記録ID: 601278
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
積丹・ニセコ・羊蹄山
羊蹄山4往復2011
2011年07月22日(金) ~
2011年07月23日(土)
北海道
体力度
8
2~3泊以上が適当
- GPS
- --:--
- 距離
- 48.1km
- 登り
- 6,271m
- 下り
- 6,273m
コースタイム
1日目
- 山行
- 1:29
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 1:49
距離 5.7km
登り 1,343m
下り 37m
3日目
- 山行
- 0:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 0:00
距離 38.7km
登り 4,908m
下り 5,386m
3日目
- 山行
- 8:14
- 休憩
- 5:54
- 合計
- 14:08
距離 3.6km
登り 12m
下り 826m
14:18
ゴール地点
長文です.
羊蹄山(後方羊蹄山/しりべしやま).標高1,898mの成層火山.蝦夷富士として北海道の象徴のような山.この山には,4本の登山道があり,火口を巡るルートで結ばれています.真狩,倶知安,喜茂別,京極,それぞれの登山口と頂上の標高差は,約1500mで,コースタイムは,往復約8-10時間.この4ルート全てをお鉢巡りでつなぎ,一日で一気に走破することができないだろうか.
こんな破天荒なチャレンジを思いついたのは,2010年8月のこと.トレイルランニングのトレーニングのため向かった羊蹄山.真狩登山口から登り,火口を半周してから倶知安登山口へ降り,再び登り返し,火口の残り半分を周り,ピークを経由して,出発点に戻りました.約8時間,コースタイムの約半分です.2回目の登りは疲労のため,ふらふらになりましたが,ゴールした時の気持ちは最高でした.ゴール後に,次は,残りの喜茂別,京極コースのダブルと考えたのですが,何となく中途半端で計画に美しさを感じない.むしろ,4本全てを一日で登るのはどうだろうと考えました.単純に2倍プラスアルファとして,20時間あれば,走破可能なはずです.ただし,2往復で,このやられようでは,成功はおぼつかない.というわけで,その後,1年かけてトレーニングに打ち込みました.仕事が終わると,当直の日以外は,ほぼ毎日,山を1-2時間走りました.円山や藻岩山は冬でも常に踏み跡がしっかりしていて,夜も走れます.さらに,スノーシューで,砥石山,百松沢山などを登りました.春になり,誕生日が過ぎ,とうとう50歳になりました.雪が解けてからのロングルートのメインは,砥石山としました.手稲山をいくつかのルートをつないで30km,6時間のトレーニングも,よい練習になりました.それでも,20時間近い行動時間になる羊蹄山4往復が可能かどうか,直前まで確信が持てませんでした.
しかし,さらに1年同じトレーニングが可能か?1年後の体力の低下は?などと考えると,もしかしたら今年が最後のチャンスかもしれないという気持ちが強く,日照時間や気温の問題などを考えて,7月下旬,天候が良いことを確認したうえで,金曜日の夜をスタートにすることとしました.
ルートは,真狩,倶知安,京極,喜茂別の順です.喜茂別,京極の両ルートは登ったことがありませんでしたが,昼間なら大丈夫と判断しました.夜間走行の経験は十分にありますが,夜は,知っている道でも,全く違った感じになり,脇道などに迷い込む危険があります.荷物は,緊急時の装備をきちんと携帯した上で,最小限とし,できるだけ軽量化し,一気に走破する計画です.重要なポイントのひとつは補給.食料のメインは,マルトデキストリンとしました.デンプンを加水分解する過程の中間産物で,速やかに吸収,分解されてエネルギーとなる炭水化物です.圧倒的に単位グラムあたりのカロリーが高く,血糖の上昇が穏やかなためインシュリンの過剰分泌による低血糖にもならないので,レースの補給食としてよく使われます.市販品は高価なので,原末を買って溶解し,ジェルパック に詰めて持っていくことにしました.疲労が高度になると食物を受け付けなくなっていくので,手稲山のトレーニングで,テストをおこない,かなり疲れていても摂取できることを確認しました.
