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Yamareco

記録ID: 4936363
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
東海

【奥美濃】第三次ベロリ穴探査(新資料に基づく再探索)

2022年11月19日(土) [日帰り]
 - 拍手
GPS
--:--
距離
12.9km
登り
1,361m
下り
1,357m

コースタイム

日帰り
山行
10:50
休憩
0:00
合計
10:50
6:30
30
駐車地
7:00
60
8:00
60
磯谷に降り立つ
9:00
320
タワンボラ出合(ベロリ穴の探索開始)
14:20
180
磯谷右岸尾根に登り上げる(探索終了)
17:20
駐車地
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2022年11月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
国道417号線の磯谷ベロリ橋の南詰にある駐車スペースに駐車(かなり広く,スペースには余裕あり)
コース状況/
危険箇所等
 徳山の民話「猟師と白い熊」の舞台になっており,また国道417号線に架かる「磯谷ベロリ橋」の名前の由来にもなっている「ベロリ穴」。これまで2回にわたりダム湖に閉ざされた磯谷に分け入り探索を行ってきたが,この度,ある資料にベロリ穴の位置が記述されていることを発見。半分フィクションかと疑っていたベロリ穴の存在がにわかに現実味を増してきたため,再度の探索を行った。

※第一回目の探索(2020年12月)…【奥美濃】磯谷から磯倉(ベロリ穴探索)https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2781989.html
※第二回目の探索(2022年11月)…【奥美濃】第二次ベロリ穴探査(磯倉のクラ)https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4852483.html

