ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 557190
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
大台ケ原・大杉谷・高見山

台高山脈全山縦走 …あとちょっとのところで断念!

2014年11月22日(土) ~ 2014年11月25日(火)
 - 拍手
GPS
80:00
距離
62.2km
登り
3,793m
下り
3,538m

コースタイム

11/22(土) クチスボダム11:20〜栃山林道〜(途中車に拾われる)〜林道終点〜又口辻〜木組峠〜マブシ峰16:40△(行動時間:5時間20分)

11/23(日) マブシ峰4:50〜尾鷲辻〜正木ヶ原〜日出ヶ岳〜大台ヶ原駐車場〜川上辻〜金明水〜大台辻〜添谷山〜御座堯前水サコ〜振子辻〜16:15 1050m鞍部△(行動時間:11時間25分)

11/24(月) 1050m鞍部4:40〜父ヶ谷の高〜湯谷の頭〜山の神の頭〜カコウキ越〜地池越〜1164m峰〜馬の鞍峰〜弥次平峰〜ホウキガ峰〜池小屋山〜16:35霧降山△(行動時間:11時間55分)

11/25(火) 霧降山6:00〜赤山〜千石峰〜笹ヶ峰〜明神岳〜明神平〜11:35大又バス停 (行動時間:5時間35分)
天候 22日 快晴
23日 晴れのち曇り
24日 快晴
25日 雨
過去天気図(気象庁) 2014年11月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
往き: 紀勢本線尾鷲駅からタクシーでクチスボダム下車(1850円)。本当は栃山林道の終点まで行きたかったが、通行止めだった。
帰り: 大又バス停からコミュニティバスで東吉野村役場まで(100円)。東吉野村役場から奈良交通バスで近鉄榛原駅まで(880円)。コミュニティバス大又線はハイエース8人乗り。予約不要だがほぼ平日のみの運転なので注意。
コース状況/
危険箇所等
・ 地図からは読み取れないが累積標高差が非常に多く、何よりも体力が必要なコース(甘く見てはいけない!)。3泊4日で台高山脈を尾鷲から全山歩き通すには一日10時間程度行動が必要。苦しい行程が毎日続くことになる。
・ 全般的にルートは判然としない。各ピークから派生する尾根があいまいでピークからの下りで判断に迷う場合が多い。また、ピークを巻きながらおおよその地形に従って適当に歩くというのも何回か試したが難しかった。結局、稜線を忠実に歩き目印のテープを追ったほうが効率が良い場合が多かった。今回は迷ったときにGPSがとても役に立った。
・ 川上辻から馬の鞍峰までの長い区間、エスケープがまったく出来ないことに注意。大いにプレッシャーを感じて足を踏み入れるべき。天候悪化が予想される場合は早めの判断が必要になると思う。
・ 以下は滑落の危険があり要注意。御座堯楚胸卍圈湯谷の頭前後、馬の鞍峰の北側。
・ ガイド地図などの水場のある沢以外でもたいていの沢で水が手に入る。また幕営地も無数にあるので幕営適地マークにこだわらず、気ままに気に入ったところに泊まれば良いと思う。
・ 全般に藪は薄く歩行に支障は無いが、弥次平峰前後から池小屋山まではヒメシャラの幼木がところどころ生い茂っており鬱陶しい。
・ 晩秋は日照時間が短いので、出来れば早春狙いのほうがいいだろう。台高は夜歩くのが非常に難しいことが今回身をもってわかった。

