編笠山(過去レコです)。
- GPS
- --:--
- 距離
- 7.5km
- 登り
- 1,095m
- 下り
- 1,093m
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険個所はありません。 |
写真
感想
ゴールデンウイーク(GW)は混雑するので、いつもはこれを避けて、GWが終わってから登っていた。今年は5月14日に母の10年祭が京都で行われるので、やむなくGW期間中に登る事にした。編笠山の「青年小屋」に電話をすると4月29日から小屋を開けるというのでこれ幸いとその場で予約した。青年小屋の電話相手は、「編笠までなら軽アイゼンでいいです」。「権現にも登ろうと思います」と云うと、「冬山装備が必要です」との事であった。ネットで調べると、権現岳は狭い岩場があり、ゴールデンウイークの頃にはまだ雪も残っているようだ。中には近くまで行って撤退したというものまであり少々びびるが、一応アイゼン・ピッケルを準備し権現岳に備えた。とは云えハードシェルはやめ、レインウエアーにする事に決めた時点で、もう権現岳に登る気持ちは失せていたのであろう。
2011年4月29日、朝6時に自宅を発ち、中央道を走っていると、伊那IC辺りで起きたバイクと乗用車の衝突事故による渋滞に遭遇。予定より1時間ほど遅れて小淵沢ICを降り、ナビに任せて登山口である観音平の駐車場へ。すでに駐車場は満杯で、道路脇まで車が溢れている。車列の末端に車をとめ、仕度を整え、登山道に入ったのは11時少し前。秋になればさぞかし紅葉が素敵だろうと思われるカラマツ林の中、なだらかな道ではあるが意識してゆっくりゆっくり歩く。少しずつ傾斜が増し、登山口から1時間程で見晴らしの良い「雲海」と云う名の小広場に登り着く。今、雲海は全くなく、眼下には盆地の町がはっきり見える。丁度お昼時、ベンチに腰を降ろし、サーモスのお湯で味噌汁を作り、コンビニで購入したオムスビを頬張る。広場には先客もおり、子供連れも登って来て賑やかになる。ゆっくり休んでから再び登り始める。登山道には雪も見え始め、徐々に積雪も多くなり、凍った場所もあり、それを避けて落ち葉の露出している場所を選んで登る。下山してくる人達は一様にアイゼンをつけている。単独行のおばさんが、「今年は雪が多く、編笠山の頂上直下はたっぷり積もっている」と教えて呉れる。そろそろわたしもアイゼンをつけるとするか。落ち葉の上でアイゼンを履き、今度は雪の積もった場所を選んで登る。雲海から1時間以上登って青年小屋と編笠山の分岐に出る。ここら辺りになると登山道はすっかり雪で覆われ、「押出川 標高2,100m」と標識が立てられているが、川らしき所は雪に埋もれて流れは無い。森の中、編笠山への道に向かう。道は徐々に傾斜を増し、足取りが重くなる。周りの樹木は徐々に背丈が低くなり、視界が開けて来る。振り向けば、南アルプスは雲の中。おばさんが云ったように頂上直下は雪がたっぷり。陽当たりがいいので腐れ雪、アイゼンを履いていてもズルズル滑る。空が開け、上方に何やら柱のようなものが見える。あそこら辺りが頂上だろう、と元気を出して急坂を登る。15時13分、ほぼコースタイム通りで編笠山頂上に到着すると、目の前に大展望が現れる。大岩がごろごろする頂上、右眼前にギボシと権現岳、左に阿弥陀ヶ岳、左右の間、やや奥まって主峰赤岳が横岳を従えて堂々と座っている。権現岳・阿弥陀ヶ岳は黒い地肌も出始めているが、赤岳・横岳はまだ真っ白。あそこは真冬の世界、わたしの行くところでは無い。阿弥陀ヶ岳の奥には天狗岳、蓼科山も見える。南の端から見る八ヶ岳全貌。