成生岬☆潮騒を聴きながら岬の灯台を目指して小冒険
- GPS
- 06:20
- 距離
- 9.4km
- 登り
- 888m
- 下り
- 876m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
コース全般に登山道なし 成生から半島の南側をトラバースする破線道は完全に廃道 尾根上は下生の少ない快適な樹林が続くが厳しいアップダウンあり |
写真
感想
成生岬とは‥誰かに言われなければ行くことがないまま人生を終えていただろう秘境の山旅、言い出しっぺはもちろんyamanekoさんである。何故か半島岬に行ってみたい衝動にかられるから不思議だ。
前半は展望も海すらも見えない地味な山歩きが続く。後半は急登の連続に喘ぎながら213.3m峰黒地を乗り越え、更にca.180mピークを越えると紺碧の海に囲まれた成生岬が現れる‥。青空と海が織りなす素晴らしい山旅でした。
前日の夕方yamanekoさんより海歩きをしましょうと嬉しいお声掛け。
前回の常神半島の素晴らしい海歩きが蘇ります。
今回も半島の突端を目指して歩くので標高はとても低い。この低い標高が判断を狂わす?
数字だけ見て、侮ってしまう悪い癖。
常神半島で思い知ったハズなのに。
また甘くみていました💦
道なき道はまあいいのですが、アップダウンが激しく、ザレた急斜面の下りが私には厳しいルートでした。
それでも蒼く広々とした海は素晴らしく、爽快です。
流石yamanekoさんプロデュースの山行なのです。
今回も趣向を凝らした素晴らしい山歩きが出来て幸せなのでした(*^_^*)
「なぜ山に登るのか」という問いに対して「そこに山があるから」と答えはエベレストを目指したイギリスの登山家ジョージ・マロリーによる有名な言葉であるが、この山を岬という言葉に置き換えても通用するように思う。高さかあるいは水平方向への突端か、要は到達可能なところまで到達してみたいという根源的な欲求があるのだろう。同時に岬への旅は海が反射する青い光への渇望も少なからぬ動機となっているようにも思われる。そして若狭湾の内海の側から眺めるのとは違って、外海の荒波の海蝕による荒涼とした断崖絶壁や岩礁の光景への期待が見知らぬ突端への憧憬を大きく膨らますことになる。
大浦半島を越えると目に飛び込んできたのは小さな湾の向こうで岬に向かって連なる鋭鋒だった。その光景に思わず息を呑む。景色の良さのせいではない。「あのピークを越えないければいけないんだよね」とhanaさん。ラクダのコブなどという形容は生易しすぎるだろう。まるで鬼の角がいくつも連なっているようだ。naojiroさんに至っては「また山猫さんに嵌められた」と人聞きの悪いことをのたまう。
斜面を降りてゆくと灯台のある小さな漁港が現れる。田井の集落だ。これから辿る半島の景色を写真に収めるべく、まずは港に寄り道して、灯台に続く防波堤の上に乗ってみる。防波堤からは数人の釣り人が糸を垂れていた。
山肌に沿ってウネウネと登ってゆく道路の白いガードレールが見えてはいるが、目指す成生の漁港は全く見えない。海に突き出した小さな尾根の影に隠れているようだ。再びnaojiroさんの車に乗り込んで細く曲がりくねった道を辿り小さな尾根を乗り越えると、突如として目に飛び込んできたのは美しい紺碧の小さな湾とその周囲ひっそりと身を隠すように佇む小さな集落だった。
港に面した駐車場は空きスペースが目立つが、港の手前の坂に数台の車が路駐している。港では数人の男性が集まって話し込んでおられるので、naojiroさんが港の駐車場に車を停めていいかと聞いたところ、「あかん、港の外に邪魔にならんように路駐してくれ」と素気無く云われたようだ。hanaさんが愛想たっぷりの笑顔で聞いたらまた違った対応だったかもしれない。
車を停めていざ港を周回して出発。波のない小さな港湾の海水は驚くほど透明だ。港の先を回り込むと畑の広がる平地に出た。畑には数人の女性達が作業をしておられた。私達の姿に驚かれたようではあるが、挨拶をすると「こんにちは」と笑顔で返答して下さる。
畑を抜けるとすぐにも道は不明瞭になるが、植林の中には辛うじて道の痕跡があるように思われる。小さな谷を越えると明瞭な道が現れた。浅い掘割となっており、GPSを確認すると地図の破線と一致しているので確かに古い道なのだろう。しかし、斜面の東側のトラバースに入ると辛うじて踏み跡は続いているが、斜面には倒木も多く、進むのに難儀する。
ca140mのピークから東に伸びる尾根と合流すると植林の中に忽然とコンクリートの貯水槽のような建造物が現れる。確かにここには人の営みがあったのだろう。周辺には平地があるので畑作のための貯水槽に思える。しかし、ここから先には踏み跡も見当たらず、斜面の斜度もきついので古道の痕跡を探すことは諦めて檜の植林の尾根を登り、岬の先端まで尾根筋を歩くことにする。
主尾根にたどり着くと、驚くほど快適な自然林の樹林が広がっている。樹林の中は五月とは思えぬほど涼しい海風が吹いている。小さな鞍部に下ると次のp108のピークは急斜面の直登を避けて、動物のトレースを追ってトラバース気味に尾根に乗る。途端に左手の尾根の下から潮騒の音が大きく聞こえてくる。