尾鷲駅よりスタート
2014年11月22日 10:52撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/22 10:52
尾鷲駅よりスタート
クチスボダムで通行止め。タクシー降りて歩きます。
2014年11月22日 11:21撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/22 11:21
クチスボダムで通行止め。タクシー降りて歩きます。
ご親切な方に乗せてもらい栃山林道のゲート近くまで乗せていただきました。大感謝です。車を降りると台高の山並みが一望です。
2014年11月22日 12:24撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
4
11/22 12:24
ご親切な方に乗せてもらい栃山林道のゲート近くまで乗せていただきました。大感謝です。車を降りると台高の山並みが一望です。
尾鷲道に入る。古和谷からの登山道は今年整備されたそうだ。尾鷲道完全制覇にこだわるならこちら。
2014年11月22日 13:36撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/22 13:36
尾鷲道に入る。古和谷からの登山道は今年整備されたそうだ。尾鷲道完全制覇にこだわるならこちら。
稜線はやぶも少なく歩きやすい。
2014年11月22日 14:20撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/22 14:20
稜線はやぶも少なく歩きやすい。
裸地から大峰方面一望。
2014年11月22日 14:44撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/22 14:44
裸地から大峰方面一望。
秋色です。
2014年11月22日 15:32撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/22 15:32
秋色です。
日没近し。急がねば。
2014年11月22日 16:33撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/22 16:33
日没近し。急がねば。
マブシ峰の登り。太陽との競争になってきた。
2014年11月22日 16:33撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/22 16:33
マブシ峰の登り。太陽との競争になってきた。
何とか太陽に勝って到着。日没見ながらテント張ります。
※コブシ峰の表示は間違いでマブシ峰が正しいとのこと。
2014年11月22日 17:11撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/22 17:11
何とか太陽に勝って到着。日没見ながらテント張ります。
※コブシ峰の表示は間違いでマブシ峰が正しいとのこと。
絶景独り占めです。
2014年11月22日 17:16撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
4
11/22 17:16
絶景独り占めです。
翌朝。堂倉山付近でご来光。
2014年11月23日 06:56撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/23 6:56
翌朝。堂倉山付近でご来光。
大台ケ原
2014年11月23日 07:38撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/23 7:38
大台ケ原
熊野灘に太陽が映る。
2014年11月23日 07:44撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/23 7:44
熊野灘に太陽が映る。
日出が岳山頂。あれれ。天気が突然悪化。
2014年11月23日 08:05撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/23 8:05
日出が岳山頂。あれれ。天気が突然悪化。
川上辻からまた廃道へ。微妙に曲がってて不安な安心橋を渡る。
2014年11月23日 09:25撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
4
11/23 9:25
川上辻からまた廃道へ。微妙に曲がってて不安な安心橋を渡る。
金明水は裏側の岩からドバドバ出てます。
2014年11月23日 09:45撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
3
11/23 9:45
金明水は裏側の岩からドバドバ出てます。
良い看板。
2014年11月23日 10:55撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/23 10:55
良い看板。
御座瑤牢箴譴粘躙韻米饅蠅世辰拭山頂の看板を撮るのがやっと。
2014年11月23日 12:22撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/23 12:22
御座瑤牢箴譴粘躙韻米饅蠅世辰拭山頂の看板を撮るのがやっと。
引水サコ。ここは素晴らしい幕営地です。泊まりたかった。水場も近し。
2014年11月23日 12:46撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/23 12:46
引水サコ。ここは素晴らしい幕営地です。泊まりたかった。水場も近し。
細いコルの平坦地でビバークになりました。静かな森で良かったです。
2014年11月23日 21:53撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/23 21:53
細いコルの平坦地でビバークになりました。静かな森で良かったです。
三日目もいい天気。
2014年11月24日 07:01撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/24 7:01
三日目もいい天気。
地池越は日が当たらず暗かった。でも雰囲気はとても良い。
2014年11月24日 08:59撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/24 8:59
地池越は日が当たらず暗かった。でも雰囲気はとても良い。
ここの谷は傾斜が緩く水が取りやすい。
2014年11月24日 08:59撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/24 8:59
ここの谷は傾斜が緩く水が取りやすい。
また秋色一色になってきた。
2014年11月24日 09:33撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/24 9:33
また秋色一色になってきた。
癒される疎林です。
2014年11月24日 10:35撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/24 10:35
癒される疎林です。
1164で大休止。良いピークです。
2014年11月24日 11:18撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
3
11/24 11:18
1164で大休止。良いピークです。
馬の鞍峰目指して。
2014年11月24日 11:38撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/24 11:38
馬の鞍峰目指して。
だんだんいい雰囲気になってきた。
2014年11月24日 11:38撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/24 11:38
だんだんいい雰囲気になってきた。
到着!
2014年11月24日 11:40撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
3
11/24 11:40
到着!
馬の鞍峰はとても雰囲気があっていい山頂です。いっぺんに気に入りました。
2014年11月24日 11:42撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/24 11:42
馬の鞍峰はとても雰囲気があっていい山頂です。いっぺんに気に入りました。
ここから先は稜線が細く要注意地帯。
2014年11月24日 11:42撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/24 11:42
ここから先は稜線が細く要注意地帯。
こんなしんどいルンゼもあります。フィクスロープがあるので大丈夫ですが。
2014年11月24日 12:13撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/24 12:13
こんなしんどいルンゼもあります。フィクスロープがあるので大丈夫ですが。
弥次平峰へ。
2014年11月24日 12:53撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/24 12:53
弥次平峰へ。
またもいい雰囲気に。
2014年11月24日 12:53撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/24 12:53
またもいい雰囲気に。
しかしこのあたりからヒメシャラの幼木ヤブに悩まされる。
2014年11月24日 15:45撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/24 15:45
しかしこのあたりからヒメシャラの幼木ヤブに悩まされる。
一気に飛んで池小屋山へ。この間集中して歩いていたため写真撮るのをすっかり忘れた。
2014年11月24日 16:02撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/24 16:02
一気に飛んで池小屋山へ。この間集中して歩いていたため写真撮るのをすっかり忘れた。
日没です。
2014年11月24日 16:02撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/24 16:02
日没です。
池小屋山はブナがとてもきれいな山でした。新緑の時期にもぜひ来てみたい。
2014年11月24日 16:10撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/24 16:10
池小屋山はブナがとてもきれいな山でした。新緑の時期にもぜひ来てみたい。
霧降山で日没になりました。明日は雨なのでこの晴天も見納め。
2014年11月24日 16:10撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/24 16:10
霧降山で日没になりました。明日は雨なのでこの晴天も見納め。
最終日。雨がひどく取れた写真はこれだけ。赤山はシャクナゲに囲まれたピークだった。
2014年11月25日 06:52撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/25 6:52
最終日。雨がひどく取れた写真はこれだけ。赤山はシャクナゲに囲まれたピークだった。
天気が悪すぎて明神平からほうほうの体でエスケープしました。下界は紅葉が見事でした。
2014年11月25日 11:06撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
11/25 11:06
天気が悪すぎて明神平からほうほうの体でエスケープしました。下界は紅葉が見事でした。
いやー綺麗です。
2014年11月25日 11:07撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/25 11:07
いやー綺麗です。
大又川沿いの道路はなぜか大ミミズが大発生していた。気持ち悪いったら…
2014年11月25日 11:22撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/25 11:22
大又川沿いの道路はなぜか大ミミズが大発生していた。気持ち悪いったら…
コミュニティーバスで街に出ます。料金は百円と激安。
2014年11月25日 12:22撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
2
11/25 12:22
コミュニティーバスで街に出ます。料金は百円と激安。
近鉄の榛原駅にようやく到着。雨は強くなるばかり。最後の最後で天気が悪くて残念。
2014年11月25日 15:00撮影 by  RICOH GX200 , RICOH
1
11/25 15:00
近鉄の榛原駅にようやく到着。雨は強くなるばかり。最後の最後で天気が悪くて残念。
撮影機器:

