ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 198631
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍

秋の槍ヶ岳

2011年10月09日(日) ~ 2011年10月11日(火)
 - 拍手
hiratsuka その他1人
GPS
56:00
距離
18.5km
登り
1,730m
下り
78m
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2011年10月の天気図
アクセス
2011年10月09日 12:54撮影 by  DSC-T70, SONY
10/9 12:54
2011年10月09日 12:59撮影 by  DSC-T70, SONY
10/9 12:59
2011年10月09日 13:46撮影 by  DSC-T70, SONY
10/9 13:46
2011年10月09日 14:13撮影 by  DSC-T70, SONY
10/9 14:13
2011年10月09日 14:38撮影 by  DSC-T70, SONY
10/9 14:38
2011年10月09日 15:13撮影 by  DSC-T70, SONY
10/9 15:13
2011年10月09日 17:22撮影 by  DSC-T70, SONY
1
10/9 17:22
2011年10月10日 13:49撮影 by  DSC-T70, SONY
10/10 13:49
2011年10月10日 14:52撮影 by  DSC-T70, SONY
10/10 14:52
2011年10月11日 05:52撮影 by  DSC-T70, SONY
10/11 5:52
2011年10月11日 05:53撮影 by  DSC-T70, SONY
10/11 5:53
2011年10月11日 06:14撮影 by  DSC-T70, SONY
10/11 6:14
2011年10月11日 06:32撮影 by  DSC-T70, SONY
10/11 6:32
2011年10月11日 06:44撮影 by  DSC-T70, SONY
10/11 6:44
2011年10月11日 06:46撮影 by  DSC-T70, SONY
10/11 6:46
撮影機器:

感想

今年の夏は天気に嫌われ計画した山行はすべてお流れ…。
準備万端で望んだはずの北岳は芦安まで行ったにも関わらず夜叉神から先は通行止。
(泣く泣く甲府でソバを食べて帰宅)

そんなこんなでいつの間にか秋山シーズン。
さぁ何処に登ろうか?
来年中学の息子と登る機会はこれからどんどん少なくなっていくだろう。
やはり記憶に残る山がいい。
槍ヶ岳、やはりここしかないだろう。

初日はテント泊、2日目は槍ヶ岳へ向かい山荘泊、3日目に下山。
天気はまずまずらしい。期待が高まる。

<DAY1>

■プロローグ

中央高速を松本ICで下りる。
紅葉の季節だけあって上高地方面へ向かうクルマが多い。
昼前に沢渡到着。
ここでバスに乗り換えて上高地へ入る。
しかし連休中日ということもあり駐車場はどこも満車。
待ち行列の最後尾に着くが一向に進む気配なし。
「まいったなぁ」
昼過ぎには上高地に入らないと横尾到着が危なくなる。
ようやく駐車場に入ることが出来たが今度はバスがなかなか来ない。
乗車待ちの人達から不満の声が漏れ始める。
日帰り客は今から上高地に入っても数時間しか滞在することが出来ないだろう。
臨機応変に増発バスを出してもよさそうなものなのだが・・・
13時前に上高地到着。

穂高の稜線が青空に映えてクッキリと見える。
河童橋の喧騒を横目に明神へ足を進める。
明神、徳沢、横尾と各々1時間ずつ。
横尾到着は16時を予定。
徳沢はGWに涸沢にきたときに途中テントを張った場所だ。
草原上の広いテン場はとても快適に過ごすことができる。
歩きながら徳沢の話を息子としていると駐車場やバスのことでの疲れもあり横尾まで行く気持ちが薄らいでくる。

明朝1時間早く出ればいいことだし、帰路のことを考えるとテントやシュラフを詰め込んだ重いザックで歩く距離は短くしたい。
なにしろ最終日は槍ヶ岳から上高地まで一気に22kmを歩かなくてはならない。(死にそう・・・)
徳沢に泊まることをこれ以上歩かなくて済むため息子に告げるとうれしそうに頷く。


■徳沢での出来事

徳沢は思った以上の賑わいで色とりどりのテントが沢山張ってある。
それでもこの広いテン場は張る場所には困らない。
早速テント設営。
時間はまだ15時。
学生サークル、中高年の男女グループ、単独の年配者、若い家族連れのグループ。
飲んで食べてしゃべって思い思いに楽しんでいる。

我が家はいつも息子と二人なのでこんなときはほとんど息子がしゃべって私は適当に相槌を打つというのがパターン。
一緒に飲む相手でもいれば別だが明日の行程をあらためてシミュレーションする。
5時起床、6時出発。昼過ぎに槍ヶ岳山荘到着。一休みしてから山頂アタック。
シミュレーションって言ってもこんな感じ。
テントのなかでしばらくウトウトして夕食の準備に取り掛かる。

