩いて来てよかったと心から思った。重厚な能郷白山と鋭利な磯倉という対照的な2つの山が並座する風景は,この尾根でしか味わえないもので,はるばるこの尾根を歩いてきた旧徳山村の人々も,この美しい光景を目にして,信仰心を新たにしたのではないだろうか(もちろん,彼らが歩いたのはおそらく無雪期で,私が見た風景とは異なるとしても)。
 最後に,今回の山行で得られた結論(及び推測)をまとめると,以下のとおり。
〇 徳山から「ゴンニョ」の尾根道を通り,能郷白山奥宮に日帰りで参詣することは,可能。
〇 ただし,三等・鴨付近から奥は深い藪であり,日帰りが可能なのは,残雪期か,切り開き道がある場合に限られる。おそらく,往時は無雪期に能郷白山まで参詣していたと思われるので,この尾根に切り開きがあったのではないだろうか(維持は相当大変だったと思われるが…)。
〇 今回の山行でも往復12時間以上要しており,行動時間が長いので,往時のゴンニョ参詣でも一部闇下となった可能性はあるが,例えば白山(加賀白山のほう)の信仰登山では,江戸時代でも夜間まで食い込んだ「夜がけ」と呼ばれる夜行日帰り登山が普通に行われており(「白山奥山人の民俗誌」橘礼吉著,白水社,2015年),能郷白山のゴンニョ参詣においても同様のことが行われていた可能性はあると思われる。

<余談: 三等・鴨(△1212.3m)の名前の由来>
 今回の山行でも通過した,徳山の秘境三角点の一つである「三等・鴨」。前々から「鴨」という名前が妙に気になっていたのだが,写真欄でも書いたとおり,「美濃徳山の地名」によると(引用がしつこくてすみません…),「この付近に池があり,鴨がいた」ことが由来とのこと。これを読んだときは,思わず「ほんまかいな…」と思ってしまったのですが,今回の山行で,三等・鴨の付近で大きな窪地を3か所ほど目撃。池があるというのは本当かも知れません。鴨までいるかどうかは不明ですが…。

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コメント

hillwandererさん、こんばんは!
またまた、すんごいレコをありがとうございます
こちら側から、能郷白山へ日帰りができるというヤバイ前例を作ってしまいましたね〜
恐ろしいわ…
磯倉南台地までも行けそうにありませんので、テルくんと鴨手前の台地で、まったりしてきますね
それにしても、磯倉周辺の台地の写真、たまらなく美しい!
もんり
2023/3/5 17:55
moriman1971さん
こんばんは! いえいえ、私は昔の徳山村の方々の後追いをしただけですよ〜。この尾根から能郷白山へお参りに行っちゃおう、と発想した徳山の方々は本当にすごいと思います。
鴨のあたりはブナもきれいで良いところでしたので、きっと良い時間が過ごせると思います。
もんりさんも最近のスノーワンキング、素敵なところばかりで羨ましい限りです!
2023/3/5 20:40
hillwandererさん
鴨直下の急登では、グリセード?尻セード?で楽しみましたね!(笑)
僕もその横で、テルくんがトナカイ役になって引っ張ってもらい、2人(1人と1匹)で高速尻セードで、大はしゃぎでした。トレースもごちそうさまでした。
ストーカーっぽくて、ごめんなさい…
もんり
2023/3/6 21:03
moriman1971さん
バレましたか〜(笑)恥ずかしながらシリセードできる斜面はほぼオールシリセードで下ってまいりました。
愛犬高速シリセード、そんな秘技があったなんて…めちゃ楽しそうで羨ましすぎる!
鴨の台地、いいですよね〜。あのあたりの雰囲気も好きです。
2023/3/6 22:50
hillwandererさん、お久しぶりです m(_ _)m

徳山ダム以北の通行が解除されたこの日、徳山界隈をお散歩しに、この尾根から鴨まで行こうかと計画していました。

仲間を誘っても誰もこの指とまらず、ソロでのモチベーションが上がらずに、2度寝しちゃったんですが ^_^;

もしかしたらお初にお目にかかれたかもしれないと思いましたが、登り始めの時間が全然違ったので、結果的にトレースを辿っただけのはずで、余計に残念無念無念だったかもしれません。

枝道に車の置き場所のありそうな、もう2つ先の尾根からも候補でしたが、このルートが能郷白山への参詣道だったとは知りませんでした、バーチャル登山をさせていただきありがとうございました。

条件が揃ったら、そのうちチャレンジしてみたいと思います。
2023/3/5 19:52
レオンくんさん
お久しぶりです〜。 レオンさんも鴨まで行かれる予定だったんですね! 鴨のあたりはしっとりとした静かな森で、いいところでした。きっと楽しい時間が過ごせると思いますよ。もう2つ先の尾根というと、寺尾の尾根でしょうか? この尾根もいい尾根ですよね〜。
私もこの尾根がまさか能郷白山白山への参詣道とは思わず、初めて知ったときはびっくりしました。昔の徳山の方々の信仰心と体力はすごいですね。
コメントいただき、ありがとうございました!
2023/3/5 20:55
hillwandererさん、こんばんは!
同じ日、私も磯倉登っていました。
hillwandererさんのトレースを見つけた時、それを追いかけて下山しようかと少し迷いましたが、駐車場までの距離を考えて計画通りに下りました。
「ゴンニョ」は初めて聞きました。
また次の機会にゴンニョを登ってみたいと思います。
2023/3/5 23:26
usssuさん
こんばんは! まさかusssuさんも磯倉に登っておられたとは…。若丸山から磯倉への周回、しかも扇谷を起点にされるなんて、すごくいいルートですね! この区間は一度歩いてみたいと思っていたので、羨ましいです。
ゴンニョは奥の方に行くとブナもきれいですし、磯倉南台地もいいところなので、きっと楽しめると思いますよ。
2023/3/6 19:57
18枚目の滝は、「百山百渓」に載っている、青波に突き上げる砂利平谷にかかる大滝でしょうか
すでに知られているのなら、少々がっかり…
メジャーな能郷白山だから、まさか未知の滝はないのでしょうか
マジで確かめたくなってます(笑)
もんり
2023/3/19 7:09
moriman1971さん
教えていただきありがとうございます! やっぱり記録がありそうなんですね〜。でも、そのかつて知られていた大滝が、今はダム湖の奥にひっそりと眠っていて、訪れる人もない、と思うと、それはそれでソソられてしまいますね(笑)
ちなみに今日、奥越の打波川の奥にある某尾根を登ってきたのですが(福井側の話ですみません)、眼下に見えた枝谷に40m以上はあると思われる多段滝を目撃し一人で盛り上がってました。記録があるかはまだ調べてないのですが…。この時期は藪や木の葉に邪魔されないので滝探しに最適ですね。雪解け後が楽しみだー。
2023/3/19 20:27
hillwandererさんにあやかろうと、昨年のテルくん帰らず事件にめげず、能郷を目指しました
能郷は、と、と、遠い…
12時間かけて、磯倉がやっとでした
よく、能郷まで行きましたね
信じられないわ〜
1394北のヤセ尾根は、雪が少なくて、う〜ん、なかなか緊張しました

おかげで、帰路の温泉と中華は、格別でした
ありがとうございました!

磯倉の南の天国台地は、真っ白台地だった(笑)ので、もう一度おじゃましてきますね
2024/2/11 7:27
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もんりさん
お疲れ様でした! 新雪がけっこう積もっていたのではないでしょうか? ヤセ尾根も、雪が少ないと逆に怖いかもしれませんね。その中で磯倉まで行かれたのはすごいと思いますよ〜。
私は鍋又山から能郷白山を眺めていました。確かに雲がかかってたな〜😅
2024/2/12 13:03
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