台高山脈全山縦走 …あとちょっとのところで断念!


- GPS
- 80:00
- 距離
- 62.2km
- 登り
- 3,793m
- 下り
- 3,538m
コースタイム
11/23(日) マブシ峰4:50~尾鷲辻~正木ヶ原~日出ヶ岳~大台ヶ原駐車場~川上辻~金明水~大台辻~添谷山~御座嵓~引水サコ~振子辻~16:15 1050m鞍部△(行動時間:11時間25分)
11/24(月) 1050m鞍部4:40~父ヶ谷の高~湯谷の頭~山の神の頭~カコウキ越~地池越~1164m峰~馬の鞍峰~弥次平峰~ホウキガ峰~池小屋山~16:35霧降山△(行動時間:11時間55分)
11/25(火) 霧降山6:00~赤嵓山~千石峰~笹ヶ峰~明神岳~明神平~11:35大又バス停 (行動時間:5時間35分)
天候 | 22日 快晴 23日 晴れのち曇り 24日 快晴 25日 雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2014年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り: 大又バス停からコミュニティバスで東吉野村役場まで(100円)。東吉野村役場から奈良交通バスで近鉄榛原駅まで(880円)。コミュニティバス大又線はハイエース8人乗り。予約不要だがほぼ平日のみの運転なので注意。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・ 地図からは読み取れないが累積標高差が非常に多く、何よりも体力が必要なコース(甘く見てはいけない!)。3泊4日で台高山脈を尾鷲から全山歩き通すには一日10時間程度行動が必要。苦しい行程が毎日続くことになる。 ・ 全般的にルートは判然としない。各ピークから派生する尾根があいまいでピークからの下りで判断に迷う場合が多い。また、ピークを巻きながらおおよその地形に従って適当に歩くというのも何回か試したが難しかった。結局、稜線を忠実に歩き目印のテープを追ったほうが効率が良い場合が多かった。今回は迷ったときにGPSがとても役に立った。 ・ 川上辻から馬の鞍峰までの長い区間、エスケープがまったく出来ないことに注意。大いにプレッシャーを感じて足を踏み入れるべき。天候悪化が予想される場合は早めの判断が必要になると思う。 ・ 以下は滑落の危険があり要注意。御座嵓~振子辻、湯谷の頭前後、馬の鞍峰の北側。 ・ ガイド地図などの水場のある沢以外でもたいていの沢で水が手に入る。また幕営地も無数にあるので幕営適地マークにこだわらず、気ままに気に入ったところに泊まれば良いと思う。 ・ 全般に藪は薄く歩行に支障は無いが、弥次平峰前後から池小屋山まではヒメシャラの幼木がところどころ生い茂っており鬱陶しい。 ・ 晩秋は日照時間が短いので、出来れば早春狙いのほうがいいだろう。台高は夜歩くのが非常に難しいことが今回身をもってわかった。 |
写真
感想
11/22(土) 快晴
朝一の新幹線の飛び乗り、名古屋で乗り換え、尾鷲駅に10:45に到着した。紀伊半島はさすがに遠い。登山口の栃山林道までタクシーで行こうとしたがクチスボダムまでで通行止めになっていた。仕方なくタクシーを降り、車道をトボトボ歩く。栃山林道に入ってしばらく歩いたところで後ろから来た車のおじさんが上まで乗せてくれるという。林道の逆側の海山町側は通行止めになっていないとのことだった。ありがたく便乗させてもらった。ゲート手前で悪路となったので下ろしてもらった。沢を挟んで対岸の眺めがよく、台高の山並みが大台ケ原まで見渡せた。おじさんが山座同定をしてくれたがとても詳しく、これから行くルートが良くわかった。
林道ゲートを過ぎて更に行くと尾根への取り付き点があった。細い尾根を少し歩くと又口辻に到着。ここからの登山道は尾鷲道という名前が着いているものの、公式には廃道扱いなので注意して進む。奈良三重の県境を巻き道と尾根上と両方を進むことになるが、尾鷲道は見通しがとても利くのでわかりやすかった。木組峠を越え少しいった鞍部で適当に沢に下りてみると水が湧いており水筒を満タンにした。この当たりではたいていの沢で水が得られるとのおじさんの話だったが本当だった。水の鞍部からは北東に大きなマブシ峰(地図ではコブシ峰と表示されているが誤り)が立ちはだかる。日没も近かったがいい幕営地が見つからず、がんばって頂上まで登った。山頂は原っぱになっており、テント張り放題。今日は風も弱くとても快適な場所だった。
