朝日〜雪倉〜白馬縦走(過去レコです)。


- GPS
- 56:00
- 距離
- 30.6km
- 登り
- 2,705m
- 下り
- 3,044m
天候 | 1日目 晴れのち雨。 2日目 曇りのち雨。 3日目 雨。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2007年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
左程の危険個所はありません。 |
写真
感想
2007年7月27日、天気予報では今日は晴れ、明日以降は曇り時々雨と、今日と明日の天気を交換したいような良い天気である。中央高速から長野道に入り、豊科ICで高速道路を出る。R148を北上し、長野県から新潟県に入り姫川で県道505に入るとどんどん高度を上げ、40分程で今夜の宿泊先である蓮華温泉ロッジに到着。ここはすでに標高1475m、空気はひんやりとしている。明日登る朝日岳が全容を見せ、明後日登る雪倉岳も林の上に頭だけを出している。ロッジとは云え山小屋に毛の生えた程度の宿であるが、さすがに温泉は気持ちが良い。
翌朝3時に起床し窓から外を見ると、満天の星である。弁当2個のうち朝飯用、とは言え昼飯用も同じ内容ではあるが、おむすび2個をヘッデンの明かりで照らして食べる。未だ明けやらぬ4時半、木道の敷かれた登山道に入る。木道は苔むして滑りやすく、慎重に歩く。いつしか下りとなり、ブナやトチの樹林帯の暗い道をどんどん下がって行く。なんの拍子か、つるりと滑って尻餅をつき、ズボンがべたべたになる。30分は経ったであろうか、周りが開け明るくなり、小さな湿原の兵馬平に降り立つ。エゾアジサイ、オタカラコウ、オニシモツケなどが咲き、花は終わったミズバショウが、でかい葉っぱを遠慮なく広げている。これから登る残雪を冠った朝日岳の山頂部、その左手には雪倉岳の山頂部を眺めながら木道を歩く。もうそろそろ登りになるかと思いきや、道は再び暗い林の中の下りとなる。いつまで下るのか、下った分は登らねばならないわけで、早く終わってくれと願いながらどんどん下る。川の流れの音が聞こえ始め、やがて鉄の橋が眼下に見え、瀬戸川に降り立つ。標高1170mの最低部で、蓮華温泉からおよそ300m下ったことになり、ここからいよいよ朝日岳頂上まで1250mの登りが始まる。瀬戸川橋を渡って小休止をとり、登りに備える。ひと息ついて出発。林の中の山腹を登り、しばらくすると「白高地のぞき」とあり、下の方に川が流れているのが見える。ここから下って広々とした川原に降り立つと、「白高地沢」とある。時計を見ると7時、蓮華温泉を出発してから2時間半が経っているが、ここは標高1354m、まだ蓮華温泉よりも低い。右岸を石を伝って川上に向かい、大岩に架けられた木橋を渡る。白高地沢をあとにして、樹林帯の斜面に取り付く。その名もカモシカ坂、急坂ではあるが高山植物の写真を撮りながら気分よく登る。振り返ると今朝出発した蓮華温泉ロッジが、遥か谷の向こうの山の中腹に小さく見える。2時間程登っただろうか、傾斜が緩やかになり尾根上に辿りついたようで、お花畑が広がっている。霧は雨に変わり、遮るものが無い高原、風が横殴りに吹き、あわてて雨具を着込む。10時過ぎとまだ早いが、朝食が早かったので昼飯を摂る。強風の中、朝飯と全く同じオムスビ2個をお茶で流し込む。視界が開けた草原であるがガスで遠望はなく、その代わり新しい高山植物が次から次へと現われる。五輪高原と名づけられた湿地帯で、木道を小股でたどって歩く。お花畑の中の稜線歩きが過ぎると再び樹林帯となり、トラバース気味に登る。ぬかるみが続き、スパッツは泥だらけとなってズボンを守ってくれる。何せこのズボン一つで4日間、昼も夜も過ごさねばならないのだから・・・、頼んまっせ。ザレた尾根の登り、ここらあたりになるとミズバショウも、登りがけに見たお化けのような葉っぱを延び放題にしている姿からは想像できない清楚な花を咲かせている。雪田を横切り、ぬかるみをスパッツだよりにバチャバチャと歩き、縦横に流れる清水で靴を洗い、どれだけ時間が経ったのだろう、広い斜面をジグザグに登り、ようようの事で朝日岳山頂に到達した。