6歳児とゆく異世界絶景牛奥ノ雁ヶ腹摺山
- GPS
- 07:11
- 距離
- 12.4km
- 登り
- 810m
- 下り
- 1,138m
コースタイム
天候 | 空真っ青の快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
かえり:やまと天目山温泉から栄和交通バス「塩山駅南口」ゆきでJR甲斐大和駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
すずらん昆虫館前バス停→牛奥ノ雁ヶ腹摺山:林道終点でいちどコースを見失ったがそれ以外は迷うところ、危険なところ皆無。公園のようなきれいな整備ぶり 牛奥ノ雁ヶ腹摺山→白谷丸:草原をおりる細い踏み跡は霜柱がとけてドゥルドゥル、2回しりもちをついた。尾根部分で少しだけ痩せ尾根を通るところがあり、しいていえば危険箇所 白谷丸→湯の沢峠:小白谷丸にきて、こちらはどうやら湯の沢峠への道ではないと気づいた。道しるべ等はなし。湯の沢峠におりる道はやや急、足を乗せるところのないつるんとした坂のところがあった 湯の沢峠→湯の沢登山口:今回いちばんの難所。台風のせいなのだろう、沢に沿って進む本来の道が沢と崩落に寸断されている。崩落部分は沢の反対側にルートを変えていたり、ただ乗り越えていたり。ピンクテープと踏み跡をたよりに進むが、それらが見えないところでは沢を渡るのか渡らずに進むのかの判断がやたら難しい。沢を渡るにも、石は沢の水で凍りついており、気を抜くとすべって水没する。 |
その他周辺情報 | やまと天目山温泉 |
写真
感想
12月、2回めの週末。さてどこに行こう。
そういえば、栄和交通の上日川峠ゆきバスが今日12月8日で今シーズンの運行を終えるのだ。こりゃ行っときたいね。あのへんの山、景色いいよね。
しかし、大菩薩嶺に登ったときこのバスを使ったのだが、峠まで1時間近くグネグネとした道をゆくものだから、車酔いしやすい息子にはかなりキツかった様子。
それならば、途中で降りて向かうことができる山はどうだろう。
ということで、今回は牛奥ノ雁ヶ腹摺山に登ることにした。息子には「日本でいちばん長い名前の山に登ろうぜ」と言ったところ「なにそれすごくいい」的な反応をもらう。よし。
朝早く起きておにぎりを握り、息子をもみ起こして駅に向かい、特急で大月へ! ここまで先週と同じ展開!
各停に乗り換えて甲斐大和駅へ。相変わらず朝のこのへんの区間はハイカーさんだらけである。JR東日本は山をまつる神社かなんかを建てたほうがいいと思う。
駅玄関のところに、ハイカーさんたちの行列ができている。栄和交通のバス待ち列なのだが、最終日といえどハイシーズンのような賑わいではない。バスは中型のものが1台、それで全員乗れそう。
しかしカンのよい息子さん、「これおぼえてる、すごくようバスだよね? なんでこれにしたの!」と怒り聞いてくる。チッ一発でバレよった……大丈夫だよ、途中で降りるから。すぐつくから。
20分ほどのバス、やはり途中までとはいえ相当な数のカーブを通り抜けてゆく。運転手さんは慣れているのでスピードをあまり落とさない、左右によく振られた息子は即座に酔ってしまった。
ねえパパ!(怒) 酔った!(怒)しか言わなくなった息子、ごめんよ。そしてまわりのお客さん、ごめんなさい……
そんな過酷な闘いのすえ、バスは「すずらん昆虫館前」に到着。バスを降り、さあ牛奥ノ雁ヶ腹摺山へ! ……と思ったら、
「あっむしさんのおうちがあるよ!」
そう、ここは昆虫館。ペンションすずらん併設の、昆虫コレクションが見事な博物館さ。でもな、今回は山登りにきたんだ、昆虫館はまたこんd
「うんちしたい」
……父の負けである。トイレを貸してもらったあと、昆虫館に見事吸い込まれてゆく息子。気持ちはすんごくよくわかるけどまた下山が真っ暗になっちまうよ……。ちなみにコレクションは見惚れるくらい見事なもので、結果としてここで40分ほど消費した。
よーし、最初から無事40分の遅れ発生だねー。って大丈夫かよ!!
