芦別岳夫婦岩 北西壁ダイレクト 冬期登攀
- GPS
- 56:00
- 距離
- 13.6km
- 登り
- 1,300m
- 下り
- 1,299m
天候 | 18 曇、風強し 19 曇、風あり 20 快晴、無風 |
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過去天気図(気象庁) | 2021年03月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
いつぞやのカムイ岩でナベさんに「芦別夫婦岩の北西壁ダイレクト興味ない?」と言われたのが始まりだった。これまでいわゆる無雪期の「本チャン」の岩には大して通わず、夏季は赤岩やフリーのゲレンデでトレーニングしては日高の沢に通うという日々を送っていた僕にとって、芦別夫婦岩の北西壁ダイレクトは、数少ない無雪期に登っているルートの一つであった。そして、その無雪期に登ったときのイメージは、クレッターに素手でもそれなりにムズい、というものであった。ナベさんの誘いに対して、僕はいつものように軽い調子で「いいっすね、行きましょう」と答えた。勿論登れるかどうかなんて僕は特に考えていなかった。でも、何とかなるという確信は不思議とあった。
それから僕は僕、ナベさんはナベさんで各々、時には一緒にアルパイン、ミックス問わず色んなルートに通ってお互いに「仕上げ」ていよいよ予定の日となった。
1日目はアプローチ、2日目に北西壁ダイレクト登攀、3日目にはウォーターロードにできるという氷柱を登って下山しようという計画で出発。
18日 ガス、風強し
十八線川を行き夫婦岩基部までのアプローチの日。3日分の食料とガス、それにスクリュー含む登攀装備を詰め込んだ重いザックを背負って出発。雪はべとつく雪でスキーが一瞬で団子になり足が重たい。2人とも久々の重荷に喘ぎながら夫婦岩付近の吹き溜まりテンバに到着。荷物置いて壁を見に行くが、壁には氷雪がへばりついていて気温低めで風も強く、想像以上の冬コンディションに不安な気持ちになる。ナベさんも結構弱気になっている。なお、ウォーターロードには氷柱の「ひ」の字もなく、完全にドライな壁となっていた。氷ができるのはもっと後の時期か?
19日 晴れ時々ガス、風あり
とりあえず北西壁ダイレクト基部へ向かう。天気が昨日よりマシだからか、幾分かマイルドに見える。とりあえず1p目は僕が行かせてもらう。無雪期には5級だが、昨日見たときに、なんだか行ける気がしたのである。
1p目 25m 成田 最初は右のスラブを慎重に登り、中段のクラックは出だしはかぶっており足が難しい。クラック内はアックス使えないので、手袋ジャミングと側壁フッキングで越える。アックスぶっさせると踏んでいた草付きはへぼすぎて気休めだった。軽く絶望。何とかクラック内のよくわからんところにフッキングしてがんばる。その上は手袋ジャミングと足は側壁スタンスを拾いながら、左のカンテをのっこし上部スラブへ。スラブは微妙なバランスで、アックスのフッキング:グローブでのガバorカチ掴み=5:5ぐらいのノリで行く。一箇所カムイのキナコロのように、アンダーガバの逆手引っ掛けからの遠いガバを取りに行くムーブがあり、それっぽい感じで楽しい。全体的に微妙なフッキングで越えなければならない上に、プロテクションは残置主体となるので中々。時間かかったが何とかフリーで突破できた。
2p目 20m ナベさん 2段のクラックを直上。草付きは上に行くほどマシになっていく。
3p目 20m ナベさん この頃には2人とも調子が出ていて、このピッチを下から見て、「これ行けるやつだな」と確信を持っていた。出だしの小ハング〜クラック直上は見た目より悪く(足がない)、結構ごり押しで突破。その次に待ち構えているのが、今回の懸案事項の4級A1のピッチである。夏季は濡れているから氷張っていないかと期待してたがそんなことは無かった。ただ、クラック内に氷は詰まっていて所によっては使える。ナベさんは手は凹角の真ん中のクラックに刺し、足はオープンブックの側壁に張ることによって安定して登っていく。が、あともう一手で核心を越えるというところでマントルの草付きがもげてフォール。惜しい!一旦セルフとって、その後はフリーで安定して突破。しばらく登ってスラブ状の残置にハーケン打ち足してビレー。
4p目 30m 成田 スラブのバンド状を15m程行って、あとは草付き登りで最終ピッチ下まで。
5p目 50m 成田 「このピッチは君の得意系でしょう」といわれていたし、実際、見てみて、勝てる気しかしなかったので僕が行く。ボロい壁の凹角やらバンド状やら一部立った壁やらを適当に弱点突いて登っていく。プロテクションもいい感じに取れる。最後は潅木にスリング巻いておわり。
終了点到着時に15時で、ピークに行けないことも無いがそうすると結構ギリなのでこの日は降りることにする。
同ルート懸垂4psで基部まで。
20日 快晴
第二目標のウォーターロードにはマジで何も無いので、この日は中央ルンゼから夫婦北峰のピークを踏むことにする。意外と露岩多く、2psザイル出してピーク。絶好調のピーク。全てが見える。あとは適当に滑ったりずぼったりしながらあっというまに道路まで。
やはり、山の中でクライミングするのは素晴らしいことだ。カムイや赤岩や千代死別や雷電のクライミングもいいが、やっぱり僕は根っこは山屋なので、それらで培った能力を山で生かして行きたいといつも思っていた。この間の斜里北壁もそうだが、今回の夫婦岩も普段の「トレーニング」を、実際の山で生かしてクライミングするのが、たまらなく楽しい。こういう能力を更にデカい山で試して行きたい、いや、試さなければならない。
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