極限状態を体験 赤岳登頂と初級雪山講習



- GPS
- 32:00
- 距離
- 13.7km
- 登り
- 1,266m
- 下り
- 1,250m
コースタイム
5日 7:57赤岳鉱泉-行者小屋-地蔵尾根-10:00?赤岳展望荘10:15-10:58赤岳頂上山荘-11:30?赤岳展望荘-地蔵尾根-行者小屋-12:56赤岳鉱泉14:10-15:16赤岳山荘駐車場
(吹雪で写真を撮る余裕がなく時間が不明確です)
天候 | 4日 雪 5日 雪 稜線から先は強風 後から知ったが、4日〜5日は信越の各地に大雪警報が出ていたという。5日はいつもは晴れている甲府でも強風で雪がちらついたほどの強い冬型だった。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
5日 赤岳山荘から久野さんの車で美濃戸口まで 4日からの積雪10センチ位 道は圧雪状態 |
コース状況/ 危険箇所等 |
強烈な冬型で4日から5日にかけて赤岳鉱泉あたりで40〜50センチの降雪 〇赤岳鉱泉-行者小屋 降雪新たに40〜50センチだが、トレース多数。危険な箇所無し 〇行者小屋-赤岳展望荘(地蔵尾根) 雪崩の危険があるため文三郎尾根は使用せず。地蔵尾根も急傾斜が多く、危険箇所多数。稜線は雪と強風でトレースもすぐ消える。久野さんの指示がなければルートロスもあったと思う。地蔵仏から赤岳展望荘付近は極めて風が強く、雪で頬と鼻が凍傷になりそうになる。極めて危険状態 〇赤岳展望荘 1月10日まで営業中とのこと。本当にこの小屋があるので生き返るよう。休憩とバラクラバ等を乾かしてから出発。 殆どの方が、登頂を諦め、展望荘から下山した模様。行けるところまで行くことにする。 〇赤岳展望荘-赤岳頂上山荘 雪と強風しかも急傾斜が多く極めて危険。赤岳南峰は、風も強く岩が大きく雪が十分に着いていないため、アイゼン操作が難しいため久野さんの判断で、赤岳頂上山荘(赤岳北峰)までとして下山。 〇赤岳頂上山荘-赤岳展望荘 下りでゴーグル装着。下りの急傾斜では特に注意。赤岳展望荘で再度休憩 〇赤岳展望荘-(地蔵尾根)-行者小屋 上部は、急傾斜地が多いため下りは特に注意を払う。久野さんに指示を受けながら下降。稜線から樹林帯に入ったところでアイゼンを外し、アイゼンを装着しない雪道での下り方を実践しながら下る。 〇行者小屋-赤岳鉱泉 危険箇所無し。雪道が極めて快適。歩くのが楽しくなる。 〇赤岳鉱泉-赤岳山荘駐車場 雪道が極めて快適。歩くのが楽しくなる。雪は30センチ位 |
写真
Teacher久野曰く、展望荘があったから赤岳で遭難死を免れた人がうん十人位いたとか、本当にそう思います。
感想
雪山をやるには誰かに教えてもらわねばと思っていたところ、山岳ガイド ミキヤツ登山教室
http://mikiyatsu.web.infoseek.co.jp/
をインターネットで見つけた。
HPを見ると、山の道具選びの内容も、実践・実体験からなのか非常に説得力があったし、歩行技術についても雪山技術についても・・・なんか凄いと・・・
コースの中に「赤岳登頂と初級雪山講習」ってのがあったので、早速12月初旬に申し込み、この1月4日、5日と行ってきた。
コーチして頂いたのは、八ヶ岳山岳ガイド協会所属 (社)日本山岳ガイド協会 登攀ガイドである久野弘龍さん。岡山県から講習にきたTさんと一緒に講習を受けた。
1日目(4日)は、赤岳鉱泉まで登り、アイスキャンディーを使ったアイゼン講習
フラットフィッティングでの登坂・下降、フラットフィッティングでのトラバース、フロントポイント(前爪)を使った登坂・下降、斜めに登るフロントポイントとフラットフィッティングのコンビネーション、キックステップによるフラットフッティング、スリーオクロック(ナインオクロック)の登坂・下降、斜面での向きの変え方、ピッケルを使用した登坂・下降、滑落制御など、高度な技術を理論と実践で学ぶ。
詳しくはこちらを・・・http://mikiyatsu.web.infoseek.co.jp/page243.html
