【スイス】ブライトホルン ‐ハーフトラバース‐
- GPS
- --:--
- 距離
- 7.6km
- 登り
- 499m
- 下り
- 510m
コースタイム
- 山行
- 5:05
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 5:15
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
稜線に取り付くまでにクレバスあり。凍結した細い岩稜は歩行注意。 |
その他周辺情報 | クライン・マッターホルンにレストラン、カフェあり。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ソフトシェル
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
ゲイター
バラクラバ
毛帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
アイゼン
ピッケル
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
水筒(保温性)
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
ガムテープ
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ナイフ
カメラ
ハーネス
ヘルメット
確保機
ロックカラビナ
カラビナ
クイックドロー
スリング
ロープスリング
ギアスリング
ポール
|
---|---|
共同装備 |
ロープ
|
感想
2018年にスイスの山を旅した時の記録です。
有名な観光地となっているマッターホルン・グレッチャーパラダイスからほど近く、東西に広く伸びた山容が特徴的なブライトホルン。もっとも優しい4,000mの一つと言われ、ガイドさえつければアイゼンを初めて履く人でも登れるという。しかし、それは西から緩やかな斜面をダイレクトに登るノーマルルートの話であって、東側には細く鋭い岩稜が立ち並んでいる。ハーフトラバースルートはこの稜線の中間(ハーフ)まで突きあがり、縦走(トラバース)するルートだ。マッターホルンを目指す登山者が、その実力を備えているかどうかのテストにも使われる。
実際のところ、元々はブライトホルンに行くのではなく、双子の4,000m峰・カストールとポリュックスのうち、ポリュックスのガイド登山を申し込んでいた。なぜブライトホルンになったかは後に記す。
6:00
ペンションを出てケーブルカー乗り場に向かう。今のところ天気は雲一つない晴れで、マッターホルンのモルゲンロートが美しい。日本人橋では多くの人がカメラを構えていた。ヴァイスホルンやメッテルホルンもよく見えている。
チケットを買って、ガイドと合流。名前は忘れたが前回のザースフェーの方より若い。しばらくして同行するスイス人もやってきた。時間通り6:30にケーブルカーに乗り込む。フーリで降り、クライン・マッターホルン直通のゴンドラに乗り換える。既にスキーを担いだ子供達でいっぱいの大行列だ。
ところが、待てども待てども人の動く気配がない。ガイド特権で行列の先頭に割り込むも、従業員は首を横に振るばかり。どうやらマシントラブルでケーブルカーに遅れが出ているようだ。
30分ほど経ったところで、ガイドが「ポリュックスはやめて、ブライトホルンのハーフトラバースに行くかも」と言った。なんてこった。登山当日に登る山が変更になる程、つまらない事はない。もともとブライトホルンは今日のポリュックス登山で通過する際に登山道の状況を観察した上で、後日ノーマルルートから自力で登るつもりだったのだ。ハーフトラバースは面白そうではあるが、自分の興味を切り替えるのは簡単ではなかった。
しかし、ポリュックスはアプローチが長く、午後から天気が崩れる予報なのもわかっていたので、ガイドの判断が正しいというのも十分に理解できた。目的地を変更されるのが嫌なら、初めから自力で登る実力をつけておけばよかっただけのことだ。他人任せの登山ツアーに文句を言う資格などない。
1時間くらい待ったのち、係員の人に動きがあった。直通の大型ゴンドラはまだ動かないようだが、小型リフトなら乗れるようだ。他の数組のガイドパーティとともにスキーの行列を離れ、始発となった小型リフトに乗り込む。シュバルツゼーを経由し、大回りしてクラインマッターホルンの駅に着いたのは8時になっていた。
リフトの中でもしかしたらやっぱりポリュックスに行くことにならないか、と淡い期待を抱いていたが、ガイドの答えはブライトホルンだった。同行するスイス人は明日からマッターホルンに登る予定で、岩稜トレーニングはむしろ難易度の高いハーフトラバースの方が都合が良かったようだ。
8:00
クライン・マッターホルン(3,883m) 出発。
クライン・マッターホルンは「小マッターホルン」の意味で、その名の通り小さいマッターホルン型の岩峰だ。マッターホルンエクスプレスの終点であり、内部は改造されてエレベーターが通っている。グレッチャーパラダイスとして整備されているので観光客も多い。富士山より高い地点までリフトで上がれるというのだからすごい話だ。
スキー場の出口脇でハーネスを装着。気持ちを切り替えて出発する。アンザイレンの順番はヴァイスミースの時と同じくガイドが先頭、間に同行者を挟んで自分がしんがりだった。スキー場を一番最初に出発したので、前方に人影はない。
ここはちょうどスイスとイタリアとの国境になっており、ツェルマットの反対側はイタリアだ。日本にいると外国に行くのは飛行機や船で海を越えていくのが当たり前になっているため、こうして地続きで国が繋がっているというのは不思議な感じだ。ヨーロッパ最高峰・モンブランやグランパラディーソが見えた。
しばらく平坦な雪原を歩く。今日のガイドはクルトさんより歩くのが少し速い。高山病にならないよう意識的に深く呼吸する。ブライトホルンの本峰を回り込み、目指す岩稜の取り付きに着いた。東西に広くいくつかのピークを持つブライトホルンの、おおよそ真ん中の地点からハーフトラバースは始まる。
クレバスをいくつか跨ぎながら、急な雪面を登る。一番きついところで45度くらいあったか、最後はピッケルをダガーポジションに切り替えて登ることになったが、ふくらはぎがビリビリと痺れた。
30分ほどで岩に取り付き、クライミングパートが始まった。はじめのうちはアイゼンを付けたままなので、自分の足に引っかけないよう意識しなければならない。爪が岩に擦れてキュッキュッと不快な音を立てている。ガイドはピナクルや岩に走ったクラックを使ってビレイしている。
途中で雪面の20m程のトラバースが出てきたが、ピッケルを背中に収納したまま通過するので緊張した。やがて岩から雪の気配がなくなったところでアイゼンを外す。ラバーソールのフリクションの安心感を実感した。
3級程度の岩場をガシガシ登り、やがて稜線に出る。両側がすっぱりと切れ落ちた岩の稜線はすごい高度感だ。岩と岩の間、1mくらいの隙間をジャンプで超えたりしながら進む。岩峰と岩峰の間を越える際、一旦小さな鞍部に下るのだが、そこは自分が先頭を行くことになった。岩と雪が混じっており、雪面にはステップが切ってあるようだがツルツルに凍っている。足の置き方をイメージしていたらガイドに早く行けと怒られ、一か八か後ろ向きで下りる。落ち着いてフラットソールで行けばスリップはしなかった。さすがモンベルのアルパインクルーザー。指示された岩にロープを巻きつけてセルフビレイを行い、スイス人に続いてガイドは得意げに小走りで下りてきた。そこからの登りは一部ハングしているためガイドが難しいと言っていたが、ボルダームーブで何とか突破した。
ここまできてはじめてゆっくりと休憩をとる。確保の為、ガイドとスイス人は少し広めの岩場へ、一旦ピナクルにロープを巻いて自分は3mほど離れたところに荷物を降ろした。1m四方も無いくらいのスペースで、座るのは少し怖かったので立ったまま休んだ。
周囲をさえぎるものはないので当然展望は良く、マッターホルンは雲に隠れているもののミシャベル山群やモンテローザ、カストールに加えて今回行きそびれたポリュックスが見渡せた。出鼻はくじかれたものの、ここまでのクライミングでポリュックスへの慚愧はすっかり晴れていた。稜線の続く先にはブライトホルンの本峰があり、すでにノーマルルートからの登頂者で賑わっているようだ。
スイス人がレッドブルを持ってきて飲んでいた。翼を授かったからって飛ぶんじゃないぞとガイドが茶化す。たっぷり30分ほど休憩し、再びアイゼンを装着して出発する。岩稜帯は終わり、雪稜を登るだけなのであっさり山頂へ。
12:10
ブライトホルン(4,164m)登頂。
広場のような山頂で、ノーマルルートからの登山者がひっきりなしにやってくる。スイス人のおっちゃんと一緒に記念写真を撮った。さっきゆっくり休憩したところなので、ひとしきり写真を撮ったらさっさと下山にかかる。
ノーマルルートは利用者が多いだけあり、トレースもしっかりついていて歩きやすい。ヒドゥンクレバスにさえ注意すれば本当に誰でも登ってこれそうだ。
13:15
クライン・マッターホルン帰着。
あっという間に下山。ガイドと握手してお別れ。
-感想‐
ポリュックスに行けなかったのは残念だったが、久しぶりのアルパインクライミングは緊張感と爽快感にあふれてとても良い山行になった。
これをクリアしたので、自分にもマッターホルンへの挑戦権が与えられたことになる。せっかくのスイスアルプス、ぜひとも登りたいところだったのだが…。結局、その後の天候に恵まれず、チャレンジすることはかなわなかった。
ちなみに、このブライトホルンを共にしたスイス人のおっちゃんは、後日無事にマッターホルンに登頂したらしい。コングラチュレーション!
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