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Yamareco

記録ID: 1351124
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
日高山脈

カムエク南西稜~1823のっこし~1839At

2017年12月25日(月) ~ 2018年01月04日(木)
 - 拍手
GPS
248:00
距離
89.5km
登り
5,104m
下り
4,858m

コースタイム

2017.12.25〜2018.1.4 (10-1) 

年末年始はやっぱり日高に行きたい。日高随一の厳しさと美しさを誇るカムエク南西稜に狙いを定めた。パートナーは、去年一緒に東西稜線を歩いたゴッシーこと五島。計画は、二人ともまだ踏んだことのなかった1839峰まで足を伸ばそうという大きなものになった。日数は停滞込みで13日分。ルームで培った経験、比較的天気に恵まれたこと、互いに力量や性格を十分把握できていたこと、あとは気合と確かなイグルーの技術で貫徹することができたと感じる。

【時間とルート】
12月24日:雨
札幌→静内=C0
早朝、函館からゴッシー来札。スーパーで買い出し。ここまでは完璧だった。羽月邸で装備チェックとパッキング。そこで大量の忘れ物が発覚したゴッシーは秀岳荘で4万円のお買い物。もう引き返せない。バスで静内へ移動中、まさかの雨が降り出す。明日も雨らしいので、今晩の入山を中止してクリスマスイブを静内の町で過ごす。静内駅近くの大安食堂で定食を頼み、山に行くとお母さんに話すと、「クリスマスなのにどうしてそんな余計な事考えるの?」と言われる。去り際におにぎり、ミカン、ケーキ、お茶をもらう。あったかいクリスマスイブ。

12月25日:雨→曇り→雪
静内ダム (13:50) 船別林道分岐=C1 (19:10)
昨晩は大嵐だった。雨をしのげると教えてもらった寝床でもビチョビチョになってしまう。小雨になるのを待って、昼のバスに乗り、終点の農屋まで。雪のない車道を歩き始めて少しすると奇跡的に車がやってきて、静内ダムまで乗せてもらう。静内ダムは暴風。ダムの湖面が台風中継のように白波立って上の道路まで水しぶきが飛んでくる。その上、道がスケートリンクのようにツルツルで歩きにくい。何度も転ぶ。車も滑る。船別大橋の林道分岐で笹を敷いてツェルト張って寝る。

12月26日:曇り→雪
C1 (6:45) 林道上、五万図のコイボクのコ先=C2 (15:30)
強い冬型。予報でも天気図からもひどい天気を覚悟していたが、風はあるものの荒れてはおらず。たまに太陽ものぞく。重荷とツルツル斜面に苦しみつつひたすら歩く。ナナシ沢二股過ぎたあたりで除雪がなくなりスノーシューを履く。ラッセル踝~脛。力尽きてC2。昨日よりだいぶ寒い。

12月27日:曇り時々雪
C2 (6:25) 清和橋 (8:15-8:30) シカシナイ山手前Co1600=C3 (13:30)
林道歩き。雪が締まっておりラッセルほとんどない。清和橋から尾根に取り付く。バリズボの下がシャリシャリの雪で登りにくい。修論明けで運動不足のゴッシーが遅れ始める。稜上に出ると雪が締まっており歩きやすくなった。ゴッシーのケツをたたきながらシカシナイ山ピーク直下の斜面カンバ林を開拓してツェルト泊。

12月28日:高曇り時々晴れ→雪
C3 (7:25) シカシナイ山 (7:40)・1821先=Ω4 (13:30)
ガス、気にならない風。今日も早々にゴッシーがバテる。羽月がいつ振り返っても止まっている。シカシナイ山先からバリズボとシャリシャリのミックスがひどくなる。風も徐々に強くなる。二人とも眼鏡で出発したことを後悔する。雪庇は両面に出ていて不規則だが1m程度。・1821前後は所々細めのナイフリッジ。ガスってはいるが・1821先は真っ白な稜線。・1564尾根分岐先の吹き溜まりにイグルー。製作1.5h。快適。ラジオでFMが入って嬉しい。

