燕岳 〜雨天登山決行の結末とは〜



- GPS
- 12:09
- 距離
- 10.5km
- 登り
- 1,435m
- 下り
- 1,433m
コースタイム
11:23 中房温泉登山口 発
12:06 第一ベンチ
12:49 第二ベンチ
13:41 第三ベンチ
14:38 富士見ベンチ
15:22 合戦小屋 着 小休止
15:50 合戦小屋 発
16:12 合戦沢ノ頭
17:05 燕山荘 着
9月9日(月)
07:24 燕山荘 発
08:00 燕岳山頂 着
08:24 燕岳山頂 発
08:58 燕山荘 着
(下山準備)
09:32 燕山荘 発
10:13 合戦沢ノ頭
10:41 合戦小屋
11:13 富士見ベンチ
11:58 第三ベンチ
12:35 第二ベンチ
13:12 第一ベンチ
14:02 中房温泉登山口
天候 | 9月8日 15時くらいまで雨 その後 曇り 9月9日 10時くらいまで快晴 その後 ガスが登ってきた 登山口は晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
≪登山道の状況≫ ・燕山荘スタッフの方々の尽力により整備が行き届いた登山道になっています。 ・整備は十分ですが、北アルプス三大急登は伊達ではなくかなり体力が必要な道です。 ・危険個所は特にありません。スリップ防止のための鎖場が一か所ありますが使わなくても特に危険ではありません。 ≪トイレ≫ ・中房温泉登山口、合戦小屋、燕山荘に有り。 ≪登山ポスト≫ ・中房温泉登山口に有り。 ≪温泉≫ ・中房温泉の有明荘を利用。燕山荘宿泊者は100円引き。 http://www.enzanso.co.jp/ariake/ ≪危険動物情報≫ ・ヤマビル:遭遇せず ・ヘビ:遭遇せず ・クマ:遭遇せず。しかしかなり棲息しているとのことなので単独行は熊鈴必携。 |
写真
感想
北アルプスの女王、燕岳。
ガイドブックを見て一目ぼれし、いつか登りたいと思っていた山でしたが、このたび念願叶って登ることができました。
しかも今回は初の登山隊リーダー!
全員で登頂して山頂からの絶景やご来光、満点の星を楽しむぞと意気込んで出かけましたが……
結果的には充実の登山となりましたが、リーダーとして私の判断は正しかったのか反省点の多い山行となりました。
今回の山行の顛末を書いてみたいと思います…。
9月に入り秋雨前線が日本列島を行ったり来たりする日が続き、週間天気予報では8日は雨、9日は晴れ。
一週間天候の好転を期待しましたが、週間天気予報はバッチリ当たってしまいました。
とはいえ、前日に確認すると小雨の予報。とりあえず行ってみようということになり、8日早朝に岐阜を出発。
途中、駒ヶ根くらいまでは時折青空がのぞく曇り空で、これなら全然問題なしとぬか喜びもつかの間、松本に近づくと雨が降りはじめ安曇野インターを降りるときには土砂降りの雨となったのでした。
途中で再度予報を確認。雨は弱くなり、午後にはあがるとの予報だったのでとりあえず登山口まで行って判断することに。
中房温泉に10時過ぎに到着。
雨は若干小降りになったようで、登山を強行するか別プラン(新穂高温泉に泊まり翌日西穂独標に登る)に切り替えるか相談。
予報で天気は回復傾向だし、下山者に確認したところ登山道が滝のようになっているところは無く、危険個所もないとのことだったので、リーダーの私は登山決行を決断したのでした。
今日のメンバーは…
リーダーの私:登山歴約1年、標高差1000m超の登山は5回経験。体力には自信あり。
相棒のK氏:40代男性。登山歴約1年。標高差1000mの登山は今回が初。体力は十分。