いよいよ決行の日が来ました.7月22日金曜日.外来を終え,夕食をすませ,準備をして札幌を発ち,真狩登山口に着いたのが,22時少し前です.そして,22時17分にスタート.ヘッドライトは,バッテリーの節約のため最小光量としましたが,ルート選択に不安はありませんでした.羊蹄山はひたすら登りの山ですが,真狩コースは,若干傾斜が緩いか,少し下る部分が適度に挟まるので,良いリズムで高度を上げていきます.先は長いので,できるだけ小さなステップで刻んでいきます.雲はほとんどなく,下界の街灯りを眺めながら無心に登っていき,気がつくと,ガレ場,そして山小屋への分岐.月齢21日の月明かりの中,羊蹄山山頂のシルエットが見えてきました.外輪山の真狩分岐に着いたのが0時12分.所要時間 1時間53分です.
旧小屋跡を目指して登り,少し行くと倶知安分岐.最初はガレ場です.このコースは,過去にひどい捻挫をしたこともあり,まして夜に下るのは,不安でした.まだ足は大丈夫でしたが,痙攣止めに芍薬甘草湯を服用.ライトを最大光量にして,ポールを使いながら慎重に下ります.無理なステップは厳禁です.ここが最初の関門.しかし,2時間かからずに倶知安登山口に着きました.1時50分.所要時間 1時間32分.最後の緩い下りは,リラックスして少し走りました.水道の水で喉を潤し,ほとんど休憩せずに出発.2時2分.1年前の羊蹄山ダブルでは,6合目くらいから,つらくて何回も休みました.今回も,つらくなかったわけではありませんが,合数を示す標識が待ち遠しくなる状態ではありません.そして,少しずつ空が色づいてきました.3時40分頃の空.
そして2回目のピーク.4時.ほぼ2時間.この時点で,完走の手応えを感じました.刻々と色彩が変わっていく雲海を横目に見ながら,北山へ.1843.7m.雲泉岳の名前の通り,美しい雲海が見渡せる場所です.そして京極ピーク1700m.何人かの若者たちがシュラフに入り込み,日の出を待っていました.4時12分.先を急ごうとした瞬間.みんなが見つめるその方向から太陽が顔を出し始めました.そうか,今,御来光なんだ.御来光を確認し,立ち去ろうとしたら,女性の一人が,「羊蹄山を4往復なんてすごいですね.頑張ってくださいね」と声をかけてくれました.「可能かどうか,まだわからないけどね」と言ったら,「計画して,それを実現させようというところがすごいです」と言ってくれました.胸が少し熱くなりました.さあ,いよいよチャレンジ後半.
京極分岐.4時27分.急斜面のガレ場にロープが一本.まるで地獄に向かって落ちていく蜘蛛の糸のように下がっています.ポールをバックパックにしまって,グローブを装着.ロープを頼りに下っていきます.倶知安の下り以上に強敵.斜度も4コース中で最大です.大腿前面の膝近くに突っ張ったような鈍痛を感じます.ここまでで既に3000m登り,1500m下降しているから,当然です.羊蹄山は,とにかく下りが長い.下っても下っても高度計の標高が下がらない感じ.京極登山道は,登る人が少ないためか若干荒れていますが,その一方で真狩や倶知安のような岩が転がる,えぐれた登山道ではなく,比較的,柔らかな地面です.ガレ場を過ぎてすぐにポールを出し,特に後半は,カラ松林の中を走る快適コースを走りました.入山ポスト到着が,5時55分.京極の下りは,1時間28分でした.京極の入山ポストで登山届けを記載すると,年末に羊蹄山登山証明書を送ってきてくれるとのことで,羊蹄山4往復であることを記載しました.
さあ3往復目です.京極登山口から望む羊蹄山.高度1000mを越えたあたりから次第に暑くなり,水の消費が増えてきますが,合数表示を目標にひたすら登り続けます.2時間18分かけて,羊蹄山一等三角点.1893m.8時25分.そして羊蹄山最高標高点(喜茂別ピーク)1898m.8時30分.
4本目の登山コース喜茂別コースは,京極下山口ほどではないが,ガレ場です.しだいに日差しがきつくなってきます.木が乏しく,遮るものがありません.下りはともかく登り返す時が心配.標高1200m付近から正面に尻別岳が見えてきます.後半は,林道を何回も横切りながら,比較的なだらかな下りで,軽く走ることができました.1時間40分かけて,10時18分,喜茂別登山口に到着.これで4分の3完了.
