湯の山温泉→ヴィアフェラータ→御在所岳→国見岳→ロープウェイ
- GPS
- 06:19
- 距離
- 10.6km
- 登り
- 1,374m
- 下り
- 570m
コースタイム
- 山行
- 4:32
- 休憩
- 1:45
- 合計
- 6:17
過去天気図(気象庁) | 2022年05月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ソフトシェル
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
日よけ帽子
着替え
靴
ザック
昼ご飯
行動食
ハイドレーション
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
予備電池
ファーストエイドキット
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
ナイフ
ヘルメット
ハーネス
ショックアブゾーバ付きランヤード
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感想
国内で唯一というヴィアフェラータルートを登ってみようと思い立った。
ヴィアフェラータとは岩稜の山に鉄杭やワイヤーを張り、
クライミングスキル・登攀力の無いものでもハーネスに衝撃吸収機能のついた安全帯(ランヤード)・ヘルメット等を携え、そうした鉄杭やワイヤーにかけかえてセルフビレイで安全確保しながら進んでいくルートを指す。ヨーロッパアルプスだとか北米ではそうしたルートが整備されている。
それが国内にあるとは、数年前から知ってはいた。
しかし当時はクライミングばかりで食指がわかなかった。
そもそも遠方である。
昔、下の廊下に行く前に買ったアブゾーバー付きツインランヤードもほこりをかぶっているので良い機会だろうと装備に加えた。直前になって、1年ほど前にルート上の安全索(ワイヤー)が大部分撤去されたことを知る。
ひとりで行くのだからあまり危険も冒せない。
どうやら2つ目の岩を超えるとエスケープルートがあるようなのでどんなものかヴィアフェラータの雰囲気を味わったらエスケープルートに向かって登っていこうと考えた。
取り付きへのアプローチ、中道はロープウェイの乗り場に向かってバス停からまっすぐ進み、左側の小道を進む。そのまま沢沿いの気持ちいい道を歩いて藤内小屋付近で分岐になるという下調べをしていたが、付近まで来てしばらく取り付きがわからず右往左往。兎岩が右手に見えるまで中道を進めばよいだけだったが無駄に登山道ではないところをガサガサ探してしまった。なんとか踏み跡を見つけ出す。
踏み跡をたどると取り付きにはすぐに導かれた。
早速ホチキスの針のようにU字の鉄杭が打ってあるルートを持参したランヤードをかけかえながら登ってみるが、槍やなんやらの鉄はしごを登るのとやってることはまぁ変わらない。こんなものかという感覚で、楽しいかと聞かれると、返答に困る具合であった。
一つ目の岩を乗り越えて踏み跡をたどるとすぐに2つ目の岩。
ここからワイヤーが撤去されているので、一人でロープもなければ確保はできない。
岩を観察してみると、傾斜は幾分か寝ているし、高度感もさほど無い。
斜めにワイドクラックが入っていて縦持ちする形になるがホールドも豊富だし
フットジャムも効くし岩自体のフリクションもよい。
ここは問題ないと予測していたのでそのまま登る。
RCCグレードで体感III級-程度の岩を登ると、すぐに大岩が眼前に現れた。
大岩の間を通り抜けて、トラバースするように進むと、左にはざれた斜面が見え、うっすら踏み跡も見えるのでエスケープするのであればここでなのだろう。
ただ、ここで終わってしまうとなると想定よりもあまりにも短すぎるので、しばし悩んだ。
右側に進んでいくと正規ルートとなる。懸垂用の支点があり、ロープは持参してないので、今回こちらを行くならクライムダウンしてさらに進むことになる。
数分、現在時刻とにらめっこ。クライムダウンした結果、今の自分に登り返せないのであればNGだがそうとも見えなかったので、引き返せなくなるような個所が無いことを確認しながら正規の右ルートに進むことにした。
下りたら樹林帯を巻いていくと2という数字のホールドが打ち込まれた岩に着く。そこをさらに回り込んで進むとまたもや支点だけのワイヤーが撤去された岩。
