玉原高原イエローマウントラリー
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- GPS
- 05:17
- 距離
- 11.1km
- 登り
- 560m
- 下り
- 585m
コースタイム
10:00リゾートセンター-10:40鹿俣山登山道入り口-11:30鹿俣山山頂-13:10ブナ平(ブナ地蔵)-14:10玉原湿原-14:35ブナの湧き水-15:00リゾートセンター
天候 | 曇りのち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
リゾートセンター前等に大きな駐車場がある |
コース状況/ 危険箇所等 |
雪のないゲレンデは、草がこんもりしている箇所にうかつに踏み入ると思った以上に足が沈み込む。また、刈り取られたあとに残っている草の下部は枯れて乾燥し、硬くとげのように突き出しているので気をつけたほうがよい。 玉原高原から沼田インターへの途中にあるなめこセンターでは、なめこ汁の試食ができる。登山を終えて汗が冷えた後の体には特に暖かく美味。 |
ファイル |
イエローマウントラリーガイドマップ
(更新時刻:2012/10/23 09:24) |
写真
感想
イエロー・マウント・ラリー( http://yellow-mount-rally.com/ )に参加するということで、かみさんと共に群馬県は玉原高原へ。
このイベントは玉原高原を舞台としたオリエンテーリングである。A〜Hまでの8箇所のポイントを回り、スタンプを集めて得点を競う。
聞けば10チーム以上50名もの猛者たちが参加するという。山素人同然なおっさんとしてはかなりびびりまくりである。きっと丸太のような腕と足をした身長180センチくらいの山男たちが、日に焼けた顔にやけに白い歯でニヤリと笑いながら、風のような速さでスタンプを押していくに違いない。
何はともあれ意気込みだけは負けるわけにはいかないと、朝4時に起きて群馬へ向かう。渋滞発生前の関越道を快適にドライブして玉原高原へ。
7時50分、玉原高原着。だだっ広い駐車場に、車が数台……。スタッフらしき人たちが何人か、準備を進めているところだった。筋骨粒々の猛者たちの姿はない。どうやら早く着き過ぎたらしい。
車を降りてみると、
「寒っ」
標高1300メートルの高原には強い風が吹いていた。山では高度が100メートル上がる毎に、また、風速が上がるごとに体感温度はぐんぐん下がる。しばらく山歩きから遠ざかっていたおっさんは久しぶりに山と平地の温度差を体感した。
その上なんとも怪しげな黒雲が覆いかぶさるように広がっていて、今にも雨が降りそうな雰囲気。何か得体の知れない不安感が沸きあがってきて、おっさんのびびりに拍車がかかる。
振り返って思えば、今回の山行に対する準備は少々甘さがあったのではないかと思う。
「山初心者でも大丈夫、お気軽にご参加下さい♪」
という主催者さんの誘い文句につられて、お気軽が過ぎた気がする。
確かに、危険度の高い場所では決してないのだが、それでも山は山。舐めてかかるとどこかで痛い目にあう。思ったよりも寒いと感じたこの時点で、気を引き締め直す必要があったのではないか。
幸いにしてウインドブレイカーは用意していたので着用して風をしのいだ。車の中にいれば寒さもない。ラリーの開会までの1時間ほどを仮眠して過ごした。
やがて続々と車が到着し、周囲がにぎやかになってきた。
ガチムチな山男たちが集結……と思いきや、結構家族連れが多い。おっさんちょっと安心。
ラリーの受付で熊よけの鈴とミネラルウォーター2本、スタンプラリーの地図と台紙を受け取る。参加者のルートをバラけさせるため、それぞれのチーム毎に最初に目指すべきポイントが指定された。
我々のスタートポイントは鹿俣山のやや下、ゲレンデの最上端付近のポイントCである。スタンプポイントは玉原高原全域に散らばっているが、ポイントCのあとに鹿俣山頂のポイントB、そこから下ってゲレンデ中腹のポイントAを経て玉原湿原方面へ下り、残りのポイントを回ってゴールに戻るルートを歩くことにした。
制限時間は5時間。大人がのんびりおしゃべりしながら回れる時間設定とのこと、ペースの遅いおっさんチームでも全ポイント回れるだろうと、漠然と考えていた。この辺りも認識が甘いんだなぁ。
9時にラリーの開会が宣言され、諸注意のアナウンスの後、ゲレンデ最下端付近に移動して皆でヨガ体操をした。山のポーズやら太陽礼拝?のポーズやら、ヨガはよくわからないが体はほぐれた。