講習の間中、雪&強風で、いつもより着込んだものの、講習では運動量が少ないため、指は悴んで痛いわ、最後には震えが来るわで、講習に集中できず、久野さんには失礼したと思う。アイゼン講習の日は晴天であった方が良い。
私には、全く頭も体もついて行けなかったが・・・・明日、実践で体にたたき込むと誓って、赤岳鉱泉の評判のおいしい夕食を味わう(山小屋とは思えない本当に美味)
夕食後は、久野さんと以前講習を受けた方から、様々なご教授をいただき、大変有意義な1日目だった。
その方曰く、雪山で遭難する可能性が高くなる判断基準
ベテラン40=マイナスの気温+風速・・・例えば、マイナス20℃なら風速20m、マイナス10℃なら風速30m、普通の人なら30を判断基準とすべし
2日目(5日)は、最高の講習条件だった。前日からの雪で積雪40〜50(赤岳鉱泉で)
赤岳展望荘で気温マイナス19℃、風速は久野さんによると20mはないと仰っていたが、この日、甲府で最大瞬間風速21mを記録しているので、私は赤岳山頂では20mは十分にあったと思う。この気温、風速でさらに吹雪。こういう状態になれば、私単独なら完全に遭難→死という状況の貴重な体験だった。(久野さんによると冬の赤岳の最悪をレベル5とすれば、レベル3程度とのこと)
さて、実践
中程度の斜面まではフラットフッティングで歩く。この歩き方だと、姿勢が良くなり目の位置が高くなる。視野が広がり前方がよく見えるので、登山道の変化に気が付きやすい。
傾斜では前屈みになり、視野が狭くなる私の悪い癖・・だから良くルートミスをする。・・が改善された。
行者小屋から地蔵尾根を行く。この日は積雪が多かったので、文三郎コースは雪崩の危険性があるという久野さんの判断で、より安全性の高い地蔵尾根を行くことに
地蔵尾根でも雪崩は起きる。過去雪崩があった斜面を教えて頂き、雪が深くなった場合のコース取りなどについても教えて頂く。
稜線に出る手前で、ザイルでの連結、バラクラバ装着、中間着の着込みなど、強風対策を行なう。
稜線に出て、雪&強風の中、
途中何カ所かコースを外して、難しい登坂、新雪の歩き方などの訓練なども実施
クサリには全く頼らず、ハシゴもできるだけ使用しないで登坂する。・・・昨日教えてもらったことが実践でなかなか生かせない。
また風をできるだけ顔に受けない歩き方、まつげの氷の取り方、頬が凍傷にかかっているかの見分け方なども伝授される。
極限状態では自分の弱点や装備の悪さがよく分かる。
弱点その1 心拍数が上がりやすく呼吸が乱れる:できるだけ息が眼鏡にかからないようにするが、息が上がって眼鏡が曇って凍る。稜線では吹雪で鼻、頬などが凍傷になる位だったので、バラクラバで口まで覆うと、あっという間に曇って凍ってしまった。視力が0.1以下で眼鏡がないと非常に危険だが、久野さんのアドバイスで、眼鏡を外して対処。ザイルでつながれているから良いようなものの、これが一人だったらと思うとぞっとする。
装備その1 フードの形:久野さんはHPの中で、顔に風を直接受けないようにするため、フードをかぶった時、横から顔が見えないようなものを使用せよと解説していたが、パタゴニアのものなら何でもそうだろうと思ったのが大間違い。
パタゴニア トリオレット ジャケットは、そうなっていなくて、風を横から受けると頬に風が当たるので非常に辛かった。だからバラクラバを目出し帽状態にしなければならず、、眼鏡が曇って凍った。
極寒の赤岳では天気が良くても強風だと雪が舞うので、フードの形は極めて重要な要素であると実感。(パタゴニアは高いのでなかなか買い直せないが)
装備その2 安いゴーグルは曇る:久野さんはHPでも解説されているが、曇るから絶対登坂中には使うな、頭や首にかけるなと言われ、雨蓋の中に入れ、下山時に使用。下山時は谷から吹き上がる様に風が吹き、どうしても正面に風を受け、顔に凍傷を受けやすいからだ。眼鏡を外して装着し、曇らない対処法も教えて頂いたが、私のモンベルのアルパインゴーグル(確か6800円)は、教えてもらったとおり何度も換気したが次第に曇り凍って役に立たなかった。Tさんのは2万円位する2重タイプ。よく見ると下の空気穴も非常に小さい。私のは安物で1重タイプ&下に空気穴とスポンジ。こういうタイプは吐く息が中に入って直ぐ曇る。・・・これも命取りにつながることを実感。