K氏の奥様:40代女性。登山歴約1年。御主人ともども標高差のあるコースを歩くのは初めて。普段ウォーキングで鍛えておられるものの体力は少し不安。
Sさん:60代男性。若い頃は富士山で山小屋バイトをされた経歴の持ち主で、登山歴は長い。ただし標高差のあるコースを歩くのは久方ぶり。前回ご一緒した時は先頭でガンガン登っておられたので体力的には問題なしと思われる。
全員に共通:初の燕岳、初の雨天登山。
今思うと、このメンバーで燕岳に挑戦するのは少々無謀だったようにも思われます。
全員レインウエアを着用し、準備を整えて11時23分、燕山荘へ向けて出発。
燕岳への道はいきなり樹林帯の急登から始まります。
登山道の行く手にはトウヒやエゾマツでしょうか、低山の森とは趣が異なる、豊かな森が広がります。
樹林帯だし、季節も秋ということで花は少なめ。時折、ミヤマアキノキリンソウがを見る程度でした。
雨に煙る森も乙なものと楽しんでいられたのも序盤まで。
第一ベンチに到着するころには全員ずぶ濡れで、容赦なく体力が奪われていく感じでした。
第二ベンチまでは壁のように立ちはだかる斜面をジグザグに登る険しい道のり。
このあたりからSさんのペースが落ち、K氏奥様も苦しそう。
二人の状態をみながら、時折休憩を入れながら少しずつ登りました。
ガイドブックやネット上では道の整備が行き届いているので、急登の割には登りやすいというコメントが多い合戦尾根の道。
しかし実際に登ってみると、さすが北アルプス三大急登は伊達ではなく、かなりハードな道のりだと感じました。
休み休み登って第三ベンチに到着。スローペース故に予定タイムよりかなり遅れが出始め、頑張って歩いた割に距離も案外稼げておらず、内心少し焦りました。
しかし、他のメンバーの気持ちが折れないように、「もうかなり登ってきましたよー」など努めて前向きな言葉をかけつつ、なおも前進しました。
雨に煙る森は幻想的な美しさで、写真に収めたくなりますが、フル充電してきたはずの電池がカメラに入れたとたんにどれも電池切れに…。
おそらく充電器の不調と思われますが、燕山荘で電池を購入するまでほとんど写真が撮影できない事態になったのが残念です。
登り始めて3時間以上かけて、やっと富士見ベンチ。
晴れていれば富士山を望める富士見ベンチからも眺望は無し。
相変わらず急登りの連続でこの日一番辛い時間帯でした。
富士見ベンチからさらに急登をこなしていくと、雨が少しおさまってきて時折青空や太陽が垣間見れるようになり、予報通りの天気になってきて少しほっとします。
空が近づいてきて傾斜が緩やかになってくると合戦小屋まであと10分の標識が。
やっと雨に濡れずに休憩できるとあって、メンバーの足取りも少し軽くなったのでした。
登り始めて4時間弱、やっとの思いで休憩ポイントの合戦小屋に到着。
全員レインウエアの中までずぶ濡れで、じっとしていると寒いくらい。
たまらず売店でカップラーメンを購入し、遅めの昼食をとりました。
合戦小屋名物のスイカも、その優しい甘さが疲れた体にはうれしいものでした。
十分に休んで15時50分に燕山荘へ向けて出発。
降り続いた雨も上がり、森林限界を超えてハイマツの中をゆく気持ちいい道になったこともあって、メンバーの足取りも少し軽くなりました。
合戦沢ノ頭の三角点に来ると展望が開けて、東は見渡す限りの雲海。そしてこれから進む先には本日のゴールの燕山荘が山の上に鎮座しています。
ゴールが見えてくると、いやが上にもテンションは急上昇。
SさんもK氏奥様も最後の力を振り絞って、夕暮れ迫る17時過ぎに、なんとか全員無事燕山荘にたどり着いたのでした。
燕山荘まで上がると、目の前に北アルプス大パノラマが広がります。