とここで息子から衝撃的な一言。
「父さん、なんか熱っぽいよ」
「…」

確かに2,3日前に風邪を引いていたのだが前の日には体調も戻り大丈夫だろうと判断しての決行ではった。
しかしこのタイミングでとは…。
もちろん息子を責めることは出来ない。
しかしテンションは一気に↓。

落ち込んだ父親を見て心配したのか
「大丈夫だよ。明日には直るよ」
となぐさめてくれる息子。

そうは言っても明日登る山はあの槍ヶ岳。
ここはキッチリと気持ちを切り替えねば。
息子の調子がよければ槍沢ロッジまで行って槍の穂先だけでも見て帰ろう。
そこまでなら何かあっても引き返すことが出来る。

薄暗くなってからも涸沢や槍から下りてきたらしい登山者が次々にテントを設営し宴会を始めている。
テント越しに聞こえる会話は興奮さめやらずといった感じで楽しそう。
来年は中学になる息子だが槍ヶ岳に誘ったら着いてくるかな?
確実に親と過ごす時間は少なくなっているがまぁ多少は付き合ってくれるだろう。

明日は槍沢ロッジまでなので予定より遅めの8時を目処に出発することにして
シュラフにもぐり込んで目を閉じる。

自然とテント越しに聞こえる声に耳を傾ける。
会話の内容から察するに男性が3人、リーダー、サブリーダー、後輩といったところか。
それとマドンナ的存在の女性1人。(勝手に決めてる)
山をやっているだけあって会話も硬派だ。
決してAKBの話にはならないところがいい。
ホットワインが美味しいと言ってガンガン飲んでいるようだ。
あー私も飲みたい。(笑)

夜半にトイレに行きたくなり目が覚める。
時計を見ると12時過ぎ。
息子はシュラフに潜り込んだまま寝息を立てている。
額に手をあてるが熱はないようだ。
すでにさっきまでの喧騒はなくなりテント場は静寂につつまれている。
見上げると月がポッカリ浮いている。
明日もいい天気だろう。


<DAY2>

■槍沢ロッジへ

朝5時すぎ。
周りのテントから起きだしてくる人の気配で目が覚める。
息子はまだ寝たまま、調子はどうだろうか。
このまま上高地へ戻るか、槍沢ロッジまで行くことが出来るか。
お湯を沸かしながら今日の予定について考えを巡らせる。

そうこうしているうちに息子がシュラフから顔を出して言う。
「なんか調子いい、行けそうだよ」
どうやら朝までぐっすり眠ったらしく持ちなおしたようだ。
とりあえず横尾まで行って様子を見ることにする。

ザックに雨具、衣類、食料など最低限のものを入れ出発。
軽い荷物のおかげもあって気持ちよく歩くことが出来る。

横尾到着。
ここにも色とりどり沢山のテントが張ってある。
梓川にかかる横尾大橋を渡り涸沢へ向かう人が圧倒的に多い。
この時期、涸沢の紅葉は素晴らしい。
4年前、我が家も同じルートを歩いたが登山道は大渋滞。
山岳用でない重いテントを担いでいたこともあり
涸沢に着いた時はヘロヘロになったことを覚えている。

ひと休みしたあと槍沢ロッジに向けて出発する。
約2時間の行程だ。
息子の調子はまずまず。これならロッジまで行くことが出来るだろう。

登山道は梓川の上流に向かって延びている。
川音がとても心地よく傾斜も緩やかなためトレッキング気分で歩くことが出来る。
出会うのは槍方面から下りてくる人ばかり。

10時、槍沢ロッジ到着
「お父さん、頂上に人がいるよ!」
ロッジ脇の望遠鏡を覗き込んでいた息子が声を掛けてくる。
確かに林の間から遠く槍の穂先がちょっとだけ見える。
覗き込んでみると山頂で休んでいる登山者がはっきり見える。

問題はここから。
予定通りこのまま戻るか、頑張って槍まで行くか。
今日の息子の調子を見る限り先へ進むことは可能だと思う。
ただし気持ちが伴っていないと辿り着けない。
これから先の道はきつく長くなることを話して彼に判断させことにする。
「大丈夫だよ、行けるよ」