ガスで眺望は全く無く、銅製の展望指示盤に刻み込まれた山の名前を見ながら思いを馳せる。カッパを着ていても、じっとしていると寒さが身にしみ込んでくるので、早々と頂上を引き上げる。朝日平への急な斜面を下り、幾つか雪田を渡って40分ほどで無事今晩の宿泊先である朝日小屋に辿りついた。10時間の行程であった。すぐ目の前の朝日小屋さえガスにかすんでしまっている。今日は布団2枚を3人で使うことになった。見知らぬ男2人に挟まれ敷布団の谷間に落ち込んで、畳みの上で毛布一枚を被って寝ることになったが、大勢の人いきれで寒さどころか汗をかくほどであった。おまけにその夜は、岡山弁のおばちゃんが大きな声で話しをしていたが、これは名古屋弁を上回る耳障りな方言で、もんもんとして夜が更けて行った。
3階のひと部屋に大勢の人がぎっしりと寝ていて、夜中は寒さどころか暑さを感じるほどでうわ布団は不要であった。眠ったのかどうかわからない状態でもんもんとし、ようやく眠りに着いたと思われる頃、周りがさわがしくなり、3時半に起床。二つ用意された弁当の一つを無理矢理平らげ、残りの一個をザックに詰め込んで5時に出発。朝もやがかかっている。この天気はいつまで持つかわからないが、まずは天気予報が当たらなかったことを喜ぶ。小屋から雪倉岳へ向かうには、朝日岳へ登ってそこから下るコースと水平道コースがある。わたしは水平へは、朝日岳の南側の樹林帯をトラバースするのだが、水平道とは云えアップダウンも多く、朝日岳からの道と合流するまで1時間45分ほどかかる。この水平道にもお花畑があり、ヤマハハコ、ツガザクラ、マイズルソウ、サンカヨウなど、写真を撮りまくる。キヌガサソウは清らかな純白の花を咲かせ始めたものから、ピンク色に変ったものもある。キヌガサソウは花の終わりがけには淡緑色となるが、まだそこまでは行っていない。朝日岳のウスユキソウはミネウスユキソウで、先週宝剣岳で見たコマウスユキソウと違ってふわふわした毛が少ないので見分けがつく。朝日岳からの道と合流し小桜ヶ原の湿原の木道を歩く頃には、ハクサンコザクラ、チングルマ、ミズバショウ、リュウキンカ、シラネアオイ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、ヨツバシオガマ、等々、高山植物の花盛りである。赤男山を巻くように山腹を緩やかに進み、雪田をいくつか渡り、湿原ではあるが昨日のようにぬかるみをわたることはなくツバメ平に達する。昨日登った蓮華温泉から朝日岳山頂までは新潟県であるが、朝日岳からは富山県となり、朝日小屋も富山県である。ツバメ平から沢を渡り、急なジグザグ道を登って再び新潟県に入るとガレ場となる。ミヤマアケボノソウや花の終わったウルップソウが現われる。目の前に雪倉岳のゆったりとした山容が横たわり、崩壊した北側の崖には雪がたっぷりと残っている。雷鳥が這い松の中から首を出し、子供の雷鳥が2羽その後を着いて行く。雷鳥が現われると雨になると云う。稜線を登ると広々とした岩屑の斜面となり、緩やかそうに見えるが結構な登りである。この辺りから、昨夜白馬に泊まった人達と行き交うことが多くなる。この縦走路は、白馬からより朝日岳方面からの方がきついようで、大勢のおばさんが列をなして朝日岳からやってきたのに驚く。大きな岩がゴロゴロしているが、広々とした雪倉岳山頂でひと休み。振り返ると朝日岳には雲がかかり、その雲が流れると一瞬どしっとした山容を現し、朝日小屋も小さく眺むことが出来る。目指す白馬岳は雲に隠れて姿を現さない。山頂をあとにし尾根道をジグザグに下っていると、雷鳥の霊験あらたか大粒の雨が降り出し、カッパを着込む。鞍部の避難小屋で小休止をとり、ここから白馬岳への登りが始まる。最初はザラ道の緩やかな登りに始まり、鉢ヶ岳を巻くようにトラバースする頃には雨も止む。でも寒いのでカッパを脱ぐことはない。お花畑が次から次へと現われ、ミヤマキンポウゲが大群落をなし黄色に染めている。避難小屋から1時間ほどで左から鉱山道が合流し、這い松の茂る広い尾根を登る。しばらくすると急登となり1時間ほどこれを登ると左から白馬大池からの道が合流する。ここは新潟、富山、長野の三県の県境で三国境と呼ばれている。馬の背と呼ばれている狭い尾根道を黙々と登るが、金華山の馬の背の比では無い。