【納涼】外秩父七峰縦走夜戦
- GPS
- 14:58
- 距離
- 46.6km
- 登り
- 2,166m
- 下り
- 2,147m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
道の状況:夜なので常に注意が必要。ガレ場は特に。油断すると道を誤る。 危険:どの峠にも走り屋がいるが、あまりお近づきになりたくはない。 登山ポスト:無い。 下山後温泉:特に無し。 飲食店情報:定峰峠に峠の茶屋あり。当然閉まっている。自販機活用。 |
写真
感想
あー、ついつい暑いと言ってしまう今日この頃。
7月に「夏山前哨戦」としてやった作戦が本作戦になってしまいかねないような体たらく。
諸君は総力戦を望むか?それとも飼い殺しの肥え太った豚であることを望むか?
と問われた時に、ただ座していることはできなかったのである。
と、以上が建前。厳寒酷暑の折はアクセクせず、まったりと休むのが正しい。したがって、欧米人が夏期休暇を何週間もとるのは極めて理にかなっている。
道理に反した生活の後に残るは心身共にボロボロとなった廃人か生産性の低い機械人間のみ。
閑話休題。
どこかで遊びたい。しかし暑すぎる。こういう場合はどうすればよいか?
”弦發旅發そ蠅罵靴屐
→鳳凰三山は陽射しのせいで暑かった。
⊃緇譴罵靴屐
→毎週一回プールで3000m泳いでいたら(+自転車往復2時間)逆に疲れた。
N篷爾慮いた部屋でまったりする。
→夏休み中ずっと実家で寝転がっていたら、休み明け2日間耳閉感に襲われた。
とまあ、どうもしっくりこない。
となると残るは
ぬ詬靴咾鬚垢襦
しかない。
要は星空が見たかっただけである。
夜は心が落ち着く。そして夏でも気温は30度以下。
ルートはどこでもよかったのだが、近くて見知った所を考えていたら、
埼玉県小川町から寄居町まで42.195kmを馬蹄形に踏破する外秩父七峰縦走になった。
当初は7月24日の小川町花火大会に合わせて決行しようと考えていたが、当日プールで泳いだ後映画を観ていたら寝だめしておく時間が無くなりお流れに。
それから一ヶ月、体は鈍ってしまったが、星空と夜景を楽しみたいと思い決行することとした。
28日、例のごとく、プールで泳ぐ。今回は寄り道せず帰宅し、2時間仮眠。
当初予定では、日没1時間前に小川町駅を出て日のあるうちに集落を抜けてしまおうと考えていたのだが、小川町までの所要時間をあまり考えていなかったため、小川町駅に着いたのは日没5分前の1810時。
駅前のローソンで食料を調達し、早速出発。当分の間は集落の中を歩くとはいえ、田舎なので街灯も少なく、静かなものである。
山の麓まで来た時には、もう真っ暗な状態であった。私がこの夜のハイキングで最も恐れていたことは、現地住民に「何やってんだ!」と見咎められることだ。
幸いそのようなことは無く、登山口に至る。
漆黒の杉並木が明かりで照らさないと見えないが私を包み込む。緊張と興奮で体がゾワゾワする。果たして無事歩ききれるのだろうか。
傾斜は徐々に急になり、ロープが垂れているところもあって、しかも夜間とはいえやはり夏。暑くなってくる。うへーとか言いながら登っていると遠くでボンボンと乾いた音が響き始めた。ひがしまつやま花火大会が始まったのだ。
花火のことを考えると気が紛れた。石尊山頂に辿り着いたのはそれから間もなくのことである。
石尊山は標高が300余mしかないのにもかかわらず、非常に見晴らしが良い。この日も東から北にかけて一面の夜景と星空を眺めることが出来た。ちょっと歩いただけで、素晴らしい光景を眼前に出来ることから女性や子供と一緒にくるとちょうど良いのではなかろうか。両方とも縁が全く無い現状だけれども。
花火大会を見ることを考えてこの日は双眼鏡を持ってきたが、裸眼だと若干小さく見えるのでちょうど良かった。大輪の花を見ることは出来ないが、その分音を楽しむ。
音を楽しむということに関して、最近は花火と音楽のコラボと称してBGMをかけながら花火を打ち上げる所があるが、はっきり申し上げて雑音以外の何物でもないと思う。また、間断なく花火をバンバン打ち上げる所もあるが、それは全く趣というものを解さないものであって、花火は轟音と共にその後に来る静寂も楽しみたいものである。
それはそれとして、花火大会を観たり、赤い月や街の明かり、ポツポツと煌く星たちを眺めつつも、長居するとゴールもその分遅くなってしまうので、きりのいい所で引き上げることとする。
石尊山と官ノ倉山は双子山みたいなもので、すぐに官ノ倉山頂に到達する。ここでは花火は見られないが、月は先ほどよりも大きく輝き、街は静かに煌く。
官ノ倉から次の笠山へは一旦里に下りる。と、山頂から少し下ったところで心の隙間を埋めるために持っていったipodが充電不足で切れる。と同時に頭上で鳥が飛び立つ音。富士川の合戦における平家軍のごとくびびる。
官ノ倉山の麓をズンズン進むと急に明かりのついた家の裏に出たので、草叢で一旦止まり、足音を潜めて下りる。傍から見たらただの不審者だ。
私は山だけでなく、里山や市街地も徘徊するので現地住民に不審者扱いされる危険性について常に留意している。何しろ、今の世の中「早く家に帰りなさい」と声をかけるだけで警察に通報される世の中である。