<ルート状況>
・磯谷は基本的に穏やかな流れで遡行は問題なし。今回歩いた区間までであれば,両岸の河原をうまく歩けば,足をほとんど濡らさずに歩行可能。
・磯谷右岸尾根は,少なくとも今回歩いた区間(P997手前)までであれば藪はほとんどなく,快適に歩行可能。P997以降は,シャクナゲや笹の藪が出てくる様子だった。
・今回散策を行ったタワンボラの一帯は,急斜面で岩場もあり,慎重な行動が必要。念のためロープは持っていたほうが良い。
・クマのテリトリーのようで,至近距離でクマに1回遭遇。またイノシシにも2回遭遇するなど,動物の気配が濃い。クマ鈴や頻繁なコールなどで対策を取ったほうが良い。
「美濃徳山の地名」(1997年刊)のうち,磯谷流域の地名地図の部分。赤丸の箇所に「ベロリンアナ」(ベロリ穴)の記載あり。※クリックで拡大できます。
「美濃徳山の地名」(1997年刊)のうち,磯谷流域の地名地図の部分。赤丸の箇所に「ベロリンアナ」(ベロリ穴)の記載あり。※クリックで拡大できます。
「美濃徳山の地名」の地名地図から,めぼしい地名を地形図に落としてみた。同書を信じるならば,おそらく赤く囲った一帯に,ベロリ穴が存在していると思われる。(前回探索した岩場は,推測したとおり「イソグラ」と呼ばれていたようだ。また,「イソグラ」の真下の,磯谷二俣付近に広がる平地が「クラモト」。)※クリックで拡大できます。
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「美濃徳山の地名」の地名地図から,めぼしい地名を地形図に落としてみた。同書を信じるならば,おそらく赤く囲った一帯に,ベロリ穴が存在していると思われる。(前回探索した岩場は,推測したとおり「イソグラ」と呼ばれていたようだ。また,「イソグラ」の真下の,磯谷二俣付近に広がる平地が「クラモト」。)※クリックで拡大できます。
今回も「ベロリ穴」が橋名の由来である磯谷ベロリ橋のたもとから山行スタート。今度こそベロリ穴探索に決着をつけたいが,どうなることやら。
今回も「ベロリ穴」が橋名の由来である磯谷ベロリ橋のたもとから山行スタート。今度こそベロリ穴探索に決着をつけたいが,どうなることやら。
今回も櫨原義徳隧道の南口付近から磯谷右岸尾根に上がり,ダム湖を迂回して磯谷を目指す。ブナの黄葉はまだわずかに散り残っている。朝日の中,金色に光り輝く森が美しい。
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今回も櫨原義徳隧道の南口付近から磯谷右岸尾根に上がり,ダム湖を迂回して磯谷を目指す。ブナの黄葉はまだわずかに散り残っている。朝日の中,金色に光り輝く森が美しい。
穏やかな磯谷に降り立ち,遡行。もう磯谷を歩くのも3回目。さすがにだいぶ慣れてきて,ほとんど足を濡らさずに河原をハイペースで歩いて行くことが出来る。
穏やかな磯谷に降り立ち,遡行。もう磯谷を歩くのも3回目。さすがにだいぶ慣れてきて,ほとんど足を濡らさずに河原をハイペースで歩いて行くことが出来る。
磯谷の北又・南又の二俣付近は,「美濃徳山の地名」によれば「クラモト」(イソグラの真下(モト)の意味だと思われる)と呼ばれ,徳山本郷からの出作りが8軒もあり,1町2反の田んぼと,畑がたくさんあったらしい。意外なことに,磯谷は結構奥まで開けた谷だったようだ。実際,二俣付近には写真のような石垣を頻繁に見つけることが出来る。
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磯谷の北又・南又の二俣付近は,「美濃徳山の地名」によれば「クラモト」(イソグラの真下(モト)の意味だと思われる)と呼ばれ,徳山本郷からの出作りが8軒もあり,1町2反の田んぼと,畑がたくさんあったらしい。意外なことに,磯谷は結構奥まで開けた谷だったようだ。実際,二俣付近には写真のような石垣を頻繁に見つけることが出来る。
磯谷北又に入ってすぐ右岸側に流入する枝沢である「タワンボラ」に入る。タワンボラは二俣に分かれるが,「美濃徳山の地名」の記載を信じるならば,その中間の斜面のどこかに,目指すベロリ穴があるはずだ。
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磯谷北又に入ってすぐ右岸側に流入する枝沢である「タワンボラ」に入る。タワンボラは二俣に分かれるが,「美濃徳山の地名」の記載を信じるならば,その中間の斜面のどこかに,目指すベロリ穴があるはずだ。
まずは「美濃徳山の地名」の地理表示が正確であることを信じて,「ベロリンアナ」の記載がある地点にピンポイントに到達すべく,タワンボラの中間尾根を直登していく。
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まずは「美濃徳山の地名」の地理表示が正確であることを信じて,「ベロリンアナ」の記載がある地点にピンポイントに到達すべく,タワンボラの中間尾根を直登していく。
この斜面,ブナの森が広がり,藪も薄くて,歩いていて普通に気持ちいい。別に紅葉狩りが目的で来たわけではないのだが,すっかり気分は晩秋ハイキング。得した気分だ。
