厳しかった新雪の利尻!
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- GPS
- --:--
- 距離
- 16.0km
- 登り
- 1,734m
- 下り
- 1,718m
コースタイム
- 山行
- 7:30
- 休憩
- 1:50
- 合計
- 9:20
天候 | ガスのち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2019年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
船
|
コース状況/ 危険箇所等 |
私の親戚が利尻山の雪崩で命を落としてる。その件もあって今回この季節の登山も家族からは反対されたが、絶対に無理はしないからと説得してなんとか登らせてもらった。それほどの危険な山だというプレッシャーをもって今回は臨んだ。 9.5合目の沓形コース分岐までは積雪期と言えども大きな問題はない。しかし、そこから上は全くの別世界で厳冬期の冬山であった。滑落は致命的になるので、滑り始める前に止める道具と準備が必要。 |
その他周辺情報 | 鴛泊港から登山口へ歩いて20分ほどでキャンプ場「ゆーに」がある。1泊500円。また、ゆーにの向かいには利尻富士温泉(500円)がありキャンプ者にも非常に便利。登山口にも北麓キャンプ場があるが、営業開始が5/15〜である。温泉がある分、ゆーにのほうが勝っているだろう。 なお、鴛泊には食品店や食堂が非常に少ないので、買い物はすべて稚内で済ませておいた方が良い。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
雨具
ゲイター
バラクラバ
毛帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
アイゼン
ピッケル
スコップ
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材
調味料
飲料
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
調理器具
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ツェルト
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ヘルメット
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感想
5/2(木) 雨
ミゾレまじりの雨の中、稚内からフェリーは出航した。礼文島経由で3時間かかって利尻島鴛泊港に到着。幸い雨は上がったので歩いてキャンプ場ゆーにまで行く。受付をしてテントを張っていると再び雨となり、その後夜まで止まなかったのでテントの中に缶詰になってしまった。食事を作れる準備はしてきたのでご飯を炊いておかずを乗せ、たらふく食べて明日に備えた。
暗くなるとようやく雨が止んだので、向かいの温泉まで入浴に行った。この気温だと山の上は間違いなく雪であろう。昨晩から24時間ほど降り続いたので相当な積雪量のはずだ。明日は果たして無事に登れるだろうか?期待と不安が交錯しながら9時前には就寝した。
5/3(金) ガスのち晴れ
3時半に起きると雨は降っておらず視界も良い。天気の回復は遅いが風もそれほど強くなく、登るのには全く問題はないコンディションだ。ポン山の散策道から登り甘露泉に出てたっぷり水を汲んだ。
ポン山を巻き、4合目を過ぎると徐々に雪が出てきた。5合目と6合目の間は夏道は出ていたり出ていなかったりで残雪の踏み抜きが非常に多く、しょっぱなから嫌になってしまった。7合目からは完全に雪の上になるのでここからクランポンを装着し、夏道を気にせず歩くことにする。幸いトレースもあるのだが、いかんせん踏み抜きが非常に多く体力が吸い取られていく。この当たりから太陽が現れてテンションが上がるが、長官山から上はガスに入ってしまい、また落胆してしまう。
避難小屋の前でスキー履いた単独行者に追いつき二言三言交わす。彼は小屋で天候回復を待つとのことだが、私は時間もないので先に進むことにする。小屋の手前でもう一人引き返してきた単独行者に出会った。これより上は新雪でトレースがなくなり彼が先頭だったそうだ。ガスで視界も悪く非常に厳しいそうで、このまま下山するという。私はもう少し粘って先に進むことにした。天気も回復傾向なのでこの先は晴れる可能性大だ。
しかしこの先は非常に厳しい登山だった。9合目手前で彼のトレースは無くなり、私の一人旅になった。風もかなり強くなり視界は相変わらずなく、ルートファインドに非常に気を遣う。夏道はあるので、その痕跡をなんとか見つけようと周囲に細心の注意を払うが、アンテナを張っていれば経験上いろいろ発見があるものである。通行区分用のロープだったり、登山道補修用の板だったり。意外と手掛かりになるのはヤブの刈り払い時の灌木のナタ目だ。これらに注意していればルートはそこそこつながる。
9.5合目で雪に埋もれた看板を発見。掘り返してみると沓形ルート分岐の標識だった。ここから山頂はもうすぐのはずだ。これはいける!とテンションをさらに上げるが、ここから利尻山が最後の牙をむいた。風は暴風になり、両側ともすっぱりと切れ落ちた尾根を行くことになる。3か所ほど、落ちたら死ぬだろうという急な痩せ尾根を通過。下りはもっと危険だろうが今はそんなことも考えていられない。ようやく利尻山山頂への看板が現れその少し先に祠があり北峰の頂上だった。新雪ノントレースの悪条件の中、ついに山頂に到達できたのだった。思わずガッツポーズをして吠えた。
山頂はなぜか風がほとんど当たらなかった。上から日は照っているが、横が全く晴れないので景色が全く見えない。しかし2度ほど一陣の風が吹いたかと思うとローソク岩が姿を現し、眼下には沓形の海岸線も見ることができた。思わず「おお!」と声をあげる。しかしその後は全く晴れなかった。残念ながら山頂を辞すことにした。
沓形分岐までの危険個所は生きた心地がしなかった。クランポンの爪を最大限に効かし、滑った瞬間に滑落停止できるよう準備しながら下った。その後天気は見る見るうちに良くなり、雲がかかっているのはほぼ山頂だけになった。新雪の景色は最高で、ところどころ美しい景色をため息をつきながら眺めた。
9合目まで順調に下り、ようやくホッと息をついた。ここからはたぶん生きて帰れるだろう。9合目の下でスキーの彼が登ってきた。小屋で晴れ間を待っていたそうでしてやったりだった。私もあと1時間遅ければ山頂で晴れただろうが、今日最初に山頂を落とせたことが私の中で物凄い輝きを放っていた。彼と少し話をしたが、装備は完璧で足取りもしっかりしていた。おそらく山頂まで行けただろう。
長官山で大休止していると愛知から来たという若者がトレッキングシューズとストックという軽装で登ってきた。この装備で山頂まで行けますかね?と聞いてきたので、いや無理だと思うよ、滑ったら止まらずに死ぬよ、と率直に言ってやる。今日のコンディションではアイゼン+ピッケル両方無いと命に係わるだろう。でも沓形分岐まではこのままで行けるだろうから、そこでもう一度判断したらどう?とアドバイス。とても残念そうだったが、槍ヶ岳もこれほど迫力無いですよね〜と景色には満足そうだった。そして、私もその言葉に大きく心から頷いた。
白波が見えるほど近い海を見ながらの残雪をザクザク踏みしめる下り。日本、いや世界を見渡してもこんな登山ができる小島は無いだろう。最後の最後まで素晴らしい天気と景色に興奮冷めやらぬまま、登山口に到着した。ゆーににもどり、利尻山の尖った穂先を見ながらゆったりとテントを片付けるのは至福の時だった。利尻山神社とペシ岬にあいさつをし、この日最後のフェリーで稚内に戻ったのだった。
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20年以上前の学生時代の夏、利尻にわたり登頂を狙ったが残念ながら雨で登山はできなかった。今回、令和の切り替わりの長期休みというラッキーな機会を利用して念願の利尻に登ることができ大満足です。新雪で覆われたノントレースの悪条件をものにできたというのも良い思い出になりました。
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