白毛門〜笠ヶ岳ピストン(遭難の入口を垣間見る山行💧)
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- GPS
- 11:53
- 距離
- 9.1km
- 登り
- 1,366m
- 下り
- 1,361m
コースタイム
天候 | 曇り、標高千メートル以上は終始ガス、稜線上は強風 |
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過去天気図(気象庁) | 2018年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【登り口〜1154P】急登が続くも登山道に雪は無し。危険箇所無し。 【1154P〜1484P】標高1300付近まで夏道それ以上は雪堤歩きにて途中からアイゼン。危険箇所無し。 【1484P〜白毛門】完全な雪堤雪稜歩き。ストックからピッケルに変装。樹林帯を抜けた山頂直下より所によりアイスバーン。右の沢への滑落に要注意。トラバース時も注意。 【白毛門〜笠ヶ岳】強風。視界不良時の下山は迷い尾根への注意が必要。 |
写真
装備
個人装備 |
泊対応装備にエマージェンシーキットとして鎮痛剤と包帯はあった。加えて湿布も必要。
添え木に使う時の紐やワイヤーもザックのサイドポケットに常備。 |
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感想
朝焼けした谷川岳を見たい。
その思いで、前日入りして、ナイトハイクを始めたのは三時過ぎ。
最初の1154Pを越えた辺りからは空も白み始めていた。視界が利くようになり、願っていた思いが叶わないことに自分の気持ちを納得させるにはそんなに時間は要らなかった。
ヤマテンで全国的に天気が悪いなか、少しでも予報の良い谷川・武尊周辺でチョイスした山行だが、最初からそんなに期待はしてはいないし、午後からは悪くなる予報も山では前倒しになることは珍しくない。しかし、朝焼けどころか、ガスで谷川岳が一望出来ないことには落胆した。
それでも、今期は最後になるであろう雪稜雪堤歩きを噛み締めるように山頂へ向かう。
この地域の今年の雪解けは昨年と比べると半月以上早いようだ。湯桧曽川河川敷の雪はすっかり無くなっている。
1484Pを越え樹林帯を抜けると山頂までは急登での氷化した岩やクラスト面の連続で緊張感が高まる。が、しっかりアイゼンの爪が効くし、四つん這いの三点支持でさほど恐さは感じない。
白毛門到達。相変わらずガスの中。一の倉も下部がチョロっと霞んで見える程度だ。しかし、時間はまだ早く、時折厚いガスの切れ目からはぼやけた淡い輪郭が微かな期待を抱かせ、笠ヶ岳へと向かう。
横殴りの冷たい風にたまらずフードを被る。私はフードは極力被らない。視界が極端に狭くなり、音の関知も鈍るばかりか、色んな感覚が鈍ると感じるからだ。ざっくりいうとウザったい。
8時前、笠ヶ岳に到達。淡い期待をもった視界と天候は更に悪化して風が荒れ狂って立ってられない程に。
ピークを少し越えた所に地図上記載されてる避難小屋がある。雪で使えないかもと思ったそのドーム型の避難小屋に逃げこむ。鉄扉の内側の鉄板が脱落しかけドアが閉まらないが、その存在は充分にありがたい。
小一時間、こんな状況を共有出来る相手がもしや来やしないかとゆっくりと暖をとるが、やはりこの天候では誰も来やしない。
時間はまだ9時前。風は相変わらず収まらないが肌に刺すような風は、少し朝とは違う春を感じさせる風に変わったことを匂いと伴に感じてはいた。しかし、ロケーションが効かないなら、この先の朝日岳まで行っても己の自己満を充たすだけで他になにも意味を見いだせないので、今回はここで折り返し下山。
それは山頂直下の下山開始直後だった。
登山時には氷化してた斜面の表面だけが、気温の上昇で緩み微妙に変化しており、ズリっといってしまい左脚に自分の全体重と泊対応の二十キロ近いザックの重みが、へんな形で乗っかってしまい痛みでその場でうずくまる。