感想

11/22(土) 快晴
 朝一の新幹線の飛び乗り、名古屋で乗り換え、尾鷲駅に10:45に到着した。紀伊半島はさすがに遠い。登山口の栃山林道までタクシーで行こうとしたがクチスボダムまでで通行止めになっていた。仕方なくタクシーを降り、車道をトボトボ歩く。栃山林道に入ってしばらく歩いたところで後ろから来た車のおじさんが上まで乗せてくれるという。林道の逆側の海山町側は通行止めになっていないとのことだった。ありがたく便乗させてもらった。ゲート手前で悪路となったので下ろしてもらった。沢を挟んで対岸の眺めがよく、台高の山並みが大台ケ原まで見渡せた。おじさんが山座同定をしてくれたがとても詳しく、これから行くルートが良くわかった。
 林道ゲートを過ぎて更に行くと尾根への取り付き点があった。細い尾根を少し歩くと又口辻に到着。ここからの登山道は尾鷲道という名前が着いているものの、公式には廃道扱いなので注意して進む。奈良三重の県境を巻き道と尾根上と両方を進むことになるが、尾鷲道は見通しがとても利くのでわかりやすかった。木組峠を越え少しいった鞍部で適当に沢に下りてみると水が湧いており水筒を満タンにした。この当たりではたいていの沢で水が得られるとのおじさんの話だったが本当だった。水の鞍部からは北東に大きなマブシ峰(地図ではコブシ峰と表示されているが誤り)が立ちはだかる。日没も近かったがいい幕営地が見つからず、がんばって頂上まで登った。山頂は原っぱになっており、テント張り放題。今日は風も弱くとても快適な場所だった。
 まもなく日が暮れた。熊野灘には漁火が見え、尾鷲湾の町の明かりがずいぶん遠くに望めた。やがて真っ暗になりこの日は新月で星が良く見えた。真上には天の川もくっきりで、冬の星座もいろいろ。紀伊半島南部は大都市が無いので星を見るには最適だ。

