蔵王連峰 雁戸山-八方平

- GPS
- --:--
- 距離
- 15.4km
- 登り
- 1,475m
- 下り
- 1,459m
コースタイム
8:00関沢IC発-9:30八丁平-12:30カケスガ峰(幕営地)
2月22日
7:40カケスガ峰発-9:00北雁戸山-10:20南雁戸山-11:00八方平
11:30八方平発-13:30カケスガ峰-(テント撤収)
15:00カケスガ峰発-15:40八丁平-16:20関沢IC
| 天候 | 21日:曇りのち吹雪 22日:快晴 |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2012年02月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
自家用車
笹谷峠方面へ。 冬季閉鎖ゲート前に駐車帯があります。 (10台程度駐車可能) |
| コース状況/ 危険箇所等 |
○関沢ゲート前から八丁平までは明瞭なトレースがありました。 ○八丁平〜カケスガ峰 森林帯は等間隔にピンクリボンが付けられてますので、 ルートは判りやすいです。 (GPSログ二股に分かれている箇所の右ルート) ○アリの戸渡り〜南雁戸山 この区間は蔵王連峰の中でも最も険しい縦走路となります。 急な登下降が続き、尾根の両側は切れ落ちたナイフリッジになってます。 滑落の危険があるのでアイゼン・ピッケルは必要。 悪天時は、非常に危険になりますので、立ち入らない方が良いです。 稜線上は多数の雪庇が張り出していますので、 東面側にはあまり近づかないように通過して下さい。 ○八方平避難小屋は埋没していませんが、扉が開きませんでした。 鍵がかかっているのか、ドアが壊れているのか・・・ 原因は解りませんが、今季は利用出来なさそうです。 ○カケスガ峰と八方平の樹氷は全滅状態。見頃は終わってました。 |
写真
感想
2月21日(火)
宮城の空は晴れていたが、笹谷トンネルを越えて山形に入ると空は厚い雲に覆われ、
今にも雪が降り出しそうな雲行きとなる。
山形道を関沢ICで降り、笹谷峠方面へ向かえば冬季閉鎖ゲートに突き当たり、
駐車帯へ車を止めた。
10台ほどの駐車帯には一台も車は無く、入山者は居ないようだった。
8時にゲートを出発し、八丁平方面へ。
笹谷峠を経由し、そこから南下するのが最も楽なルートだが、
今回は笹谷峠は経由せず。
八丁平までの直通路を利用した。
道はラッセルされており、雪はよく締まっている。
締まりすぎて斜面はスリップするので、途中でアイゼンを付けた。
ラッセルは八丁平で途絶えており、そこから先へ続くトレースは見られない。
ここからは自力でラッセル。ワカンに履き替えて先へ進む。
雪の深さは、ワカンを履いて30冂世狡度で、雪は締まって安定感がある。
八丁平を過ぎて雁戸山麓の森林部に入ると、眺望は無くなり、昼だというのに薄暗い。
やがてガスがかかってきて、視界は極めて悪くなる。
森を抜けてカケスガ峰へ到着した頃には、10m先しか見えない位にガスが濃くなっていた。
天気が良ければ眺望が開け、ここから雁戸山の険しい山稜と、
そこへ続く尾根道が望めるのだが、視界は白一色。
雪も降り始めた。
風も強まり、稜線上は確実に吹雪いているのだろう。
予報によると午後から天気は回復傾向となり、明日は全域晴れとなるらしい。
しかし、その兆しは全く見えなかった。
GPSで位置を確認しながら、尾根道を辿るが前山近辺で断念。
ガスが濃くなりすぎて足元の地形もろくに把握出来ない。
この先は、切れ落ちた尾根道が続く。
今の天候でそのような地形を進むのは、極めて危険に思えた。
一旦、道を引き返し、風の防げる樹林帯へと戻り、そこで天候回復を待つ。
ひとまず、14時まで待ってみて、天候が回復しなかったら、この場で幕営する事にした。
しかしながら、時間はまだ12時。
やることがなく、暇であり、じっとしてると凍えてくる。