やってしまった。捻挫だろう。最初の下山始めの第一歩。もっと探るように確かめるように踏み出すべきだった。
痛みが引くまで数十分じっと悶え固まる。
果たして脚は動かせるのか。
なんとか立てるが痛みで歩くに至らない。しかし、感覚から骨は大丈夫なようだ。
今出来ること。鎮痛剤と足首の固定。
しかし、靴を脱げばもうはけなくなるので上から添え木が妥当とはおもうが、この状況では諦めた。
痛みが引くまで尚も活動停止継続。それまで寧ろ朝より暖かく感じていた空気も一変し、急激に寒気が襲ってくる。
ケガというものは精神的な圧迫感もあり急速に体温を奪っていくものなのだと実感した。
選択は二択。
先程などの小屋に戻り明日以降行動するか。天候は午後以降悪化だが、安全性は高い。しかし、悪天の中降りられなければ救助要請となってしまう。
このままケガをおして自力下山するか。
自分の左足首と相談する。
念のためスマホの通信を確認すると途切れてるが、少しさがれば繋がるはすだ。幸い時間はたっぷりある。どんなに時間が掛かろうが第二のアクシデントさえ起こさなければ下山は出来る。問題はその確率が極めて高くなったこと。
しかし痛みをガマンして立てるまでになったんで行動開始。
下山を始め直ぐ、やはり動揺してたのか、新雪の吹きだまった筋状のラインをトラバース痕と見誤り暫くトレースしてしまい迷い尾根へ降りそうになった。
この時が一番やばかった。焦りからか数十メートル違う尾根に下降しかけて、現在地を確認、誤りに気付く。慎重に時間を掛けて細かく現在地確認を行うよう心がける。
上空では姿は見せないがヘリの音が聞こえてる。谷川岳だろうか。冷静に行かないとオレもお世話になってしまう。もっとも、今日の状況じゃヘリへの収容も無理だが。
まるで左足に力が入らずバランスも取れない。何よりも下山の一連の動作が一番痛む。
なので、雪のある斜面は右向きに寝そべり半身になり脚をあげ肩ピッケルで制動しながら降りる。私は半滑落とよんでるスタイル。
コントロールはしているが、当然直接的な降下になる。ヤバい斜面は避けながら、斜面の斜度と雪質を観察しての横トラバースと半滑落を繰り返すあみだ下山。
白毛門まで戻れた。登り返しが左足首に負担にならなかったのも幸いした。
山頂直下の急斜面も細かく刻んだあみだ下山でなんとかこなし、ここで初めて山を登ってる人とスライド。男女四人パーティー。
彼等は、私の展望の利かない山頂の情報を聞き、ここで折り返すと言う。私の異変に気付き声をかけて貰い、心配をおかけして申し訳ない。
山頂を断念した彼等は、大休憩を取り、暫く私の後方になってくれた。
それが、どんなに心強かった事か、力になったか。
樹林帯に入っても、樹木やツリーホールの落下を避けながら、滑り落ちれる斜面はあみだ下山でこなす。辛いのは滑らない緩斜面。そこからはピッケルをストックに変え歩くしかない。
更に辛いのは1154P付近からの雪の無い急な尾根への下降。ストックをかなり長めにして、足のおろしばを慎重に選び、痛みに耐えながら牛歩の如く。続く痛みに耐えられないので座り込んでの休みを入れるのだが、そこから立ち上がるのが一番つらかったりする。
本来安静固定し無ければならない足を使い続ける訳だから、足首の状態は悪くなり痛みは増す一方、冷や汗が噴き出て手持ちの二箸凌紊盪箸だ擇襦
そんな耐え難い時間を六時間近く。ようやく谷川岳のロープウェイ駅舎を水平方向に見る位置まで下山。里での重機が作業している音も聞こえ始め、戻って来れたことを実感すると、張り詰めていた気持ちが緩み更に痛みが増幅した。駐車場迄の平面歩行も困難になったと同時に安堵と喜びで心身グシャグシャ状態で車に着く。
車って凄いな。こんな足でも、難なく帰れる。
平場ってありがたいな。普段意識してないけど周りに助けられてる。
普段の日常の生活がどんなに人に支えられて生きているのか改めて思う。
無事に山から降りれたことに感謝したい。
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