ロッジを出発してしばらく歩くとテン場が見えてくる。
以前はここに山荘があったが雪崩が頻発するので今のロッジに移したらしい。


■驚き

梓川を挟んだ対岸の紅葉が素晴らしい。
前にも後ろにも登山者は見えず何とも贅沢な紅葉狩りだ。
途中、何カ所か山肌から水が流れ落ちているところがあり水には困らない。
道はガレていて勾配もきつくなってくるが危険なところはない。
体力さえあればここまで来るのは難しいことではないだろう。

天狗原分岐でしばし休憩する。
あとから登ってきた来た年配の女性(60代くらいか)が
「ボク何年生?」
と息子に話掛けてきた。

聞くと夜行バスで上高地についてからぶっ通しでここまで歩いてきたとのこと。
これにはかなり驚いた。
何故なら歩き方はとてもスムーズとは言えずどちらかというとヨタヨタ(失礼・・・)
と表現した方がいい感じ。しかも重そうなザックを背負っている。
そんな状態でひとりここまで10時間は掛けて歩いてきたのだろう。
気づいたら彼女は天狗原方面にスタスタ、いやヨタヨタ歩き始めている。
彼女の後姿が天狗原に小さくなっていくのを眺めながら
「スゴイ人がいるなぁ」
とつぶやかずにはいられなかった。

■登場

高度を上げながら何度となく山肌を巻くが槍はなかなか姿を現さない。
これだけ焦らされるとイライラしてきそうなものだけど楽しみでしょうがない。
歩き続けていれば必ず見ることが出来るのだから。

「見えたよ!」
先を歩いている息子が指を差す。
巻いてきた山腹にちょこんと槍の穂先が見えている。
先に進むにつれ槍ヶ岳の全容が徐々に姿を現す。
雑誌の写真などで何度となく見てきたが姿は同じでも目の前のそれとはまったく違う。
まるで岩全体が息づいているようだ。
甲斐駒をはじめて見たときは「ゾクッ」だったが
槍は「ゾクゾク」と言った感じか。
多くの人を魅了する理由はここに来ることで分かるだろう。

槍の左肩には槍ヶ岳山荘が小さく見える。
今夜の宿だ。
さてもうひと踏ん張り。

ホンモノの槍を正面に登れるとはなんという贅沢。
とは言えここまで5時間以上歩き続けで何度目かの疲労のピーク。
心配していた息子の調子は問題なさそうだがそれとは別に疲労は極限に近付いている。
時間は??時。
この調子なら16時までには山荘に着くことが出来るだろう。

ところどころハイマツが群生している荒涼とした岩場が延々と続く。
岩場に白ペンキで目印がされてところに沿って進む。
坊主小屋到着。
小屋と言っても2,3人入れるくらいの岩屋だ。
150年くらい前に開山者が籠って修業したらしい。

槍の穂先に向かって登っている(張り付いている)人の姿が見える。
山頂付近に掛けられた長い鉄梯子はほぼ垂直に伸びており
ここから見ただけでもこれは危険だよなーというのが見てとれる。

徐々に雲行きが怪しくなってきた。
日射しが遮られると一気に冷たい風が吹き上げ体温を奪っていく。
今回の失敗のひとつは防寒用手袋を持ってこなかったこと。
軍手で槍を登っちゃダメです・・・。

小屋は見えているのになかなか着かない。
歯がゆいが焦らず一歩一歩前進あるのみ。
日が傾き始め気温が一気に下がってくる。
息子の言葉数も少なくなってきた。
「ガンバレ!あと少し!」
後ろを振り返るがあとに続く登山者の姿が見えない。
我が家がドンジリか?。

■槍ヶ岳山荘

15時、槍ヶ岳山荘到着。
間近で見る槍は荒々しい巨大なオブジェのよう。
こんなものを作ってしまう自然のチカラは素晴らしいと改めて実感する。

急ぎ小屋に入りストーブで2人体を暖める。
「ううっ生き返る〜」

落ち着いたところで受付へ。
一泊二日(朝夕食付)でひとり9千円。(小学生は千円引き)
加えて小学生には登頂証明書をくれるらしい。
まだ登頂していないがとりあえず先にもらってしまえ。
ということで有り難くいただく。

山荘は予想以上に明るくていい雰囲気。
床はピカピカに磨きあげられている。
予想通り泊まり客もまばら。
あたがわれたのは南棟「うぐいす」の部屋。
上下2段の寝床が2列ある。
2人で布団1枚なら64人泊まれる計算だ。(絶対泊まりたくないけど)