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この斜面,ブナの森が広がり,藪も薄くて,歩いていて普通に気持ちいい。別に紅葉狩りが目的で来たわけではないのだが,すっかり気分は晩秋ハイキング。得した気分だ。
抜けるような青空に,光り輝く紅葉が映える。
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抜けるような青空に,光り輝く紅葉が映える。
いやー,本当にいいところ。
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いやー,本当にいいところ。
しかし,こんな穏やかなところに,本当にベロリ穴があるんだろうか…。
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しかし,こんな穏やかなところに,本当にベロリ穴があるんだろうか…。
次第に岩場が現れ始めたので,岩場を見つけるたびに急斜面を慎重にトラバースして捜索するが,ベロリ穴らしき岩穴は見つからない。
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次第に岩場が現れ始めたので,岩場を見つけるたびに急斜面を慎重にトラバースして捜索するが,ベロリ穴らしき岩穴は見つからない。
ここにもないであります。
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ここにもないであります。
ないなぁ…。
結局,ベロリ穴に出会うことなく,稜線近くまで登ってきてしまった。「美濃徳山の地名」に「ベロリンアナ」の記載がある地点付近はピンポイントで入念に探したのだが…。危惧していた通り,同書は地理的な面では結構アバウトなようだ。これはどうやら,この一帯を幅広く探索しなければいけないらしい。
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結局,ベロリ穴に出会うことなく,稜線近くまで登ってきてしまった。「美濃徳山の地名」に「ベロリンアナ」の記載がある地点付近はピンポイントで入念に探したのだが…。危惧していた通り,同書は地理的な面では結構アバウトなようだ。これはどうやら,この一帯を幅広く探索しなければいけないらしい。
少し思案した後,中間尾根の東側に食い込んでいる急峻な枝沢を下降。岩が露出しているのは沢筋であることが多いため,沢を起点に探索しようと思い立ったためだ。結構険しい谷で,次々に出現する枯滝を巻きつつ,周囲の岩場を観察しながら下降していくと…
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少し思案した後,中間尾根の東側に食い込んでいる急峻な枝沢を下降。岩が露出しているのは沢筋であることが多いため,沢を起点に探索しようと思い立ったためだ。結構険しい谷で,次々に出現する枯滝を巻きつつ,周囲の岩場を観察しながら下降していくと…
藪にぶら下がるようにして枯滝を巻き下っている最中,ふと頭上の岩場を見上げた瞬間,全身が凍り付いた。10mくらいの至近距離で,大きなクマがこちらを覗き込んでいる! クマを刺激しないように,なるべく平静を装ってゆっくり枯滝を巻き下り,30mくらいの距離を取ってから撮影した写真がこれ。写真を拡大すると中央にクマが見えると思います。胸の白い月の輪もくっきり見える。
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藪にぶら下がるようにして枯滝を巻き下っている最中,ふと頭上の岩場を見上げた瞬間,全身が凍り付いた。10mくらいの至近距離で,大きなクマがこちらを覗き込んでいる! クマを刺激しないように,なるべく平静を装ってゆっくり枯滝を巻き下り,30mくらいの距離を取ってから撮影した写真がこれ。写真を拡大すると中央にクマが見えると思います。胸の白い月の輪もくっきり見える。
クマは特に襲ってくる様子はなく,「なにこいつ?」という感じでこっちを興味津々で覗き込んでいるだけなので,安心してクマを観察できたのだが,困ったのがこのクマに阻まれたおかげで,谷の上流方向の探索を断念せざるをえなかったことだ。クマはしばらくこちらを見つめたあと,首を振り振り,藪の斜面を登っていってしまった。
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クマは特に襲ってくる様子はなく,「なにこいつ?」という感じでこっちを興味津々で覗き込んでいるだけなので,安心してクマを観察できたのだが,困ったのがこのクマに阻まれたおかげで,谷の上流方向の探索を断念せざるをえなかったことだ。クマはしばらくこちらを見つめたあと,首を振り振り,藪の斜面を登っていってしまった。
タワンボラの右俣に合流。
タワンボラの右俣に合流。
タワンボラの右俣に合流した後も,主に右岸側に現れる岩場を探索しながら下降していく。
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タワンボラの右俣に合流した後も,主に右岸側に現れる岩場を探索しながら下降していく。
