遥かなる遥かなる山 ペテガリ岳
- GPS
- 27:21
- 距離
- 29.9km
- 登り
- 2,743m
- 下り
- 2,746m
コースタイム
13:35 神威山荘分岐駐車場
14:49 峠
16:27 ペテガリ山荘
2日目
04:11 ペテガリ山荘
05:37 1050P
07:01 鞍部
07:54 展望台
08:17 最終コル
09:40 ペテガリ岳山頂10:11
10:55 最終コル
11:15 展望台
12:02 鞍部
13:05 1050P
14:02 ペテガリ山荘14:45
16:44 峠
17:56 神居山荘分岐駐車場
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険箇所は無い。 沢沿いの道もリボンがしっかり付けられてあった。ただし、滑りやすい所が何箇所かあるので注意。 笹薮が濃いところは道が見えないので注意が必要。 ペテガリ山荘は薪、水共に十分にある。トイレ、炊事場共に明るくはないが電気が点くようになっていた。協力金1泊500円。 山頂直下であっても道が薄っすらと跡だけになってきています。10年以上前の写真ではしっかり見えていたのに。特別日高の山が好きで、覚悟のある方以外で、200名山だから登ろうと思われる方は早めに行った方が良いでしょう。 それとこの山では、確実なペース配分が鍵になります。特に2日間で登る方は、しっかりとペース配分を考えないと辛いでしょう。 |
写真
感想
6月末この一週間はずっと晴れが続いた。日高の山もずっと晴れている。こんなことは珍しいということはペテガリに行く絶好の機会だ。後はこの週末の天気だ。天気予報よりも天気図重視。なんとかなりそうだ。
チャンス到来、6月30日、朝起きて荷物を詰める。自宅を出発まずは大樹を目指す、途中歴船川から日高の山並みが綺麗だった。ここから野塚峠を越えて、浦河の町に入った。ここは牧場が一面だ。春に生まれた子供が母馬に寄り添うように歩いてる。穏やかな景色に心も和む。街中で食糧を買い込み、食事をしてまずは神居山荘を目指して走っていく。ここにも牧場が広がり、奥にペテガリが見えた。やがて道はダートになり山深く入っていく。途中崩れた部分を何とか土砂を退けただけのところもあるが。無事に神居山荘に着いた。ただここで山荘を見ただけで、少し引き返してペテガリ方面に向かう。車が2台停めてあった。まあ誰かが居るだけでもありがたい。
車を降り身支度後出発だ。最初の渡渉、問題ない。さすがに好天続きの後だけあって、水かさも殆どない。ただ、暑さは間違いなく今年一番だろう。水は十分持っているが、二日分の荷物と共に肩に食い込んでくる。道の心配をしていたが、沢沿いにきちんとピンクのテープなどがあって間違えそうなところは無かった。
ただ渡渉の回数はかなりの数になる、峠までに間違いなく30回はある。川の中を歩くようなところもあって、なんとも言えないが、40分で滝が見えてきた。右岸にトラロープが付けられていて問題なくクリア。沢は徐々に細くなり、左手に間違わないように張られたテープをみて、右の沢に入る。両側がチシマザサに覆われた斜面の上には稜線が見え始めている。峠も近いらしい。直ぐに沢を離れチシマザサに覆われた急斜面を登る。足場が砂場のような感じで滑りやすい。降りるときに注意しなくては。この坂を上り詰めると尾根に出る。ここにはピンクテープが一杯付けられていて迷うことなく尾根を越えていける。右に折れて、15mほどで左に折れ、今度は急坂を降りて行く。
ここも砂場の足場で滑りやすいが、トラロープが付けられているので問題は無い。直ぐに沢に出ると滑りやすい岩の上を歩くような感じで降りていく。日帰りなら気にしないが、2日分の荷物があるので慎重に足を進めた。峠から20分ぐらいで沢から離れてチシマザサの中に入っていく、ここは道が見えづらい唯一の場所かもしれない。ササの中を抜けるとすぐに植林跡地に出る。
ここからはのんびりと歩いていける。峠は無事に越えたのだ。十分に見通しが効くので熊に注意しながら歩いていく。やがて林道跡を通って広い植林地にでた。木で作られた案内板が一杯あるので迷うことは無い、やがて水が枯れた川に出た。ここを渡ると目の前には真新しい林道が。