弱点その2 指先の血行の悪さ: いつも手が冷たい。手袋は、ブラックダイヤモンド ミッドウエイト(2〜7℃)+グリセード(-17℃〜-1℃)で、使い捨てカイロミニをオーバーグローブ側の内側に使用。これでもピッケルを持っている右手の人差し指と親指が痛くなってくる。久野さんに指の痛みを伝えると、痛みが続き感覚がなくなると完全に凍傷になるので、その前に教えろ下山するからというので、ピッケルを持つ手を変え必死に指を揉んで血流を良くする。赤岳展望山荘までの登坂中、何度も指は大丈夫かと声をかけてもらって、何とか持ちこたえる。
などなど・・十分に書ききれないが、本当に貴重な体験だった。当然、これからも悪天候の時には私は登らないが、突然天気が急変し、このような状況なったときには本当に役立つと思う。
自己流で登山始め、私のように次第にエスカレートしている方は、ぜひ講習を受けることをお勧めしたい。
久野さんありがとうございました。とても勉強になりました。教えて頂いたことを忘れず身につけていきたいと思います。
また、岡山のTさん、私は眼鏡が使えず、一杯一杯だったので、下山時にはずーっとトップを行って頂きありがとうございました。お世話になりました。
天気の良い日に赤岳登頂にチャレンジしましょう。
こんばんは。
私のすぐそばにいらしたのですね。
23枚目の青のカリマ−のザックを背負ってるのが私です。
私はあの吹雪のなか、横岳へ突っ込みました。
結局、どうしても日ノ岳ルンゼを登ることができず撤退
しました。新雪でピッケルが効かず、踏ん張ることもできず1度滑り落ちてしまいました。
なんとか頑張って這い上がりましたが限界でした。
とても悔しかった。今日もまだその気持ちを引きずっています。
私の経験、技術が未熟だということを差し引いても難しかったです。
siriusさんのような技量の高い方にコメント頂いて光栄です。
展望荘の青カリマーがsirusさんだったのですね。
それにしてもあの天候の中を挑戦するとは、相当の自信と技量がなければできませんよね。尊敬します。
私は今回で良く自分の技量や弱点が分かりました。
遭難しないようほどほどのチャレンジャー&臆病者に徹したいと思います。
これからもよろしくお願いいたします。
becopapaさん、はじめまして。
geraniumと申します。
いやー、大変な荒天だったようですね。お疲れ様です。
私も昨年末に赤岳ガイド講習に参加したので、興味深く拝見させていただきました。
初心者には、本当に勉強になりますよね。
眼鏡のくもりと氷結対策ですが、私はバラクラバで鼻や口を覆わないよう教わりました。
時々息を止めて覆って温めることで、今のところうまくいってます。
geraniumさんも久野さんの講習を受けたのですね。
それにしても最後のまとめ凄いですね。
久野さんが行っていたことを正確に記述しています。私はとても覚えきれませんでした。
私の記述が不正確で申し訳ありません。
眼鏡の曇りと凍結は、仰るとおりはじめは鼻や口を覆わないように言われていたのですが、地蔵尾根の上部あたりは非常に強い吹雪状態で(久野さん曰く一部レベル4)、頬が凍傷になる可能性があったので、目だけ出すように言われました。
そしたら当然、眼鏡が曇って凍り付いてしまったので、眼鏡を外した方が良いのではといわれ、そうしたところ
視力が弱く不安でしたが、眼鏡を外して目出帽状態にした方が、顔が温まり、逆に快適で歩きやすかったです。
状況により、眼鏡がなくても何とかしなければならないということも理解できました。
厳寒期の赤岳の厳しさを知り、本当にいい経験でした。
私が参加したのは、岡田康さんのガイド登山です。
言葉足らずで、すみませんでした。
ミキヤツさんのHPも大いに参考にさせていただいています。