いかにもクマが住んでいそうな岩穴を見つけたが,穴の規模が小さすぎるので,これはベロリ穴ではないだろう…。
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いかにもクマが住んでいそうな岩穴を見つけたが,穴の規模が小さすぎるので,これはベロリ穴ではないだろう…。
タワンボラの周辺はかなり険しく,岩場は頻繁に出てくるのだが,ベロリ穴らしき岩穴はなかなか見つからない。
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タワンボラの周辺はかなり険しく,岩場は頻繁に出てくるのだが,ベロリ穴らしき岩穴はなかなか見つからない。
ここにもないなぁ…。
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ここにもないなぁ…。
あっ! あの岩,下に空洞があるような…。これは怪しいぞ。
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あっ! あの岩,下に空洞があるような…。これは怪しいぞ。
岩がちな急斜面を慎重にトラバースしつつ,ドキドキしながら近づいていく。
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岩がちな急斜面を慎重にトラバースしつつ,ドキドキしながら近づいていく。
残念,これはハズレ。穴が浅すぎる…。なにしろ,「美濃徳山の地名」には,穴の深さは25m(!)って書いてあるからなぁ…。
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残念,これはハズレ。穴が浅すぎる…。なにしろ,「美濃徳山の地名」には,穴の深さは25m(!)って書いてあるからなぁ…。
結局,成果が上がらないままタワンボラの右俣を下りてきてしまったので,今度は左俣に入ってみる。
結局,成果が上がらないままタワンボラの右俣を下りてきてしまったので,今度は左俣に入ってみる。
こちらも枯滝が連続し,慎重に直登or高巻きで登っていく。
こちらも枯滝が連続し,慎重に直登or高巻きで登っていく。
しかし,タワンボラの左股の周辺は穏やかで,あまり岩場が出てこない。残念だが,これは違うな…。でも森はきれい。
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しかし,タワンボラの左股の周辺は穏やかで,あまり岩場が出てこない。残念だが,これは違うな…。でも森はきれい。
こんな岩が少し出てきたくらいで,結局ベロリ穴らしき岩穴は見つからなかった。新資料の情報もあるので,今回こそ見つかるのでは,と期待していたのだが,ベロリ穴,なかなか手強いな…。
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こんな岩が少し出てきたくらいで,結局ベロリ穴らしき岩穴は見つからなかった。新資料の情報もあるので,今回こそ見つかるのでは,と期待していたのだが,ベロリ穴,なかなか手強いな…。
そのまま,稜線に登り上げた。もう夕刻が迫っている。帰りは,そのまま磯谷右岸尾根を辿って戻ることにした。幸い,藪はほとんどなく,快適に歩ける。
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そのまま,稜線に登り上げた。もう夕刻が迫っている。帰りは,そのまま磯谷右岸尾根を辿って戻ることにした。幸い,藪はほとんどなく,快適に歩ける。
散り残った紅葉が残照に映える。
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散り残った紅葉が残照に映える。
P997から南西に稜線を辿り,100mほど高度を下げた平坦地には,まさかの池があった。
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P997から南西に稜線を辿り,100mほど高度を下げた平坦地には,まさかの池があった。
下山中,目の前をイノシシの群れが横切っていったり,大きなイノシシと鉢合わせして睨み合いになったりと,2回もイノシシと出合ってしまった。シカはともかく,イノシシとこんなに遭遇するのは珍しい。先ほどのクマにしても,ダム湖に閉ざされた磯谷は動物の楽園となっているようだ。
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下山中,目の前をイノシシの群れが横切っていったり,大きなイノシシと鉢合わせして睨み合いになったりと,2回もイノシシと出合ってしまった。シカはともかく,イノシシとこんなに遭遇するのは珍しい。先ほどのクマにしても,ダム湖に閉ざされた磯谷は動物の楽園となっているようだ。
途中,前回探索した磯倉のクラが良く見える場所があったので撮影。ほんとうに岩だらけだな…。
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途中,前回探索した磯倉のクラが良く見える場所があったので撮影。ほんとうに岩だらけだな…。

