夜歩き訓練?!百尋ノ滝〜川苔山(川乗山)〜鳩ノ巣
- GPS
- 09:02
- 距離
- 12.9km
- 登り
- 1,311m
- 下り
- 1,412m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
9:48発のバスは大混雑で乗れず。臨時増発バスが2本出たので助かった。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
【川乗橋BS〜細倉橋】 舗装された林道で傾斜もきつくないので歩きやすい。時々通る車には注意。沢越しの紅葉の山々が美しく、景色を楽しみながら、また、写真を撮りながら歩いたので1時間くらいかかったが、普通のペースなら45分程度の道のりか。 細倉橋の登山道入り口にはバイオトイレがあるが、1つだけしかなく、紅葉シーズンの土曜日ということもあり行列していた。トイレ待ちだけで15分。急いでいる方は駅で済ませたほうがよい。 【細倉橋〜百尋ノ滝】 傾斜はそれほどないが、沢沿いの細い道である。木橋がいくつもあって、沢を右に左に渡りながら登って行く。特に危険な道ではないが、広くは無いのですれ違いや追い越し時には注意する必要がある。 沢の水で濡れている箇所もあり、特に落ち葉が降り積もっていると滑りやすいので足元には気をつける。 百尋ノ滝の手前で沢の左岸の岩斜面を上がる。ここはやや急坂。ザイルが設置されている。 【百尋ノ滝〜川苔山(横ヶ谷沢沿い)】 百尋ノ滝から尾根を上がっていく道は、今までと打って変わって傾斜が出てくる。二箇所ほど地図にない分岐があり、道標もない。踏み跡がしっかりついている道が正解。正しい道には赤いテープがあるので進む方向に迷ったときには目印になる。 大きな枯れ木の切り株が道を塞いでいる箇所があった。乗ると揺れて不安定なので注意して越えたほうがよい。 尾根を越えると横ヶ谷沢に向かっていったん下る。石を伝って沢を渡る。濡れ落ち葉が石に張り付いていたりすると滑る危険があるので注意。 沢を越えて少し登り返した辺りで足毛岩分岐となる。今回は足毛岩方面には行かずに左方向に進んだ。 左方向は横ヶ谷沢沿いに登るコースで、沢沿いの紅葉が美しい。落ち葉の降り積もった谷底を登って行く。日が当たらないので秋場は若干寒くなる。 谷から稜線へ向かう道の途中に木の根の大きな段差があった。 川苔山の直前で稜線上に一気に登る箇所は急坂だが、足場はしっかりしているので危険はない。 稜線上に登ると視界は開けて川苔山まではゆるやかな道のりである。 【川苔山〜舟井戸】 道は広く特に危険な箇所はない。途中に何箇所かベンチがあって休憩できる。 【舟井戸〜大根ノ山ノ神】 舟井戸から大ダワ方面へ向かう道は悪路とのこと。見たところ踏み跡もなかった。この道は『山と高原地図』で“2011年11月現在通行禁止”と記載されている道だと思われる。ウスバ乗越経由の道は崩落していて通れず、舟井戸の先の分岐(最後の写真の地点)も桟橋崩落で通れないとのことなので、本仁田山方面へ行くならこの道を通るしかないと思うが、要注意。 今回は大根ノ山ノ神方面へ。 途中、沢沿いの道なのか、土砂が崩れて未整備のままの箇所があった。大きな石がごろごろしていて注意しないと足をとられかねない。 要所に道標があったので迷うことはないと思う。 【大根ノ山ノ神〜鳩ノ巣駅】 すでに完全に日が暮れていたので大根ノ山ノ神から進む方向に迷った。 林道に出た後、少し進むと開けた場所があって道標がある。林道の左側に下っていく山道があり、たどっていくと鳩ノ巣の集落につく。 真っ暗闇だったので大根ノ山ノ神は見ていない。 |
写真
感想
大菩薩峠に行く予定だった。
しかし天気予報がやや芳しくない。土曜日は下り坂、日曜日には雨になるという。