牛奥ノ雁ヶ腹摺山、バス停のところに登り口がある。そして登りはじめてすぐ、でっかい霜柱がたくさんできていることに気づく。戯れはじめる息子。いやいやいや、もう40分も遅れてるの! 歩いてちょうだい!
道はとてもとてもなだらかに、冬枯れの林を通り抜けてゆく。そういえば大菩薩峠の道も、福ちゃん荘までこんな感じだったな。息子が、木にとりさんの巣がたくさんあるね、と枯れ草を振り回しながらいう。
いったん林道と合流する。道の脇にはトゲトゲがすごい灌木、そこにきれいな赤い実。後で調べたらヘビノボラズ、イランではゼレシュクとして愛されているフルーツのようだ。チキって食べなかったのが悔やまれる。
ほかにもノイバラが真っ赤な実をつけている。冬の山にも楽しいものがいっぱいあるんだなー。トゲトゲちくちくの木がたくさんあるので、トゲを少し分けてもらって武器にしようとする息子。いやな予感がする。やめてやめてパパで実験しないてててて! やめれ!
道脇をよく見れば、もう霜柱の花畑状態である。サクサク上を歩くのもよし、ザクザクひたすらに掘るのもよし。霜柱で遊ぶ1日、とても楽しいね♪
じゃなくて! 急げ! 急がなくてもいいけど止まんないで! 温泉入れなくなるし暗くなっちまうよ! あとザクザクばっかしてないで、きみの後ろできれいに出てる富士山見てあげて!
秋の実や枯れ草、都会じゃ見れない長い長い霜柱。楽しいに決まってる。大自然と遊びに来たんだ、息子をひっぺがして山頂に運ぶのは気がひける。
道にたくさん黄色い実が落ちてる。つぶすと、スライムみたいな中身が出てくる。息子に見せると、ハナミズみたいという。たしかにそうだ、というかそれ言われてからそうとしか見えなくなった。
見上げると、ヤドリギがたくさんの実をつけている。息子よ問題だ、これをとりさんが食べるとどうなると思う? 「うんちがべったべたになる」……すげーなお前、そのとおりだよ。ヤドリギの実は鳥のふんをベタベタにする、これで木の枝によくくっつくんだ。ヤドリギは木にくっついて生きる植物だから。
ご納得の息子さん。さっきとりさんの巣がたくさんあるね、ってぼくがいったのはこのヤドリギのことだったんだよ、と。なるほど、よく見てるね。
そして時計をみると、遅れがさらに拡大してる……見なかったことにしますね。
林道の終点から、山道スタート。右土手をトラバース気味にのぼり植林保護ネットのわきを進む。が、ネットを張るための糸がすごくひっかかる。倒れたシラカバを避けてやたら細い踏み跡が笹やぶに通じている。こ、これ正しい道なのかな? と思いつつ笹やぶを抜けると、左手方向からどう見ても正規ルートという道が合流してきた。いきなりバリルートに突入してたのね。
そこからはネットに沿うようにまっすぐ登ってゆく。坂がきつくなってきたかな? と思ったところで日川林道にぶつかる。
この地点からは、白い南アルプスがものすごくきれいに見える。なんという景色! なんという天気!
林道から登山道に入るところ、鹿よけネットがつけてある。ひもを解いてネットを開けて中に入り、またひもを結んでおく。
このあたりは木の階段がしっかりつけてある。でも階段だから急坂も余裕でしょ、的な直登になっていてなかなか脚にこたえる。息子は階段の下にできる霜柱にひっかかる。取り出して父に投げる。
鹿よけネットの出口もひもで縛ってある方式。息子さんは今度こそ自分でひもをはずす、と張り切っている。
ここからは、尾根を登っていく。右側の木々、その合間から富士山が顔をのぞかせている。富士に見守られながらの登山だなんて! なにそれ最高!
