虎毛山(湯ノ又沢遡行、赤湯又沢下降、虎毛沢遡行)
- GPS
- 21:33
- 距離
- 41.9km
- 登り
- 1,945m
- 下り
- 1,959m
コースタイム
- 山行
- 5:38
- 休憩
- 0:23
- 合計
- 6:01
- 山行
- 5:17
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 5:44
- 山行
- 4:57
- 休憩
- 1:58
- 合計
- 6:55
天候 | 晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
私はそこまで沢登りに入れ込んでいる訳ではないが、虎毛沢の名前は知っていた。沢登りをする人にどの沢が一番好きかと聞くと、皆悩みながら候補を出す中に、ちょくちょくその名前が挙がるからだ。
沢仲間が東京へ長期出張になり、せっかくならこのタイミングで東北の沢へ、ならば虎毛沢にとトントン拍子で計画が出来上がった。しかしなかなか思うようにはいかず、初めに計画していた9月の連休は天気が悪く、今回はその沢仲間が体調不良で不参加になってしまった。既に10月も中旬に入り、これ以上の順延は出来ないため、代わりに折りたたみ自転車をメンバーに入れて、秋田へ向かった。
〇1日目
山梨を3時に出発。交代で運転しながら移動し、登山開始は11時。秋田県の中では一番近い地域だが、それでも気軽に来られる距離ではない。
三連休とあって、ゲート付近には登山者と思われる車が6台停まっていた。さすが人気の沢だ。
ときめき橋から湯ノ又沢に入渓。入渓点から既に、地元では見たことのない、凝灰岩の白くて美しいナメが続いており、心がときめく。フリクションもよく効き、難しい滝もほとんどなく、歩きやすい。これが東北の沢か……!
標高940mの二俣から先は水量が減り、渓相が荒れ始める。標高1090mで沢筋を離れ、笹薮の中を標高差30mほど這い上がると、稜線に出た。縦走路はあまり使われていないようで、胸ほどまである笹薮をかき分けて、下降点まで移動した。
登山道分岐点付近の薮の薄いところに適当に突っ込み、赤湯又沢に入った。上部は傾斜が強い上に、草付きかと思いきや薄い土層が岩盤からズルっと滑り落ちるようなところがあり、ヒヤヒヤした。もっと良い下り口があったと思う。水流が出てくると足場が安定して一安心。
進むにつれて次第に、川底に硫黄が析出していたり、ポコポコと気泡が出ていたりする場所が出てきた。今日の夜への期待が高まる。人が多くてタープが張れなかったらどうしようとも思ったが、焦っても仕方がない。微妙な滝2箇所ではロープを出し、17時前に幕営予定地に着いた。
一番広い平地は7人と3人のパーティーで埋まってしまっていた。その少し下ではソロの人が泊まる準備をしていた。今日は我々を含め、この4パーティーがここに泊まるようだ。
100mほど下ると、噴気地帯の流路跡に、なんとか4人が横になれる場所を見つけた。足湯のできる硫黄泉が流れる小さな支流と、赤い湯が沸く本流側の水たまりに挟まれており、少し掘ると地面に温もりを感じる。雨は降らないだろうし、ここが良いだろう。
既に薄暗い中、タープを張り、薪を集め、湯船を掘った。湯船を掘る際に石をどけたからか、湯が染み込んでしまい、残念ながらこの日全身で湯に浸かることは叶わなかった。その代わりに、完璧に炊けた米に鍋で温まった。ダメ元で、近場で最も熱かった、45°Cくらいのお湯に生卵を浸けておいたが、温泉卵にはならなかった。21時頃就寝。
〇2日目
6時起床。就寝中、無意識下で温もりを求めて体がだんだんエアマットから外れ、温かくゴツゴツした石の上に移動して寝ていたため、体はバキバキだが、おかげで全く寒さを感じることはなかった。