一体何のための林道なんだ。誰も通らせないのなら作る必要が無いだろう。まったくの無駄、公共事業のわからない世界だ。一体どれだけの多くのお金がこんなことに使われたのか?そろそろ考え直す時期じゃないのか?いつまでも高度経済成長時代の価値観で考えるのは辞めにしようよ。まったく。
で、ここからは真新しい林道をひたすら歩いてペテガリ山荘を目指す。それにしても今日は暑い。荷物も肩に食い込み辛い時間だ。やがてペテガリ橋を渡り、右手に山荘が見えてきた。歩き始めて3時間弱で山荘に着いた。山荘には一人の方がいた。その人は、今日本当は峠を越えて帰るはずだったのだが、道に迷い戻ってきたという。大丈夫なのかと思ったが、まあおかげで一人では無く良かったという事としよう。
この方が言うには、昨日ペテガリに登って途中でビバークしたらしい。色々情報を聞かせていただき、ストーブに火を入れてのんびりする。夕方もう一人の方がやってきた。下山してきたらしい。今日は3人で過ごすこととなった。夕食後、一息入れて奥の部屋からマットと掛け布団を取り出し、一階の板の間で寝ることにした。持ってきたシュラフは使わなかった。
7月1日 晴れ
朝3時半起床、食事を取って荷物を日帰りザックにまとめ、残りは置いていく。出発は4時11分、登山口に届けを出して歩き始めた。最初に沢沿いの道を歩いてゆく、砂防ダムを過ぎ、渡渉を数度繰り返すと、右に曲がっていよいよ上り坂の始まりだ。十分にササが駆り払われた道、ジグザグを切りながら登っていく。徐々に高度を増しながら、坂道が急になってくる。前には中岳がとがった頂を見せ始める。ペテガリの山頂から朝日が顔を覗かせ、気分は盛り上がってくるが、この先を考えると不安がある。尾根沿いを進み行くと標高1000mと書かれた標識に出た。その先少しで広場のような場所に出たので、一息を入れる。水分を取り時計を見る、ちょうど1時間半が経過していた。木々の間に1839峰が顔を見せ始めた。一度鞍部に下り、結構な急登を歩んでいく。
後ろを振り返ると遠く浦河の海が見えた。海を見るとホッとした。この山域にたった一人の自分を考えると、全然安心出来ないのだけど。海を見て何故か心は安らいだ。まあのんびり行こう。一歩一歩歩いていく。やがてピークを過ぎると、小さなピークが繰り返される。徐々にチシマザサの密度が増し、覆いかぶさるようになってくる。道ははっきりしているので問題は無いが、心細さが残るのだ。あるピークにまで来ると、突然ササが払われて歩きやすくなった。しかし下りの斜面が続く、今までの登った分を捨てるように下っていくのだ。下りきった鞍部で一息入れた。帰りの水のことを考えながら、2口飲んだ。太陽が昇るにつれ気温が上がり始めている。
今日も暑くなりそうだ。中ノ岳と変わらない標高になってきた。しかし前に広がる尾根の先に見えるペテガリは遠い。でもこんな時は、この道をみんなが遠いなと思いながら歩いてきたんだと思って、気を取り直すことにしている。
ようやく展望台に出た。ここでも一息入れる。太陽は容赦なく、この雄大な景色の中にひとりの人間だけを、炙り出すように照らしている。ピークはあと少し、だが最後の急登が残っている。中ノ岳がより近くになり、峰が近づいてきた。さあ下りが待っている、鞍部に向けて一度ピークを過ごして降りていく。プロトレックが標高1175mを指している。
最後の登りが始まるのだ。溝になった掘れた道を進みいくとやがてチシマザサに覆われた道を登っていく。多分ペテガリに登るためで無かったら、決して登らないだろうななんて思いながら、歩を進めていくのだ。やがて道は左に折れ、少しのトラバースの後、再び急登になる。ササの間にハイマツが混ざるようになり、ダケカンバの中に。ここで熊の糞があった。これは昨日登った人から教えられていたから、解っていた。その少し上の日陰の所で一息入れた。プロトレックは1450mを指している。
ここで10分休憩して山頂へ最後の登りだ。ダケカンバを抜けると中ノ岳の向こうに神威岳が見え始めた。ハイマツの中から偽ピークが見える。下から見た稜線の形から、偽ピークが幾つかあると解っているので、まだまだと言い聞かせながら進むが、とりあえずあそこまでという目標にはなる。最後の偽ピークを過ぎた向こうに、ネットで見慣れたペテガリの山頂標識がわずかに霞んで見える。とうとうここまでやって来たんだ。一歩一歩の足取りに力が入る。9時40分、山荘を出てから5時間30分ジャストで山頂に着いた。