尾根を進んでいると、ものすごく大きな岩に到着。岩の横にはつららができていて、もちろん所望する息子さん。だがこの岩、パノラマ岩といい、その上からは広く遠くが見渡せるようになっていた。これはすごい、と息子。
さらに進むと、ガラッと植生が変わった。笹と、立ち枯れた松たち。このあたりからは富士山がとてもきれいに見えている。ここまできたら頂上までもうすぐ、笹のあいだを少しつづら折りで進んでいけば、ほら、
牛奥ノ雁ヶ腹摺山、登頂!
山頂からの富士山は見事すぎるくらいに見事。シンメトリーな山姿が真っ青な空の下にどーん! これはさすがにすごいね、と息子。いつも景色には感慨のうすい彼が嘆息するなんて。
おにぎりとインスタントのフォー、そしてごほうびの「ぜりーめりんぐ」(※彼はポッカのゼリー×スパークリングをそう読んでいる)を飲んで下山開始! ぜりーめりんぐのせいで冷え切ってしまった息子さん、ぱたぱた走る。
牛奥ノ雁ヶ腹摺山から黒岳への下り斜面は、いちめんの笹原。そこに1本の踏み跡が細く伸びていて、なんだか異世界感がある。しかし陽の当たる斜面ゆえ、細い細い踏み跡は霜柱がとけてドゥルドゥルの泥道に。これが思いっきり滑るのだ。僕は2回もしりもちをついて尻を真っ黒にしたが、息子は無事。なぜなのか。
やがて道は森に入り、ゆるやかめの登りに。陽が当たらないゆえ霜柱は完全に残っており、そのすべてに息子はひっかかってゆく。気をぬくと掘りはじめてしまう。ごめん、お楽しみのところ申し訳ないけどかなり予定より遅れてるの! 止まらないで!(悲痛に)
観念した息子は霜柱のかたまりを父にぶつける遊びを始めるが、ふつうに痛いからやめれ。えーゆきだまあてたらよろこぶのにー、って雪じゃないしドロついてるし。じゃあきのえだでほーむらんしてね、と息子。あえなく空振りに終わる父。
森を抜けると想定外のピーク、川胡桃沢ノ頭。設置されたサインはほぼ文字が消えて読めない。だがひと部屋ぶんぐらいの芝生ときれいに見える富士山、ここもなかなかいい頂上だねと息子。うん、こんな裏山があるといいよね。
続いてはいかにもな尾根道、遠くに街が見える。長野かなあなんて話していたけど多分あれ東京だね。多少のアップダウンと軽い岩登りを経て、黒岳山頂。うーんふつうのピークだなー。ふたつめの山だねと息子に言うと、何言ってんだ3個めだしっかりしろよ的なことを返された。
黒岳からおりたところは、いちめん落ち葉がしきつめられた公園のような平地。やまなしの森100選なのだという。100も選んだのかちょっと多くね、なんて思いながら林を抜けると、正面に富士山が現れて、そして白谷丸に到着。
ここの眺め、これはちょっとスゴい! いちめんに枯れ草の生えた斜面が眼下に広がり、その向こうには青空に切り取られた富士山がどかーんと見える。かわいいピークの白谷小丸は何かのモニュメントみたい。息子は「少しさみしいけど素敵な景色」だという。確かにね、誰もいない雄大な世界、さみしさはたしかにある。
細い踏み跡をたどると白谷小丸に到着、だがこっちは下山ルートではなく行き止まり。何もサインがないんだもの……
踏み跡をたどり直し、ちいさなピークを登ると本格的な下山道の登場。岩ゴロゴロの急めな尾根道、斜度が急なままのつづら折りと、なかなかのハードコース。笹の根を踏みしめておりるなど、思うようにスピードを出せない。息子が滑らないように気を張り続けていると道は笹やぶの中に、そして湯の沢峠へ。
湯の沢峠には避難小屋、そしてきれいなトイレ。便器の位置が高く、息子をだっこして用を足させるがやや被弾する。
ここまでのくだりは頑張って急いだけれど、まだ20分ほど計画よりビハインド。さあここから本腰入れて急ごう!
