白山・境川大畠谷左俣(大滝)〜左沢
![情報量の目安: S](https://yamareco.org/themes/bootstrap3/img/detail_level_S2.png)
![都道府県](/modules/yamainfo/images/icon_japan_white.png)
- GPS
- 35:24
- 距離
- 25.5km
- 登り
- 4,927m
- 下り
- 4,921m
コースタイム
(22日)二俣6:40-大滝下部6:50-大滝上11:10-右沢出合11:55-稜線16:40-登山口20:00
※各日休憩を含むコースタイム
天候 | (21日)晴れ (22日)晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
林道終点が大笠山への登山口で、ここに駐車する。特別な駐車地はない。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
谷が勢いを見せるのは大谷を過ぎて15分ほど先から。ここから連瀑となり、現れる滝は登攀可能なものが多い。 CS8mは左岸を捲き上がって15m弱の懸垂(残置あり)。 下流部2段30m、上流部2段40mは登攀不可能なので捲くことになる。 大滝登攀ルートは左右に取れそうだ。今回は左岸を登った。また大滝の捲き上がりは人数が多いと時間がかかる。プロテクションも悪い。 大滝上も小滝ながら捲き、ロープ要の直登がある滝が幾つか出てくる。 |
写真
感想
ボス(mt2702氏)に「行きたいところがある」と言われ見せてもらった写真が大畠谷の大岩壁。
ここ数年計画してはいたものの、天候に恵まれずに延期となっていたそうな。
そして今年ついに計画が実行されるとのことでお誘いを受け、二つ返事でついて行くことになったのでした。
(前書き)
沢登りを初めて1年生の私は、大畠谷についての情報はBOSSの写真だけでしたので、「あの岩のどこを登るんだよ…」と岩壁の事ばかり考えていましたが、今回の遡行は岩壁ばかりではなく そこに至までの行程も連続徒渉・大滝の巻き・藪トラバースからの懸垂・微妙なヘツリやボルダーチックな乗り越えと枚挙に暇がないほどのボリューム。
様々な要素で体を揉まれ ヘロヘロになりながらたどり着いた二俣大岩壁の光景は 記録としてみた写真とは異なり記憶として忘れることはないでしょう。
今回は初めて沢中泊を経験。
焚き火を起こし 月明かりに照らされた岩壁を眺め 落ち着いたひとときを過ごしていると、日常の慌ただしさを完全に忘れられ 体に疲れはあるものの心はとても穏やかな気持ちになり 苦労してここまで来たことが凄く嬉しいことに感じた。
夜は岩壁から吹き下ろされる風で少々冷えたが、シュラフカバーがウインドブレーカーの役割を果たしたのか(あるいは3人中真ん中で暖かかったのか)底冷えするほどではなかった。(それでも数回目が覚めた)
翌朝早朝
すっきり晴れ渡った空が赤く染まり、次いで岩壁も赤く染まる。
早起きは苦手だが今日は早く起きて良かった。(ボスは珍しく熟睡で後から起きたが、準備は一番早く 結局私がお待たせさせてしまった。)
早速滝下にたどり着き登攀開始。
ボスがトップで私が二番手 NKCさんがラストで登る。
1ピッチ目の登り
出だしからボロボロ崩れる細かい手がかりのスラブを10数メートル登った頃 「ローカル沢の小滝を登ってりゃよかった」「来なきゃ良かった」と内心激しく思ってますた(笑)
2ピッチ目
幾分傾斜がゆるんだイメージのルンゼ状であったので1ピッチ目とは雲泥の差で気持ちが楽(そもそもセカンドだし)
と言いますか、既に高すぎて地面のイメージが湧かなかったからよかったのか?
3ピッチ目
ルンゼの切れ目から灌木沿いに行ってカンテに出ると思ったら普通に直登(終了点がカンテだったけど)
1ピッチ目よりは悪く感じなかったのは生意気にもクライマーズハイか?