北にはハイマツの緑と花崗岩の白が美しい燕岳がその優雅な姿を現し、西には穂高岳から剣岳まで続く裏銀座の山々。そして天を衝く槍ヶ岳。
槍ヶ岳をこんなに間近に見るのは初めての体験で、その威容に言葉を失いました。
私の稚拙な文章で稜線に出た時の感動を著すのは不可能ですが、北アルプスの絶景の中に自分が飛び込んできたような、圧巻としか言いようがない大展望でした。
苦しい登りを耐えた者だけが見ることができる壮大なパノラマ。
辛い登りの疲れが一瞬で吹き飛びました。
燕山荘にチェックインし、上から下までびしょ濡れとなった服を着替え、荷物を整理してから、夕食までは各員は思い思いの時間を過ごしました。
K氏夫妻はお洒落なサンルームでコーヒーブレイク楽しんでおられた様子。
私は再び外へ出て、暮れなずむ北アルプスを写真に収めていきます。
空の色は刻一刻と変わり、夕日が山に沈むころには空は極彩色に彩られました。
はたしてこんなに美しい夕暮れを今まで見たことがあったでしょうか。
夕日が沈んでしまうとちょうど夕食タイム。
燕山荘の夕食はチーズインハンバーグをはじめとする充実の内容。
相席になった方との山談義も楽しいものでした。
夕食後は燕山荘名物の赤沼オーナーの山の話とアルペンホルンの演奏。
燕岳の四季から高山植物の話、山の動物たちとの共生などの話に引き込まれてあっという間に時間は過ぎていきました。
燕山荘は21時に消灯。明日の行程に備えて床に就く時間ですが、天文ファンにはここからがお楽しみタイム。
外に出てみると、薄曇りのせいか今一つクリアではないものの、頭上には満点の星が広がっていました。
薄雲のようにぼんやりと輝く天の川が音も無く夜空に広がり、燕岳上空には北斗七星が輝いています。時折、夜空を駆ける流れ星も下界よりもはっきりみることができました。
星ってこんなにあったんだ、と実感する山上の夜。
寒さのため、一人また一人と燕山荘に引き上げていく中、最後の一人になるまで星空を眺めていました。
翌朝、朝5時。
日の出を見ようと外に出てみると、上空は快晴。東には雲海が広がり、雲海と空の境はすでに鮮やかに彩られていました。
素晴らしい天気です。最高の日の出が見れそうで期待に胸が高鳴ります。
燕山荘の展望台に登って、赤く焼けていく空を眺めること15分、浅間山の北側から真っ赤な太陽が昇ってきました。
雲海を赤く染め上げる太陽は言葉にならない美しさ。
反対側に目をやると北アルプスの山々が赤く彩られてゆく様をみることができました。
槍ヶ岳、穂高岳のモルゲンレート。
今まで写真でしか見たことが無かった風景の中に、今、自分はいる。
感動と畏怖の念にうたれる素晴らしい朝でした。
十分に日の出を楽しむとすぐに朝ごはんの時間。
暖かいご飯とみそ汁が冷えた体になによりうれしいものでした。
朝食後、喫茶室にて燕山荘名物いちごミルクを頂きました。
朝日の差し込むサンルーム。外は一面の雲海。彼方には富士山や南アルプスが頭を雲の上から出しています。
最高に贅沢なお茶の時間となりました。
出発準備を整えて、7時24分、燕岳山頂へ向けて出発。
行く手には朝日を浴びて輝く燕岳。そして左手には槍ヶ岳から連なる裏銀座の山々。
雄大な景色を眺めながらの稜線歩きは至福のひと時。
イルカ岩やメガネ岩など自然が作ったオブジェを見ながら、花崗岩の真っ白な道を進むこと30分、8時ちょうどに燕岳山頂に到達しました。
山頂からは北アルプスを一望する360度遮るもののない大パノラマ。
西には前穂高から奥穂高、南岳、中岳、大喰岳、そして槍ヶ岳。
さらには双六、野口五郎、鷲羽などの裏銀座の山。そしてはるかに立山と剣岳。
北には白馬岳、鹿島槍岳。北燕岳から餓鬼岳への稜線。
