【薬師見平】伊藤新道、上ノ廊下【雲ノ平】ピークを踏まない夏休み
- GPS
- 46:09
- 距離
- 68.8km
- 登り
- 4,680m
- 下り
- 4,674m
コースタイム
- 山行
- 11:50
- 休憩
- 1:22
- 合計
- 13:12
- 山行
- 13:52
- 休憩
- 0:05
- 合計
- 13:57
- 山行
- 6:47
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 7:27
- 山行
- 10:05
- 休憩
- 0:56
- 合計
- 11:01
天候 | 28日、晴れ後雨時々曇り 29日、晴れ 30日晴れ後曇り 31日、晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
■伊藤新道 水量は少な目のようです、初見ですが多いとは感じませんでした 下記URLに詳細がありますのでそちらに目を通した方がよいです 選択肢がないのでフェルト靴にしましたが滑らないのでラバー推奨 (公式でもそう述べています) 登山道として復活していますが沢登り要素を多分に有しRF能力を問われます それなりのバリエーション経験があり沢登り2級程度登れる実力は必要です https://kumonodaira.net/ito_shindo/index.html ■三俣山荘、雲ノ平 どちらも水量が細く枯れそうです、不安であれば手前で汲むことをお勧めします ■上ノ廊下 下降で使用、過剰なフル装備で臨んだ 例年に比べ水量が少ないとのことでしたが激流箇所は多い 水深も深く水温は低い、下降は浮力が強いと簡単に流されコントロール不能に陥り、浮力を弱めた場合遊泳力がないと容易に溺れます 入念な下調べと準備をして臨んでいます、安易に入れる場所ではありません ■無名沢(※仮 赤牛岳北西沢) 薬師見平へ最短で遡行できる沢と思われる 最初の大滝はクライミングで突破可能に見えたが、場所と重量と不確定要素も多いため高巻き 高巻き後の復帰は場所を選ばないとしばらく絶壁なので注意が必要 1800m手前で間違い尾根があるので要注意(水量はこちらの方が多い) 水は2100m付近まで出ていた 登りきると水路跡ができておりそこを進んでいく、藪が出るがそれほど長くはない ■薬師見平 2100m付近にある高層湿原、踏むと少し水が染み出す グランドシートはあったほうがいいかも、時期によっては虫が多そう(蚊がいた) 池塘の水は思ったより澄んでいるので浄水器あればここから取ってもよさそう ■中ノタル沢 水流跡の藪を漕ぐと源頭部へ、足元は崩壊しているので少し左に巻いて緩やかな場所で下りられる所を探したほうがいい 滝が多く際どい個所が多いので遠慮なくロープを出した、5回以上は懸垂した 50mロープでギリギリの場所もあった、まともな支点が取れる箇所は少ない ■奥黒部ヒュッテ 快適です、空いてる、奥地なのに色々安い、水が豊富、テン場快適 ■平の渡場まで ほぼ下ノ廊下、丸太橋と階段梯子が続く、整備自体も関西電力だしそりゃ似てる ■避難小屋 通路にあって屋根がある、非常に快適そうだった、○○しちゃいけないけど●●が置いてある、大人数は無理です ■針ノ木谷 一般道ですが荒れ気味、渡渉が多く沢ととらえたほうが歩くのは楽 渡渉点を見逃しやすいので要注意 |
その他周辺情報 | 温泉 七倉山荘 @660 せっかくの奥地まで来たのだからぜひ 広くはなくて湯温が高い、でもすごくきれい、森林浴もできます ご飯 くるまや https://tabelog.com/nagano/A2005/A200501/20007662/ 胃がへたっていたので蕎麦 |
予約できる山小屋 |
七倉山荘
|
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
日よけ帽子
着替え
靴
ザック
サブザック
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材
飲料
ガスカートリッジ
コンロ
食器
ライター