まだ明るさは残っているのでこれから穂先に登ることは可能。
しかし「軍手親子」にそんな余力は残されておらず明朝に登ることにする。
トイレから戻ってくるとストーブの前で息子と話をしている男性。
聞くと大阪から来ていて趣味の写真が講じて山登りにはまったらしい。
ゴローの靴が欲しくてついこの先日巣鴨に来たとか。(ゴロー仲間発見!)
地図を広げてあれやこれやと会話が弾んで楽しい時間を過ごすことが出来た。

夕食は17時から。
隣の席には20代くらいと思われる女性3人組。
山ガールって感じじゃなかったけど、周りの人達にお茶を入れたり
ご飯をよそってくれたり若いけれどやる事がテキパキしていて
何だか場馴れしている感じだ。

食事を終え少し早いが布団に入る。
息子は早くも寝息を立て始めている。
いつもはブツクサ不満を言う息子が今回は何も言わずによくついてきてくれている。
彼なりに思うところがあってのことなのだろう。
それにしても掛け布団一枚じゃ寒いなぁ。
足を抱えて目をつぶるとすぐに眠りに落ちた。

夜中に猛烈な風が山荘に吹き付ける音で目が覚める。
間違っても吹き飛ばされることはないだろうけど
ここは北ア最高峰が連なるところであることを実感する。
時計をみると2時過ぎ。
高度計は3000mを越えている。
軽い頭痛を感じるのは高度が影響しているためだろうか。
明日の朝には風が止んでいるいることを祈るばかりだ。

<DAY3>

■穂先へ

朝5時起床。
昨夜は夜半過ぎにトイレに起きたがそのあとなかなか眠れず。
槍の穂先に果たして息子と立つことが出来るのか?
途中でビビって引き返すことはないのか?
最悪の事態まで考えると目がさえるばかり。
それでも明け方には浅い眠りにつくことが出来た。

朝食で隣り合った人はいずれも関西弁。
どうやら北アルプスは関西人密度が高いようだ。
食堂の窓越しに朝焼けショーが始まる。
遠く富士山のシルエット、右手には南アルプスの山々。
食堂にいるみんなの視線はこの景観に釘付け。
「ああ、山っていいな」
素直にそう感じる一瞬。

さてここからが核心。
そう、槍の穂先。
息子はビビる様子もなく
「早く登って帰ろうよ。」
と何ともノーテンキな発言。
昨晩からナーバス(笑)になっている父としては
「おいおいそんな簡単に言うなよ」
と思うがむしろこれくらいの方がいいのかもしれない。

そして一番の心配事。
それは私達が「軍手親子」であること。(笑)
山頂付近はおそらく風が強いだろう。
加えて冷えた岩壁と鎖場と鉄梯子。かじかんだ手でしっかりとフォールドが出来るのか?
まぁ今更考えてもしょうがない。
フードをかぶり山荘のドアを開け外に出る。
天気は申し分ない。風はやや強いか。

槍に取りついているのが人が見えるがチラホラといった感じ。
これなら急かされることなく自分達のペースで登ることが出来る。
最盛期は渋滞の列がスゴいのだろう。
食事するのも何をするのも待つのは苦手だ。

のっけから垂直に近い岩壁が続く。
息子を先にして3点確保で確実にフォールドしながら上がっていく。ところどころ子供の体では厳しいところはあるが手足の置場所を指示しながら進む。高度があがりさっきまでいた山荘の赤屋根、テラスからこちらを見上げている人達を見下ろすようになる。どんな風に見えているのだろうか。
岩につけられたペンキの矢印に沿って進んでいく。普段歩くところは「←」か「→」だがここではすべて「↑」だ。さぁ登れと言わんばかり。(笑)

日陰になっている反対側の岩壁に出ると下から猛烈に冷たい風が吹き上げて来る。左側はキレ落ちていて覗きこむ余裕もない。風にでもあおられたら引きずり込まれてしまいそう。
指先はすでにかじかんでいる。早めに登頂しないとまずいかも。息子は寒い寒いを連発しているが何だか楽しそう。そういう私もこのスリリングな状況に息子とふたり立ち向かっていることに悪い気はしない。

登り始めて半分は来ただろうか?肝心の長い長い鉄梯子はまだ先だ。
途中黄色いジャケットを着た男性に追い付く。慎重過ぎるくらいにゆっくり登っている。
「ちょっとナメていましたね」
こわばった表情で話し掛けてくる。
道を譲ってくれたので先に行かせてもらう。

時間の経過とともに落ち着きが戻ってくる。
恐怖感はあるけれど絶対山頂に立つぞという強い気持ちが前進する源になっている。

山頂直下に到着。
2つの長い鉄梯子を登り切れば山頂だ。
この2日間はこれを登るためにあったと言っても過言ではないだろう。

「下を見ないでゆっくり登ろう」
息子に声を掛ける。
途中で止まることなく登り始めた息子を見て私もそのあとに続く。

もしもの時に備え下から受け止められる(わけはないけど・・・)ように気持ちだけは準備する。
幸いなことに風はなく体が振られることはない。
かじかんだ指先も今は気にならない。