11/23(日) 晴れのち雲
 風弱く気温もそれほど低くなく快適な朝。距離を稼ぐため暗いうちからヘッ電で出発する。雷峠を越え地倉山まで順調にきたが、そこから下りルートがわからず右往左往する。真っ暗な中だましだまし下ってようやく尾根に乗った。台高の山はピークから派生する尾根が顕著でない上、樹木が多くて見通しが悪いので、要注意である。この日は後半でも何回か下り方向を間違えた。堂倉山手前で日の出、熊野灘から堂々たるご来光。尾鷲辻には難なく着いた。ここからは遊歩道なので人が急に多くなる。正木ヶ原からの熊野灘は最高だったが、日出ヶ岳手前で突如ガスが発生しあっという間に曇ってしまった。これ以降風も強く寒かった。今回の縦走最高峰日出ヶ岳展望台からも何も景色は見えず、すごすごと引き返した。
 大台ケ原の駐車場まで下り、車道を15分ほど歩くと川上辻に出た。ここからまた縦走路に入るが、ここからも廃道扱いなので立ち入り禁止の看板が仰々しく立っている。多少の罪悪感を感じながら乗り越えて先に進む。川上辻からしばらくは崖の中腹のトラバース路なので転落や落石に注意して慎重に進む。金明水はルンゼ状の岩の隙間から湧き水がドバドバ出ている。こんな珍しい水場は初めてだ。味もまろやかで実にうまい。ラーメンを作って大休止した。
 やがてトラバース路は終わり、大台辻の顕著なコルに出る。ここからまた県境尾根を進む。添谷山でルートは北に変わるが、そのまま派生尾根を東に進み林道に下山するマーカーも目立つので要注意だ。私も五分ほど進んで間違いに気づき引き返した。添谷山から振子辻の区間は距離は短いがアップダウンがすごく危険箇所が多い。特に御座前後から引水サコまではロープがほしいほどの悪い尾根だ。おまけに地形が複雑で特に下りで尾根を間違いやすい。今日の終盤でもあるので疲れもピークでなかなか出来高が上がらずやきもきする。今日は父ヶ岳の高を超えておきたかったが明らかに無理で、その手前二つの1094mピーク間の鞍部にかろうじて平坦地を見つけた。日の入りまであと30分ほどは歩けるがもう幕営適地は見つからないかもしれないのでここに投宿決定。三重側の沢に5分ほど下ると幸運にも湧き水も得られた。ここもガイド本などには水場情報は無く、水を求める嗅覚の鋭さに我ながら驚いてしまった(補足:服部文祥さん著「サバイバル登山家」には水の得やすい沢の経験則が記してあり、大変参考になります)。
 昨日の開放的な草原も良かったが、この日の森のテント場も最高だった。午後に曇っていた天気も夕方以降回復し、夜は満天の星になった。遠くのかすかな沢音以外何も聞こえず、森は静寂に包まれていた。

11/24(月) 快晴
 一昨日と昨日と思った以上に進めなかったのでそろそろ焦ってきていた。おまけに明日の天気予報が悪いほうに傾いて本降りの雨になるとわかった。今日は当初計画していた明神平まで進んでおきたく、更に早い時間に出発。夜明けの気配もまったくないほど真っ暗だ。父ヶ谷の高までは順調に到着。ここからの下りの尾根がわからず何度か間違えた。修正のために登り直しもしたため朝から疲れてしまった。おまけに急斜面で転び、ストックが真っ二つに折れてしまった。更に気がつくと藪に引っ張られたのかリュックにくくりつけていた銀マットもなくなっている。踏んだり蹴ったりだ。明るければこんなミスもしなかったろうに…
 なんとかかんとかルートに乗り、日も出て秋色一色の快適な稜線をいく。落ち葉に敷き詰められた尾根は実に気持ちが良い。ただし湯谷の頭の前後も稜線が細く、転落要注意だった。地池越が近づくと稜線は広くなり、安全になってくる。地池越で水を補給し先に進む。この谷は傾斜がゆるく、とても楽に水が取れる。地池越から馬の鞍峰の当たりまでが台高で最も綺麗な区間だろう。稜線もわかりやすいので道迷いの心配もあまりない。楽しみながら歩くことが出来た。春の季節には馬の鞍峰のシロヤシオが見事に開花するそうだ。馬の鞍峰は標高は1177mと低いのに周りは谷も森も深く、独特の景観でとても印象に残った。馬の鞍峰を越えると岩場の様な危ない区間が少し続くが、弥次平峰が近づくと尾根も広くなる。ただ今度はヒメシャラの幼木がすごくて難儀する。このヒメシャラ区間は池小屋山まで断続的に続いた。さすがは南国の山だ。
 弥次平峰からはもう難所は無い。ホウキガ峰を越え、順調に池小屋山に到着した。池小屋山のブナはすばらしく、夕方の陽光に照らされ黄金色に輝いており、とてもなごんだ。しかしこの時点でもう4時。当初予定していた明神平までなんてとーんでもない話、あと3時間半はかかる。霧降山で日没となり投宿とした。地面はブナの枯葉で敷き詰められており、銀マットが無くてもふかふかで快適だった。

