小鳥のさえずりに励まされた不動山
コースタイム
- 山行
- 12:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 12:40
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山口までの林道は車両通行不可 道路上下面部に不安定な所あり、降雨時の通行は慎重に(中止が妥当) 登山道そのものはしっかりしている |
その他周辺情報 | アプローチ途中に「ろばた館」あり 毎週月曜日(祝・休日の場合は火曜日・ 年末年始)休館 火〜木 午前9時から午後7時まで 金〜日・祝祭日 午前9時〜午後9時まで 料金 大人400円 休憩所あり、食事もできるが時間短く事前に確認のこと |
写真
感想
不動山
2015.6.13(土) 晴れ
数年前、三段紅葉を見ようと登った時は、残念ながらはっきりしたそれは見ることが出来なかった。ならば花だ。地元の人の話では、何と言っても花が良いと聞いたからだ。しかし、難問が一つあるのだ。
前回は、登山口近くまで車で入れた林道が、その後通行止めが続いて入れないのである。林道を歩いてアプローチするとなると、登山道分岐まで推定で約2時間半、往復5時間。気が重い。
豪雪地帯だから、10月に入れば雪の恐れがあり、5月いっぱいは残雪でダメであろう。いろいろ考えると行く時が無い。そこで山頂でテント泊することとして林道を歩くふん切りがついた。が、山行間近になって、ビバーク品必携とし、予備日1日を確保して日帰りに変更する。そうそう遊んでばかりもいられない。
3時15分自宅発。6時20分林道ゲート前出発。完璧に準備をしておいたと思ったのに、時計と靴を積んでいなかった。時計は、デジカメもあり、携帯もあるので、問題は無いが、靴は別だ。これはどうしようもない。中止か決行か。林道は、舗装されているし、登山道もしっかりしているはず。普段履きでも問題は無いだろうと踏んで決行と決める。
渓流釣りの人を見かけたが、あとは人の姿は無い。カッコウやウグイスのさえずり、名も知らぬ小鳥の声が騒々しいくらいだ。沢の音と小鳥のさえずりの中をひたすら林道を歩く。
路傍には、サンカヨウ、ふきのとうの綿毛、チゴユリ、タムシバ、椿等々が咲いていて期待が持てた。鉾ヶ岳や残雪の焼山などが姿を現して、否が応でも気分が高揚するのを感じた。前回の記憶は定かでなく、不動山の急斜面が厳しい登行を予想させる。
登山口は、林道から工事用と思われる道路を沢まで一端下る。この部分は、道路に岩が転がっていたり足場板や、沢を渡ったりする個所もあり、緊張するところである。対岸からゴーッと雪崩の音が聞こえた。
土留工の連続で、林道部も含めて、雨天時の山行は無い、と感じさせた。砂防ダムが目の前の沢筋まで降りたところで大休止。9時15分、予定より約30分オーバー。まずまずのペースだ。
いよいよ登山道を登る。まず、シラネアオイの御出迎えだ。ブナの林も良い。ところがすぐに「クマに注意」の看板が道に落っこちていた。やっぱり深山なのだ。エンレイソウ、サンカヨウ、チゴユリなどが咲いている。大群落ではないが種類は多そうだ。
ところどころ雪が残っているが問題はない。ただ、雪崩の音を聞いたことも有り、念のため、沢筋は避けて芭蕉池経由にコースを取ることとした。標識らしきものが落ちていて、ひっくり返してみると「休憩場」と書いてあった。もう一つは、文字は読めないほど壊れているが、芭蕉池コースを示しているようだ。不動山を眼前に、休憩場所として整備されていて。ブナ林に囲まれた良い休み場だ。
沢筋を行けば、ショートカット出来るが、芭蕉池経由は登り詰めて下る。何とか楽したい、とコースの先を覗いてみると、やっぱり雪が残っていた。今日はダブルストックなので特に問題は無いだろうとは思うが、足元が普段履きでは安全優先、芭蕉池コースを取る。
気温はうなぎ登り。休憩場からの登りは、厳しいものとなった。大ぶりのブナの木で一息入れると、木の枝が通せんぼするように落ちていた。何かあるなと思って少し進んでみると、そこが芭蕉池だった。もっと上だと思っていたのに、人の記憶力と言うのはいい加減なものだ。芭蕉池は、まだ雪がいっぱい詰まっていて、水面は無く形から芭蕉池と分かる。
そこからは、ロープの下がる急登が続いた。前回の記憶では、池が出たら直ぐに下ったように思ったが、なかなかピークにたどり着けなかった。登り切れずに途中で休んでしまった。登山道路に寝っ転がって休んだ。もう帰りの行程が気になった。ビバークの準備は怠りなく予備日もあるが、何とか明るいうちには帰りたいものである。
そこからいくらも登らずに雪田に出る。水芭蕉の花が盛りだった。ここから雪田を横切ってちょっと登って下る。これで先が見えた。緩く下っていくと、褐色の物体が。距離は10m位か。
振り向いた、と思ったら凄いスピードで走り去った。カモシカだ。イノシシみたいなズングリした体型。まさかこんな所にイノシシがいるわけがない。黒色ではないので熊でもない。角は無かったからメスのカモシカであろう。
走り去った場所に行くと、湿っぽい黒土を掘り返した跡があり、プ〜ンと土の香りが漂った。ミミズでも探していたのだろうか。それとも泥遊びをするというヌタバだろうか。ヌタバとすると湿っぽいけれども泥ではない。ミミズかヌタバかは謎である。
鞍部まで下って登り返すのだが、もう一気に上り詰める気力は残っていなかった。日本海を渡ってくる風に吹かれていると腰に根っこが生えて山頂まで三回くらい休んだ。太いブナが林立していて、良い日陰を作ってくれるのでなおさら根っこが生えるのだ。
フデリンドウやカタクリ、ヒメシャガ等の花が僅かずつだが山頂まで続いた。頂上直下付近は急登で、ロープが下がっている。どうってことは無いが、疲れた体にはありがたかった。ナビを見ると頂上の一角に入っていた。頂上は直火が当たるので一息入れて13時15分頂上に出る。
頂上はほぼ平らで円形。真ん中に祠などが祀ってある。三角点は祠から少し離れている。ここでは神様が主役だ。しかし、雪のためか祠は頭部がひっくり返っていた。私の力では動かしようが無いのでそのままにして写真を撮りまくった。
全体に霞んでいて、メリハリは無いが火打山、焼山が眼前だ。左手のこんもりした山体は妙高山。右手の双耳峰は雨飾山。そのまた右手は海谷山塊の駒ヶ岳や、阿弥陀岳であろう。
海谷山塊は、東海谷山稜と西海谷山稜に分けられ、鬼ヶ面山、鋸山、昼閣山、烏帽子山など名前からしておどろおどろしい印象だが、まったくその通りの山塊だ。東は縦走したことも有るが、西海谷には行ったことは無い。一時はルート研究もしたことは有るが、もう、行くことは無いだろう。懐かしい山塊だ。
帰りは、忠実に登ったルートを通り、沢から林道まで登り返す。標高差約200m。先が見えて日陰になったコンクリート舗装の上で、大の字になって小休止。ここまで来れば後は、這ってでも帰れる。やれやれ。
パイプから水の出ていたところまで頑張って、大休止する。洗う手が千切れそうな冷たい水は、五臓六腑にしみて、生き返ったようだ。2L位残っていた水を捨て、500ML一つに汲み直すと、たいした違いは無いのに、荷物も一気に軽くなった気がした。誰も来ないアスファルト舗装の上で、また、大の字になって休む。空を見ながら「何でこんな一銭の得にもならないことをやるのだろうなあ。」と考えてみる。
ハッキリしているのは、好奇心だ。花が良い、と言われれば、それを見てみたい。誰も行ったことが無いといわれれば、誰よりも先に行って見たい、という好奇心。知識欲と言ってもよいだろう。言い換えれば、俺は知っている、やっている、という優越感。要するに自慢話の種がほしいのだ。
人間ってやつはしょうもない生き物だ。もちろん私もその一人だが、まあ、それが世の中を進歩させてきたのは間違いないのだから、良としなければ。
あとは、一気に降りた。カッ、カッ、カッと、ストックの音が規則正しく、リズムを刻むようになった。よし、この調子だ、と頭では思えども、最後は気力頼みで19時5分、駐車場着。懐電にはならず、ぎりぎり想定内セーフであった。確かに花もあったが、それよりも小鳥のさえずりが絶えない道中であった。今度来るときは、林道開通してからだ。林道歩きは勘弁してもらいたい。ぜひ林道の有効活用をお願いしたい。
温泉で汗を流して、高速のSAで晩飯を食べ、休みも入れて、家についたのは、わずかに日が変わった0時3分だった。朝3時15分に家を出てからおよそ21時間、長い一日であった。
コースタイム(休憩含む)
東飛山6:20→8:15林道分岐→9:15登山口→10:20休憩場→10:35芭蕉池→11:45鞍部→13:15山頂→15:15芭蕉池→16:10登山口→17:35水場→19:05東飛山
追記
歩き出しからウグイスやカッコウの鳴き声が途切れることなく聞こえていた。野鳥の多い山域だ。
林道一人ぼっちはちょっと厳しかった。百名山ひとふで書きの田中さんの、体力、とりわけ精神構造はどうなってるんだろうと、興味津々である。
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