10時42分,最後の登りに向かいます.喜茂別コースには,合数の記載が一切ないので,高度計の数値を目標に登ります.これが精神的に辛い.最初は200mを目標にしていたのに,耐えきれずに100mおきに小休止.左の肘は痛く,左手が攣るようになってきました.芍薬甘草湯を服用.ここで最終兵器のカットパイン. 4回目のピークで食べるつもりで持ってきたのですが,ここで投入です.これが,涙がでるくらい美味しい.身体の芯まで染み渡る,極上の味.これをひとかけらずつ食べて頂上を目指しました.登山道に表示がないので,200mおきに1合上がるということにしました.残っている水の量が少ないので,口に含んで,しばらく口の中で転がしてから飲みます.ごくごく飲むのとは違った美味しさ.まさに甘露.高度が上がるにつれて,高度計の数値の進み方が速くなってきますが,その分,斜度が増しているということでもあります.1600mを越えたあたりから,少しペースが上がり,ガシガシ登ります.(登っているつもり)そして13時16分.2時間34分かかって.4回目のピーク.2回目の羊蹄山山頂に到達しました.ここからは,岩場を経由して真狩下山口に向かいます.真狩ピーク 1860mのケルン,13時56分.
そして真狩下山口.14時4分.ここからが大変でした.全く眠くはないのですが,さすがに集中力も低下してきているし,水も十分ではありません.とにかく最後まで怪我をせず,確実に帰還することが大切と考え気を引き締めます.普通なら軽く飛び越える岩場も,お尻をついて,どっこらっしょと越えなければなりません.大腿四頭筋は言うことを聞かなくなってきたので,ハムストリングスと臀筋,体幹筋を総動員して下ります.それでも,他の登山者より速いのか,不思議と次々と追い抜いていきます.しかし,高度計の数値は,いつまで経っても1000mをきりません.こんなところを夜中によく登ったなあと我ながら感心しつつ,ひたすら下ります.いったんなだらかになった斜面が,最後になってまた急になったりして,心を打ち砕こうとしますが,一刻も早く,この苦しみから逃れたい一心で,前進を続けました.
一歩一歩,ゴールは近づいていきます.どんな苦しみにも終わりはあるのです.そして,ようやく登山口に辿り着いた時には,感動のゴールと言うより,ほぼ放心状態でした.もうこれ以上歩かなくてもいいんだという安堵感と4往復は,もう充分という気分でした.真狩登山道入山ポスト.スタート地点.16時6分.下山に2時間.
羊蹄山の4つの登山道を一日で登る,チャレンジが,ついに終わりました.真狩から見る羊蹄山のてっぺんは雲の上.晴れがましい笑顔.
真狩登り 1時間53分.
倶知安下り 1時間32分.倶知安登り 2時間.
京極下り 1時間28分.京極登り 2時間18分.
喜茂別下り 1時間40分.喜茂別登り 2時間34分.
真狩下り 2時間.
所要時間17時間49分.総距離 39.5km.獲得票高6000m.当然下降も6000m.消費カロリー 8964kcal.
ゴールした時は,もう充分と思ったのに,しばらくすると次の計画が頭に浮かんできてしまいました.
To be continued.
羊蹄山(後方羊蹄山/しりべしやま).標高1,898mの成層火山.蝦夷富士として北海道の象徴のような山.この山には,4本の登山道があり,火口を巡るルートで結ばれています.真狩,倶知安,喜茂別,京極,それぞれの登山口と頂上の標高差は,約1500mで,コースタイムは,往復約8-10時間.この4ルート全てをお鉢巡りでつなぎ,一日で一気に走破することができないだろうか.
こんな破天荒なチャレンジを思いついたのは,2010年8月のこと.トレイルランニングのトレーニングのため向かった羊蹄山.真狩登山口から登り,火口を半周してから倶知安登山口へ降り,再び登り返し,火口の残り半分を周り,ピークを経由して,出発点に戻りました.約8時間,コースタイムの約半分です.2回目の登りは疲労のため,ふらふらになりましたが,ゴールした時の気持ちは最高でした.ゴール後に,次は,残りの喜茂別,京極コースのダブルと考えたのですが,何となく中途半端で計画に美しさを感じない.むしろ,4本全てを一日で登るのはどうだろうと考えました.単純に2倍プラスアルファとして,20時間あれば,走破可能なはずです.ただし,2往復で,このやられようでは,成功はおぼつかない.というわけで,その後,1年かけてトレーニングに打ち込みました.仕事が終わると,当直の日以外は,ほぼ毎日,山を1-2時間走りました.円山や藻岩山は冬でも常に踏み跡がしっかりしていて,夜も走れます.さらに,スノーシューで,砥石山,百松沢山などを登りました.春になり,誕生日が過ぎ,とうとう50歳になりました.雪が解けてからのロングルートのメインは,砥石山としました.手稲山をいくつかのルートをつないで30km,6時間のトレーニングも,よい練習になりました.それでも,20時間近い行動時間になる羊蹄山4往復が可能かどうか,直前まで確信が持てませんでした.
しかし,さらに1年同じトレーニングが可能か?1年後の体力の低下は?などと考えると,もしかしたら今年が最後のチャンスかもしれないという気持ちが強く,日照時間や気温の問題などを考えて,7月下旬,天候が良いことを確認したうえで,金曜日の夜をスタートにすることとしました.
ルートは,真狩,倶知安,京極,喜茂別の順です.喜茂別,京極の両ルートは登ったことがありませんでしたが,昼間なら大丈夫と判断しました.夜間走行の経験は十分にありますが,夜は,知っている道でも,全く違った感じになり,脇道などに迷い込む危険があります.荷物は,緊急時の装備をきちんと携帯した上で,最小限とし,できるだけ軽量化し,一気に走破する計画です.重要なポイントのひとつは補給.食料のメインは,マルトデキストリンとしました.デンプンを加水分解する過程の中間産物で,速やかに吸収,分解されてエネルギーとなる炭水化物です.圧倒的に単位グラムあたりのカロリーが高く,血糖の上昇が穏やかなためインシュリンの過剰分泌による低血糖にもならないので,レースの補給食としてよく使われます.市販品は高価なので,原末を買って溶解し,ジェルパック に詰めて持っていくことにしました.疲労が高度になると食物を受け付けなくなっていくので,手稲山のトレーニングで,テストをおこない,かなり疲れていても摂取できることを確認しました.
いよいよ決行の日が来ました.7月22日金曜日.外来を終え,夕食をすませ,準備をして札幌を発ち,真狩登山口に着いたのが,22時少し前です.そして,22時17分にスタート.ヘッドライトは,バッテリーの節約のため最小光量としましたが,ルート選択に不安はありませんでした.羊蹄山はひたすら登りの山ですが,真狩コースは,若干傾斜が緩いか,少し下る部分が適度に挟まるので,良いリズムで高度を上げていきます.先は長いので,できるだけ小さなステップで刻んでいきます.雲はほとんどなく,下界の街灯りを眺めながら無心に登っていき,気がつくと,ガレ場,そして山小屋への分岐.月齢21日の月明かりの中,羊蹄山山頂のシルエットが見えてきました.外輪山の真狩分岐に着いたのが0時12分.所要時間 1時間53分です.
旧小屋跡を目指して登り,少し行くと倶知安分岐.最初はガレ場です.このコースは,過去にひどい捻挫をしたこともあり,まして夜に下るのは,不安でした.まだ足は大丈夫でしたが,痙攣止めに芍薬甘草湯を服用.ライトを最大光量にして,ポールを使いながら慎重に下ります.無理なステップは厳禁です.ここが最初の関門.しかし,2時間かからずに倶知安登山口に着きました.1時50分.所要時間 1時間32分.最後の緩い下りは,リラックスして少し走りました.水道の水で喉を潤し,ほとんど休憩せずに出発.2時2分.1年前の羊蹄山ダブルでは,6合目くらいから,つらくて何回も休みました.今回も,つらくなかったわけではありませんが,合数を示す標識が待ち遠しくなる状態ではありません.そして,少しずつ空が色づいてきました.3時40分頃の空.
そして2回目のピーク.4時.ほぼ2時間.この時点で,完走の手応えを感じました.刻々と色彩が変わっていく雲海を横目に見ながら,北山へ.1843.7m.雲泉岳の名前の通り,美しい雲海が見渡せる場所です.そして京極ピーク1700m.何人かの若者たちがシュラフに入り込み,日の出を待っていました.4時12分.先を急ごうとした瞬間.みんなが見つめるその方向から太陽が顔を出し始めました.そうか,今,御来光なんだ.御来光を確認し,立ち去ろうとしたら,女性の一人が,「羊蹄山を4往復なんてすごいですね.頑張ってくださいね」と声をかけてくれました.「可能かどうか,まだわからないけどね」と言ったら,「計画して,それを実現させようというところがすごいです」と言ってくれました.胸が少し熱くなりました.さあ,いよいよチャレンジ後半.
京極分岐.4時27分.急斜面のガレ場にロープが一本.まるで地獄に向かって落ちていく蜘蛛の糸のように下がっています.ポールをバックパックにしまって,グローブを装着.ロープを頼りに下っていきます.倶知安の下り以上に強敵.斜度も4コース中で最大です.大腿前面の膝近くに突っ張ったような鈍痛を感じます.ここまでで既に3000m登り,1500m下降しているから,当然です.羊蹄山は,とにかく下りが長い.下っても下っても高度計の標高が下がらない感じ.京極登山道は,登る人が少ないためか若干荒れていますが,その一方で真狩や倶知安のような岩が転がる,えぐれた登山道ではなく,比較的,柔らかな地面です.ガレ場を過ぎてすぐにポールを出し,特に後半は,カラ松林の中を走る快適コースを走りました.入山ポスト到着が,5時55分.京極の下りは,1時間28分でした.京極の入山ポストで登山届けを記載すると,年末に羊蹄山登山証明書を送ってきてくれるとのことで,羊蹄山4往復であることを記載しました.
さあ3往復目です.京極登山口から望む羊蹄山.高度1000mを越えたあたりから次第に暑くなり,水の消費が増えてきますが,合数表示を目標にひたすら登り続けます.2時間18分かけて,羊蹄山一等三角点.1893m.8時25分.そして羊蹄山最高標高点(喜茂別ピーク)1898m.8時30分.
4本目の登山コース喜茂別コースは,京極下山口ほどではないが,ガレ場です.しだいに日差しがきつくなってきます.木が乏しく,遮るものがありません.下りはともかく登り返す時が心配.標高1200m付近から正面に尻別岳が見えてきます.後半は,林道を何回も横切りながら,比較的なだらかな下りで,軽く走ることができました.1時間40分かけて,10時18分,喜茂別登山口に到着.これで4分の3完了.
10時42分,最後の登りに向かいます.喜茂別コースには,合数の記載が一切ないので,高度計の数値を目標に登ります.これが精神的に辛い.最初は200mを目標にしていたのに,耐えきれずに100mおきに小休止.左の肘は痛く,左手が攣るようになってきました.芍薬甘草湯を服用.ここで最終兵器のカットパイン. 4回目のピークで食べるつもりで持ってきたのですが,ここで投入です.これが,涙がでるくらい美味しい.身体の芯まで染み渡る,極上の味.これをひとかけらずつ食べて頂上を目指しました.登山道に表示がないので,200mおきに1合上がるということにしました.残っている水の量が少ないので,口に含んで,しばらく口の中で転がしてから飲みます.ごくごく飲むのとは違った美味しさ.まさに甘露.高度が上がるにつれて,高度計の数値の進み方が速くなってきますが,その分,斜度が増しているということでもあります.1600mを越えたあたりから,少しペースが上がり,ガシガシ登ります.(登っているつもり)そして13時16分.2時間34分かかって.4回目のピーク.2回目の羊蹄山山頂に到達しました.ここからは,岩場を経由して真狩下山口に向かいます.真狩ピーク 1860mのケルン,13時56分.
そして真狩下山口.14時4分.ここからが大変でした.全く眠くはないのですが,さすがに集中力も低下してきているし,水も十分ではありません.とにかく最後まで怪我をせず,確実に帰還することが大切と考え気を引き締めます.普通なら軽く飛び越える岩場も,お尻をついて,どっこらっしょと越えなければなりません.大腿四頭筋は言うことを聞かなくなってきたので,ハムストリングスと臀筋,体幹筋を総動員して下ります.それでも,他の登山者より速いのか,不思議と次々と追い抜いていきます.しかし,高度計の数値は,いつまで経っても1000mをきりません.こんなところを夜中によく登ったなあと我ながら感心しつつ,ひたすら下ります.いったんなだらかになった斜面が,最後になってまた急になったりして,心を打ち砕こうとしますが,一刻も早く,この苦しみから逃れたい一心で,前進を続けました.
一歩一歩,ゴールは近づいていきます.どんな苦しみにも終わりはあるのです.そして,ようやく登山口に辿り着いた時には,感動のゴールと言うより,ほぼ放心状態でした.もうこれ以上歩かなくてもいいんだという安堵感と4往復は,もう充分という気分でした.真狩登山道入山ポスト.スタート地点.16時6分.下山に2時間.
羊蹄山の4つの登山道を一日で登る,チャレンジが,ついに終わりました.真狩から見る羊蹄山のてっぺんは雲の上.晴れがましい笑顔.
真狩登り 1時間53分.
倶知安下り 1時間32分.倶知安登り 2時間.
京極下り 1時間28分.京極登り 2時間18分.
喜茂別下り 1時間40分.喜茂別登り 2時間34分.
真狩下り 2時間.
所要時間17時間49分.総距離 39.5km.獲得票高6000m.当然下降も6000m.消費カロリー 8964kcal.
ゴールした時は,もう充分と思ったのに,しばらくすると次の計画が頭に浮かんできてしまいました.
To be continued.
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
コースタイムにずれがあります.原因不明.
本文の時間記載が正しいものです.
お気に入りした人
人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:655人
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
この山行は本当に「レジェンド級」ですネ‥。
snufkinjrさん
改めて熟読させて頂きました。
羊蹄山の深夜の登山道、空、風などなど、羊蹄山登山の自分の記憶を重ね、想像しながら拝見致しました。
4・・・ 四天王や四大師などなど、日本人と「四」は深い関係がある様に感じています。
「4往復」、美しくとても良い響きです。
かなりハードルが高いのも事実です。
練成が成果となり、おめでとうございます!
スーパードクターもしくはジョーンズ博士とお呼びしたいのですが、どちらもお似合いで迷っています(^-^)
P.S. 残念ながらの私の4往復の夢は潰えました(T_T)
4往復のハードル、ちょっとやそっとではクリア出来ません。
ありがとうございます.
数年かけて実現した初めての冒険登山だったので,思い出深い山行です.
夜の間ずっと行動する事が可能などいうことがわかって,その後の計画の幅が増しました.
有り難うございます.
冒険登山を計画するときに,考えることのひとつは,計画自体がそれだけで美しいかどうかということです.仰るとおり「四」って良いですよね.これが「三」や「六」だとちょっと魅力半減.じゃあ「八」は?計画自体は合格だと思いますが,完遂する自信が...
羊蹄山四往復は「羊蹄山全部入れ」って感じで楽しめます.また挑戦したいと思っています.ちょっとやそっとではクリアできないけれど,なんとか頑張ればやれるかもしれないという辺りがお薦めどころです.
是非「snufkinjr」と呼んでください.
ぴよしろうさんのブログにてそのお名前と羊蹄山4往復は既に知っていました。
ヤマレコに掲載されているのを今日、ふと知りこれを書いています。
なんと、あ〜、あ=、あ・・・ただ、ただ素晴らしい。
こんなこと考える人がいて、
そのために準備し、
そして実践する。
濃厚な記憶と記録を人生に刻む行い。
過酷な修行・千日回峰行の精神を彷彿させる内容。
なんて、希有な方なんでしょう。
hana87さん,こんにちは.たまたま昔の記録を見ていたらコメントをいただいていたのに気がつきました.コメントの内容,とても嬉しかったです.もう何年も経ってしまい,申し訳ありませんでした.
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する