12月29日:ガスと雪、時々晴れ
Ω4 (7:30) カムエク (12:30) ピラミッド手前コル=Ω5(13:30)
カムエク南西稜核心部のっこしの日。雪とガスのためしばらく天気待ち。回復傾向の読みでEPにして出発。視界は2,300ベースでたまに500。風は気にならない程度だが局地的に強い。・1848まではナイフリッジの東側に1mほどの雪庇。急でバリズボのブッシュ斜面を喘ぎながら進む。消耗する。一度、ピッケルを刺した先から雪庇崩壊。核心の核心は・1848から。ギバギバの岩稜と細いナイフリッジ。恐怖と興奮が入れ混じる。岩は概ね東側を捲くが、急なトラバースが多い。ナイフリッジは数回馬乗りになって進む。高度感あり。バックステップも多用。そして絶えずズボズボの雪と重荷で消耗する。全体を通して緊張する登降は多かったが、持参した30mロープは結局使わなかった。ついにカムエクの山頂に上り詰めて、二人で吠える。ガスガス。ピラミッド手前コルの吹き溜まりでΩ。製作1hと少し。毎晩のごとく便秘のゴッシーの屁の臭さに悶える。

12月30日:快晴
Ω5 (6:30) ピラミッド(7:30-7:40)・1807 (8:15-8:30) 1823峰 (12:40-12:50)・1643手前コル=Ω6 (13:30)
ついに来たド快晴!ピラミッドまでは雪は比較的締まっている。数か所岩も出てくるが概ね捲ける。振り返るとカムエクと南西稜がピンクに染まっており、見とれる。ピラミッド先のコルで山岳部の現役パーティーに会う。赤いヤッケで統一されておりかっこいい。トレースを交換する。・1807まで所々細めの雪稜。・1807先の岩稜帯は、しばらく日高側を大きくトラバースしていくが、非常に硬く前爪しか刺さらず緊張する下り。・1602は掘れそうだった。その後、膝まで埋まるズボズボのリンゴ畑。雪庇は十勝側に2m程度。背中にはまだ8日分の荷物。地獄の住人のような足取りになる。偽ピーク手前でリンゴ畑から解放されて岩稜帯になる。1823峰まで本当に長かった。この日はコイカクまで行くことを諦め、・1643手前コルでΩ。製作2hと少し。東からの吹き上げが強く、消耗する建設だった。夕焼けがとても綺麗で、疲れが取れたと言いたいが、取れない。

12月31日:快晴
Ω6 (6:40) コイカクの頭付近=Ω7 (10:20)
快晴無風。・1643の登りもバリズボ。しんどいが、ピンクに染まる1823に少しパワーをもらう。コイカクの登りは部分的にアイゼンがサクサク決まって快適。コイカク岩稜は、ズボズボのトラバースを嫌って概ね岩稜上を行く。岩登りチックなところも数か所。コイカクの頭の直下にΩ。低気圧と年越しに備えて、4hかけてデラックスルームを作る。イグルーの展示会があれば出品したい出来栄え。イグルー内に小さな鏡餅を飾り、年越しそばを食らい、紅白を聞きながら寝落ち。

1月1日:吹雪
Ω8=Ω7
低気圧の通過で停滞。終日ノースウェーブを聞きながら、ゴロゴロする。餅を茹でたり、ぜんざいにしたりして食べる。あえて言おう、美味であった。

1月2日:雪・ガス→吹雪
Ω8 (6:45) ヤオロマップ (8:45-8:55) 1839峰 (11:30) ヤオロマップ (13:45-13:55) Ω9=Ω8 (16:05)
朝一のシビアなUnchingで羽月のモモヒキにウンが付き、帰りたくなるが、何とかその気持ちを抑える。雪は降っているが風は弱いので、明るくなるのを待ってからアタックに出る。視界2,300。昨日から降り積もった雪で終始膝〜腰のラッセル。荷物は軽いがさすがにしんどい。ヤオロマップまで雪庇1m程度。所々岩が出ているが問題ない。1839への吊り尾根上も相変わらずのラッセル。視界は100に落ちてくる。雪庇は小さいが両面に不規則に出ている。39手前のポコと39への登りは急。風も強くなってくる。ようやくガスガスのピークにたどり着き、すぐに引き返すが、無残にもトレースは跡形もなくなっている。フワフワの雪稜上でほぼホワイトアウトとなり、平衡感覚を失って度々バランスを崩す。苦しいラッセルをイグルーまで交代で続ける。初めて1839峰を踏めたのは嬉しいが、修行のようなアタックでヘロヘロになった。イグルーはほぼ埋没していた。

1月3日:吹雪→雪
Ω9 (7:10) コイカク夏尾根末端 (9:45) 札内ヒュッテ=C10 (13:50)
吹雪の中コイカク夏尾根を下る。膝ラッセル。上部は急。さらに、コンモリ積もった雪の下に岩が隠れており歩きにくい。視界がないのでコンパス見ながら慎重に降りていく。3回ほど樹林内雪崩を誘発。あまり気持ちの良くない下り。コイカク沢に降りてからも、ひたすらに膝〜腰のラッセルを繰り返す。渡渉は10回ほど。しんどい。ヘロヘロになって札内ヒュッテにたどり着き、ビチョビチョの装備を乾かす。この10日間のご褒美のような快適な小屋。