この岩を少し登ると、初めてワイヤーがついている場所に出た。ワイヤーをつかみながら狭い凹角をよじ登る。
開けた場所に出てここで先行パーティと出会いおしゃべり。
談笑後、再び歩を進める。
再度現れた鉄杭のルートを進むと最後の岩場。
このあたりから高度感も出てくる。
下部はワイヤーがついているが、上部にはワイヤー無し。
難易度は正直、III-程度といった感じでクライミング慣れしている人には難しくない。だが最後の岩はワイヤーが撤去されて支点の間隔も遠いのでロープが無ければフリーソロで登らざるを得ない。高さは既に数百メートルの類なので落ちたら当然助からない。
この最後の岩場を登れない人にとっては、
ここまで来てしまったらすでにルートの最後部なので引き返すのも難しいだろう。
なのでハイキングの延長で入るべきルートではないと明確に言える。
ヴィアフェラータを、専用装備を使って安全を確保しながら、クライミングでしか味わえないような極度の高度感、スリルを味わえるルートという視点から見ると、
元々は、御在所のこのルートも、ワイヤーがあって成立していたというか、整備した人からするといわゆる「ちょうどいい」案配だったのだろう。
個人的な感覚では、大部分のワイヤーが撤去され、無くなってしまった今では、このルートは純粋なクライミングルートとして見ると、やってることはIII級程度の岩場を半分以上A0で登るようなもので易しすぎるし、かといってハイグレードハイキングだとか、プチバリエーションと呼ぶにはあまりにもリスキーすぎる。少なくとも今の状況はクライミングの心得がない人間だけで入るルートではないと感じた。
道中であった人に、メジャーになりすぎた結果、安全のための装備を持たずルートに入り込んで、動けなくなってしまう人が多く出たのでワイヤーは撤去されたと聞いた。そうであればワイヤーが足されることは今後無いだろうし、ゆくゆくはクライマーだけが入るアルパインの練習・入門用ルートになっていくのかもしれない。
最後の岩を抜けて踏み跡をたどると7合目に出た。せっかく御在所に来たのだから、地蔵岩を見たいと思い山頂とは逆方向に進むがけっこうな距離を下ってようやく地蔵岩に出会えた。
再び登り返す途中でぱたりとエネルギーが尽きたのを感じた。暑すぎる。
そして水が残り250ccしかない。事前の天気予報で、御在所岳山頂付近は気温が10度前後しかない予想だったので下にタイツを吐いてきたのが大失敗だった。熱中症手前になっている自覚があったのでペースを落とさざるを得ない。
山頂駅について自動販売機でポカリを補給。そこからたいした距離ではないが本当の山頂までを歩く。歩く。横目でチラと見やると元気な店員さんが「楽に山頂まで行けますよ!」とリフトへの乗り込みを呼びこんでくる。300円か。
いやいや、末席とは言え、かつては山屋と自負していた人間が山頂までリフトで移動とかあり得るか。小型犬ですらはしゃいでのぼる芝生の斜面をのそりのそりとゾンビのように登った。
山頂で記念撮影をして下山する。予定では国見尾根を下降だった。
山頂から国見峠まで20分。国見峠から国見岳まで10分。
売り切れた脚にぼーっとする頭で国見岳まで登る。
鞭うつようにパンパンと太ももを叩いて気合を入れて登り切ったが、
地図で国見尾根を下る2時間のコースタイムを見た時に心が折れた。
ロープウェイで楽々下山。
御在所自体は沢あり、岩ありで整備もされていて地元の人々の素敵な遊び場という感じだ。とても良い山だと感じた。再訪したい。
今度は鎌ヶ岳が良いな。
追記:
こうして記録を書くのも、受け手によってはよくないのかもしれないが客観的にリスクは書いたつもりである。自分は一般的にどんな岩場でもたすき掛けしたスリングにカラビナをかけてもうひとつのスリングで連結しただけでつくったセルフビレイコードで登ることは推奨しない。墜落係数だの細かい話は置いて、衝撃吸収機能のないセルフビレイコードでは墜落時、人体が致命的なダメージを負うので、落ちた状態から自己脱出ができない。運よく即座の致命的な結果は免れても、ぶらさがったままの状態で人体は長くは生きられない。あるいは支点が衝撃に耐えられず壊れる。高所工事現場では常識であると同時に、何名も安全帯の使い方の誤りで命が失われている。備えは安易に考えず、ご安全に。
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