暖気と暇つぶしを兼ねて、弱層テストをやってみたり、テント張る際の地場を固めたりと、
地味に体を動かしながら、なんとか寒さに耐えた。
ちなみに、今回行った弱層テストの方法は、一番やり方が簡単なハンドテスト。
やり方は、1mほど斜面を掘り、直径30センチくらいの円柱を掘り出す。
その円柱を腕で抱え引いてみて、破断する強さを調べるというもの。
雪崩の発生する弱層があれば、そこから円柱はすっぱりと切れる。
手で軽く引いただけで切れるようであれば、雪崩れる可能性は高い。
腰を入れて強く引いても切れなければ、雪崩れる可能性は低い。
てな感じで大まかな判定をする。
今回やってみたところ、約50センチほど下に弱層があったが、腰を入れて引いても破断せず。
全体重をかけて思い切り引いたところでようやく破断した。
場所をかえて、改めて円柱を掘り出し、もう一度テストをやってみたが結果は同じ。
同じ層、同じ力で破断した。
結果をまとめると・・・
弱層は存在するが結合力は強く、雪崩れる可能性は低い。
但し、急激な気温上昇などの助長要因が加わればその限りではない。
というところだろうか。
今日明日は、そんなに気温は上がらないだろうから、自分が山にいる間は大丈夫かな。
そして迎えた限界時刻の14時。
・・・やはり天気は回復しない。
今日の行程終了。
ここでテントを張ることに決めた。
これまで冬山で使用していたテントは3シーズン用テントを使っていたが、
今回使用するのは冬山仕様。
新規に冬用フライシートを購入しており、今回が初使用となった。
フライシートが違うだけで、インナーは一緒。
なので設営方法はこれまでと大きく変わらず、手間取らなかった。
実際に冬用フライを使ってみた感じでは、なかなか良い感じ。
3シーズン用と比較し、様々な利点があった。
スリーブ形状の出入り口は雪を巻き込まずに出入りできて便利だし、
風や寒さに対しても強い。
以前の3シーズン用では風が吹き付けると室温が一気に下がる感覚があったが、
冬用ではそれがなく、風でテントが激しく揺られようが、室温低下は感じられない。
一点だけ、防水性が無い、というのが気になるところだけど、良い買い物をしたと思う。
テント設営が終わった頃には天候が更に悪化。
吹雪になってきたので、後はずっと室内に引篭もり。
ガスストーブで暖を取りながらコーヒー飲んでまったり過ごした。
試しにスマートフォンの電源を入れたら、バリサンでインターネットも接続可能。
こんな山奥でネットが見られる時代になるとは・・・すごい時代になったものだと思いつつ、
夕食まで時間があるので、2チャンネルの「山であった怖い話」なんてスレッドをずっと見てた。
吹雪の山で一人テントに籠もる。
そんな環境で読む怪談はかなりの臨場感があるね。
ただでさえ寒いのに、より一層肌寒くなる。
いや、肌寒い、というより背筋が寒い、という感覚か。
おかげで夜はなかなか寝付けず。
なぜあんなスレッドを見てしまったのか・・・
大いに後悔。
20時にはシェラフに包まったのだが、0時頃まで寝れなかった。。。
2月22日(水)
・・・翌朝、しっかり寝坊する。
4時には起きて5時出発。
北雁戸山山頂で朝日を拝む予定だったのに、目が覚めたのは6時半。
慌てて外に出ると、地平線が赤く染まっている。
なんとか、日の出に間に合って良かった。
やがて山の端から朝日が登場。
北雁戸山の東面が赤く染まって美しい。
朝食を済ませ、出発準備をする。
今日の行程は長い。
カケスガ峰近くの幕営地を出発し、
北雁戸山⇒南雁戸山⇒八方平
以上の順で通過し、また同じ道を通って幕営地に戻ってくる。
その後、テント撤収し、関沢ゲートへ下山する。
体力的に辛くなりそうなので、最小限の荷物だけを持参した。
風はほぼ無風。時折、そよ風レベルの風が吹く程度。
天気が良いので、今日は登山者も多そうだが、まだ朝早いので先行者は見られない。
無人の山は空気が澄んでおり、眺望はきわめて良く、