おっさんの登山方針は安全第一なので、対処できそうもない危険が予測される場合は計画中断である。
2000メートル級で悪天候に見舞われたら、今のおっさんではかみさんを守りきる自信がない。よって大菩薩行は取りやめることにした。
実際の事態はもう少し複雑だ。
高校生の娘が登山予定日に平常授業とのことで、寝坊常習犯の娘を1人残して早朝に発つと大遅刻の記録を樹立しかねない。
娘を学校へ送り出した後に出発するとなると行動可能な時間の制約が厳しい。とても大菩薩に行けるだけの余裕はない。
それで、朝遅く出ても問題のない山に変更しようという話になった。
おっさんとしては、9時10時から登って余裕のある山というと御岳山とか高尾山なのだが、それではうちのかみさんが満足しない。
「ここがいい」
と提示してきたのが川苔山である。
川苔山のコース前半、百尋ノ滝に至るまでの景色は魅力的だ。季節は秋、紅葉の沢を満喫できる。
しかし、川苔山のメジャールートは5〜6時間かかる。おっさんパーティのペースで計算すると7〜8時間というところか。
登山口までの交通手段を調べてみると、10時前に到着するバスしか使えそうも無かった。つまり順調に歩いても帰りは17〜18時、間違いなく日が暮れることが予想された。
「御岳山あるいは都民の森の三頭山あたりでどうでしょう?」
と提案してみたものの、
「人多いから嫌!」
と拒否される。確かに前回の筑波山で、まるで人気ラーメン屋に並んでいるかのごとき登山者の大行列にはおっさんも辟易していた。人の多い山を避けたい気持ちはわかる。
川苔山も人気の山とは言え、まったくの初心者さんがいきなり登る山ではない。大行列は考えられない。そして調べるほどに、コースは魅力的に思えてくる。
問題は時間だ。
ほぼ間違いなく、下山時に日が暮れる。登山の鉄則は日暮れ前の下山。余裕を持って15時には行動完了、はたまた天候の安定性も踏まえて動くのは午前中だけにすべしとの意見すらある。
日が暮れることがわかっているのに登るのは、常識外れの計画であろう。本来こんな計画は立てるべきではない。
だが、日が暮れるにしても下山の途中、人里まで1〜2時間の距離と思われる。山で日が暮れたらどんな状況になるのか、夜間の行動がどのくらい危険なのか、さらには時間がないならあきらめるべきだということを実体験で(かみさんに)知ってもらうため、敢えて夜間登山という経験をするのも無駄ではないのではなかろうか?
この登山は夜間行動の訓練と考えよう。いつかアクシデントで山中で日が暮れた時にパニックにならないよう、夜の山を見ておこう。
それでも敢えて危険をおかすべきではない、という思いも無いことはなかったが、川苔山に登りたい気持ちに負けた。
夜間装備を整え、始めから日が暮れることを想定した計画を立てた。
当日。
やや心配していた天気は、秋晴れを保ってくれていた。
奥多摩駅で増発バスを大混雑の中待っていると、行方不明者捜索のビラを手渡された。
すでに発見されているかもしれないが、念のためここに概要を転載しておく。
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10月8日(日)に単独で奥多摩方面へ出かけた男性(39歳)の消息がわからなくなった。行き先として可能性が高いのは雲取、三ツドッケ、茜谷山。
特徴は、身長173センチ、体重75キロの小太り体型、髪は短めで黒、天然のウェーブ、メガネをかけている。
当日の服装は、白いキャップ(アンダーアーマー)、黒いサングラス(オークリー)、黒と紫のザック、黒いロングTシャツ、黒いパンツ(コロンビア)
日原駐車場でレンタカーが発見されている。
連絡先は奥多摩交番、0428-83-8082
