石鎚山 - 面河ルート
- GPS
- 12:10
- 距離
- 19.5km
- 登り
- 2,239m
- 下り
- 2,234m
コースタイム
- 山行
- 9:49
- 休憩
- 2:13
- 合計
- 12:02
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
2020年夏の目標「石鎚山の主要登山道をすべて踏破!」第1弾は面河ルート。
石鎚山には、2015年秋の四国遍路通し打ちの折に、64番前神寺を打った後、伊予西条からバスに乗ってロープウェイ山麓駅。翌朝ロープウェイを上がって、成就社から表参道ルートが初登頂コースだった。あの日は偶然にも閉山式の日で当時まだ何も知らなかった私は、成就社に溢れる白装束の人々や、法螺貝を吹き鳴らす行者さんの一群に何事かと驚き、登っていく時には鎖という鎖に何十人もの白装束の人たちが取り憑いて「そいや!おりゃ!」と掛け声をかけながら登っていく様に感嘆しながら、全ての鎖の巻き道を行った。頂上では小さな神社前の小さな広場も白装束の人でいっぱいだった。実は、私はこの石鎚山登山でも、菅笠白衣金剛杖のバリバリお遍路装束のままで登っていたので、なにげに周囲に溶け込んでいたのだが。
ともあれ、あの当時はまだ四国遍路のルート上の山道しか歩いたことが無く、登山のことなど何も知らず、石鎚山に幾つも登頂ルートがあることも知らなかった。
今回ルートをいくつか選定している中で、とりあえず口コミなどで一番長くてきついルートだが、風光明媚でアドベンチャー感ありという印象を受けた面河ルートから攻めてみることにした。
もちろん、私も巨神兵にとっても初めてのルートで、巨神兵に至ってはこれが初めての石鎚山である。
早朝6時半、昨日下見に来ておいた面河渓谷入り口の駐車場に車を停める。他には誰も停めていない。谷間なので朝日がまだ差し込まず、渓谷沿いの遊歩道の木々の下に入るととても暗い。登山口の崩れ落ちそうな石段を登り、鳥居をくぐって登山開始だ。
行者さん達が修行で登る時にも使われるルートのようで、かなり崩れてはいるものの石段は続き、序盤からいっきに高度を上げていく。ようやく稜線に出ると、そこからはぐっと傾斜はゆるくなった代わりに、木道や梯子満載のフィールドアスレチック状態になった。天気は良かったので、足場が濡れていないのは本当にありがたい。これで小雨だったり夜露に濡れていたりしたら危険度が爆上がりだっただろう。
山肌に小さな滝ができている箇所が幾つかあり、フィルター付き水筒を持っているので、飲水の補給は十分にできた。
険しい岩の斜面をまくように設置されている木道が延々と続く。その長さと労働量、これを作ってくれて整備してくれている人たちにはただただ頭が下がる。
徐々に周囲の木立が薄くなり、向こうに目指す石鎚山頂が見える。てっぺんの部分だけ雲に覆われていて山小屋や神社は見えない。
前方、トレイルの両側に茂る笹の向こうに、何やら白い人工の建物が見えた。避難小屋のようだ。愛媛大学山岳会石鎚小屋と看板があり、鍵はかかっていない。中に入ってみるとそれは立派な避難小屋だった。周囲には木で床を作ったテント場もあり、トイレもあった。
今日は私達はピストンで日帰りコースなのだが、万が一にも復路で天候が急変したり何かあった時にはここにこの避難小屋があると知り、とても心強かった。
この小屋を過ぎた辺りから、周囲には高い木がなくなった。笹や尖った草が生い茂る山の斜面からは素晴らしい眺めが見渡せる代わりに、木々に守られず風雨にさらされた山道や木道のいたみは酷く、足を滑らせるととても良くない感がダダ増しとなる。一箇所、木道がほぼ落ちている箇所があり、とにかく体重が私の倍以上ある巨神兵が先行し、強度確認。一歩目は良かったが、高い部分に移ろうと体重を移した途端に「バキッ!」と今乗っていた部分が落ちた。幸い、砂礫が積もった部分だったので滑落することはなく、その後そろそろと通った私の体重はなんとか支えてくれていた。
ここからは、ただひたすら笹に囲まれた斜面を歩く。石鎚山はすぐそこに見えていて、ただ斜面をトラバースするだけだと思ったのに、歩いてみると山頂は全然近づく気配がない。周りの景色が雄大すぎてサイズ感覚が狂ってしまう。しかも、木陰が無くなったので暑い。
とにかく前へ前へと向かううちに、ようやく再び木立の中に入ってしばらく道がくねくね上に向かったと思うと、私達はこれまでいた斜面とは逆の斜面側に出た。
山の反対側は、白い靄に包まれ、全く別世界だった。足元、私達の左側にはたぶん斜面か崖があるはずなのだが、真っ白で何も見えない。向かっていく方向はある程度見えるので、ここに来てヘマをしないように慎重に道を進み、とうとう記憶の奥に見覚えのある鉄の階段や通路の表参道と合流した。
石段を登っていくと遂に石鎚山頂の山荘と神社に到着。5年前に来た時には白装束の信者さんたちで埋め尽くされていた広場は、ほんの数人がいるだけでとても静かだ。
私達の今回の目標もう一つ、それは天狗岳に挑戦だった。
もちろん「天気が良い場合のみ」という条件付きだった。無茶はしても無理やバカはしないというのが私達の山歩きのポリシーであり、そもそも私は冒険好きでも無い。
目の前に見える天狗岳は、見事に半分から左側は白い靄で、右側は快晴カラカラだった。そして人がいっぱいですれ違うこともできないという恐い状況でもない。というか、誰もいない。
これは、良いコンディションだ。行こう。
天狗岳への道、たしかに大部分は十分な広さがあり見た目よりは全然怖くなかったが、最後の幾つかの尖った岩の上を行く時は、むちゃくちゃ怖かった。向こう側の状況がわからず、不用意に立ち上がってバランスを崩したり風に煽られて落ちるのは恐ろしいので、岩の上に腰をおろしてずりずりと這いながら進んだ。
そうしていると、どうやらロッククライミングの人らしいとても軽装で薄い靴を履いた男性が、その岩の上をひょいひょいと飛ぶように歩いて天狗岳にあっという間に到達し、また帰っていった。さすがだ。
そんな曲芸はできない私は時間をかけてようやく天狗岳に到達。かかった時間の分だけ堪能しようとしばらく座っていたが、もちろんそこでも立ち上がって辺りを見回すような事はできない。
弥山側に戻り、山荘の中もとても静かだった。石鎚山Tシャツを購入し、ジュースを飲んで一息ついた後、ただちに下山開始した。
ここまで来たあの長い長い道を今日中に暗くなる前に下りなくてはならないのだ。
来た時と同じ道なので、景色を見ることもなく早足でただただ歩いた。空には雲が広がり始めている。雨でも振られてしまっては、木立の陰がない斜面上なら濡れねずみだし、木立に入ったら入ったで足元は濡れたら恐い石ばかりになるのだ。
一度通っている分、少し見た目が怪しそうな木道や梯子でも強度は往路で確認済みだから、不安なくさっさと歩いていける。復路は全く休憩無しで、ほとんど駆け抜けていた。それでも、稜線の端まで来て、最後の急な下りは木々と山の陰に入り、いっきに周囲が薄暗くなった。もう夕方の6時だ。
ようやく登山口の白い鳥居にたどり着き、無事下山できた時には心の底から安堵したのだった。
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