装備

備考 ・ラバーソール沢靴使用。磯谷は河原を歩けばほとんど足を濡らすことがないため,正直,普通の登山靴でも可。
・タワンボラ周辺は岩がちな急斜面のためロープ(40m)は持参したが,使用場面はなかった。

感想

 徳山の民話「猟師と白い熊」の舞台になっており,国道417号線に架かる「磯谷ベロリ橋」の名前の由来にもなっているベロリ穴。まだこんなことやってるのかと言われてしまいそうだが,私自身,この穴の探索をここまで引っ張るつもりはなかった。前回,磯倉のクラの険しい岩場を探索して見つからず,これで一区切りかなと思っていたのだが,先日立ち寄った徳山会館で,なんとベロリ穴の位置が記された資料に出会ってしまったので,もう一回探索しないわけにはいかなくなってしまったのである。
 その資料とは,水資源開発公団が1997年に刊行した「美濃徳山の地名」である。え? めっちゃ基礎的資料やん,もっと早く読んどけボケ,ですって? …大変申し訳ございませんでした(ぐうの音も出ない)。言い訳すると,この資料は地元の方以外では入手のハードルが非常に高いうえ(私の地元の図書館にも所蔵されていない),そもそもその存在自体がフィクションの可能性も高いと考えていたベロリ穴が,まさか堂々と位置図付きで本に載っていると思っていなかったのである。
 以下,「美濃徳山の地名」から,「ベロリンアナ」(ベロリ穴)に関する解説部分を抜粋。

「ベロリンアナ 昔,山手の猟師が磯谷口の近くで大きな熊の足跡を見つけ,たどっていくとこの岩穴に通じていた。中に大きな白熊がいて猟師に「ワシがここに居たことを絶対喋るな」と言われたが,月日が過ぎて,「白熊が−」と喋ったとたんに髪の毛がベロリンと剥げ落ちたという伝説がある。」
「奥行25m,3〜4人並んで岩穴に入っていける。地殻変動で割れたような形の岩穴」
(以上,ともに「美濃徳山の地名」から引用)

 「奥行25m」という岩穴の規模の大きさも驚きだが,同書に記されているベロリ穴の位置も衝撃的であった。これまで,徳山の民話で語られている通り,「磯倉の倉もと」(磯倉の岩場の下)にベロリ穴があるという想定で探索してきたのだが,「美濃徳山の地名」に示されている位置(地名地図は写真欄No1に掲載)は,それとはまったく異なる想定外のもので,磯谷北又をはさんで磯倉のクラの反対側の斜面である,「タワンボラ」と呼ばれる枝谷付近だと言うのである。これまで探索してきた「イソグラ(磯倉)」も「クラモト(倉もと)」も,「美濃徳山の地名」の同じ地図にれっきとした地名として記されているのだが(ほぼ想定通りだったので,これはちょっと嬉しかった),そこですらないというのである。どうしてこれほどまでに民話の内容と乖離しているのかはよく分からないが,「磯倉の倉もと」は,磯谷北又の右岸側のタワンボラ付近まで含めた,一定の広がりのある地名だったのかもしれない。
 とにかく,探索である。今回は「美濃徳山の地名」から得た強力な情報があるので,ベロリ穴に行きつけるのではないかと期待が高まったが,その反面,一抹の不安もあった。同書の地名地図は,果たしてどれほどの地理的正確さをもって描かれているのだろうか。もし地名地図に「34 ベロリンアナ」と番号が記されている位置にピンポイントで岩穴が存在すれば,到達は比較的容易なのだが,もしその記載が割とアバウトで「このあたりのどっか」レベルだった場合,探す範囲をタワンボラ付近の斜面一帯に広げなければならず,一気に探索が難しくなってしまう。徳山会館のスタッフの方も,「この本の地図は手書きだからね,これを見て山に登ろうとすると,現地でこれどこ?ってなるから気を付けてね」っておっしゃってたなぁ…。うーん,不安だ。
 実際の探索では,最初は,同書の正確さを信じて,同書の地名地図に「ベロリンアナ」の記載がある位置周辺をピンポイントで探索したのだが,見つからなかった。その時点で,どうやら上記の不安が的中してしまったらしいことを知った。そこからの探索は,岩場の露出が多い沢筋を起点に行ったのだが,残念ながら今回もベロリ穴の発見に至らなかったのは記録の通りである。うーん,ベロリ穴,手ごわいなぁ…。
 しかし,今回の探索で分かったのは,タワンボラ周辺はかなり険阻で岩場が多く,ベロリ穴が存在する可能性は十分ありそうだということだ。同時に,急峻な地形なので,探索に入る際は注意が必要だ。今回も,めぼしい岩場を見つけるたびに,なかなか冷や汗ものの高巻きやトラバースを繰り返すことになった。
 特に,タワンボラの右俣が岩の露出が顕著で,P997の直下辺りが可能性が高い気がする。今回は残念ながら,クマとの遭遇(至近距離で本当にビビった)に阻まれ,P997直下の辺りは探索できなかったのだが。
 しかし,このクマとの遭遇も,ベロリ穴に近づきつつあることを示しているような気がしてならない。なにしろ,民話の中では,ベロリ穴はクマの棲家として描かれているのだから。今回姿を現したクマは,私を「ようこそ」と歓迎してくれているのだろうか。あるいは,「これ以上近づくな」と警告しているのだろうか…。