まもなく日が暮れた。熊野灘には漁火が見え、尾鷲湾の町の明かりがずいぶん遠くに望めた。やがて真っ暗になりこの日は新月で星が良く見えた。真上には天の川もくっきりで、冬の星座もいろいろ。紀伊半島南部は大都市が無いので星を見るには最適だ。
11/23(日) 晴れのち雲
風弱く気温もそれほど低くなく快適な朝。距離を稼ぐため暗いうちからヘッ電で出発する。雷峠を越え地倉山まで順調にきたが、そこから下りルートがわからず右往左往する。真っ暗な中だましだまし下ってようやく尾根に乗った。台高の山はピークから派生する尾根が顕著でない上、樹木が多くて見通しが悪いので、要注意である。この日は後半でも何回か下り方向を間違えた。堂倉山手前で日の出、熊野灘から堂々たるご来光。尾鷲辻には難なく着いた。ここからは遊歩道なので人が急に多くなる。正木ヶ原からの熊野灘は最高だったが、日出ヶ岳手前で突如ガスが発生しあっという間に曇ってしまった。これ以降風も強く寒かった。今回の縦走最高峰日出ヶ岳展望台からも何も景色は見えず、すごすごと引き返した。
大台ケ原の駐車場まで下り、車道を15分ほど歩くと川上辻に出た。ここからまた縦走路に入るが、ここからも廃道扱いなので立ち入り禁止の看板が仰々しく立っている。多少の罪悪感を感じながら乗り越えて先に進む。川上辻からしばらくは崖の中腹のトラバース路なので転落や落石に注意して慎重に進む。金明水はルンゼ状の岩の隙間から湧き水がドバドバ出ている。こんな珍しい水場は初めてだ。味もまろやかで実にうまい。ラーメンを作って大休止した。
やがてトラバース路は終わり、大台辻の顕著なコルに出る。ここからまた県境尾根を進む。添谷山でルートは北に変わるが、そのまま派生尾根を東に進み林道に下山するマーカーも目立つので要注意だ。私も五分ほど進んで間違いに気づき引き返した。添谷山から振子辻の区間は距離は短いがアップダウンがすごく危険箇所が多い。特に御座嵓前後から引水サコまではロープがほしいほどの悪い尾根だ。おまけに地形が複雑で特に下りで尾根を間違いやすい。今日の終盤でもあるので疲れもピークでなかなか出来高が上がらずやきもきする。今日は父ヶ岳の高を超えておきたかったが明らかに無理で、その手前二つの1094mピーク間の鞍部にかろうじて平坦地を見つけた。日の入りまであと30分ほどは歩けるがもう幕営適地は見つからないかもしれないのでここに投宿決定。三重側の沢に5分ほど下ると幸運にも湧き水も得られた。ここもガイド本などには水場情報は無く、水を求める嗅覚の鋭さに我ながら驚いてしまった(補足:服部文祥さん著「サバイバル登山家」には水の得やすい沢の経験則が記してあり、大変参考になります)。
昨日の開放的な草原も良かったが、この日の森のテント場も最高だった。午後に曇っていた天気も夕方以降回復し、夜は満天の星になった。遠くのかすかな沢音以外何も聞こえず、森は静寂に包まれていた。
11/24(月) 快晴
一昨日と昨日と思った以上に進めなかったのでそろそろ焦ってきていた。おまけに明日の天気予報が悪いほうに傾いて本降りの雨になるとわかった。今日は当初計画していた明神平まで進んでおきたく、更に早い時間に出発。夜明けの気配もまったくないほど真っ暗だ。父ヶ谷の高までは順調に到着。ここからの下りの尾根がわからず何度か間違えた。修正のために登り直しもしたため朝から疲れてしまった。おまけに急斜面で転び、ストックが真っ二つに折れてしまった。更に気がつくと藪に引っ張られたのかリュックにくくりつけていた銀マットもなくなっている。踏んだり蹴ったりだ。明るければこんなミスもしなかったろうに…