そんな中を朝一番に歩けるのは優越感を感じる。
8:30、アリの戸渡り直下着。
目の前にそびえる雪壁を前にし、アイゼン装着し、ピッケル携える。
ここから先は両側に切れ落ちたナイフリッジとなり、急登降の連続。
中央、南蔵王連峰の穏やかな稜線とは一変し、険しい稜線が続く。
南の不忘山から始まり北の笹谷峠までを蔵王縦走路とするならば、
ここはその核心部とも言える。
この雪壁が最初の難所で、個人的にはここが一番の難所ではないかと思う。
傾斜はついているが、60deg以上はあり、3月を過ぎて雪が腐ってくると通過するのは非常に困難になる。
そういう意味では、積雪期の雁戸山登山は2月が最も安定しているのではなかろうか。
この日は早朝、ということもあり雪は非常に安定していた。
通常であれば雪の安定している場所を探りながら進むのであるが、
どの場所も安定していたので、特に進路を選ぶ必要はなかった。
雪壁を登りきると、アリの戸渡りと呼ばれる、幅1mほどの狭い尾根道に至る。
強風時は危険であるが、今日は風が無いので通過するのに全く問題はなかった。
そこを過ぎれば北雁戸山の山容が目前に迫り、
ダイナミックな斜面を登っていけば、やがて広い山頂へと到着する。
北雁戸山山頂は大展望。
朝日・飯豊連邦に、月山。
周辺の山は全て見える。
山頂へ到達したことで、かすかな達成感は感じるが、ここはまだ通過点の一つ。
今日の行程はまだ始まったばかり。
しばし、休憩した後、南雁戸山へ向かった。
北雁戸山までにはいくつか踏み跡があり、登山者が訪れた痕跡があったが、
そこから南方へ向かった跡は全く見られない。
大半の登山者は北雁戸山で引き返しているようである。
確かに、積雪期に日帰りで行くとなれば、時間的に北雁戸山が限界だろう。
南雁戸山に行くには、一旦、北雁戸山南面を下り、鞍部を経由し登り返すのであるが、
この下りがまた辛い。
傾斜こそあまり無いものの、大潅木地帯であり、雪の踏み抜きが多発する。
潅木上に雪が積もる事で天然の落とし穴となり、踏み抜いた場合は腰まで埋まることもある。
脱出するのは一苦労で、這い出る為に斜面に手をかけたら、そこも崩れたり、
やっと脱出し次の一歩を踏み出したら、また落ちたりと・・・
そんなのが繰り返されるので、体力だけでなく心理的にも辛くなる。
恐らく夏道上であれば潅木は存在せず、快適に歩けるとは思うのだが、
道を示すようなものは何もなく、雪で覆われ判別できない。
夏道は尾根上では無く、若干尾根から西寄りにあるはずなので、
西側斜面を探ったりするが、どうにも上手くいかない。
もう、後半は面倒くさくなって、踏み抜きながら尾根上を突貫。
ようやく鞍部に着いたときは、疲労困憊であった。
体力的にはここが一番の難所かね。
帰路にもう一度ここを通らなければならない、と考えると気が重い。
鞍部を経由し、今度は南雁戸山への登り。
先の斜面と同じく、道は潅木に覆われている。
だが、こちらの夏道はわかりやすい。
尾根の真上を道が通っており、斜面の中間辺りは雪が風で飛ばされて、
夏道を示す岩が露出している。
踏み抜くことなく、楽に登ることが出来、やがて視界には南雁戸山の前衛峰が見えてきた。
この前衛峰(名称不明)は直登せず、西側を巻いて登るように登山道が取り付けられている。
この巻き道は雪付きが悪く、岩が露出しており傾斜もきつい。
ピッケル、アイゼンの刺さりが悪く、安定しないが、露出している岩や潅木が良い支点になる。
岩登りの要領でホールドを確実に行えば、問題なく登ることが出来た。
前衛峰の頭に出れば、目前には南雁戸山の山頂。
あとは尾根を真っ直ぐ進むだけ。
・・・、と思いきや、次第に尾根道は細り、やがてこれまで通過したことのないような細く危険な道となる。
アリの戸渡り以上に道幅は狭く、足場はかなり悪い。
初の積雪期雁戸山登山の際、この場を前にして、
"こんなのどうやって通過すればいいんだ?"