11/25(火) 雨
 天気予報によると朝から雨とのことだったが、昨夜は夜9時ころまで満天の星だった。高見山まで行くにはまだ9時間半も歩かねばならないので、この日は2時半に起き、雨の弱いうちになるべく先に行ってしまう計画だった。しかし、4時前に出発するとひどい濃霧でヘッドライトの明かりが乱反射し、わずか100m進むのにエライ難儀した。踏み跡薄く看板もないこの山域で下手に動くと遭難になりかねない。大事をとって明るくなるまで待つことにした。
 寒いのでフライシートをかぶって休むが、雨風も強くなってきて、この状況で2時間耐えるのは苦行だった。6時を過ぎるとなるとなんとかライトなしでも歩けるようになったため、恐る恐る進む。幸いこの先は尾根もルートもはっきりしており迷いようが無かった。千石峰の登りがつらかったが、その後は笹ヶ峰、明神岳と傾斜が緩く、ブナの綺麗な林が続いた。雨が降っていなければどんなによかったか。明神平につくころには何もかもずぶぬれになり、もう一刻も早く下山したくなった。開けた草原にあるあずま屋でお茶をいれ一息ついてみたが戦意喪失は明らか。ここから縦走の北の終点高見山までは整備された登山道をあとわずか半日なのだが… 残念だが最後の最後、すんでのところで縦走をあきらめ、奈良県側の大又に下った。
 大又バス停には大きな車庫があり雨宿りできたのでありがたかった。12:42発のコミュニティバスに乗って東吉野村役場までいき、バスを乗り換えて近鉄の榛原駅に出た。冷たい雨が降り続き、湿った服装でこれ以上あちこち歩き回りたくなかった。駅前で食事だけして温泉にも寄らず、一目散に小田原まで帰ってきた。

※関西にこんなバックパック的なワイルドな山行が出来る地帯があったことに驚いた。大台ケ原の遊歩道を除いてまったく人に会わず、静かな山旅ができた。関西では貴重な地帯であり、今後ぜひ守っていきたいものである。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:3240人

コメント

ルーファイ
台高は主要箇所を除いては、非常にルーファイが難しいです。特に悪天候の際には。
それと、入山者が少ないので綺麗ですが、熊に注意です。
熊の領域にお邪魔するのですから。
関西在住でもなかなか行かない所です。
2014/12/7 10:05
Re: ルーファイ
コメントありがとうございます
地形の難しさは身を持って体験しました…
大台ケ原の人はすごかったですが、それ以外は静かでしたね。藪が少ないのはよかったです。
熊は結構いるんですかね。北陸や東北に比べると少ないのではないかと思ってましたが…
2014/12/7 10:24
Re[2]: ルーファイ
熊にとっても東北より環境は良いと思います。
この方面でまだ出会ったことはありませんが。(岐阜の飛越トンネル下で車の前を横切って行きましたが)
明神平や大台ケ原は入山する人も多いですけどそこから外れると少ないので。
2014/12/7 18:34
Re[3]: ルーファイ
山深いうえ冬が厳しくないせいでしょうかね。南アの深南部とかと同じような環境なのかもしれませんね。いずれにしても今までノーマークの地帯だったので、思いのほか自然が豊かで私は驚きました。日本広しですね。
2014/12/7 22:50
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。

ルートを登録する

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら