厳冬期槍穂(西穂-ジャン敗退)
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- GPS
- 104:00
- 距離
- 10.4km
- 登り
- 1,321m
- 下り
- 1,321m
過去天気図(気象庁) | 2017年02月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
-1日目-
晴天
昨年に続き、二度目の挑戦。
行きたくない、本当に行くのだろうか、と思いながら新穂高へ。
しかし、誘うような快晴。
初日9:00のロープウェイで天狗のコルまでと思っていたが、所用で昼過ぎに到着。
ロープウェイの客は数組のみで空いていた。
昨年は観光客で込み合うロープウェイ、おばさん達に冷やかされた。
出来れば、ロープウェイも西穂山荘も使わず、誰にも会わずに、山に集中したい。しかし、今回も日程の都合で選ばざるを得なかった。
快晴、槍まではっきりと見える。近くすら思える。
山荘まで1時間ほど。
ゆっくり身体の調子を確かめつつ、ガス節約のため、氷柱をかじりながら歩く。
山荘着。明日の行程を聞かれ、奥穂までと答える。
「ガイドですか?」と聞かれ「違います。」と言うと沈黙。「いや、よくこの時期に行くなと思って。」と言ってテント札を渡される。
テント設営後、丸山まで偵察。
前穂の吊尾根が美しい。
中千丈沢のアイスが見える。
テントは2テン、シュラフ-30度、テントマット無し、サーマレストウレタン。
昼は持って来過ぎたかと思ったが、夜はやや寒く、やはりそんなに甘くなかった。
-2日目-
快晴
6:00発。9:00西穂着。運動不足で遅い。トレース多数。ここまで問題なし。
エビの尻尾で水分補給。
絶景だが特に感動も無く。。
見とれているようでは、来るべきでないのかもしれないが、感動が無ければ来る必要もない気がする。
西穂山頂より下降、いよいよ。
近くまで寄らないと先が見えない傾斜。
いきなりか、、と思いつつ信州側を下降。二度大きく降りてコル。
間ノ岳、間天のコル、天狗岳を通過。
ルートを頭に入れようと思うが、似たような登下降の繰り返しで、既に記憶があやふや。
ほぼ常にダガーポジション、落ちられない。
天狗のコルへは飛騨側を大きく下ったが抜けられず、稜線を見上げると、夏道の梯子。
梯子を目指して登り返す中、懸垂支点を見つけ、15mほど懸垂して天狗のコル。
振り返ると、懸垂支点より飛騨側にフィックスの鎖があった。
13:00。ここでキャンプか、コブ尾根の頭まで行くか。もう休みたかったが、明日が悪い予報だったので少しでも進むことに。
飛騨側ルンゼを登る。雲が増えてくる。
疲れ果て、いい加減休もうと思うが平らなところが無い。
15:00。ようやくテントを張れそうなところへ。
信州側に回り込めて風も少ない。
14:00頃に行動終了予定だった。
整地を初めたが、テントを張るのが面倒になり、
明日の停滞も視野に入れ、雪洞に切り替える。
16:00。雪洞完成。
空はすっかり雲に覆われ、太陽が月のよう。
風もやや出始める。
雪洞は水が作り易く、トイレも中で済む。
水を作り、アルファ米を食べる。
テントより暖かく、起きた時に家と間違えた。
-3日目-
雪、風20m
外を覗くと、ガスの中、前穂のシルエットが微かに見られる。これならいける。
外に出ると、一晩かけてシュラフの中で乾かしたグローブが一瞬で凍り付く。
温度計は-26度を示したのを最後にLoとなり、もう何度か分からない。
液晶の反応が鈍い。
飛騨側に回ると予報通りの強風。前穂は既にガスに消えている。
視界15-20m。最悪ではなかった。
ジャンダルムまで百数十m、コブ尾根の頭付近。
ほぼ尾根上を来たが、ここで道がわからなくなる。
信州側を覗くと、絶壁。
飛騨側を巻こうと下る。
しかし、岩稜帯が途切れない。
30m程降りたが違う。再び尾根へ。
信州側を覗き込むとなんとか降りられそうなところを見つける。
チムニー状をずり落ちるように下降、ジャン方面へトラバース。
その先が危うく、懸垂かクライムダウンか微妙。
セルフをしてロープを準備。
ややガスが晴れ下が見える。下が切れ落ちている。
降りられても、登り返しになりそうだ。
もう一度飛騨側を偵察することにして引き返す。
引き返すのもシビアで、緊張を強いられる。
寒さでやられていた手足の指も、力を入れて登るうちにすっかり戻る。クライミングの消費カロリーは多い。
なんとかチムニー状を登り、飛騨側を下る。
巻いていくと、また断崖。
降りられるが、登るのは厳しそう。
GPSで確認。随分ルートから外れている。
行けるかもしれないがここも正解ではなさそう。、再び尾根へ。
どう見ても尾根は行けそうにない。明日、ガスが抜けないと見つけられなそう。
最後の一足掻き。尾根を下り、さらに下部から信州側をトラバース。
さっきのさらに下に出れば突破出来ないだろうか。
比較的穏やかな斜面。這い松もある。
しかし、ガスが濃く雪崩そうな斜面。15儔爾房總悄
今日は停滞と決めて雪洞に戻る。13:00。
W氏から詳細な天気予報が送られてくる。心強い。
-4日目-
吹雪
7:00発。飛騨側へ回るが風でとても進めない。
最後に行ったトラバースからもう一度と進む。
積雪30僉∪稱リスクも。
視界は回復せず。予報では11時から晴れるとのこと。
奥穂まで2-3時間、しかしガスでルートが分からず。
引き返すのもうんざりする距離。
奥穂まで届いていれば、冬季小屋で停滞も快適だっただろう。
悩む。既に目標は槍から下山へと変わっている。
涸沢岳西尾根からのエスケープはどうか。
しかし来た道を戻るのが何より確実、午後には視界も開けるだろう。
撤退することに決める。
天狗のコルへの下り、積雪で状況が変わっている。
尾根上をおりるのは、雪に隠れたスラブで滑落しそうだ。
飛騨側から雪壁を下降して、トラバース。
かなり尾根から離れたので、トラバースも長くなる。
支尾根を越え、進むうちにシビアになってくる。
アックスを確実に岩の隙間に決めながら、慎重に体重移動させる。
ついにこれ以上進めなくなる。
これはやはり戻って尾根からしかない。
非常に厳しい場面を引き返し、尾根に登り返しGPSを確認。
10:00。急に晴れ間。ジャンダルムが姿を見せた。
ガスが抜けたころから風が強くなるという予報だった。強風がガスを吹き飛ばした。
飛騨側はウインドクラスト、風20m、谷底からザラメ状の雪を巻き込んで
吹きあがってくる。雪庇はこうして育つのかと思う。
信州側はガス、無風、胸ラッセルという感じ。
この風の中、やはりジャンダルムへ進むのは危険。
雪崩もあり、引き続き降りることに。
しかし、ルートが分からない。危険なスラブを降りるしかないのかと思う。
先はないし、帰りも分からない。
ふと我に返り、とんでもないところにいると思えてきた。
冷静に考えると、帰ることを諦めたくなる。
尾根の岩にしがみつき、逡巡していると、
ガスが少し晴れ、天狗のコルが現れた。
さっき支尾根と思ってトラバースしたのが、主稜線だった。
さっきはトラバースし過ぎて180°、奥穂へ向かってしまっていた。
こんな馬鹿みたいなことが起こるんだと自分に呆れる。
視界はやや回復傾向。風は一向に弱まらず。
気温か、無風か、視界か、どれか一つでもほしい。
登下降を繰り返す中、足の指の感覚がおかしい。
傷みと無感覚はずっとあり、ステップ毎に指を動かしていたが、
指と指の間に氷の塊が挟まっている感覚。
どうも中指が凍ってしまい、左右の指が異物として感じているようだ。
手も痛みが激しく、5m進んでは、数分温めるの繰り返し。
遅々として進まず。
止まって手を温めると足指がやられそうだが、
どちらかと言えば手を守ろうと、足はあまり気にしないようにする。
親指と人指し指以外はグーにしたり、
小指と薬指を同じところに入れたりいろいろしていたが、
最早手袋のどこにどの指が入っているか分からない。胸ラッセル、80度近いミックス、夏の鎖にアックスを差し込む。
時折開ける視界に、天狗岳が聳え立つ。
美し過ぎる光景。
太陽に向かって登る。ダイヤモンドダストも見られる。
叫んだりしながら、なんとか西穂手前のコルまで到達。
視界も随分回復。飛騨側は完全に見える。
雪崩リスクがあるが、このまま下ってエスケープしてしまいたい。
樹林帯までおそらく30分。そこは安全圏なのだ。
14:00。このまま行けば西穂15:00。日没迄に山荘に着けるだろう。
しかし、もう疲れ切ってしまった。
明日はもっと回復する予報。
安全をみて、雪洞を掘る。
天井も高く、吹込みもない、居住性の高い雪洞が出来た。
靴下を脱いで、足指の確認。色が少しおかしい程度で回復している。
食料はまだ4日分残。アルファ米を食べる。
うまいと一人叫ぶ。
雪崩のクラックがあちこちにはしっていたので、
スリングで岩に体をしばり付けて眠る。
時折、雪崩の音が聞こえる。
濡れたダウンシュラフはなかなか寒い。
-5日目-
風は残るものの、ガスはすっかり抜けジャンダルムが見える。
恨めしい。今日ならルートも見つけられただろう。
安定して登れるが、落ちたら死ぬところ。
少し怪しいが、落ちても、死ななそうなところ。
どちらを行くか。そんな選択を何度も突き付けられる。
ラッセルし、西穂に到達。
向こうから人が来る。
写真を撮ってあげたら、撮ってくれた。
続々と登山者。
ようやく安全圏へ帰ってこれた。
疲れていたこともあり、山荘までの道もなかなか悪く感じた。
やはり、昨日無理しなくて良かった。
慎重に降りて山荘着。
土曜日ということで、上高地のようにハイカーで賑わっていた。
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懸垂専用のロープ-1
テント→ツェルト-2
グラウンドシート
ザック軽量化
アイゼン軽量化
グローブ、オーバーグローブ保温
足用カイロ
ルートを夏にメモ
天候注意
時期検討
高知順応
アックス×ピッケル○
スコップシャフトにピッケル抜けない工夫
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