9時50分頃、各チーム一斉にスタート。
「頑張って下さいっ」
とのスタッフの声援に、
「おうっ、任せておけ。豪華賞品を用意しておくがよいぞ!」
とかなんとか豪語して、スタートゲートを颯爽とくぐったが、ふと振り向くとパートナーのかみさんの姿がない。
かみさんは棒(トレッキングストック)の準備に余念がなく、おっさんはいきなりスタートに戻ることに。
全チーム猛然と出立し終わった頃、ようやく最終チームとしてスタートを切ることができた。
「あれ、この人さっきスタートしたはずじゃ……」
とかスタッフが思ったかどうかはわからないが、スタートゲート前で記念撮影までしてもらってしまった。
まあ、焦ることもあるまい。急がば回れとも言うし。落ち着いて行動することが一番……って、実はちょっと焦ってたぁー。
とにかく最初はポイントC。ゲレンデを真っ直ぐに登っていけば到達する(と、このときは安易に思い込んでいた)。
ゲレンデはとにかく開放感があって、朝には空を覆っていた黒雲も風に吹かれて消え、青い空が気持ちよかった。
整備車両が通るための道があったので足元の心配もなく、ピクニック気分で登っていく。
途中、鐘のある箇所でガイドマップを広げて現在地を確認した。
「……どこだろ」
マップには鐘の位置は記載されていなかった。現在位置が把握できていないというのは致命的だが、
(ま、ゲレンデ真っ直ぐでいいはずだから……)
この期に及んで認識の甘いおっさん。実はこのときすでにルートを誤っていた。
ゲレンデは途中で大きく二手に分かれていたのだが、左のゲレンデを登るべきところを、右へ登ってきてしまっていたのである。
その先は歩きやすく整備された道のない、生のゲレンデが続いていた。
こんもりふくらんだ草は、うっかり踏み込むと思った以上に深くて歩きにくい。刈り取られて残った草の株は枯れて硬くなっていて、注意しないと足を痛めそうだった。
行く手にリフトの終点が見えてきて、ようやくルートの怪しさに気づくおっさん。勘が鈍り過ぎである。
あわててガイドマップを広げてみたものの、地図は観光マップ的な作りで、イベント地図としては良い出来だったが、現在位置を把握できるほどの精度はなかった。
いくら考えても今いる場所が特定できない。
実はこのイベントに参加するにあたり、登山地図を用意すべきだろうと最初は考えていた。
しかし、スタッフにメールで尋ねてみたところ、
「ガイドマップがあるから大丈夫♪」
との回答をもらって、結局用意せずに来てしまった。
スタッフが悪いのではない。何を言われようと、地図を準備しなかったおっさんの判断ミスだ。
この時おっさんの脳裏には、遥か20年前のある苦い思い出が蘇っていた。
奥多摩、日原から一杯水の小屋で一泊し、蕎麦粒山への山行でのことである。おっさんは当時初々しい高校生、ワンダーフォーゲル部の一員だった。
奥多摩駅で給水して山行を開始するに当たり、同行していたN先生から、
「一杯水の小屋にはその名の通り湧き水があるよ」
そう聞かされて、
(それなら水はあまり必要ないだろう)
勝手にそう判断し、ポリタンクを満水にしないまま出発してしまった。荷物が重くなるのを嫌う気持ちがあった。
いざ小屋に到着してみると、なんと水場は干上がっていて一滴の水もない。
夕食を済ますと、ポリタンクはもう空っぽ。N先生が余分に用意していた水を皆で分け合いながら、翌日はなんとか蕎麦粒山へ行くことができたものの……。
後日、山行の反省会において、水不足に陥った点が議論された時、おっさんは無遠慮にも、
「それはN先生が小屋で水を補給できると言ったから……」
などと発言してしまったが、その時もう一人の顧問T先生から、
「たわけものめが!どんな時にも最悪の事態を想定すべきところを、万全な準備を怠った貴様の落ち度である!湧き水があろうとも水の携帯が不要ということにはならぬわ!破ァ!」
と、きついお叱りを受けた。
20年経た今、おっさんはまた同じ過ちを犯してしまいました、T先生。
どんな山だろうと、最低限必要なものというのはある。地図は間違いなくその一つ。余程歩きなれていて、細かな道も把握しているというならまだしも、初めて足を踏み入れる山なら地図は絶対に用意すべきだ。
今回は遭難するような状況ではなかったが、かみさんから、
「ふざけんなハゲ、地図も読めねえハゲはただのハゲだ!」
と言いたげな目で見られてしまった。
なにより20年前と同じミスをする自分が情けない。
ともかくゲレンデを上へ向かうことにして、しばらく進んでいくとスタンプポイントの一つに到着。ポイントAだった。
ここでようやく現在位置が把握できた。ゲレンデの真ん中を登ってくる予定が、右に大きくそれてゲレンデ右端に来てしまったのである。
ルール上はポイントCにまず行かねばならないが、来てしまったものは仕方がない。目をつぶってAのスタンプを押す。
ガイドマップによれば、ポイントAから鹿俣山への登山道がある。確かに目の前にはそれらしき道があった。
ゲレンデを歩くことにも疲れたので、登山道を行くことにした。鹿俣山にはポイントBのスタンプもある。
登山道に入ったところで、ちょうど降りてくる人たちがいた。また道を間違えぬよう、
「この道は鹿俣山への道ですよねっ?」
そう尋ねると、
「そうですよ。面白い道です」
と謎めいたことを仰る。何はともあれルートに間違いがなさそうなので自信を持って進むことができた。
“面白い道です”という言葉の意味はすぐにわかった。
周囲の木々が紅葉して美しいのに加えて、グッとくる木が多い。苔むした朽木、中に入れるほど大きなウロのあいた枯れ木、巨大な木が根こそぎ倒れて、洞窟の入り口のような大穴が開いているところもあった。
枯葉の中にヒキガエルが散歩していたり、たくさんのキノコが並んで生えていたり、思わず足を止めて写真を撮りたくなる場所が目白押しだ。
鹿俣山が近づいてくると展望が開けて、眼下に玉原湖が見渡せたり、木々の隙間から独特なシルエットの剣ヶ峰が見えたりする。紅葉の赤、黄色、常緑樹の緑が帯のように連なっている景色もあった。
これは確かに面白い。
勾配もそれほどきつくはない。秋の登山を十分に満喫できる道だった。
鹿俣山の山頂からの展望は一方向のみなので、それほど開放感はないが、そこに至るまでの道には見ごたえがある。
スタンプBもしっかりとゲットできた。
鹿俣山を下り、ブナ平方面へ。
「ブナヘイ?波ヘイの兄弟?実は三兄弟とか……」
と言っていたのはかみさんだが、もちろん“ブナヘイ”とは読まない。日本一を誇るブナの林だそうだ。
その途中、ゲレンデの最上端に到着。リフトの終点でスタッフの方が燻製を振舞ってくれた。
チーズ、卵、ソーセージ、そしてサーモン。地元のりんごの木のチップを使って作ったという燻製は、上品な香りがしてとても美味しかった。特にサーモンは中がレアで絶品。
「この付近にポイントCがあると思うんですが、どこですか?」
スタッフに聞くのは反則かなとも思ったが、
「ここから少し下かなぁ。ゲレンデを下ったところ。地図だとちょっとズレてるけど〜」
意外に普通に教えてくれた。
ゲレンデを下ってスタンプCをゲット。これで本来のスタートポイントに辿り着いたわけだ。
次はブナ平を通ってポイントDを目指すことにして、ガイドマップを広げて進む方向を確かめた。ガイドマップを見る限り、現在位置のポイントCから西の方角へ伸びているのがブナ平への道である。
それらしき道があったので、かみさんにも地図を見せながら、
「ほら、この道だろ」
確認して歩き出した。のだが……。
何故か道は右方向にカーブしながら登って行く。何だか嫌な予感がした。
やがて行く手にリフトの終点が見えてきた。さっき燻製を食べた場所に似ている。っていうか、さっきの場所そのものだった。
……やっちまったなぁ。またやっちまったよ……。本日2度目のルートミスである。
怒り狂うかみさんから逃れるように、早足でポイントCへ戻った。
わからんもんはもう聞くしかない。そこにいたスタッフの方にブナ平方面への道を尋ねると、
「わかりにくいんですよねぇ、こっちに少し下っていくと右に入る道がありますんで」
親切にも先に立って案内してくれた。ゲレンデをしばらく下ったところに登山道への入り口があった。道標が立っているので入り口まで来れば間違いようはないが、広いゲレンデでは道標を見つけるのがそもそも大変だ。
「今度は間違いないんだろうなハゲ。今度間違ったら残り少ないその髪がどうなるか解ってるんだろうな?」
と言わんばかりの雰囲気のかみさんを、
「はい、今度は大丈夫だと思います。スタッフの方に教えていだたいたので……」
そう言ってなだめつつブナ平への道を辿る。
ブナの林の中をゆるやかに下る道は、ところどころ木道が整備されていて歩きやすい。山道というよりは森の散歩道といった風情である。
途中には沼田の名木百選の一つというシナの木や、朽ちた根が地蔵のように見えるブナ地蔵などがあった。
ブナ地蔵の前にポイントDのスタンプがあり、これで残りは4つ。ようやく半分である。
長沢の三角点のやや手前で遅めの昼食をいただいた。
イベントのお弁当にと配られたおにぎりとから揚げである。おっさんはあまり腹が減ってはいなかったが、エネルギーを補給しておこうと思って無理して食べた。
ラリーの制限時間5時間も残すところ1時間半程となっており、食休みも早々に切り上げて出立した。
時間に追われて焦る気持ちもあり、早足に長沢三角点を過ぎ、東京大学の国際セミナーハウス方面への分岐点に差し掛かった頃、おっさんは何だか気分が悪くなってきた。
かみさんを振り返って、
「バテてないかい?」
そう尋ねると、
「大丈夫だよ〜」
との返事。どうやらかみさんはまだまだ元気のようだ。
「おっさんはバテてしまったよ〜」
「散々道に迷ったあんたが悪いんでしょハゲ」
かみさんはそう言っておっさんを追い抜いて先へと進んでいった。
おっさん気持ち悪さがもう限界に達していたのでそれ以上何も言えず、かみさんが木々の向こうへと消えていった後に耐え切れなくなって吐いてしまった。
せっかくいただいたお弁当……全部戻してしまった。食べた後に急に動き過ぎたせいか?それともバテバテで胃が食べ物を受け付けなかったか?
(やばい、これはやばいかも……)
動けなくなったらどうすべきかを一瞬考えたが、吐くものがなくなるとやや気分が落ち着いてきた。
遠くのほうから、
「どこいったハゲ!おいハゲ!」
かみさんの叫び声が聞こえてきたので、
「今いく」
そう返事して後を追った。
あんまり心配もかけたくなかったが、パートナーとしては正直に体調を把握しておいてもらうべきだろうと思い、
「気持ち悪くなって吐いちゃったよ〜、はっはっは」
と軽く報告すると、
「あらまあ〜」
と、特に心配する様子もなく受け入れられた。ある意味かみさんの冷静さは頼りになる。
玉原湿原方面へと折り返す辺りでポイントEのスタンプをゲットし、よくよく道を確かめながら湿原方面へ。
道は二つあるが、どちらを通っても湿原へ通じている。湿原の北側を通るか、南側を通るかの違いがあるだけだ。
北側の道をたどって湿原へ。湿原の西端をかすめるように南へ下り、南側の木道を歩いた。
湿原には金色の草が生い茂り、涼やかな水音が心地よい。木道に響く靴音も弾む。
もっとゆっくり景色を楽しみたい気持ちはあったのだが、この時点で時刻は14時を回っていた。制限時間まで1時間を切っている。
湿原内に配置されていたポイントFのスタンプをゲットし、自然環境センターを目指す。
木道が途切れたところで道は舗装道路にぶつかり、そこが自然環境センターだった。
スタッフの方がここにも待機していて、ブナ水で淹れたという紅茶をいただく。
暖かなお茶が疲れた身体に染み渡る。環境センターの前には十二山宮という小さな祠がある。
「はっ、のんびりとティータイムを楽しんでいる場合ではないっ」
イベント終了まで、あと35分と20秒。
いそいそと舗装道路を辿ってポイントGへ向かう。
ポイントGはブナ水の沸く場所である。ブナ水とはブナ林の地下から沸いている湧き水で、蛙の像の下からジョロジョロと流れ出ている。
スタンプを押し、空になった水筒にお土産代わりのブナ水を汲んだ。
あとはゴール地点に近いポイントHのスタンプをゲットするだけだ。
ガイドマップによれば、ブナ水の位置から少し先にセンターハウスがあり、その辺りからポイントHに向かう道があるはずだ。
ガシガシ歩いていくと、左手に道標があって「ブナ平方面」の文字が見えた。
目指しているのはリゾートセンター方面だから、この道は違うだろうと即座に判断して進んでいったが……。
「あれ?」
またやっちまった……。センターハウスに到着したが、分岐する道などどこにも見当たらない。
センターハウス前にある巨大な案内地図とガイドマップを見比べながらよくよく考えると、どうやら先ほどの「ブナ平方面」の分かれ道こそが本来通るべき道だったと気づく。
3度も道を間違えるとは……。2度あることは3度あると言うが、この勘の悪さは山歩きでは致命的だ。
このまま舗装道を進んでもリゾートセンター方面に行くことは可能なので、もうともかく前に進むことにした。半ば自棄になってガンガン進む。
同じように道を間違えた家族連れのチームがいて、何を思ったか我々のあとから着いてきた。
(あなた方が追っているのは道を3度も間違えたおっさんですよ……?)
などとはさすがに恥ずかしくて言えず、もう道を間違えないことを祈るばかりだった。
幸いにしておっさんは一同をリゾートセンターまで導くことができた。ちょっとホッとしたおっさん。
しかしおっさんの旅はまだ終わりではない。
最後のスタンプを押さねばならないのである。
時刻は15時ギリギリ。
「これから最後のアタックを行う。最小限の装備で先行する。ベースキャンプで待て」
かみさんにザックを預け、おっさんは果敢に進んだね。
さすがにこの時にはもうガイドマップの癖がわかっていた。ポイントは道標のイラストだ。これを目印に進んでいくのが一番間違いない。
ゲレンデをハイペースで登り、今までの迷子状態がまるで嘘のように的確に道標を見つけてポイントHへ至る山道に飛び込んだ。
と、その途端。
「もしもーし、ダメですよっ!」
大声でスタッフの方に呼び止められた。
「ええい、止めてくれるな、男には行かねばならぬ時が……」
「何を言っているんですか、Hポイントのスタンプはもう撤去してしまったので行ってもありませんよ」
衝撃。全ては手遅れだったのか……。
「地図がわかりにくいんだもんっ、現在位置わかんなくて何度も迷ったんだもん、えーんえーん」
スタッフに泣き言を言いながらゲレンデに戻ると、別のスタッフの方がHのスタンプを手ににこやかに立っていた。
「記念に押しときますか?」
「あ、ありがたき幸せ……」
泣いたカラスがもう笑う。おっさん、反則気味に全てのスタンプをゲットである。
かくしてイエローマウントラリーは終わった。
実はスタンプを押して集めた得点は、フリスビーゲームの賭けに使用することが出来、ゲームに勝てば得点が二倍、三倍になる。
おっさんチームはスタンプを集めた時点で時間切れ、ゲームに挑戦する時間はもう残されていなかった。
優勝チームはゲームで三倍の得点をゲットしていた。完敗だった。
「燃えたぜ……燃え尽きた……真っ白な灰にな。俺のザック、持ってってくれないか……あんたに持ってって欲しいんだ」
「自分で持って帰りなさい」
などというやり取りは無かったが、紅葉の山、澄んだ展望、静かなブナ林、涼やかな湿原などなど、高原の自然を思う存分満喫できた山歩きだったのは間違いない。
湿原の辺りなどは時間に追われてゆっくり楽しめなかったので、ぜひとももう一度訪れてみたい。
最後に、イエローマウントラリーについて少々触れておくと、今回が第一回の開催とのこと。
楽しいイベントを企画して下さったスタッフの皆様に、この場を借りてお礼を言いたい。
気象予報に関わる仕事をなさっている方々が集まって主催したそうで、テレビ朝日の気象予報士今村涼子さんや山岳カメラマンの平賀淳さんのトークショーなどもあった。
トークショーでは山の天気についての話があり、天気予報と山の天気は必ずしもイコールではないこと、しかしながら山の天気を把握する上では天気予報内で気をつけるべきキーワードがあることなど解説されていた。
「大気の状態が不安定」というキーワードがあった時は、たとえ予報が晴れでも、山では急激に天候が変わる可能性が高いので、安易に出かけないようにするとか。
秋の夜空が澄んで星が綺麗に見える時は、放射冷却で翌朝はひどく冷え込むとか、今年のクリスマスには雪が降らないだろうとか、晴れ男は実在するとか。
好評であれば第二回や、新たなイベントもあり得るそうなので、興味のある方はぜひ。
イベントに参加するのでなくとも、玉原高原はほとんど険しい道もなく、それでいて多様な自然の景観を楽しめる場所なので、お子様連れの方や山歩きを始めてみたいという方にもお勧めできそうな場所だった。
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