【百名山・過去レコ】秋の連休・安達太良山縦走(家族・師弟山行)


- GPS
- 32:00
- 距離
- 13.1km
- 登り
- 962m
- 下り
- 1,043m
コースタイム
天候 | 初日:晴れ時々曇り/2日目:終日晴れ |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
(復路)奧岳よりバス、岳温泉(日帰り入浴)経由にて東北本線・本宮駅へ(各停+急行『くろいそ』にて帰京) |
コース状況/ 危険箇所等 |
コース中、特段の危険・不明箇所等なし |
その他周辺情報 | くろがね小屋、奥岳温泉、岳温泉など山中・山麓随所で日帰り入浴可能 |
写真
感想
<以下、大学サークル会誌の拙稿(1986年執筆)を編集・加工>
[ 第1日(11/3)]
この年、9月の半ば頃から週末ずっと雨続きで、ストレスの溜まったsatonao1は泣く子も黙る晴れの超特異日・文化の日の晴天に期待をかけ、東北南部の名山・安達太良山ツアーを企画・決行。「智恵子抄」で広く世に知られる安達太良山は、通常夜行日帰り程度の行程が相場とされているが、翌週に大学のフルマラソン大会出場が控えている上、日の短い季節でもあり、避難小屋泊りのゆとりあるプランとした。大学サークルの主力部隊はちょうど同じ週末にお隣の吾妻連峰に出かける予定となっており、同行メンバー不足のため今回はsatonao1父子と家庭教師の教え子・S君のジョイント山行というユニークな顔合わせとなった。
スポンサーのご好意とご要望を踏まえ、今回は福島まで新幹線利用といういつになくリッチな滑り出し。さすがに時速200km(※当時の最高スピード)の威力は絶大で、日光・那須といった馴染みの山々が車窓に現れたかと思うと、瞬く間に後方へと飛び去っていく。ところが、真っ晴れの空の下、列車が福島に近づいて車窓左方に姿を見せた吾妻〜安達太良連峰だけは何故かモヤモヤとした雲を被っていた。さては、サークル主力部隊の中の強力な”雨男”が雲を呼んでいるのであろうか…。ともかくも、福島駅から観光バスに乗り込んだ我々は、すっかり麓に降りてきた感じの美しい紅葉を愛でながら、労せずして標高約1,600mの吾妻スカイライン・浄土平に辿り着いた。バスはご丁寧にもここで30分余り停車してくれるため、「足馴らし」と称してすぐ目の前の吾妻小富士に登頂。正面の一切経山が雪を纏ってか大層白っぽく見え、サークル主力部隊の安否が気遣われる。(我々も一応念のためスパッツを持参したが、結果的にこれは全くの取り越し苦労であった…。)
浄土平を後にして、今度は車窓右手に秀麗な磐梯山を望みつつ、バスは更に安達太良山麓・横向温泉へと移動。ここで下車した我々は水を補給し、いざ安達太良へ、と意気込んでバス停裏手のスキー場斜面を登り出した。ところが、すぐに道を失い、仕方なくバス通りへ戻ってみると、本当の登山口はバス停から数分磐梯高原方向へ歩いたところにあり、ここには恥ずかしくなるぐらい立派な指導標が立っている。気を取り直し、気持ちの良い樹林帯の道を登っていくと、目指す箕輪山の上方はかなり白っぽく、もしや雪ありや?と期待を抱かせるが、登っていくうち、木の枝に着いた霧氷であることが判明。なかなかに綺麗なもので、記念写真など撮った後、なおも登って振り返ると、吾妻連峰は山というよりモコモコとした丘の連なりという風貌。そんな中、尖鋭なピークを突き出した磐梯山が一際立派に見える。朝晩は相当冷え込みが厳しいと見え、霜柱の沢山立ったやや歩きにくい道をなおも登っていくうち、登山口から約2時間で安達太良連峰の最高峰である箕輪山頂に到着。午後かなり遅めの時間だったこともあり、吹き付ける風は身に沁み通るように冷たい。余りの寒さに愛用の全自動カメラも変調を来たし、記念写真の撮影にかなり手間取ったものの、休憩もそこそこに山頂を後にし、草原状の道を一旦笹平へと下る。
再びやや急な坂道を登り返すと、だだっ広い溶岩台地のど真ん中にこの日の宿泊所、鉄山避難小屋が建っていた。思ったより造りはしっかりしており、入口の鉄製ドアもちゃんと閉まるのだが、何しろ風通しの良いところに建っている上、天気も良いので今晩は相当に冷え込みそうだ。小屋から西に少し歩いたところにある、戦闘機のプロペラをモチーフにした「しゃくなげの塔」なる少々不気味なモニュメントや、磐梯山の山裾に没する雄大な夕陽を何とはなしに眺めた後、周囲の水場を物色する。この辺りまで来ると、安達太良連峰の核心部が眼前に拡がり、「智恵子抄」の柔和なイメージは一気に吹き飛んで、あたりは俄かに活火山特有の荒涼とした雰囲気となる。何やら地球ではなく、火星かどこかにやってきたような錯覚を覚えるが、”火星”だけに水事情は相当に悪く、唯一利用可能な水資源と言えば、小屋の周りに辛うじて残る僅かなパウダー・スノーぐらいのものである。小屋に戻って夕食の準備に取り掛かるが、中に残った薪を燃やして暖を取ろうとしたところ、湿ってなかなか火が付かず、酸欠状態に陥って堪らず入口の戸を開け、逆に室内の寒冷化を促進するという皮肉な結果となった。ともかくも、例によって飽食気味の夕食を済ませ、シュラフにもぐり込んだものの、忍び寄る冷気に苛まれ、3人ともなかなか寝付けなかった。
[ 第2日(11/4)]
朝、余りの寒さに思わず目を覚ますと、ポリタンの水が見事に凍っていた。震えながら朝食を済ませ、夜明け前に避難小屋を出発。鉄山を少し過ぎたあたりで素晴らしいご来光を拝し、右手に沼ノ平の火口跡を見下ろしながらなおも登っていくと、鉄胡屋方面からの登山者で賑わう安達太良山頂に到着。頂上には何と「八紘一宇」の石柱が立っており、前日の「しゃくなげの塔」と共に、何やら軍国主義的な色合いを感じさせる。それはともかく、上空には一点の雲もなく、山頂からの展望はまさに絶品であった。昨日来お馴染みの磐梯・吾妻の間には、早くもスッポリと雪化粧した飯豊連峰が姿を見せ、西の方には那須から始まり、女峰〜男体〜日光白根〜燧〜会津駒、そして越後三山とそれぞれに個性的な日光・尾瀬・越後の山の「顔役」たちがズラリ勢揃いしている。
即席のおしるこをすすって冷えた身体を温めながら、この大展望を心ゆくまで堪能した我々は、当初予定していた和尚山行きを取り止め、岩でできた巨大な軍艦のような特徴的山容の船明神山ピストンのプランに切り替えた。稜線上の分岐から、山小屋とはいうものの湯量豊富な温泉の湧くくろがね小屋に下り、ここでゆっくり昼食休憩。温泉の湯を送るパイプラインに沿ってスキー場のある奥岳温泉へと下り、我々は2日間のコンパクトな火星旅行、もとい安達太良山行を終えたのであった。
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