1月4日:晴れ
C10 (7:10) ピョウタンの滝 (9:15) 道道上ヒッチハイク (9:45)
膝ラッセルと、トンネルでのカラオケを繰り返しながら歩く。除雪終点はピョウタンの滝。20km先のバス停を目指してさらに歩いていると、山岳センターの検針に来ていた北電の方に拾っていただき、長かった山行が終わる。車内でいただいたマルセイバターサンドが、もう最高においしかった。
天候 詳細後述
過去天気図(気象庁) 2017年12月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
コース状況/
危険箇所等
詳細後述
行きのバス。ザックがでかいぜ。
12
行きのバス。ザックがでかいぜ。
ツルツル林道。マリオカートのコースのよう。
3
ツルツル林道。マリオカートのコースのよう。
あ”ぁぁぁ!
40卻發い討茲Δ笋登りだす。バリズボ。
3
40卻發い討茲Δ笋登りだす。バリズボ。
シカシナイの先
・1821先イグルー
10
・1821先イグルー
前半の核心部
後半の核心部。ガスが晴れてピークが見えた。
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後半の核心部。ガスが晴れてピークが見えた。
吹き上げが強い。
5
吹き上げが強い。
馬乗りになってナイフリッジを進む。高度感あり。
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馬乗りになってナイフリッジを進む。高度感あり。
カムエク染まる。
14
カムエク染まる。
ピラミッドの登り。
7
ピラミッドの登り。
1823への登り。奥からカムエク、ピラミッド、1807
14
1823への登り。奥からカムエク、ピラミッド、1807
1823峰。39が少しだけ近くなった。
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1823峰。39が少しだけ近くなった。
・1643手前コルで建設中
11
・1643手前コルで建設中
正月停滞
1839アタック、急登。
5
1839アタック、急登。
1839アタック、急登。
6
1839アタック、急登。
ヘロヘロになってイグルーを目指す。
4
ヘロヘロになってイグルーを目指す。
コイカク沢でもずっとラッセル。
2
コイカク沢でもずっとラッセル。
札内ダムゲートでほぼ下山。
13
札内ダムゲートでほぼ下山。

装備

個人装備
テント無線GPS無しのプリミティブスタイル

感想

修論に追われ、2か月くらい家と研究室の徒歩1分圏内の往復しかしてこなかった。体力的にとても不安で大丈夫なのかと心配だったが、案の定大丈夫ではなく、歩いている最中に何度も意識が飛びそうになった。
それでも無事に貫徹できたのは天気とパートナーに助けられたからに他ならず、感謝してもしきれません。今年就職なので、もうこれ以上長い山行に出かけることはないでしょう。とても良き思い出になりました。あざました!
なお、今現在も修論が詰んでて意識が飛びそうです!ヒャッハー!!

大きな山行を貫徹できて嬉しい。できるだけ長く、こんな山登りを続けていきたい。だれかボクを雇ってください。

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コメント

貫徹おめでとう!
ゴッシーの便秘はこれまで培った経験もってしてもたいして改善出来てないようだ!
2018/1/7 18:23
Re: 貫徹おめでとう!
ありがとうございます!
今回も下剤を持参して何度か服用したのですが、屁は臭いままでしたので、今後一生付き合っていく覚悟を致しました。
パートナーには申し訳ない気持ちでいっぱいです。
2018/1/7 21:26
Re[2]: 貫徹おめでとう!
ありがとうございます!
あとゴッシーは下剤判断ミスで、逆に行動中1日3回行ってた日もありました。
2018/1/7 22:02
山と渓谷4月号掲載おめでとう。
今さらですけど、面白い記事でした。
北大山岳部のレコは知識が詰まっていて長い歴史を礎に後輩へ引き継がれていることがどの山行内容を見ても強く感じます。
今月の本紙のテーマが「大人のための登山学」だけに「Unching」とか!若さが溢れいて笑いました。逆に若さを頂けたのかもしれない…。
これだけのチームワークを発揮できるのですからきっと大丈夫、良い就職先が見つかるといいですね。
最後は先輩風ですいません。
2018/5/6 6:06
Re: 山と渓谷4月号掲載おめでとう。
コメントありがとうございます!
山岳雑誌にもっと学生の記録が載ると面白いかもしれないですね。
これからも安全に登っていきたいと思います。
2018/5/7 16:53
何回見ても、強い山行のaach!痺れるわ
2021/12/28 11:52
プロフィール画像
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