さっさと下りたあとは街灯も少ない里を歩く。外を出歩いているのは夜の風に当たりに来たらしい爺様のみ。
次の笠山までのみちの入口は和紙の里という施設である。その手前の自販機で飲料を補充し、真っ暗なトイレで用を足して、作戦は第二段へ。山道はすぐ終わり、養老施設に出ると、あとは当分の間舗装された林道歩き。昼間ならば味気ないのだろうが、夜だと足元がしっかりしているため恐怖感も薄れる。
それにしても全然笠山に着かない。夜だからか物凄く時間がかかっているように感じる。確かに距離的にも結構あるのだけれども。笠山で軽食を取ろうと思っていたこともあって、なかなか到達しないことに焦りを感じる。ここ数年は毎年歩いているコースだが、印象に残らない部分なのか、どのくらいかかるのかいつも忘れている。昨年歩いていた時は笠山に着いた初老の男性が「笠山だぁ〜」と何度も叫んでいた。そのくらい官ノ倉山-笠山間は遠いのである。
笠山で軽食を取って腹ごしらえをした後、作戦は中盤戦へ。大きく開けた堂平山からいくつかの峠を越えて大霧山へ。
堂平山はパラグライダーに使われることもある広い草原が広がっている。直前の藪を抜けると、そこは一面の草原で右手には埼玉の山々が広がり、左手前方には小さな天文台が佇んでいる。定期的に星空鑑賞会をやっているようだが平日なので有給休暇をとらないといけない。草原は夜露に濡れてしまっていたので、天文台脇の山頂まで行き、そこから夜景を眺める。日も跨いでしまった。
七峰の中では最も目立たない剣ヶ峰を過ぎて峠の連続越えへ。
中盤戦では、何度もバイクや車の轟音を聞くことになる。本来であればひっそりと静まり返る山中に爆音が響き渡る。あまり遭遇したくない類の人種と思われるので、舗装道路と交差する所では、バイクや車が駆け抜けた頃合を見計らって走り抜ける。白石峠では、そういった車がずっと停まっていると勘違いしたため、15分ほど峠口に身を潜める。
その間も何台もの車やバイクが走り抜けていったが動きが見られないので、腹を決めて動くこととした。車のハザードだと思っていたのは信号灯であった。
余計な時間を費やしたので、定峰峠へ急ぐ。
定峰峠には茶店があり、重要な水分補給スポットだ。この後、里に下りるまで水分補給はできないので、十分に水分を取る。これで大霧山も軽く到達できることだろう。
大霧山まで行けば後は楽な道ということで、足取りも軽くなる。しかし、ここが予想外に苦戦したのである。
獅子岩を過ぎてから蜘蛛の巣が増えてきた。暗いので避けることもかなわず、頭からベリッと突入。夏場とはいえ人が通らなさ過ぎるだろう。
蜘蛛の糸を払っていたら左腕にそれはもう立派な、ずんぐりむっくりした蜘蛛がくっついていた。あひゃーと叫びつつライトで払っていたら殺してしまった。真に申し訳なし。
普段、家の中に入ってきた蜘蛛を殺す際に「人間の生活圏を侵犯したため」と自己正当化しているが、今は蜘蛛の生存圏を此方が侵犯しているので私が蜘蛛に殺されても仕方がないような状況だ。
申し訳なく思いつつ、蜘蛛の巣を払いながら、次々と現れる蜘蛛の巣に悪戦苦闘。そのうち、だんだん草ぼうぼうになってきて、踏み跡も見出すのが困難な状況に。大霧山到達予想時刻も過ぎ、車の音が近くなって、車道が近づいたことが判明した段になって、もしやと思って携帯でGPSを確認してみたら北へ向かうべきところ、西に数km程進んでしまっていた。一挙に士気が低下。いっそのこと車道に出てしまおうがとも思ったが、降りたところで電車もなし。ここまで来て撤退するのも癪に障るので、来た道を戻ることとする。あとで確認した所では、この誤った道も一応登山道のようである。踏み跡も無いわ、蜘蛛の巣できまくりだわ、どれだけ使われてないのか、と。急いで戻って軌道修正。体力と水分を消費しまくり、憔悴しきった感じで大霧山に至る。蜘蛛の巣が破る時にべりっと大きい音がするほど立派な時は道を間違えていると思ってよかろう。
さすがに疲れてしまい、白み始めた空を眺めながら長めの休憩をとる。そろそろゴールのことを考える頃合だ。気温が上昇する前に寄居駅に到達せねば干物になってしまう。
大霧山を下ると車道に出て歩きやすくなる。秩父高原牧場の南端に取り付いた所で日の出時刻。グラデーションに映える空と、風にそよぐ花々、牛舎に憩う乳牛達を右に左に歩いていると予想よりも早く二本木峠に着いた。やはり気を紛らわすものがあると歩みも速い。二本木峠まで来れば、山歩きはあとわずか。小休止の後、最後の奮闘。愛宕山から皇鈴山へ、朝靄に煙る町を眺めて、最後に登谷山の大パノラマに至る。朝日に照らされた寄居の町は静かに目覚めつつあった。遠くに荒川がきらきらと煌く。
外秩父七峰縦走はこれで終わりではない。寄居駅がゴールだ。最後の数kmはもうゴールを目指すだけになってしまうのだが、釜伏神社や中間平、鉢形城址、荒川等見るべきものは多い。小川町からスタートすると、大体夕方から夜になってしまうのが残念だが、寄居駅発ならば十分楽しめるだろう。
最後は和光市の極楽湯で一風呂浴びた後、昼食でビールを飲んで寝る。徹夜のせいか大ジョッキで頼んだせいか、少し残してしまった。
今回はある意味ムシャクシャしてやったわけだが後悔はしていない。良いヴァンデルンクだった。
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