鞍部から1時間20分かかっている。まあ順調に来たと言えるだろう。山頂からの景色は、最高の天気と共に360度さえぎるものの無い素晴らしいものだった。ルベツネ、ヤオロマップ、1839峰、奥にはカムエク、東に伸びる長大な東尾根、中ノ岳へと続く尾根、歩いてきた西尾根とどの尾根も素晴らしい景色に違いない。北側東斜面の3つのカール、西側のカール。こんな山の中にたった一人、この山域に足を踏み入れているのは俺だけなのか。不思議と登った感動はなかった。それよりも帰路の長大な尾根歩きを考えてしまうからだろう。
最後のおにぎりを頬張り、水を飲んだ。帰りのために1.2lの水を残しておく。30分後山頂にお別れの時が来た。きっともう来ることが無い景色にさよならを告げ、歩き始めた。偽ピークのところから最後のお別れをして、さあ思い残すことは無い、この先をしっかりと歩むことにしよう。ダケカンバの中を抜け、やがてチシマザサの中に入っていく。よくもまあこんな中を登ってきたなと思うくらいの藪こぎに、自分でも呆れてくる。やっぱりペテガリに登るという目的が無い限り、避けたい道だな。やがて掘れた道になり鞍部が近いことを教えてくれる。45分で鞍部に到着、これから登り返しが始まる。
あえぎながら登っていくと、右側の沢に見事な滝がいくつも落ちている。ここを登る人が居るのか?半分呆れながらその景色を見ていた。展望台を過ぎた木陰で休憩。太陽の照りつける暑さがこたえる。水を思い切り飲むこともできず。息を整え出発だ。が、ズボンにマダニが付いている、払ってから気をつけないと言い聞かせた。ここからは長大な西尾根のアップダウンだ。もう一つの鞍部に着いて、ここでも休憩。目の前のピークまでの登り返しを確認しながら、ゆっくりゆっくり登っていく。ピークに出たらササの中を掻き分けながら降りていく、最後の藪漕ぎだ。この先は駆り払われているからと、行きの記憶を思い出しながら、ゆっくり下っていく。小さなピークをいくつも越えやがて目の前に1050峰が見えてきた。
もう少しだ。急坂を降りて鞍部に来ると、プロトレックは990mを指していた。広場に出て再び休憩。もうここまで来れば水の心配も要らなくなる。200ccを残して最後の下りに入っていった。さすがにこの頃は余裕が出てきた。ジグザグをきり沢の音が近くなると、もう少しで山荘だ。砂防ダムに広い道、山荘が見えたときにはさすがにホッとした。登り口の登山届けに記入をした時、時刻は14時02分。9時間50分に渡ったペテガリ登山が終わったのだ。安堵感が広がる中山荘に入って服を脱いだ。
で、ストーブの水を心行くまで飲んだのだ。だが右脚太ももにマダニがかじりついてる。じぇじぇ、やばっと言いながら、あーやっぱりねとしか言いようが無い。デポした荷物をザックに詰め、14時45分に山荘を出発。今日もまだまだ暑い。永遠と続く林道を歩き、分岐を過ぎ峠の方に入っていく。昨日歩いたところだけに間違いようが無いが、一度枯れた川の所で5分休憩した。植林跡地を抜け、笹薮の中に入って、沢沿いに出たところからは足を滑らさないように、慎重に登っていく。ゆっくりゆっくり登っていくと、道は沢を離れトラロープが見えてきた。峠は近い。
尾根に出て、右に曲がって左に曲がり、急坂を降りていく。一歩一歩確実に進んで行こう。沢の中、渡渉を繰り返しながらやがて滝にでた。ここでもトラロープをしっかり使わせてもらい。慎重に降りていく。疲れた足に不安定な足元は堪えるが、もう少しもう少しと言い聞かせながら、沢を降りていく。やがて沢は広くなってきた。渡渉する距離も長くなる。横に崩壊した斜面が見えた。もう問題ない。あとは車までゆっくり進めばいいのだ。最後の渡渉を終え、道を登っていく、そうこれが最後の登り、これさえ登り切れば車が待っている。この長かったペテガリが終わるのだ。今日も無事帰ってこられたことを感謝しながら、登っていくと見慣れた愛車のヒップが迎えてくれた。
17時56分、13時間45分に及ぶ長い、長いペテガリは幕を閉じた。安堵感が広がる中、帰り支度を始めるのであった。最高の天気に、日高の山並みに感謝!今日も山に一礼して車を走らせていく。心はもう来週の京都に向かっていた。(*^^)v
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