順調に1つ目をクリア。
続いて最後の梯子を登り始める。
順調だ。
「あと半分だぞ」
まもなく槍の穂先にたどりつく。
息子の姿が視界から消える。
「オーやったな、おめでとう」
先に登頂していたらしい登山者の声が上から聞こえる。

続いて私も山頂へ。
頂は思っていた以上に広かった。
とは言えちょっとでも間違えればダイビングしてしまう。
ヘッピリ腰で祠の傍まで歩いて行く。
360°全開の素晴らしい展望。
祠の前で写真をとりしばしこの素晴らしい世界を堪能する。

道を譲ってくれた男性も無事に登頂。
「おめでとうございます。」
と声を掛ける。

山頂直下に到着。
2つの長い鉄梯子を登り切れば山頂だ。
この2日間はこれを登るためにあったと言っても過言ではないだろう。

「下を見ないでゆっくり登ろう」
息子に声を掛ける。
途中で止まることなく登り始めた息子を見て私もそのあとに続く。

もしもの時に備え下から受け止められる(わけはないけど・・・)ように気持ちだけは準備する。
幸いなことに風はなく体が振られることはない。
かじかんだ指先も今は気にならない。

順調に1つ目をクリア。
続いて最後の梯子を登り始める。
順調だ。
「あと半分だぞ」
まもなく槍の穂先にたどりつく。
息子の姿が視界から消える。
「オーやったな、おめでとう」
先に登頂していたらしい登山者の声が上から聞こえる。

続いて私も山頂へ。
頂は思っていた以上に広かった。
とは言えちょっとでも間違えればダイビングしてしまう。
ヘッピリ腰で祠の傍まで歩いて行く。
360°全開の素晴らしい展望。
祠の前で写真をとりしばしこの素晴らしい世界を堪能する。

道を譲ってくれた男性も無事に登頂。
「おめでとうございます。」
と声を掛ける。

いつまでもここに居たいが上高地の最終バスに
間に合うように戻らなければならない。
「さぁ戻ろう。」

今度は私が先導して下りる。
梯子の途中で写真を撮っていると
「ダメダメそんなことしちゃ」
逆に息子に叱られる。

■エピローグ

7時半。
無事に山荘に戻ることが出来た。
1時間足らずの行程だったが槍に登った充実感でいっぱいだ。
息子はテラスにいた人達から「おめでとう」と言われとても嬉しそう。

今回は7月に登った赤岳の経験が多少なりとも活かされたように思う。
もともと槍を想定しての山行ではあったが岩場と高度感に慣れておく
ことには大きな意味があった。

これから上高地まで7時間かけて一気に戻る。
シンドイけれどもこの充実感でいっぱいのカラダとココロがあれば歩き切れるだろう。

昨日寒さで震えながら登ったつづら折りの登山道は今朝は朝日を浴びて
暑いくらいに照り返している。
何度も槍を振り返りながら高度を下げて行く。
徐々にその姿が隠れていく槍を見ながら次はいつ来るだろうねと息子に聞いみる。
「帰ったら予約していたビデオがたまってから見なくちゃ」
頭の中はすでに山モードでなくなっているらしい・・・。


それでもあの槍の穂先に立った瞬間のことはいつまでも彼の記憶に残るだろう。
ありがとう槍ヶ岳、またいつか来るからね。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:606人

コメント

まだコメントはありません
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [3日]
槍ヶ岳北鎌尾根/上高地・水俣乗越ルート
利用交通機関: 車・バイク、 電車・バス、 タクシー
技術レベル
5/5
体力レベル
5/5
無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [2日]
上高地から横尾経由槍ヶ岳ピストン!
利用交通機関: 車・バイク
技術レベル
2/5
体力レベル
4/5
無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [2日]
上高地〜横尾〜徳沢
利用交通機関: 車・バイク、 電車・バス
技術レベル
2/5
体力レベル
4/5
無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [3日]
技術レベル
4/5
体力レベル
5/5
無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [2日]
新穂高〜上高地
利用交通機関: 車・バイク、 電車・バス
技術レベル
3/5
体力レベル
5/5
アルパインクライミング 槍・穂高・乗鞍 [2日]
前穂高北尾根
利用交通機関:
技術レベル
5/5
体力レベル
4/5

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら