6歳児とゆく発見だらけ&岩だらけの滝子山
- GPS
- 08:11
- 距離
- 11.5km
- 登り
- 1,123m
- 下り
- 1,223m
コースタイム
- 山行
- 6:59
- 休憩
- 1:07
- 合計
- 8:06
天候 | 晴れときどき曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
かえり:JR初狩駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
南稜(寂ショウ尾根)コース:踏み跡明瞭、荒れもなし。岩場は常に赤ペンキでのガイドがある 檜平コース:踏み跡明瞭。林道近くの沢沿いで軽い渡渉数回あり |
その他周辺情報 | 温泉に入る余裕はありませんでした! |
写真
感想
前回の雁ヶ腹摺山がかなりあっさりしていたので、つぎはガチの山に登ろうと息子とは示しあわせていた。
こんどは「がちやま」だよ! とニコニコ言う息子を見て、変な言葉覚えさすんじゃねえぞコラ、といった表情の妻。確かに、なんだその日本語。
そんなわけで選んだのが、滝子山。1620mをふもとから登る、まさしくガチ山である。
しかも、さらにガチなルートがあるという。急な岩場を直登していく、通称「寂ショウ尾根」コースがそれだ。一部の地図ではバリエーションルート扱い、だが人気のコースでもあるらしい。どういうこと?
危険な難ルートならば、息子を連れていきたくない。どれほどのものか、ヤマレコで記事を読みあさった。
先人たちの意見をまとめると「油断は禁物だが、いうほど危険なコースではない」という感じ。そうか、では「まずいと思ったら撤退」を胸に、チャレンジしてみよう。
JR笹子駅から、1日6本という富士急バスの激レア路線で「原公民館」バス停へ。滝子山への最寄りバス停は「吉久保」「吉久保入口」などガイドによってまちまちだが、この「原公民館」がベストのようだ。
笹子駅から滝子山登山口のある桜森林公園までは2キロあまり、バスに乗らず歩いてもいい距離だ。
だが、となりには息子がいる。アリが大きな獲物を運んでいる、たったそれだけで10分はひっかかる6歳児だ。現にバス待ちのあいだ、彼はひたすらアリと遊んでいた。2キロの道すがらアリの巣に各駅停車していては文字どおり日が暮れてしまう。登山口までさっくり連れ去るのが得策なのだ。
バスを降りて、山側へ。梅雨の晴れ間、日差しはもちろんアスファルトからの照り返しも熱々だ。息子はすっかりやる気を失いアリ穴を見て回っている。やはりバス作戦は成功だった。
意外とすんなり、登山口である桜森林公園に到着。しかしそこには清流が流れており、息子が吸着されてしまう。ねえかわあそびしていい? あかんでー!
虫をとりたい、川であそびたい、きのこを見つけたい。山に登るというイベントのなかに、いくつものターゲットがあるのだ。
毎度のことだが、葛藤。
都会暮らしを彼に強いているのは我々親である。たまに来る自然パラダイスのなかで、これするなあれするななんて言いたくない。満喫してほしい。やりたいことしてほしい。
でもそれしてると日が沈むのよ! あとアリは都会にもいるのよ!
公園入口から少し舗装道を歩き、寂ショウ尾根への分岐に。「自信のないやつはやめておけ」的な注意書きがあるが、大丈夫だと信じて進む。
今は廃屋状態の寂ショウ小屋から、本格的な登山道に……と、今回は唯一ここで道迷い。踏み跡が一瞬とぎれ、ヤマレコ の地図では廃屋を回り込むようにルートが描かれている(が、破れたガラスなどがあって無理)。
うしろからハイカーさんが来たので見ていると、なんのことはないまっすぐ進んでいる。余計なことを考えなくてもよかったらしい。このハイカーさんは恐ろしい速さでまたたくまに視界から消えていった。息子には「もうまようのはナシだからね」とクギを刺された。
杉林が続く。たまにスギエダタケが生えている。が、それより息子の興味をひくのはアワフキムシである。身を守るためにアワに包まれて生きるこの虫、息子にとってはリトルワンダーそのもの。
でもアワフキムシ、無数にいるやんけ、、、全部ひっかかるのはやめとくれ、、、
と思ったらこんどはアリ。でっかいアリいるよ! すごい大きなえものはこんでるよ! OKわかったアリはすごいな、でもそいつらは街にもいるだろ、、、あっホタルつかまえた? 光らないタイプ、それはたしかに山にしかいないねーでもたくさんいるよね?
そんなわけで全然進まない。こらえきれず「アリとアワフキにひっかかるの禁止令」を発令した。息子は息子で半分納得らしく「こんどいいのみつけたら、ぱぱ!ってよぶね」という。パパも面白いだろうと思うものはきちんと知らせるというのだ。
そんなわけでやっと最初のチェックポイント、鉄塔に到着。お茶を飲みましょうね。気温はそれほど高くないが、父は汗だくである。息子は「もりのクーラーがきいてるからすずしいよ」という。
次のチェックポイントは林道との交差。そこまではまず急ごうよ、あーまたアワフキムシ?
「ちがうよパパ、すごいむしがいたよ」
息子が指差す木肌を見ると、体長6mmほどの、虹色に光る虫! たしかにこれはすごい! しばらく旅のおともに連れていこうか。
かくして林道の交差点にたどり着いたとき、はやくも予定の40分遅れであった。たのむよ少し急いでよ、というと、「おりるのはやいからだいじょうぶ。40ぷんなんかすぐだよ」と息子。自信あるんだな、、、
そして「道があるならここまで来ればいい、なぜ歩くのか」などと文句を言う。まあ気持ちはわかるがこの林道はプロユースのやつでとうちゃんは入れないんだよ。
林道を過ぎると、本格的な尾根が始まる。とはいえ、人気のコースだけあって踏み跡はしっかり、さほど危険な箇所も見当たらない。うーんこれなら九鬼山直下のほうがこわいかな。
と、息子が大発見。あこがれのチシオタケである! ぽりんと取ってみると、どう見ても血だよね、という汁が出る。こいつはすげえ!
ほかにでっかい真っ白なキノコも見つける。滝子山はきのこ山だ、と聞いていたがなかなかのものだ。
坂は急になってきたが、息子の歩くペースも上がってきた。これはいい流れだぞ、と思ったところで遠くからかすかにお昼のチャイム。これを聞き逃さなかった息子、「そろそろおなかがすいたねえ」。しょうがないな、サッとおにぎり食べよう。
電車内での朝ごはんに引き続き父特製おにぎりであるが、文句ひとつ言わずに食べる息子。おなかすいてたらおいしいよね!
このあたりから道がだんだん急になってくる。でっかいスズメバチに様子を見られたり、赤く光るコガネムシに道案内されたりしながら進む。キノコ探しも怠らない。むしキノコ登山である。
そしてついに、うわさの岩場に到着! 完全なる岩登り、土がない。それでも、左右が切りたっているわけでなく、後方もとめどなく落ちるほどの急斜面でもない。ゆっくり進めば大丈夫。
そう思っていたが。その岩も、だんだんきつくなってくる。むしろ自分の足が動かない。息子はひょいひょい上がっていく。危ないのはとうちゃんのほうだぞこれ。
ものすごく見晴らしのよい小ピークでひとやすみ。これが滝子山南稜? 街もほかの山も、ものすごく下に見える。すごいところに来ちまったぜ、、、
少しだけくだって、痩せ尾根っぽいところを通り過ぎて、、、
左右切り立った岩の上を通過! 森が! はるか下に! わーこわいよこれー!
が、どうやらこれが難所のラストだったようだ。土の道にもどり、少し上がると浜立山からの稜線に出た。ほっとひといき。
ここにさっき道案内してくれたコガネムシ(と同じ種類の子)がいたのでめでたく旅の仲間にプラス。オオセンチコガネだ、ものすごいキラキラしててキレイ! まあ、こいつがふだん何食べてるかは内緒にしておこう。
すれ違ったお兄さんが、あと2箇所くらいキツいところがあるよ、と言っていた。まだあるのか、、、
軽いアップダウンを繰り返して進むと、たしかに急坂のジグザグ、岩登りがあった。でも、さっきのすごい岩の連続に比べたら大したことはない。
ひとつ前のピークで呼吸をととのえて、さあ山頂を目指そう! 三角の頂上部分をみて息子は「えーこれのぼるのー!?」という。確かに山ひとつ登るみたいに見えるね、でももうこれ大したことないよ。がんばろう。
さすがに今回のコースはちょっと怖かったよ、ごめんなー、なんて話しながら行くと、頂上! かと思いきや「この先危険」(これまで来たコースのこと)の看板が立ってるニセピーク、すこしずっこけたけどその少し先に!
滝子山山頂!
うわー息子、よく登ったよ!!!!
いつも登る1000mそこそこの山とはワンランク違う、はるか眼下に見える街や木々。そして、まったく期待していなかった富士山、半分だけだけれど顔をのぞかせてくれている。
反対側には、先週登った雁ヶ腹摺山。本当に見事な景色だ。
人気の山だけあって、山頂には10名ほどのハイカーさんたちが休んでいた。息子をみて口々に、すごいね、えらいね、と声をかけてくれる。鼻高々な息子はお礼のつもりか、きんぴか虫を見せてまわる。息子よ、ハイカーさんたちあんまりうれしくないと思うぞ。
絶景の中、ごほうびドリンクの「ぜりーめりんぐ」(※ゼリー×スパークリング)をいただいて、お弁当の続きのウインナーととうもろこしを頬張る息子。とうちゃんはむしろこれを見に来たんだよ。
これで秀麗富嶽十二景、13/20座をクリア。いつもの秀麗富嶽の茶色い標識が見あたらなかったのはちょっと残念。見落としたか、台風で飛んでしまったか。
富士山と記念写真を撮ったら、そろそろおりていこう。帰りは君が思うぞんぶんトバせる檜平コースだ。
くだりがゆるやかだと見るや、猛然と駆けおりてゆく息子。くだりは得意で大好き、この瞬間を待ち望んでいた様子。きのこも虫もなく、ただひたすらスピード狂。誰だこんなトレランマンを作り上げたの!
岩がちなところはステップを細かく切れ、など、数々の山で自然と身につけた技術を解説してくる。だがそれ以前に、この滝子山の登りでとうちゃんの体はクタクタなのだ。
道が男坂と女坂に分かれる。駆け抜けたい息子は迷わず女坂をチョイス、どんどん進んでいく。ついていく父はほんとうに精一杯、膝が笑っている、というか膝軟骨がぐんぐんすり減っていくのがわかる。お願い待って。
「え? まさか つかれた なんていうわけないよね?」
無情の息子である。やれやれ、といった具合で、スピードを「じゅうからさん」におとしてくれた。そして、檜平に到着。ゆるやかな広い坂にまばらな林、なんて気持ちのよい場所。
息子ともども、水分が枯渇してきつつあった。このままいくと「最後の水場」というのがあるようだ。よし、そこで補給しよう。
コンスタントなスピードで坂をおりていくと、しっかりとしたベンチを発見。奥に水場があるという。よーしたっぷり飲もう、水筒にも汲んでいこう! と思ってよく見ると非情な「この水は手洗い用です」の文字! マジですか!
と、息子は近くにあった切り株で粘菌と遊んでいる。マメホコリの子実体、松の葉でつつくとピンクの粘液を出す。んー、なんかかわいそうだからほどほどにしてあげて、、、
道は沢にそってふもとに向かっていく。このあたりの沢沿いの山道と同じように、道が沢を渡るところがやや荒れている。
心もとない橋(丸太2本やぐらぐらの鉄板)、あるいは渡渉を何度か繰り返していくと道は林道になり、やがて舗装になった。民家が見えて、「滝子山入口」に到着。おつかれさまでした!
あとは最初に見つけた自販機で飲み物を買おう。そう話して初狩駅を目指すものの、ホタルブクロを見つけたり長いアリの行列をたどったりと、最後まで男児であり続ける息子だった。
そんな彼をほめるように、頂上で半分だった富士山が全体を見せてくれた。なんだかうれしい見どころの多い山行だったな。
里について最初の自販機でコナンくんソーダを購入、のんびり歩いて駅へ。息子は珍しく、足が疲れたという。
そりゃそうだ。父の足は、どころか体全体がガタガタだ。君にとって初めての高低差1000mオーバー、それは父にとっても初めてなのだ。よく歩き通したよ、本当にスゴいヤツだなあ。
初狩駅から電車で東京へ。山頂で息子をほめまくってくれたパーティと再会するなど、最後まで楽しい大冒険だった。こんなにスリルはなくてもいいけど、ヘトヘトになるほど山と遊ぶのって楽しいね。陽の長いあいだに、もいちどどこかに行ってみよう。
もちろん翌朝、父はまったく動けませんでした。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する