四阿山 月下逍遥と雲海の彼方の御来迎
- GPS
- 05:04
- 距離
- 11.9km
- 登り
- 919m
- 下り
- 906m
コースタイム
- 山行
- 4:21
- 休憩
- 0:41
- 合計
- 5:02
天候 | 晴天 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険箇所特になし。 未明〜早朝の登山であったためか雪の踏み抜きもほとんどなし。スノーシュー、12本爪アイゼン、チェーンスパイクとフル装備で臨んだものの、トレッキング・ポールも含め、いずれも使用せず。 |
その他周辺情報 | あずまや温泉は11時からなので、少し離れた地蔵温泉 十福の湯に。掛け流しの温泉の魅力に加え、山奥の温泉であるにもかかわらずカフェ・レストランが大変充実 |
写真
感想
ウィーンへの出張から帰国し、一息つくのも束の間、今度は松本への出張である。人が数多く亡くなっているヨーロッパの記録的な寒波とは対照的に、日本は20度にも達しようとする暖かさである。気になるのは長野の天気である。金曜日はどこも雨のようであるが、週末は好天に恵まれそうだ。松本から少し足を北に延ばして、四阿山に登ることにした。とはいえ、金曜日から風邪をひいたようであり、夜は大量の寝汗をかく。四阿山に登る場合、ダボスから入り根子岳と周回するルートとあずまや温泉からのピストンが一般的に思われる。直前までかなり迷ったのだが、体調の悪さもあり、歩行時間も少ない後者のルートとした。
3時過ぎにホテルを後にすると、満天の星空である。月はどうしたのだろうか。ようやく東の空から少し欠けた弦月が昇りつつあるところだった。準備を整えてあずまや温泉の駐車場から登山を開始したのはすでに4時近くなっていた。車で登ってきた道をそのまま登っていくと登山道となるので、暗闇の中を登山口を探す労苦は不要であった。最初は梢の高い落葉松と樺の林間を行く。ライトを落とすと月明かりが投影する樹々のシルエットが浮かび上がる。
まもなく牧草地の雪原に出る。月は中空に差し掛かり、明るさを増している。再びライトを落とすと、雪の中の氷の結晶がキラキラと輝く。月明かりに照らされた白樺のシルエットが辺りの明るさを強調する。ライトを消したまま、雪原を登っていく。この月下逍遥の機会を伺っていたのではあるが、明け方に明るい月が南天にある、すなわち下弦の月である必要がある。勿論、月明かりでも登れるような登山道という点においては、この四阿山の牧草地の雪原は最適であるのは云うまでもない。
牧草地を越えるとダケカンバと思われる樹林であるが、落葉した樹々は密生していないので、月下山行を続ける。振り返ると菅平高原の街の夜景が遠くにみえる。薄明の中でスキー場の山がすっかりと白い。風の通り道のせいだろうか、山の標高が低くても菅平名物の樹氷が健在なのであろう。いつしか星が急に姿を消している。朝が近づいて来たらしい。御来光を拝むにはこの西向きに斜面を登りきらねばならない。尾根筋に出るまで、急げばあと10分ほどだろうか。
夜の帳が開けるのは意外と早い。なんとか尾根筋に到達する、南東の方角には浅間山の雄大な山容のシルエット。その浅間山との間、東の方角には大雲海である。浅間山の彼方には八ヶ岳連峰、その西の端には蓼科山の禿頭までが明瞭に見て取れる。おそらく八ヶ岳連峰のどの山からも同じような大雲海を眺めることであろう。空の片隅が燃え上がるように赤くなっている。間もなく、雲海の彼方から茜色の光芒がさす。来た‼︎御来迎の瞬間である。
急いで、隣の根子岳が見えるポイントへと移動する。根子岳のピークもかすかに紅色に染まっている。朝焼けが薄かったせいだろうか、モルゲン・ロートとまではいかなかったようだ。それまで、樹々には全く霧氷をみることがなかったので、期待はしていなかったのだが、ふと見ると立派な霧氷を纏ったモンスターの大群が朝陽に照らされているではないか。朝の地平線の彼方の紅い輝きは瞬く間に輝かしい陽光の中に消え失せてゆく。
根子岳へのルートとの分岐を過ぎると山頂までは間もなくだ。しかし御来迎の写真を夢中になって撮っていたせいだろうか。指先まで凍えてしまったようだ。慌ててアウターを取り出し、3重にするが冷え切ってしまった指先はすぐには快復しない。山頂は遮るもののない360度の大展望だ。これまでとは打って変わって、途端に風が非常にきつく、急速に体感温度が低下するのが如実に感じられる。
頂上から少し下ると風の影に入ったのだろう。先ほどまでの強風は嘘のように消え、朝陽が身体を温めてくれる。指先もようやく感覚が戻ってきた。ようやくここで朝食をとる。
下りは同じルートの往復なのであるが、夜間登山の際の下山路はいつも「こんなところを登って来たんだ」という感慨に見舞われ、同じルートを往復する退屈さを感じることはない。牧草地に差し掛かると疎らに生える白樺の樹々が美しい。正面に浅間山、八ヶ岳、遠く、北アルプスといった山々の雄大な光景を眺めながら徐々に高度を下げていく。早朝に駐車場を出発して来られたと思われる多くの登山客、山スキー客とすれ違う。
トレースをみると随所に雪を深く踏み抜いた跡があるが、早朝で雪が締まっているせいだろうか、一二度、踏み抜いたくらいであった。この踏み抜きを懸念して、スノーシューを携行したのだが、結局、最後まで装着することはなかった。
翌朝、京都で見上げた月はさらに大きく欠け、月の出の時間も遅かったようだ。どうやら月明かりのもとで雪の上を逍遥するには今季、最後の機会だったようだ。
海外出張お疲れ様でした。今度は松本ですか。写真素晴らしいですね!
自分達も12日から山登りのため長野入りしてました。
有難うございます。写真はご夫妻の美しい写真に及びませんが、新しいカメラは気に入ってます。栂池〜白馬とは素晴らしいですね。👏相変わらず、好天にも恵まれたようで、素敵な山行だったことと思われます。ところで京都でニアミスしたかもしれません。
今回はニアミスでしたか。荒島岳のときもほぼニアミスな感じでしたが😁
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