右手に落ちるガレた斜面にはコマクサが群生し、ウルップソウも花を咲かせ、シコタンソウを見つけて喜ぶ。左側が鋭く切れ落ちた稜線上に、山頂に向かって登山道が続いているのが見え、あとひと踏ん張りで頂上だと頑張る。イワギキョウやイワツメクサが今が盛りと咲き乱れている。白馬岳の山頂はガスで何も見えず、寒かった。ガスの中を下って、今夜の宿泊先である白馬山荘に到着した時は、朝日小屋を発ってから10時間が過ぎていた。白馬山荘は1500人収容の日本一大きな小屋であるとのことだ。少し下がったところには村営白馬岳頂上宿舎があり、こちらは収容人員1000人。これだけでも白馬の人気の高さがうかがえる。白馬山荘の真中を県境が通り、本館は富山県、新館は長野県にある。一人一畳で、布団も一人一枚と余裕を持ったスペースを確保。夕食前に小屋併設の「スカイプラザ」で生ビールを飲み、夕食時には缶ビールを飲んで好い気持ちになる。食堂から出るとなんと快晴。先ほど下ってきた白馬岳が目の前にあり、始めて白馬岳の全貌を見る。反対側には右手に旭岳、左手に白馬三山の杓子岳と白馬鑓ヶ岳が、いずれも雪を残して屹立している。部屋に戻り、寝床で持参のブランデーをちびちびやり、まだ明るいうちに眠ってしまった。
翌朝は4時に起床。昨夕とは打って変わって雨である。5時からの朝食を食べ遅れないよう、4時半頃から食堂の前に並ぶ。テレビでは昨日行われた参議院選挙の結果を伝えている。自民党が大負け、当然の結果である。久し振りに温かい朝食を食べ、ご飯も味噌汁もお代わりして今日の下りに備える。今日は猿倉まで下るだけなので遅発ち、カッパを着込んで雨の中、6時に出発。村営山荘の横を通り、小雪渓の左側の岩の登山道を下る。昨年だったか、白馬では落石により二人が亡くなっている。成る程、小雪渓には、谷の右側の杓子岳の急な岩場から落ちてきた大小の石がゴロゴロしており、いつ落石があっても不思議ではない光景である。右側には近づきたくないものだが、登山道は右側に移る。小雪渓を横断して右岸にわたる際、傾斜の強い雪渓の真ん中で、落ちたら下の岩場に衝突して生きては帰れないような危険な場所で、アイゼンをつける。始めて使う6本歯のアイゼンだが、すぐに装着出来た。対岸に渡り、岩場でこれをはずす。しばらく岩場を下り大雪渓に入る前にひと休みしながら再びアイゼンを装着する。いよいよ白馬の大雪渓下りが始まる。大雪渓の真ん中には赤いマーキングがあり、そこを登る人、下る人が列をなしている。足跡がついて踏まれているのでアイゼンは必要ないかも知れないが、つけていると快適に下ることが出来る。登って来る人には左に寄って道を譲るのだが、アイゼンをつけているので踏み後でない方が歩きやすい。雪渓を吹く冷たい風が快い。この山は若い人達が多く、行き交う若者に聞くと、同志社女子中学の生徒で、中には高校生もいると答える。そういえば女房も同志社女子高校時代に白馬岳に登ったことがあると云っていた。その後ろに続く大きなザックを背負った男の子達に、「どこの学校?」と聞くと、「兵庫県の高校です」と云う。「わたしは兵庫県でしっている高校は灘高しかない」と云うと、嬉しそうに「それです」と答える。ちょっと嫌らしい返事の仕方であるが、ま、若者たち頑張れ! 大雪渓の中ほどになると勾配が急になり、登って来る人達の足取りは重い。さすが日本三大雪渓の一つ、勾配が緩やかになっても雪渓下りが延々と続き、雪渓下りも飽きかけた頃、やっとアイゼンをはずして登山道に入る。しばらく灌木帯の中を下り白馬尻に到着し小休止をとる。その先は石畳の道で、スリップに注意しながら下る。ここら辺りになると登山靴でない観光客と出会うようになる。白馬尻まで行って大雪渓を眺めようとする人達だが、危なっかしくて見ていられない、せめてスニーカーでも履いて欲しいものである。沢を渡って林道に出て、長い林道を調子よく歩き、途中から登山道に入って猿倉に到着。白馬山荘から5時間のゆっくりした下りであった。猿倉はまだまだ山奥であるが、バス停もあり、客を待っているタクシーに乗り込んだ。天候には恵まれなかったが、大満足の朝日岳〜白馬岳縦走であった。
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