標高2,500m、春とはいえじっとしているとまだ肌寒く、早々に下山開始。正面に権現岳を見ながら下ると、すぐに青年小屋の青い屋根が眼下に現れる。登山口の駐車場は満杯であったが、日帰りと思われる登山者とも多く行き交ったので、これだけ大きな小屋ならば今日は左程混雑はしないだろう。編笠山と権現岳の鞍部に建つ青年小屋の周りは、大岩が重なり、ここだけ積雪が無い。アイゼンを脱ぎ、大岩を伝って、15時50分、青年小屋に入る。入り口の土間には自炊が可能なテーブルがあり、5〜6人の男がすっかり出来あがって、呂律の回らない舌で大声を出し、酒場状態になっている。案内された8畳程度の部屋、わたし一人で使えそうなのは有難い。部屋の中なのに吐く息も白く、ここは編笠山の頂上より寒い、これぞ八ヶ岳。部屋の片隅に10人分程の畳んだ布団と毛布が積み重ねられ、真ん中に炬燵がある。しめしめと炬燵に入るが火は入っていない。足につかえるものがあるので電気炬燵かなと思うが、コードが無いのでどうやらそうでは無さそうだ。これで暖まることが出来ると思っていたので、それが叶わないとわかると一層寒さが身にしみる。こうなりゃ中から暖めるより仕方が無いと、売店で缶ビールを2本買い込む。小屋番が豆炭を持ってきて炬燵に入れるが少しも暖まらない。ガラス1枚の窓の外は、黒々とした大岩が雪の上一面に生えている荒涼たる世界。フリースを着込んで、靴下を2重に履き、手袋をしてても寒さは容赦ない。廊下で「ゴ〜ゴ〜」と云う音がし出す。襖を開けて見ると、長い廊下の端のガス送風機が真っ赤になって熱風を送り出している。炬燵も少し暖まり出し、ようやく暖まってきたかなと思う頃、「夕食の準備が出来ましたよ〜」、と若い女の声がする。暖かい食堂で、山小屋にしては上等な夕食、持参の「三岳」をお湯割りにしてほろ酔い。部屋に帰って、積んである布団と毛布を3重4重に炬燵に掛ける。洗面所の水は凍りついて出ないので、外に出てスティ-ルカップに雪を詰め込み、廊下のガス送風機でこれを溶かして歯磨きをする。炬燵にもぐり込み、まだ外は明るいうちから眠りに着く。どれほど眠っただろうか、廊下をどやどやと足音を立てて走る音に目を覚まさせる。「テントが凍りついて寒くって寝られない。ここで寝かせて呉れ」。騒ぎが落ち着いたかと思うと再びどやどや。何人もの男が土間で寝ていた酔っ払いを引きづっている。眠ったのか眠って無いのか、窓の外が白み始める。
6時前に朝食が始まる。朝食にしてはおかずの種類もボリュームも豊富。食堂の隣りの談話室で、食後のコーヒーを飲みながらゆっくり過ごす。窓の外、小屋番が指差す方向にはぼんやりと富士山が浮いている。暖かい部屋でのんびりとした山小屋のひと時、もう権現岳に登る気は完全にうせている。ほとんどの泊まり客が発ったあと、8時に小屋を出る。昨日来た時は気が付かなかったが、玄関先に「遠い飲み屋」の大きな提灯が提がっている。昨夜の酔っ払いどもは、この赤提灯に誘われてやって来たのだろう。編笠山を巻いて押出川に至る道を下る。下るにつれ雪の量が少なくなり、アイゼンは岩を噛むようになる。1時間で押出川展望台を通過し、そして相変らず水の流れていない雪の積もった押出川に着く。ここで倒木に腰をおろしてしばしの休憩。ここから先は、雪より落ち葉の積もった土の方が多くなり、20分程下った所でアイゼンを外す。雲海で再び休み、登りと同じ道を下って、青年小屋から3時間弱で駐車場に帰り着いた。駐車場から溢れた車は道路脇に、昨日より長い列をなしていた。
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