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夜間行動を考えてるところに行方不明者の話を聞いたのでドキドキする。気を引き締めて行かねば。慌てない、焦らない。
今回、いくつか装備をアップグレードしての登山だった。
まずトレッキングステッキを二本使いに変えた。今まで一本使いだったが、どうもサポートしていないほうの足にダメージが来る。そこで両足をサポートできるよう二本使いにした。
それから膝へのダメージを軽減するため、サポートタイツを着用した。
夜間気温が下がることが予想されたので、十分な保温効果がのぞめるフリースのミドルウエアを用意した。
ヘッドランプはもちろんだが、クリップ式に任意のところに取り付けられるLEDライト。
休憩時に水筒を取り出さなくても済むよう、ドリンク用のチューブ。
これらはどれも役に立った。
川乗橋から細倉橋までの林道はところどころで良い景色が楽しめた。ある意味、この区間がもっとも紅葉を満喫できたとさえ言える。
細倉橋ではトイレ待ちの行列が出来ていて、15分ほど待たされたものの、周囲の景色が素晴らしいのでまったく退屈することはなかった。
トイレを終えたパーティから、順次登山道へ踏み入っていく。
沢沿いの登山道は細く、場所によっては足元が滑りやすい。しかし沢の水音は心地よく、所々で小さな滝を眺めることができる。
何度も沢を渡る木橋も良い。冒険な雰囲気が出ている。
すれ違ったり追い越したりする余裕があまりないので、足を止めてじっくり景色を楽しんだり、写真を撮るときは周囲の人に気をつかう。
(道をふさいじゃいけない……)
と思いながらもついついファインダーを覗いてしまうほど、見ごたえのある風景が点在していた。
百尋ノ滝に至るまでは、最後に若干急な傾斜があるくらいで、ほぼ平坦だった。
「この山が中級者向け?余裕じゃない?ぜんぜん行けるわ」
百尋ノ滝で休憩していた女性がそんなことを連れの男性に話していたが、確かに百尋ノ滝までは決してキツイ道ではない。滑落等の危険はあるものの、気をつけさえすれば体力に自信がない人でも歩けるコースだ。
いわゆる“登山”になるのは百尋ノ滝から先だ。
感覚的には、スライムしか出てこないと思ってたら突然ドラゴンが出てきちゃいました、みたいな傾斜角度の飛躍がある。
なので、体力にはちょっと自信がない、という方は百尋ノ滝までのピストンで沢沿いの景色を楽しむというのもアリだと思う。山の景色の魅力を知るという点では、山歩き初級者さんにもお勧めできる。
しかしながら滑落にだけは十分注意を。傾斜が無いと言っても、危険が無いというわけではない。
百尋ノ滝から先は、登山らしい道となる。
写真の数がぐっと減ることからしても、道の変化がわかっていただけるのではないかと。
若干道がわかりにくいとは聞いていたので、よくよく道を確かめながら進んだ。いつもなら2、3度間違っているところである。
このあたりで脳内麻薬が分泌されて、ハイテンションになってくれると楽だったのだが、緩い道を2時間ほどかけて歩いてきたせいか、どうも脳内麻薬の出が悪い。
どうやらある程度急勾配の箇所をいきなり登るほうが無敵状態には入りやすいらしい。
少々バテ気味になりながら登って行く。途中、沢沿いの紅葉の景色が素晴らしい。
横ヶ谷を這い登っている辺りで、山岳救助隊の真っ赤なヘリコプターがさかんに上空を飛びまわっていた。
何かあったのか……。
駅で配布されていた行方不明者に関することなのか。
それとも別の事故や病人が出たのか。
ヘリコプターは何度か頭上を飛びすぎ、こちらが谷から稜線へ向けて這い上がろうとしている辺りで飛び去って行った。
川苔山山頂に到着したのは、おそらくおっさんパーティがほぼ最終であったろう。