吹雪になると、対処の仕方が違ってくるのですね。
勉強になります。ありがとうございました。
bekopapaさん,はじめまして。
今回は貴重な体験をされましたね
ミキヤツさんのガイドはどの体験談を読んでも高評価で(ただしスパルタ)安全に技術を身につけられるようですね。
私も行ってみたいなと思っていながらなかなか予定があわず,申し込めていません。
とても参考になりました。ありがとうございました
今回はかなり厳しい状態のようでしたが,ガイドさんのもと良い経験をされたようでうらやましいです。
これからもお互い安全に雪山を楽しみましょう
nagagutuさんのフロフの写真は、いつも見かけますので、初対面とは思えません。
これからもよろしくお願いします。
nagagutuさんのレコ、拝見しましたが、抱腹絶倒してしまいました。とてもユーモアがあって楽しくて良いですね。
コメントの数も半端じゃないし。
過去レコを見ると、ミキヤツのガイドを受けなくても全く大丈夫なような気もしますが・・・
bekopapaさん、こんばんは
赤岳のレポ拝見しました。
編笠山に続いてアクティブですね、天気が羨ましいです
私も4年前の2月に、ゆかいな山ガールさん達と赤岳に行ってきました(赤岳展望荘で、ストーブで一酸化中毒になりかけましたが
冬季の鳳凰三山、ゆかいな山ガールさんと「bekopapaさんに会いに行こうか」と相談しています、その節はよろしくお願いします。
bekopapaさん、今晩は。初めまして。
私も昨年、同じ冬山講習に参加しました。
同じようにメガネの問題が有りましたが、
度近眼で絶対にはずせないので、口を出して
対処しました。
まだ条件が良かったからできましたが、条件が
悪かったらメガネのせいで撤退です。
曇り止めや予備のメガネの研究をしないと。
私も何とか山頂へ行けましたが、極限でなくとも
私一人では厳しいとも感じました。
雪山楽しみましょう。(早く雪山行きたい)
編笠に続いての訪問ありがとうございます。
今日は、八ッは朝雪雲→晴れ、鳳凰は一日中きれいに見てていました。このところの鳳凰の晴天率
寒いけど、鳳凰は甲府からほぼ毎日見えていますから、良い景色
愉快な山ガールさんとぜひおいで下さい。私が車を出しますので
kurikuri8さんも冬山講習に参加したのですね。
今回の気象条件が悪すぎて、その状況を思い出すと、まだ赤岳には尻込みしてしまいますが、いつかは天気を見て単独でチャレンジしたいと思っています。
kurikuri8さんの過去レコ見たら、各所を歩かれてますね。これからの私の山行のお手本にさせて頂きます
これを機によろしくお願いいたします。
ricalojpと申します。
私と奥(ricalon)も、冬山を始めようとした数年前にミキヤツの講習を受けました。
直後に冬山装備を総入れ替えするほど影響を受けました。
>自己流で登山始め、私のように次第にエスカレートしている方は、
ぜひ講習を受けることをお勧めしたい。
全く同意見です。
私たちはその次のシーズンには神奈川山岳連盟の冬山講習にも参加しました。
どちらも有意義で、山岳会に加わらずに冬山をやるにはどちらかは必須かなと思います。
メガネの件ですが、私の場合フレームが上部にしかない小さめのを使っています。足元が見えないのが最も怖いので。幸い老眼も進んで来ているからなんですけどね。
ricalojpさんも久野さんの講習を受けられましたか。
やはり一流のガイドの実践に基づいた講習は本当に勉強になりました。しかもこれ以上ないという悪天候だったので更に良かったです。
それにしても、奥様とご一緒に山行できるとはうらやましいですね。
うちのが山があまり好きではないのと私が自分勝手なもので(笑)・・・大体単独です。
レコ見せて頂きました。私とは違って多くの方と山行をされているようで、とても楽しそうで良いですね。
今後ともぜひよろしくお願いします。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する