地図(地形図)
コンパス
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
ファーストエイドキット
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ヘルメット
ロープ
ハーネス
確保機
ロックカラビナ
カラビナ
クイックドロー
スリング
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感想
元々別の予定が入っていたが二転三転して気づいたら予定が無くなって3連休と4日目夜勤が残った
これは生涯宿題としていた薬師見平へ行くしかないと準備開始
ルートには拘りがあり、どうしても黒部川からアクセスしたかった
今年は黒部川の水量が少ないとのこと
道具も揃っている、これは行くしかない
もちろんエンジョイ沢しか経験のない自分に遡行は無理なので下降で使用
ついでに最近整備された伊藤新道、そして行ったことのない雲ノ平、これも一緒に行ってしまおう
3泊4日の食料、黒部川に耐えうる沢装備、懸垂もある、ロープ、ハーネス等のクライミング装備、ある程度薮にも耐えうる装備も、
なるべく無駄を削ぎ落としても20kgは余裕で超える、水を入れたらちょうど25kgだ
担ぎ慣れないから重い、速度も出ない
大丈夫、時間はある、歩いていればいつか着く
Day1
初日は1時から七倉出発、ひたすら歩いて明るくなる頃湯俣、そこから伊藤新道
水量が明らかに少ないのが分かる、高巻きや渡渉、吊橋等ある程度無視して進んでいける
沢なのか、登山道なのか、よく分からない中途半端な感じで少しもったいない、もう少し水がある時に再訪したいなと思った
その後は雨に降られながら午後2時過ぎに雲ノ平に到着、初めて来た、天国ってこんな感じなのかな?というような穏やかな場所、人気があるのも頷ける
黒部源流の標識を登ってから長かった、距離は近いのに巻きが長い、雪の季節に再訪してみよう、素敵な星が撮れそうだ
テントをセットしご飯を食べ夕方特に染まらないなと夕日を確認してすぐ寝た
Day2
暗いうちにテントを片付けるが周りも結構起きている、でも出るのはいちばん早かった
夜明け前に薬師沢小屋へ、ここの道はめちゃ悪かった、北八ヶ岳を彷彿させる感じで苔むし感満載だった
そのまま大東新道を下りB沢出合で装備チェンジ
いつも海で潜ってる格好に
ウエットスーツは3mmほんのり暖かい
極厚のドライバッグはフロート替わり、深いところは潜ったりしちゃおうとシュノーケルとマスクも付けて完璧だ
河原歩きとゴルジュが交互する、かなりの流れがある場所も多く「コレで水量少ないんかい…」と驚く
ウエットスーツはとても良かった、渓谷沿いに風が吹くが気化熱で熱が奪われることなく夏でも冷える黒部の水は全身を被っても平気だ
フロートの浮力が強く全然潜れなかったけどまぁいいや、ぷかぷか浮いて流されたり楽しむ
しかし川幅が狭くなり先の見えないゴルジュに差し掛かると行けるのかと緊張が走る、その繰り返しだった
12時頃、遡行予定である無名の沢に着いた
いきなり20mクラスの滝がある
登れそうにも見えるけどここでフリーソロして落ちたら屍になるしかないだろう
それよりも水分をよく吸ったザックの重みが異常だ、地球の重力で下に強く引っ張られるのを感じる、この重みで岩登りがまともにできるとは思えない
とりあえず巻くことにした
何となく人の足跡のようなものがあるように思えた、気のせいかもしれないけど
沢の高巻きって本当に斜度がエグい、登る前に薬師見平用の水も汲んだので重さが更にヤバい、速度なんてでない、じっくり進む
適当に登り詰めて沢の音がする方向へ方向転換
トラバースしたら降りられそうだ、良かった
笹を掴みながら沢へ降りられた、安堵する
周りを見回すと上下共に降りた場所以外崖になっていて運がよくいい所に降りられた
以降は核心になるような箇所はなく1級クラスの沢だった、意外だ、来るまで大変な分ここは快適に登れるようだ
途中間違い沢があり過去にある記録を見ると間違えてる人が多いのだが御多分に漏れず自分も間違い沢を40m近くも登ってしまった
水は2100m近くまで出ていた、下で水を汲む必要はなかった、重てぇ…
登りきったら沢筋にできた道の薮を漕いでいく
大きいザックが気に引っかかってしんどいが、それほど長い藪ではなかった
唐突にそれは終わる、視界は開け……穏やかな湿原が現れる
これが、薬師見平か
靴の下がグジュっと湿る、湿原なんだと感じる
しばし見とれる…ということもなく水を吸った荷物を少しでも乾かして軽くしたいので全部ザックから出して乾かす、着てる服もズボンも全部脱いで乾かす、誰もいないしな
テントも張らずグランドシート1枚敷いてそこに大の字になる、ふわふわでめちゃめちゃ気持ちがいい
今いる場所を改めて実感する
本当に来てしまった、
こんな自分なのに、
こんな所に
日が暮れ始める前までぼーっとしていた
何も考えなかった
その後「何か痒いな」と思ったら蚊がいた
湿原だからか、いるんだなこんなところに
急いでテントを設営した
暗くなる前に荷物を回収しテントに入れてご飯を食べてすぐ寝た
Day3
5時前に起きる、日の出はあまりに美しくこの時ほどカメラが欲しいと思ったことはなかった
ゆっくり食事をし、テントを片付ける
名残惜しいのかこの先が憂鬱なのか予定より1時間程遅れて出る
開始して直ぐに藪漕ぎだ、GPS頼りにと言うよりは地面に走る枯れた水路沿いに薮を漕ぎながら進んでみる、すると程なく中ノタル沢源頭部に出た
…地面が崩壊している
それほど高くないが5mくらいか、この荷物だと降りるのはキツい、懸垂にしても支点がない、というかロープ出すの面倒臭い
ということでザックを下に放り投げ空身で降りることにした
ザックを落とす
思ったより勢いがつく、マズイ、止まらん
「止まれー!」
意味無いけど思わず叫ぶ
運良くせり出た潅木に引っかかった
危ない、安易に考えすぎた、ここでザック失ったら死亡確定じゃないか…思わず顔が青くなる
気を取り直して沢を下る、崩壊させながら進むが徐々に沢になり水も出てきて苔で滑る
滝で滑って落ちたらシャレにならないので沢靴に履き替える
行く前からここが1番懸念だった、クライムダウンで無理して落ちてしまわないか、と
しかしそんなことは問題なかった、明らかに自分の技術では降りられないねっていうのがハッキリ分かるのでクライムダウンする気にもならなかった、ロープは遠慮なく出した、少しでも不安があれば懸垂した、生きたもの勝ちだ、カッコつける必要は無い
しかしロクな支点がなくその辺で埋まった不安定な岩しかない、潅木が使えたのは1箇所だけだった
そしてドライロープだがアイスで酷使しまくっていたので保水率が抜群である、完全に水を吸ったロープは通常の倍くらいの重さになっていた
沢で細いロープ使う意味を実感した
また濡れるとよく引っかかるのでスタックしまくる、完全に動かなくなることもあり一度登り返し支点のかけ直しもした
抜く時はパワー全開で引っ張らないと抜けないのでかなり疲労する
何回も懸垂した、
これ、いつ降りられるんだ…
僅か標高500m降りるだけなのに体力と精神の消耗が半端ない
3時間を過ぎた頃、二段ノ滝を懸垂で降りる
50mロープなので切って短くしようかと思ったが50mでちょうどだった、横着せずこれを持ってきてよかった
そして滝を降りて先を見ると…黒部川の本流が見えた、しかも先に滝は無さそうだ
喜びのあまり叫んだ、やっと終わった!!
無事に出合に降りられ安堵する
荷物を乾かしながら再びウエットスーツに換装する
再び上ノ廊下だ、川幅は増して水量も増えている、しかし河原歩きも増えてきた
浅めの場所も流されてみる、コントロール不能に陥るが川の流れに身を任せてみる、ザックが厚いので川底はザックが当たり底以外はウエットスーツがクッションとなって岩にぶつかってもまぁやり過ごせた
14時過ぎに奥黒部ヒュッテへ
本当はもっと先まで、避難小屋までは最低でもと思っていたが出立が遅かったのもあり2時間近く予定より遅れている、これ以上進んでもいい時間には辿り着けなさそう
そしてあらゆる荷物が保水してかなりの重さになっていたので早めに休んで荷物を乾かす作戦にした
無事乗り越えたしビールで祝杯や!
と思ったけど小屋との往復がめんどいし酒が飲めなかったのでやめておいた
残った食材を無理して詰め込んで消費させる
お腹いっぱいだ
距離的に、標高的にも大して歩いていなかったのであまり眠れなかった
Day4
0時前に出る、道中的に不安は少ないが時間は掛かるので憂鬱だった
というのも保護性能の薄い沢靴で元々死んでる両足の親指の爪を歩いている際に何度も打ち付けていたので歩いていると激痛が止まらない、歩き方も不自然になりそのせいで小指を初め何ヶ所か水脹れででき、更に古傷のくるぶしが常にジンジンして痛い
靴下を履くだけで目から星が出る痛さである
手も酷かった、沢が多かったので両手の親指以外はささくれと傷が何ヶ所も出来て雑菌が入ったのか紫に腫れていて触れるだけで痛い、キズパワーパッドを全部使って酷い所に貼るが数が全く足りない
しかし歩かないと帰れないので心を無にして進んでいく
余裕があれば針ノ木谷を源頭まで登る計画だったがそんなものは100パーセント無理で帰るだけで精一杯
針ノ木古道は渡渉もある、一発目からミスって思いっきり転んで全身ずぶ濡れとなった
これなら最初から沢の装備にすればよかったw
乾かしたつもりの荷物も全然軽くなっていなく登りは相変わらず遅い、巻きがかなりの斜度で「こんな道でしたっけ?」と思った
しかし登りは足が痛くないので幸せだった
夜が明ける、空を見上げるとこの旅一番に空が赤く染まっている、いや、ここでかよw
もっと上で見たかったわ…
遅いながらジワジワ登って行った
船窪小屋へ着いた、静かだ、もう登らなくていいけど下るのか…しんどいな
痛みの苦痛に耐えながら下る、たまに足を岩にぶつけて悶絶する
他3日とはまた違った辛さである
あと少し、あと少し、ひたすら無心に降り続け登り始めてから11時間を過ぎた頃…
七倉へ降りた
道路が見えた
開放感で気が緩む
思わず涙ぐむ
足が痛いんじゃぼけー!
長い長い四日間の旅は終わった
全てから解放されてゆっくりしたい…ところだが
実は夕方からの夜勤なのである
頑張らねば、〜完〜
コメント
この記録に関連する登山ルート
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下からの薬師見平はやまとさんも行きたいと言っていたので、この記録はとても貴重だと思います。
詳細な記録ありがとうございました!
去年にテン泊装備で軽やかに降りる姿を思い出し
kaiさんややまとさんならこんなに苦労しないんだろうなぁ、と思い出してましたよ!
沢や薮にも慣れてますし、こういった場所を歩くことで改めて皆様の凄さを痛感した次第です
しかし原始の道を歩くのは楽しいものですね、またどこか行ってしまうかもです
裏銀座を歩くときに見える沢づたいって感じですね〜
なんにしてもまねできない(したくないw)山行素晴らしいです
大事なところ蚊に刺されなくてよかったですね!
一応パンツだけは履いてました!!
地図を見ると野口五郎を中心に回ってるように見えたので野口五郎ラウンドというタイトルでも良かったけど野口五郎登ってないし微妙感満載なので辞めましたw
ソロでしたしメンタルの弱さも痛感しましたけど無事歩ききれたので少しだけ成長したかもです!
わー!去年薬師見平に行かれてたのですね!
今知りました!
最近の薬師見平の記録ないかなぁって探してました。
あった!と思ったらalsoさんでびっくりしました。笑
(あとこの前、Google mapでレストランさがしてたらalsoさんのクチコミ出てきてびっくりでした((≧艸≦*)))
すごい壮絶な記録!すごいです!ソロで。
シュノーケル姿、ちょっと笑っちゃいました((≧艸≦*))
薬師見平、死ぬまでに一度行きたい場所だけど絶対無理なので、羨ましいです(*´ω`*)
赤牛から降りれないかなぁとか。
薬師見平とテントの写真、めっちゃ素敵です♡
いつか旦那を連れてってあげてください。笑
嫌がりそうだけどw
お疲れ様でした!
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