4ピッチ目
カンテを行く。終了点の支点が効いてないらしく(どの場面でもそうだが)多少緊張。
浮き石量が凄いが、まあ何とか。
(次のピッチで滝の落ち口へ行く場合、この位置取りがかなり重要)
5ピッチ目(核心)
滝の落ち口への斜滑降トラバース。
ボスがルート上を掃除(石を払い落す)してくれたのですが、私のルートが微妙に違うようで ちょいと時間をかけてしまった。
安全圏までの最後の1手が最も悪く 最後はホールドにしがみつき靴のフリクションでズルズルしながら落ち口へ到達。
全編を通して こんなところをトップで行けるボスの凄味を味わい尽くした。
落ち口からしばらくは登攀後のご褒美とばかりに水流で削られた白さの目立つ容易なゴルジュ。
これで「キツイ所もおわりかぁ、大笠山からの眺めはどうだろうなぁ」なんて一本立てながらのんきに考えていましたが、その後すぐ甘い考えは吹き飛ばされる。
ヌメル小滝、シャワー小滝、登れないから巻き上げたらスラブで行き止まり、ズルズル泥壁でバイル連打+腕力で無理矢理這い上がる
、腕を上げるのがおっくうになるほどの根曲がり竹のヤブコギ。
悲鳴を上げながら登山道に出たときは既に17時近く
そこから三時間近くかかったアップダウン+急傾斜の下山路
登山口近くのハシゴが見えるまでの時間帯は大滝登攀より短いが 体感的には遙かに長くツライ道のりでした。
右俣を溯行して20年近い年月が経つ。その間、下流部の支流を含め、この境川には幾度となく足を運んできた。しかし唯一残された谷があった。それがこの左俣大滝だった。
圧倒的な岸壁がそびえ立つ二俣の絶景は、写真で見るのとは違って実際は凄まじいほどの威圧感がある。しかし20年前は自分の力量も未熟だったため、また計画のすべてをパートナーに委ねての溯行だったためか、いつしか意識の中ではこの谷そのものを軽んじてしまっていた。
今回20年ぶりに再遡行してみると、この谷の緊々とした渓相に見事に圧倒されてしまった。こんなに厳しい谷だったのか、それが今の正直な印象である。
よく知った下流部をなんなくこなし、大谷を越すと大畠谷の本当の姿が見えてくる。しかし余りに長い年月を経てしまったために、この先の記憶は実に曖昧だった。
満天の星空と、煌々とした、月明かりに照らされて浮かぶ大岸壁を背景に、私たちは盛大な焚き火を囲んで一夜を過ごした。しかし岸壁からは、まるで振り下ろすかのような谷風が常に流れ込み、壮大な景色の中の豪勢な一夜とは裏腹に、この谷底はあまりにも寒かった。
前日から、どこから登り始めるかを考え悩んでいた気持ちも、その真下に立ったときに吹っ切れた。私たちは滝の左岸ラインに進路を見いだし、そして4時間半にわたる登攀を開始した。
ボロボロと崩れる岩壁と、ロープによって振り落とされる落石、そしてピンを打ち込むとごっそりと周りの岩が割れ砕けるという、精神衛生上好ましくない中での登攀は想像以上に神経をすり減らした。中でも5P目においては下り気味のトラバースが予想以上に悪く、落ち口である噴水滝が目前にあるにもかかわらず、なかなか近寄ることができなかった。
しかし然しものの左俣大滝も滝上に出ればその勢いを落とし、谷は一気に温和しさを見せた。とは言え、まだまだ左俣は終わらなかった。大滝登攀達成の充実感、難関を越えたという重圧からの解放感は、詰めに現れた難儀な小滝群で見事に打ち砕かれ、一層の疲労となってパーティーに重くのしかかってきたのだった。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
おばたきたん、ですか…
うーん。すごい。
とただただ驚くばかりでしたが、
ボスの感想を読んで、少し安心というか、、
そんな気分になったのでした。
しかし滝とボスって合いますよね。
滝を攀じるボスはかっこいいなぁ〜〜
日頃自分の写っている画像などほとんど見ない(見られない)のですが、こうして見てみるとなんとも恥ずかしいというか、なんというか。キャー(^0^;)/
M_TERAさんも是非この谷に訪れてみてください。白山境川はなかなかいい谷ばかりですよ〜
ゲレンデマジックならぬ、アルプスマジックみたいな効果も期待してください(笑)
でも冗談でなく、今年渾身の一本ですよね? すばらしいです。
地形図を眺めていて見つけたおそろしく長い毛虫マーク…、調べると有名な沢らしくて。私には一生無理な領域だと思っていたので、驚いちゃいました。そんな「くろうとの沢」と認識する、谷です。
> 調べると有名な沢らしくて。私には一生無理な領域だと思っていたので、驚いちゃいました。
私も20年前はそう思っていました。でも、よいパートナーに恵まれ溯行することができました。要するにこうしたきっかけがあれば、たいがいどうにかなるものです。
目標は常に高くして、手がちょっとだけ届かないような位置に置いてください。そうるすと、ある日「あれっ?」とそこに手が届くようになっていますから
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する