と悩んでしまい、山頂を目の前にして撤退を覚悟したものであった。
だがしかし、よくよく見れば右手側(山形側)に巻いて行けそうな道がある。
一旦、尾根を降りて尾根と平行にトラバース。
そのまま進み、細尾根地帯を抜けた先には、再び尾根に上れる道がある。
そこを登って尾根に出れば、核心部の通過は完了。
あとは広くなだらかな尾根を進んでいけば、南雁戸山の山頂に至る。
南雁戸山山頂からは、目的地の八方平が見えた。
ここは樹氷原としても知られている。
深い山中にぽっかりと存在するのどかな平地は、
これまで通過してきた険しい山稜とは対照的で、そこで一晩過ごすのはこの上なく贅沢な雪山登山に思える。
八方平避難小屋もはっきり見えて、雪で埋もれてはいないようだ。
昨日、もし天気さえ良かったら、あの小屋まで行ってそこで一泊したかった。
八方平の山小屋目指して、南雁戸山を下る。
南雁戸山頂から八方平までは広大な斜面が広がっており、まるでゲレンデみたいだ。
ここは真っ直ぐに、大斜面を下り、八方平の山小屋を目指した。
雪が緩んだ感は無いが、傾斜角から考えて雪崩れの可能性がありそうな斜面だったので、
出来るだけ早く、休まずに樹林帯まで下った。
かくして、八方平到着。
・・・が、樹氷が無い。。。
すっかり溶けてしまっており、黒々とした樹木があるばかり。
わずかに形を留めているものもあるけど、ほぼ全滅状態だった。
熊野・刈田岳の方はまだ見頃らしいが、こちらの見頃は終わっていた。
残念ではあるが、来年に期待するか・・・。
ちょうどお昼だったので、避難小屋で食事することにした。
しかし、小屋のドアが開かない。
・・・ぇ?
今期は利用できないのかな?
昨年の冬は利用できたのだが・・・
前回利用した際、かなりドアの建てつけが悪かったのを思い出し、
思い切り押し込んだりもしてみたけど、今回はびくともしない。
カギが掛けられているのだろうか???
窓にも鍵がかかっており、出入りは出来なさそうだ。
もし閉鎖されているのであれば、これは非常に残念なことである。
この小屋は、蔵王連峰の避難小屋の中では最も快適な小屋だと思う。
冬に八方平を目指す理由は、半分はこの小屋があるからのようなもので、
ここが使えないとなると、楽しみ半減する。
若干、気落ちしつつ、八方平を後にした。
そして、帰路につく。
再び雁戸山へ向かう。
先ほどとは逆ルートとなるが、全体的に下りが多い。
また、行きに通った際のトレースも残っていたので、
特に困難はなく、順調に峰を越えてゆく。
数時間前に通った道ではあるが、この道は冬の蔵王では一番好きな登山道なので、
往復するのは苦にならない。
だが、北雁戸南面の大いに苦しんだ大潅木地帯。
あそこは勘弁願いたい。
下りでも辛かったのに、今度は登り・・・。
1日に2回通るのは辛すぎる。。。
北雁戸山の山頂へ近付くと、登山者の姿が見えた。
昨日今日では、初めて目にする登山者。
しばらくして、その登山者はカケスガ峰の方へと下山していった。
今日は天気が良いので、それなりに入山者は居るらしい。
その後も、北雁戸山頂にて一人の登山者にお会いする。
しばし会話し、その時、初めて知ったのだが、
昨日、ここから南の熊野岳方面で遭難があったらしい。
ガスによる道迷いのようで、確かに昨日の天候ではルートを見失ってもおかしくないだろな。
そういえば、朝方にヘリを見かけたが、捜索中だったのだろうか。
無事発見されたそうなので、何より。
明日は我が身かもしれないからね^^;
その方と別れて、再び下山。
日中気温が上がり、若干雪が緩んでおり、朝方は何ともなかったが、
ここを通過する頃には、アイゼンに雪団子が出来るようになっていた。
アリの戸渡り下降部の雪質が気掛かりではあった。
が、若干崩れやすくはなっていたものの、キックステップ一発で安定。
問題無く下降する事が出来た。
その後は幕営地へ戻り、テントを撤収。
カケスガ峰小屋跡まで戻り、そこで最後の写真撮影。
この先は森に入るので雁戸山が見えるのはここが最後。
相変わらず空は晴れ渡っており、下山するのが勿体なく感じた。
このまま夕陽の時間までここに居ようか、
なんて考えたが真っ暗な山道を通るのははさすがに恐い。
陽が傾きかけたころ、ようやく雁戸山に背を向け下山した。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
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Luske










ソロの記録をネットで見たのは2件目でした。
気力、体力、技術とも充実しておられますね。
初めてではないとのこと、相当のベテランさんでしたか。
素晴らしいです。
感想にあったとおり、遭難事故が続いておりますので、どうぞくれぐれも気を付けて、また驚くべき記録を読ませてくださいね。
御来訪、誠にありがとうございます。
ベテランなんてとんでもない。
まだまだひよっこでございます^^;
記録を書き始めたのはごく最近で、不慣れな部分がありますが、
またどこかの山に登った際は、書いてみようと思っております。
その際は、また御覧頂ければ幸いです
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