西は浅間山、はるか彼方に富士山。そして南アルプス。
南には燕山荘、バックには大天井岳、常念岳。
上空は紺碧の空。
私もさることながら、他のメンバーも感動して嬉しそうな表情。
一人で来ても感動したでしょうが、仲間と来ると感度を分かち合えるのがなによりうれしいことだと思います。
大展望を存分に楽しみ、記念撮影をしてから、後ろ髪をひかれる思いで燕山荘へ向けて戻ります。
途中砂礫の斜面には咲き残りのコマクサが残っていてくれました。
稜線にはトウヤクリンドウが咲き、秋の訪れを告げています。
燕山荘に戻り、下山準備を整えるころには谷からガスが登ってきて燕岳や槍ヶ岳を覆っていきました。
北アルプス一望の大パノラマを楽しめる時間は長くなかったようで、その貴重な時間を楽しめたのは本当に幸せでした。
名残り惜しいですが、9時32分に下山開始。
カメラも復活したので、高山植物の写真を撮りながらゆっくりと下りました。
燕山荘直下のお花畑はアザミやトリカブトなど秋の花が主役。ウメバチソウは初めて見ることができました。
そのほかにもミヤマアキノキリンソウ、ハクサンフウロ、ミヤマコウゾリナなどの花も森林限界より上ではまだしばし楽しむことができそうです。
そして季節は秋、ウラジロナナカマドやサンカヨウ、アカモノ、シラタマノキは果実を付けています。
合戦小屋手前で可愛いコバノイチヤクソウが一輪、岩陰にひっそりと咲いていました。
ダケカンバやナナカマドは少し色づいた葉が見られ、これから稜線には足早に秋が訪れようとしていました。
合戦小屋からは樹林帯に戻り、豊かな森の中の急こう配の道が登山口まで続きます。
花はほとんど見られなくなりますが、美しい苔や木漏れ日の差し込む森を見ながらの山歩きもまた楽しいものでした。
しかし、登りできつかった道は、下りでも脚や膝に負担を強いました。
特にK氏奥様は途中で膝が笑ってしまい、脚に力が入らない状態に。
それでも各ベンチで適宜休憩を取り、4時間かけてなんとか無事登山口まで戻ることができました。
今回の山行は結果的に見れば、山頂からの大パノラマや満点の星、雲海ごしの日の出やモルゲンレートを味わう充実の山旅となりました。
K氏の奥様にとっても非常に思い出深い山行となったようで、また来年、燕岳に登りたいとのこと。
しかしながら、初日の雨天や急登箇所の続くロングコースといことを考えると、今回のメンバーにとってはレベルを超えた山だったと思います。
なんとか全員最後まで歩ききったのでよかったものの、途中で行動不能に陥るメンバーが出てもおかしくない状況でした。
後日K氏と話したところ、あの大パノラマを見せられては文句は言えないけれども、出発前は今日は登山はやめるべきだと思っていた、奥様も私が登りたいと思っている気持ちを汲んで登ることを了承した、とのことでした。
全員の安全を確保することよりも、自分が登りたいという気持ちを優先させて決断してしまったわけで、私の判断は非常にまずかったと言わざるを得ません。
今回のことを教訓にして、次にリーダーを務める時には、自分の登りたいという感情よりも、一番体力が無い人が無事に往復できるかを最優先に決断を下せるようにしなければと思います。
長文・駄文にお付き合い下さり、ありがとうございました。
燕いっちゃいましたね。
僕も今年は行きたいとおもっていたけど今年は
いけそうにありません。。。トホッホッ。。。
山頂からの景色がすばらしく綺麗じゃないですか。
ほんまいい時にいかれたと思いますよ。
隊長!
私も仲間にいれてくださいね(笑)
しかしいい山だなぁ〜燕岳!!
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