朝食は余った鍋の素とご飯で雑炊にした。この日は行動時間があまり長くないため、出発は9時に決めた。周囲を散策していると、温泉卵ができそうな60°C以上の湯船、寝湯ができる40°Cほどの湯船、膝を畳めば全身で浸かれる42°Cほどの湯船を発見した。昨晩見つけられていれば、もっと楽しい夜になったろうになあ……。掘ったりダムを建設したりして湯船を拡張し、9時まで野湯を楽しんだ。
後ろ髪を引かれながら赤湯又沢を1時間下降。虎毛沢出合は滝になっており、尾根に上ってから斜面をトラバースして虎毛沢に下りた。
湯ノ又沢に勝るとも劣らない白く美しいナメ、エメラルドグリーン色をした豊富な水量。淵に踏み入るごとに道案内するかのように逃げていくイワナ。皆がこぞって推す理由が良く分かった。
ところどころに深い釜があり、全身が濡れるのを嫌ってへつったり巻いたりするのに何度かロープを出した。しかし結局、なんでもないところで油断して足を滑らせ、ぼちゃんと情けない音とともに沢に落ちるのだった。止まると寒いので足早に歩く。
15時前に標高735mの二俣に到着。左俣を20m進み、左岸を一段上がったところに、新しい焚き火跡と薪付きの平地があった。昼頃にスライドした4人パーティーのものだろうか?我々も使わせていただくことにした。
焚き火組と釣り組に別れて夜宴の準備をする。右俣と左俣に別れて釣り上がったが、左俣は釣りやすいポイントがあまりなく、あっても見つかってしまったり食ってこなかったりと、釣果を上げることはできなかった。歩いてきた下流側のほうが魚影が濃かったので、釣りながら登ってくれば良かったかもしれない。
幸い、もう1人の釣り組が右俣で2匹、20cmほどのイワナを釣ってきてくれたおかげで、夕飯のカレーライスとともに、塩焼きと骨酒を楽しむことができた。その他、ベーコンやチーズ、パン、フキの葉に包んだ焼き芋など、豪華な焼き物で温泉のない夜を精一杯楽しんだ。21時頃就寝。
〇3日目
5時起床。インスタントラーメンでちゃちゃっと朝食を済ませ、7時発。
左俣より釣りやすそうな渓相の右俣を、どこで釣ったかなど話しながら登る。871m標高点の二俣から左俣へは滝になっており、右俣から登って巻くことができそうだったが、直登することになった。さほど難しくはないものの水量が多く、今日もまたそこそこ濡れてしまった。最初に空身で登った人は、ザックを持ち上げるのに手間取り、ザックまでびしょびしょになってしまい、気の毒だ。
標高1070mの広いところで休憩と水汲みをした。程なく水は涸れ、薮の薄いところを選びながら、沢筋を詰めた。
標高1250mで稜線に出て沢装備を解除。久しぶりの乾いた靴に感動した。ここで先に下山して、デポしておいた自転車で車を回収しに行く人と別れて、山頂を踏みに行く。稜線上は1日目の縦走路とは異なり、最近刈り払いがされたようで、歩きやすかった。
山頂には、行ったことがなかったから、くらいの気持ちで行ったのだが、想像以上の展望に心を奪われた。一帯を包む紅葉、高層湿原に浮かぶ池塘、眼下にうねる山並みから頭をもたげた栗駒山、焼石山、神室山、鳥海山。素晴らしい沢旅を締めくくる素晴らしい景色だった。
山名に「虎」の字が含まれる山の中では最も標高が高いことから、阪神タイガースファンのゆかりの地になっており、山頂の標石や避難小屋の内装に愛を感じた。
下降点から高松山方面の縦走路には、熊の痕跡が多く登山道の整備ができないと書かれた看板があった。それで1日目は薮を漕ぐはめになった訳だ。
標高差600mの急坂を下ると沢沿いの道になるが、崩落して際どくなったところがあったり、せっかく乾いた足が泥濘に沈んだりと、あまり快適ではなかった。相変わらず沢は穏やかで、沢靴を履いて沢を歩いて下った方が楽しかっただろう。
登山口にはもう車があった。駐車地点まで車に乗せてもらったため自転車は使わなかったという。
鳴子温泉に立ち寄って人間に戻り(この温泉も良かった)、長い長い帰り道を、また8時間かけて山梨に戻った。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する