【余談】
 前回探索時の記録にも記したが,ベロリ穴に関する別バージョンの民話では,ベロリ穴は「磯谷の奥の大久保(オオクボ)」にあるとされている。「美濃徳山の地名」には磯谷の二俣のクラモト付近に「オオクボダニ」という地名も記載されており,これも本当に気になる。もしかしてこっちにあったりして…。

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コメント

hillwandererさん こんにちは〜🤗

な、な、なーんとreiさんもこの日徳山行かれてましたよー❗️ ハッスル号見てないですか❓ ニアミスだぁ〜😀
ベロリ穴探索で(「・ω・)「ガオーさんまでニアミスとはー😱 ご無事で良かったです。

ここや磯倉まで超ロング日帰り探索できるのはhillwandererさんのような極限られたエキスパートの方のみなので、いつも貴重なレコを拝見できて感謝ですm(_ _)m

ミステリーベロリ穴はいつか大発見されそうで楽しみです😀
2022/11/20 17:43
-black-さん
お久しぶりです!なんと、reiさんも徳山に見えてたんですね〜。残念ながらハッスル号には気づきませんでした…。徳山も紅葉の終盤戦ですもんね。
ガオ-さんは見上げた瞬間めっちゃ目が合ったので焦りました😅 熊よけのコールは頻繁にしていたのですが、クマも好奇心があるらしく、すぐに逃げずに遠巻きに見ているようです。
磯谷から磯倉に登るついでに始めたベロリ穴探索、まさかこんなに引っ張ることになるとは思わなかったのですが、ここまで来たら見つけたいですね〜。
ベロリ穴は別にしても、今回探索したあたりはブナの森がきれいで、なかなか良いところでしたよ。
2022/11/20 20:24
ベロリ穴探索記、毎回読んでます。めちゃ面白いです。
ベロリ穴は、山の地名でよくあるように、女陰由来の地名だと思うので、これもままた女陰由来の地名の大(奥)久保がもっとも有力かと思いますが、どうでしょうね。探検せず、記録を読むだけの気楽さからの発言ですが・・・。
第四次を楽しみにしています。
2022/11/21 13:37
floatcloudさん
こんばんは! なるほど〜、確かに、山や海にある目立つ岩や岩穴は、民俗的にそういうシンボルとして見なされていることが多いですよね。オオクボにベロリ穴があるとしているバージョンの民話では、穴の中に白熊ではなくて山姥がいることになっているのですが、これも故あることなのかもしれませんね。
谷状地形のほうが岩がちなことが多く、岩穴もできやすい気がするので、オオクボ説はかなり気になります。タワンボラのあたりで見つからなかったら、次はこちらかな〜。
2022/11/21 23:04
盛り上がってきましたね〜
こんな記録をリアルタイムで見られるなんて、僕は幸せです
探索ポイントは動物の楽園とのこと
テルくん連れていこうかな