なんとかかんとかルートに乗り、日も出て秋色一色の快適な稜線をいく。落ち葉に敷き詰められた尾根は実に気持ちが良い。ただし湯谷の頭の前後も稜線が細く、転落要注意だった。地池越が近づくと稜線は広くなり、安全になってくる。地池越で水を補給し先に進む。この谷は傾斜がゆるく、とても楽に水が取れる。地池越から馬の鞍峰の当たりまでが台高で最も綺麗な区間だろう。稜線もわかりやすいので道迷いの心配もあまりない。楽しみながら歩くことが出来た。春の季節には馬の鞍峰のシロヤシオが見事に開花するそうだ。馬の鞍峰は標高は1177mと低いのに周りは谷も森も深く、独特の景観でとても印象に残った。馬の鞍峰を越えると岩場の様な危ない区間が少し続くが、弥次平峰が近づくと尾根も広くなる。ただ今度はヒメシャラの幼木がすごくて難儀する。このヒメシャラ区間は池小屋山まで断続的に続いた。さすがは南国の山だ。
弥次平峰からはもう難所は無い。ホウキガ峰を越え、順調に池小屋山に到着した。池小屋山のブナはすばらしく、夕方の陽光に照らされ黄金色に輝いており、とてもなごんだ。しかしこの時点でもう4時。当初予定していた明神平までなんてとーんでもない話、あと3時間半はかかる。霧降山で日没となり投宿とした。地面はブナの枯葉で敷き詰められており、銀マットが無くてもふかふかで快適だった。
11/25(火) 雨
天気予報によると朝から雨とのことだったが、昨夜は夜9時ころまで満天の星だった。高見山まで行くにはまだ9時間半も歩かねばならないので、この日は2時半に起き、雨の弱いうちになるべく先に行ってしまう計画だった。しかし、4時前に出発するとひどい濃霧でヘッドライトの明かりが乱反射し、わずか100m進むのにエライ難儀した。踏み跡薄く看板もないこの山域で下手に動くと遭難になりかねない。大事をとって明るくなるまで待つことにした。
寒いのでフライシートをかぶって休むが、雨風も強くなってきて、この状況で2時間耐えるのは苦行だった。6時を過ぎるとなるとなんとかライトなしでも歩けるようになったため、恐る恐る進む。幸いこの先は尾根もルートもはっきりしており迷いようが無かった。千石峰の登りがつらかったが、その後は笹ヶ峰、明神岳と傾斜が緩く、ブナの綺麗な林が続いた。雨が降っていなければどんなによかったか。明神平につくころには何もかもずぶぬれになり、もう一刻も早く下山したくなった。開けた草原にあるあずま屋でお茶をいれ一息ついてみたが戦意喪失は明らか。ここから縦走の北の終点高見山までは整備された登山道をあとわずか半日なのだが… 残念だが最後の最後、すんでのところで縦走をあきらめ、奈良県側の大又に下った。
大又バス停には大きな車庫があり雨宿りできたのでありがたかった。12:42発のコミュニティバスに乗って東吉野村役場までいき、バスを乗り換えて近鉄の榛原駅に出た。冷たい雨が降り続き、湿った服装でこれ以上あちこち歩き回りたくなかった。駅前で食事だけして温泉にも寄らず、一目散に小田原まで帰ってきた。
※関西にこんなバックパック的なワイルドな山行が出来る地帯があったことに驚いた。大台ケ原の遊歩道を除いてまったく人に会わず、静かな山旅ができた。関西では貴重な地帯であり、今後ぜひ守っていきたいものである。
コメント
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台高は主要箇所を除いては、非常にルーファイが難しいです。特に悪天候の際には。
それと、入山者が少ないので綺麗ですが、熊に注意です。
熊の領域にお邪魔するのですから。
関西在住でもなかなか行かない所です。
コメントありがとうございます
地形の難しさは身を持って体験しました…
大台ケ原の人はすごかったですが、それ以外は静かでしたね。藪が少ないのはよかったです。
熊は結構いるんですかね。北陸や東北に比べると少ないのではないかと思ってましたが…
熊にとっても東北より環境は良いと思います。
この方面でまだ出会ったことはありませんが。(岐阜の飛越トンネル下で車の前を横切って行きましたが)
明神平や大台ケ原は入山する人も多いですけどそこから外れると少ないので。
山深いうえ冬が厳しくないせいでしょうかね。南アの深南部とかと同じような環境なのかもしれませんね。いずれにしても今までノーマークの地帯だったので、思いのほか自然が豊かで私は驚きました。日本広しですね。
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