……と思ったのだが、沢づたいの登山道は、沢の流入と斜面の崩落でズタズタ。崩落部分を避けるように道は中洲や対岸にルートを変えているが、ピンクテープと踏み跡以外にそれを示すものはなく、迷うところだらけ。フェイントのように、渡ると思いきや崩落部分を細い踏み跡が越えていたりする。
渡渉も川面に出た岩づたいに行くほかないが、岩という岩がほとんど凍結しているうえ、間隔が広いところも多々。息子ととんちをひねりながら、渡るところをなんとか見つけて進んでゆく。
だがついに渡渉中、息子の両靴が岩の氷に滑り水没する。替えの靴と靴下あるよ、と声をかけるも、くっそーといいながら歩き続ける息子。つらくなったら言うから! と。きみ強いね……
林道が見えてくるころになると、沢は幅のある川となって、子供の足では渡渉できないほどになっていた。息子をだっこして、タイミングをとって、ジャンプ! 25キロを抱えての跳躍はなんとか無事に成功した。明日これ腰死んでるだろうな。
最後は倒木で曲芸のように川を渡ると、道は車で入れるようなしっかりとしたものになった。ここを駆け下りて、ようやく湯の沢登山口に到着。遅れを取り戻すはずだった下り道で、相当なタイムロスをしてしまった。息子の靴と靴下を取り替え、アスファルトの林道を早足で降りてゆく。
空はすっかり真っ赤な夕焼け、富士山が黒く影になって僕たちの前にいる。心細い息子は、ばいばいやまみちさん! あっおほしさまこんばんは! などと無理やり明るく無生物に語りかけている。ねえ街はまだ? と聞かれるが、すまんまだ結構あるとしか言えない。
おそらく温泉にたどり着く前に真っ暗になるだろう。ただ今回は山道をすでに抜けているし、ハンドライトもある。前に山の中で日没を迎えたときと違って余裕がある。
予想どおり、林道ゲートにたどり着くころにはすっかり日は落ちてしまった。真っ暗である。とはいえ道はしっかりしているから、ライトをつければ大丈夫。月光とは意外と明るいものなのだと思い知る。
しかし息子はさすがに心細い。涙声で「ままにあいたいな」なんて言い出した。よし、じゃあ肩車するよ、少しでもそれで安心してね。
わたしままよ、かわいいむすこちゃん。(棒読み)などとバカなことを言っていたら、息子は笑ってくれた。25キロを肩車して歩くのはなかなかのしんどさだが、つらいと思っているのを悟られないようにアホなことを言い続けた。
25キロを背負って早足で5キロほど。明日起き上がれないんじゃないかこれ。
ああ無理になってきた、と思ったくらいのときに、車が通る道に出た。建物のあかりが見える。肩車を解除する。息子はふざけた調子で「ままにあいたいなー」なんて言う。ちょうどバスが来たので手を上げて止める。
「やまと天目山温泉までお願いします」と言うと運転手さん、少し笑って「目の前だよ」と教えてくれた。わー、ほんとすみません。
かくして、やまと天目山温泉に到着。温泉の人たちはとても優しく出迎えてくれた。最終バスを確認して、さあおふろだ!
温泉、とてもよい湯である。極寒のなか温泉施設としてはかなり長めの外階段で行く露天風呂が、気持ちよすぎた。
さっきまで僕らの道を照らしていた月が、きれいに光っている。お客さんがいなくなったことを確認した息子が、およいでいいかと聞いてくる。
温泉からあがって、息子にはごほうびのラムネ。携帯がdocomo以外完全圏外の山なので妻に公衆電話で安全を知らせた。
最終バスに乗り遅れると本当に悲惨なことになる。急いで建物から飛び出し、すぐに来たバスに飛び乗った。最後まで貸切り状態、息子はうれしそう。
こうしてJR甲斐大和駅に到着、今回の冒険は終了である。
最後は暗くなってしまったけれど、ふだん出会えないような絶景をこれでもかというくらいに楽しめた山行であった。息子にとっては富士山とハイパーしもばしらの山だろう。
今度は、急いでって言ったら急いでおくれ。あと山登り前にイベントわりこませるのはできるだけナシの方向で。
とうちゃんもう少しタイムキーパー頑張るから、また冒険に出かけようね。
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