【奥美濃】第五次ベロリ穴探査 〜新情報に基づく再探索(磯倉のクラ,再び)〜


- GPS
- --:--
- 距離
- 12.6km
- 登り
- 1,709m
- 下り
- 1,702m
コースタイム
- 山行
- 11:50
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 11:50
天候 | 小雨(標高800m以上は雪)のち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2023年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
〜これまでのあらすじ〜 ・ 第一回目の探索(2020年12月)…磯谷北又から磯倉ピークに登るついでにベロリ穴探索 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2781989.html ・ 第二回目の探索(2022年11月)…磯倉ピークの南西尾根にそびえる岩場(磯倉のクラ,またはイソグラ)を探索 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4852483.html ・ 第三回目の探索(2022年11月)…「美濃徳山の地名」にベロリ穴の位置が記されていることを発見し再探索 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4936363.html ・ 第四回目の探索(2022年11月)…あきらめきれずもう一度再探索 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4955798.html 旧徳山村の磯谷の奥にあるとされる「ベロリ穴」。徳山の民話「猟師と白い熊」の舞台になっており,また国道417号線の奇抜ネーミング橋の白眉である「磯谷ベロリ橋」の名前の由来にもなっている伝説の岩穴である。これまで4回にわたりダム湖に閉ざされた磯谷に分け入りこの岩穴の探索を行ったが,発見に至らなかった。 今回は,ブラックさんからご提供いただいた新情報をもとに,突然やってきた初雪に磯谷が覆われる中,再探索を行った。その結果やいかに。 <ルート状況> ・磯谷は基本的に穏やかな流れで遡行は問題なし。今回歩いた区間までであれば,両岸の河原をうまく歩けば,足をほとんど濡らさずに歩行可能。 ・今回探索した磯倉のクラ(クラは岩場のこと。イソグラとも)は,非常に険阻なうえに藪が濃く,行動に注意が必要。特に,今回は枯葉の上に新雪が載った非常にスリッピーな状況で,アイゼンが欲しくなるくらいだった。また,尾根が急峻で藪で見通しが悪いこともあり,下山時のルートミスに注意。 |
写真
※ 雪で分かりにくくなっているが,写真中央付近の黒く見える部分が岩場(岩の上にヒノキやヒメコマツが密生している)
※ 通常は,クマのフィールドサイン(足跡,爪痕,糞など)を見かけたら,できる限りその場から離れるべきですので,良い子はマネしないでね。念のため。
装備
備考 | ・ 40mロープ携行。磯倉の岩場エリアで尾根から谷に下降する際に使用。 ・ それほど積雪はないことを想定して,足元はフェルトソール沢足袋+チェーンスパイクだったが,標高800m以上は薄い積雪がコンスタントにあり,正直後悔した。冬靴(磯倉の岩場エリアでは,アイゼンも必要)のほうがベター。 |
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感想
秋だ,紅葉だ,ベロリ穴探索だ! ということで,昨年に引き続き,今年も性懲りなく,紅葉(そして新雪)の磯谷を彷徨いつつ,神の化身とも言える白い熊が住まうという,伝説のベロリ穴を探します。
今回は,ブラックさんからご提供いただいた新情報をもとに再探索を行う。大変ありがたいことに,ブラックさんがお知り合いの旧徳山村出身の方にベロリ穴について心当たりがないか聞いてくださったのである。そしていただいた貴重なお話は以下の通り。
【父親が磯谷で炭焼きをしており,自身もベロリ穴に行ったことがある方のお話(要約)】
・ ベロリ穴は,磯倉の岩場に開いた穴。
・ 磯倉の尾根伝いに行くと行きやすい。谷伝いに行っても行けるが,最後,急な岩場になるので注意(ザイル持参がおすすめ)。
・ 磯谷北又をしばらく行くと,二又に分かれるので,向かって左側の枝谷を登った記憶がある。最初は平坦で登りやすいが,奥に行くにしたがってタロ(滝のことでしょうか? hillwanderer注)も多くなるので注意。
・ 穴はしゃがまないと入れない。奥行きは5〜6mくらいだった気がする。
【父親が熊撃ち猟師をしており,父親に連れられてベロリ穴に行ったことがある方のお話(要約)】
・ 磯谷を登っていくと磯倉の山頂近くに大きく崩落した崖のような白いところがあり,その右側か左側か忘れたが,崖みたいなところのキワにベロリ穴があった。位置的には相当上のほうで,谷からすぐのところではない。
この2つのお話を一読してまず気づかされるのは,どちらのお話も,私が第二回探索時に探索した「磯倉のクラ」(磯谷北又・南又の中間尾根(磯倉ピークの南西尾根)の中腹にある大規模な岩場。「美濃徳山の地名」では「イソグラ」と記載されている)をベロリ穴のありかとして言及されているらしいということだ。「磯倉の尾根」(おそらく,磯谷北又・南又の中間尾根のことだと思われる)伝いに行ける「磯倉の岩場」はここ以外にあり得ないし,「磯倉の山頂近くの大きく崩壊した崖のような白いところ」もここしか思いつかない。正確に言うと,磯谷北又の源頭付近にも白い崖のような場所があるが,こちらは「磯倉の尾根伝いに行ける」という条件を満たさなくなってしまう。
ただ,一つ目のお話のうち,「磯谷北又をしばらく行くと二又に分かれ,その左側の枝谷を登った」という箇所は,地形図を見ると分かると思うが,ちょっと解釈が悩ましい部分。とりあえず,今回はこの2つのお話が「磯倉のクラ」を指しておられるものと考えて探索を進めたい。
磯倉のクラは,第二回目の探索で既に入ったことのあるエリアだが,この時は,谷伝いで磯倉のクラに向かおうとして難渋し,時間を食ってしまったことと,そもそもこの頃はベロリ穴をフィクションの存在ではないかと疑っていたので,磯倉のクラの岩場の一部を見ただけで満足してしまい,実はあまりしっかり探索できていなかった。今回は,「磯倉の尾根伝いに行くと行きやすい」というお話を注目し,尾根伝いで磯倉のクラエリアに進入し,さらに詳しい探索を行おうと考えた。
さて,実際の探索である。まずビビらされたのが,今回の探索予定地である磯倉のクラエリアに予想以上の積雪があったこと。先週末に降雪があったことは知っていたが,今週中ごろの気温上昇でもう溶けただろうし,当日朝に車から降りたところ,気温は低いものの徳山ダム周辺の山には全く雪の影がなかったため,たいした積雪はないものと考え,足元はフェルトソール沢足袋(+チェーンスパイク)で入山してしまったのである。当然,滑るし冷たいし…。でもそこは慎重な行動と根性でカバーし,真っ白な霧氷をまとって荘厳とも言える姿でそびえたつ磯倉のクラの岩壁の下に降り立った。
結果,またしてもベロリ穴と確信できる穴を発見できなかったのは記録の通りなのだが,やはりこのエリアは岩場だらけで,今回情報提供いただいたお話の通り,ベロリ穴が存在する可能性は十分ありそうであり,今後も再探索の必要ありということは改めて確認できた。また,今回登路とした尾根上で人為的な切り株を複数発見できたことも興味深かった。正直,この鷹の巣のような険阻な尾根にわざわざ木材を求めて人が入り込んでいたこと自体,驚くべきことなのだが,現在では秘境のようにしか見えない磯倉のクラも,かつてはクラモトの出作り集落の「裏山」に過ぎず,山仕事の方々(その中に,クマ猟師の方ももちろん含まれるだろう)が少なからず入っていたことを実感することができた。この場所にベロリ穴のような伝説が生まれた素地は,そのようなところにあるのだろう。
また,磯倉のクラの岩壁の下で大きなクマの足跡を発見したことも,自分としては嬉しい出会いだった。残念ながらクマの足跡の追跡(足跡の主と鉢合わせしないよう,進行方向と逆向きの追跡)は実を結ばなかったが,この峻険な岩場が実際にクマの棲家になっていることは確実なようだ。もちろん,どこかにクマの冬眠穴だってあるだろう。そしてそれがかつて麓の住人の方々にベロリ穴と呼ばれていた穴であったとしても,不思議ではない。
最後に,情報をいただいたブラックさん,そして話主の旧徳山村ご出身の方々に厚く感謝申し上げます!
<余談その1>
今回情報提供いただいたお話ではベロリ穴は磯倉のクラにあるとされている一方,3回目と4回目の探索で参考にした通り,「美濃徳山の地名」では磯谷北又右岸のタワンボラにあるとされていることは興味深い。これは私の憶測でしかないのだが,もしかしたらベロリ穴と呼ばれる穴は複数あるのかもしれない。長い歴史の中で、様々な人が様々な機会に山中で見つけた穴を,それぞれベロリ穴として後世に伝えてきたのではないだろうか。そうであるとしたら,真のベロリ穴が一つだけあるわけではなく,どのベロリ穴も等しく「ベロリ穴」と呼んでいいのだと思う。もしかしたら,我々にできることは,真のベロリ穴を「特定」することではなく,様々なベロリ穴伝承に教えを受け,できる限り多くのベロリ穴を見つけることなのかもしれない。自分としては,こう考えたほうがしっくりくる気がするが,どうだろう。
<余談その2>
今回登路とした磯谷北又・南又の中間尾根,尾根伝いは途中で岩峰に阻まれるのでとても無理ですが,今回のように谷に降りて迂回すれば,どうやら岩場の上部に抜けてそのまま磯倉ピークに至ることが可能らしいことが分かってきました。この尾根から磯倉に登るのも登山ルートとして一興かも?
※「大人の水遊び」のもんりさんもベロリ穴を探索されています。おや,もんりさん,その穴は…!(もんりさんと足並みを揃えて場所などの詳細は伏せますが,この穴,私の記録にもちょこっとだけ登場したことのある穴です。)
・ 磯谷北又枝沢の沢登り(徳山ベロリン)https://ameblo.jp/pangani/entry-12830257735.html
<関連記録(ベロリ穴探査シリーズ)>
・ 第一次(磯谷から磯倉へ)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2781989.html
・ 第二次(磯倉のクラ探索)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4852483.html
・ 第三次(新資料に基づくタワンボラ探索)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4936363.html
・ 第四次(オオクボダニ探索&タワンボラ再探索)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4955798.html
コメント
この記録に関連する登山ルート
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奥が崩れていたので、以前はもっと奥行きがあったのかもしれません
沢の水線からはやや外れており、普通の人(変人じゃない限り)なら気付かずに通り過ぎるでしょうね(笑)
白熊はいませんでしたが、テルくんは何かを感じたのか、入るのを拒んでいましたよ〜
とにかく、ベロリ穴を目指せ!というモチベーションアップが楽しめました
ありがとうございます
隊長へ 取り急ぎご報告でした
お疲れ様です! 白熊いなくてよかったです〜。
確かに、元はもっと広かったものが崩れたと考えれば、伝承の「奥行25m」とも両立できるかもしれませんね!
私も磯谷に入りたいのですが、来週も用事があって徳山まで行けそうにないんですよね〜。なんとか今季中に行きたいものです。
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