頂上には他に数組の登山者がいた。おっさんパーティはのん気に調理を始めて、遅めの昼食を楽しんだ。
食事を終えた頃、山頂の気温はずいぶんと下がってきたため、用意していたフリースのミドルウェアを装着。防寒対策ばっちり。
そうこうしているうちに全ての登山者は下山していった。しばしおっさんパーティだけで山頂を独り占め。
だが、これからが訓練という名の下のプチ遭難である。浮かれていては本当の遭難になってしまう。
日暮れまでになるべく下っておきたいと、舟井戸方面へ急ぐ。
紅葉が夕日に照らされて煌く様子は幻想的で、思わず足を止めて見入りたくなるが、のんびりしている時間はない。
見る見る辺りは暗くなり、舟井戸分岐付近でヘッドライトを点灯。
大ダワ方面の分岐についてはコース状況の欄でも書いたが、どの道も問題があって安全なルートが今は無い。現在唯一使えるルートは、舟井戸から大ダワへ至る道であるが、悪路であるとの注意書きがあった。2011年11月現在で通行禁止とされていた道らしいので、十分に整備されていないことが予想される。川苔山から本仁田山を経由する山行はしばらくやめておいたほうがよいと思われる。
間もなく完全に日が落ちる。
辺りは真っ暗闇、ヘッドライトが無ければ自分の手も見えない。
予定通りの日没とは言え、やはり怖い気持ちもある。もしも足を滑らせたら……。もしも道を間違えたら……。闇の中に熊や猪が現れたら……。
歩いていると左や右のほうから(バサッ)とか(ガサッ)という音が聞こえる。
ハッとしてヘッドライトの光を向けるが、真っ暗な闇の中、木の幹や枝が浮かび上がるだけである。
どうやら自分のウエアの擦れる音が、大きめに聞こえているらしい。視覚が奪われると、聴覚が鋭くなるということか。
先が見えないのでコース取りにも苦労する。頭を上げて遠くを照らすと足元が疎かになる。微かに飛び出しているような木の根や岩角には気づかない。
左側の斜面に光を当てても、闇ばかりで何も見えない。滑落したらどれだけ落ちるのか。下に何があるのか。闇を見つめていると不安感ばかりが大きくなる。
大根ノ山ノ神に至るまで、山腹をほぼ横ばいに進む道が続くが、途中で三箇所、谷を折り返す箇所がある。暗闇の中では同じような道に見えて、
「あれ?ここさっき通ったんじゃね……?」
あり得ない思い違いすら起こす。冷静に見れば、道脇の倒木が無いとか、滑落止めの柵がないから違う場所だとわかるが、パニックになっていたらどんな判断間違いをおかすかわからない。
かみさんは意外に心得たもので、音楽プレイヤーをスピーカーにして大音量でかけていた。獣避けにも良いし、不安感の払拭にも役立つ。一人じゃないというのは心強いものだ。
“山と高原地図”のコースタイムによれば、舟井戸分岐から大根ノ山ノ神までは1時間半である。
この道を約1時間50分かけて下った。その先の鳩ノ巣駅までは、参考タイム30分のところ1時間かかっている。おそらく夜間でなければここまでかかりはしなかっただろう。
遠く木々の合間に鳩ノ巣の灯りが見えてきたときの安心感。
いやあ、灯りっていいもんですね。
そういうわけで無事に下山してくることが出来たものの、訓練とは言え夜間の山歩きの危うさはよくよく身にしみた。
余程整備された山道じゃない限りは夜間行動は慎むべきだろう。
鳩ノ巣駅には19時ちょうどに到着したが、下りの青梅線がちょうど出発するところだった。
この時間になると電車は30分に1本しかなく、19時半の電車で帰路についた。
なお、日暮れ後の下山により、遭難したんじゃないかと心配した娘に叱られるというおまけがついた。
今後はこのような計画は立てまい。
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