問題はテルくんを行きたい方向へ誘導するのが難しいところ
前回も扇谷でジャブリングするつもりが、反対の磯谷に行ってしまったし…

いやいや、それにしても、他の方のブログを読んでこれだけ惹き込まれるものは、そうそうないです

作品レベルになっとります!
もんり
2022/11/24 9:02
moriman1971さん
もんりさんにそう言っていただけると光栄です!これでベロリ穴がバシッと見つかるとなおいいんですけどね〜。
動物の気配は本当に濃いですよ。カモシカも2回ほど見ました。ぜひテルくんとおいでください〜。テルくんの嗅覚でベロリ穴も見つかるかもしれませんね。
わんこは自然環境に連れ出すとテンション上がって走り回りまくりますよね。扇谷のつもりが磯谷って、すごいダッシュ力だなぁ…。
2022/11/24 22:58
hillwandererさんのコメントを真に受けて、テルくんとお邪魔しちゃいました
それにしても、磯谷北又左岸の地形は厳しいですね〜。驚きました
テルくんの嗅覚は不発でしたが、終始ドキドキが止まらず、たまらなく楽しい時間を過ごせました。これも隊長のおかげであります。ありがとうございました!

hillwandererさんの記録を読み返してみると、
1 hillwandererレベルが苦戦する地形には、ベロリ穴はなさそう。もう少し(苦戦しないレベルの)易しい地形ではないか
2 北又と南又の分岐の二俣と、手前の二俣(465付近)が意外と似ている。→ これを勘違いすると、ベロリンアナをボッカダニと誤認しそう
3 本当に民話の地形があるとすると、地図に何らかの形で落ちていそう
4 下流側から足跡を辿ったという民話を受けるなら、それは、動物が追い込まれそうな地形ではないか → テルくんが〇〇を追い込む場合、たいてい、谷筋かその谷筋の斜面で、上流側が崖か段差になっているパターンです。尾根には追い込んだことがありません

※ 本当は別のお沢を詰める予定でしたが、しょぼい沢型の探索になってしましました
以上、報告終わります  もんり隊員より
2022/11/26 21:21
moriman1971さん
やっぱりもんりさんも磯谷に入られてたんですね!昨日、私も磯谷に入ったのですが、駐車スペースに犬用のカゴ?が載った車が停まっていたので、も、もしかして…と思っていました。テルくんもなかなかシブいルートを選びましたね〜。稜線上の池は、私も先週見つけてびっくりしました。北又左岸の磯倉のクラ(岩場)は、磯谷右岸尾根に上がると正面に見えて、なかなか壮観ですよね。
私の方は、タワンボラ周辺の再探索と、南又の方のオオクボダニの探索をしたのですが、なんと! ベロリ穴は見つかりませんでした…。
「美濃徳山の地名」に記載されている付近はけっこう隈なく探した(つもり)なので、ここまで探して見つからないと、別の場所にあるのでは…と疑ってしまいます。ベロリ穴、なかなか手ごわい!
もんりさんのおっしゃるとおり、磯谷の二俣ってけっこう紛らわしいですよね。もしかしてこれが原因で、タワンボラではなくボッカダニのほうにベロリ穴があったりして…。それと、「動物が追い込まれそうな地形」とのご指摘ですが、第一次の記録にも書きましたが、実際、伝統的なクマ猟はもんりさんがおっしゃるような地形で行っていたそうです(さすがテルくん、○○ハンターですね!)。ベロリ穴はクマと関連して描かれているので、そうした地形に存在する可能性が高いと思っています。
ベロリ穴、どこにあるんでしょうね〜。なかなか見つからないのは残念てすが、考えるだけでも楽しいです。
2022/11/27 9:40
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