突然、目の前の木陰から大きな動物が飛び出したかと思うと「キャッキャッ」と叫びながら海側の急斜面を駆け下りてゆく。大きなイノシシであった。余程、驚いたのだろう。姿が見えなくなっても新緑の林の向こうから「キャッキャッ」という叫び声が続いている。
p166のピークが近づくと檜の植林となる。西側の樹間からは島の北側に荒涼とした断崖絶壁が続いているのが垣間見える。さぞかし素晴らしい絶景が広がっているのであろうが、展望が大きく広がる地点がないのが残念だ。
p166を越えて次の小ピークca150mを過ぎると、痩せ尾根を歩くようになる。次の小ピーク
海側に目を向けると彼方の海上に突き出した二つの岩峰が見える。左側のものが冠島、右側のものが沓島だ。
ca140mの先には岩場があり、目の前に大きくP213.4の三角点ピークが迫る。岩場は右側から難なく下降できる。鞍部に降りると尾根には樹木はなく、北側の急峻な斜面の下に覗く海の群青色が深い。岩礁に砕けた波が描く白い紋様が海の群青色を却って際立たせているようだ。
いよいよ三角点ピークへの急峻な登りに取り掛かる。アニマル・トレースを利用してジグザグに登ってゆくが、足元の斜面がざれ気味で滑りやすいので足元に集中していたが、ふと見上げると斜面には欅の大樹が立ち並んでいる。登るうちに徐々に斜度は緩くなり、
東側にはもう一つca180mの鋭鋒があるが、先ほどの三角点ピークへの登りに比べれば楽であった。あとは灯台のある岬を目がけて下降するのみだ。灯台が目に入ることを期待していたが、高さがそれほどないせいだろうか、残念ながら灯台は見えない。
鞍部に下降すると忽然とコンクリートの人工物が現れる。太平洋戦争時代に海からのロシアの侵攻に備えるべくここに築かれた砲台の跡らしい。周囲には古い煉瓦も散乱し、その下の斜面にある廃墟にはトイレの便器まで残っていた。
先端まで歩くと忽然と樹林の中に小さな灯台が現れる。広大な展望が広がることを期待していたが、灯台の周囲は樹林に囲まれており、意外と地味な場所であった。北側に伸びる急峻な斜面を下降すると眼下に鉾のような岩礁と大海原の展望が広がった。
先ほどの砲台跡に引き返すと南東に突き出した尾根の突端に向かうことにする。なぜか周囲の斜面は皆伐されており、湾の南には青葉山を始め、若狭湾を取り巻く山々の大展望を堪能することが出来る。南側斜面の木陰に入り、ランチ休憩をとる。
休憩のあとは往路を引き返す。三角点ピークの手前の小ピークca180mに登り詰めると、山頂に電信柱のように両側に鉄杭が等間隔に交互に打ち込まれた一本の柱が立っていることに気付く。明らかに電信柱とは異なる。柱の上に登って海上を見張るためのものだろう。鉄杭の錆び具合は相当に古そうであるが、その目的からすると戦前に作られたものなのだろうか。
復路は通常の登山とは異なり往路とほぼ同様の累積高低差となる筈なのだが、早く感じられる。尾根の周囲の樹林にふと動物の気配が感じられる。樹林の奥で鹿の家族の影が静かに動いているようだ。
p108のピークを巻いて鞍部に下るとp168にかけてなだらか自然林の尾根が続く。気がつくとアベマキの大樹の回廊となっていた。分厚いコルク質の樹皮による深いひび割れが特徴的だ。近くの海からはポコポコポコポコという漁船のエンジンの音が絶え間なく聞こえてくる。
p168にかけては植林となるが、植林を過ぎると途端に見事な高木の樹林となる。スダジイのようだが、驚くほどの大樹の壮麗な森となっている。樹冠の上ではスダジイの花が咲いているのだろう。樹林の広々とした林間には独特のむせるような臭気が立ち込めている。
国土地理院の地図の破線が通る平坦なca110mに至ると突如、明瞭な道が現れた。成生の集落の方向に向かって道を辿ると小さな祠が現れる。なぜか祠の扉は開け放たれており、中は伽藍堂であった。明瞭な道を辿ると無事に集落に降り立ち、小さな冒険が終わることになる。漁から帰ってきたのであろう。一艘の小舟が午後の柔らかい光に照らされた小さな漁港の静かな波間に航跡を刻んでいた。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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仕事前に何気なくヤマレコを開いていたら、新着のトップに見つけて、思わず声を上げてしまいました!
成生岬、気になっていたところであります。
でも、ここへ行った記録はほとんどなく、ネットでも2018年の京都比良山岳会のブログくらいで、それを見ても行くのが厳しそうな印象でした。
岬好きの私にとって、成生岬への記録を公開していただいて嬉しいです。それでも、これを見ても行くのは、なお躊躇われますね。まだ自分には足りないものが多いので、色々な経験をしてから挑戦するか決めたいと思います。
yamanekoさんの、岬への動機と渇望、凄くよくわかります!垂直方向だけでなく、水平方向への欲求というのは私にも感じているところであります。
ありがとうございました。
もしも行かれることがあれば、前半の藪漕ぎルートは無視していただいて、港の西側から尾根に登って、尾根伝いに岬の先端を目指して歩かれればいいでしょう。三角点ピークの黒地への登り降りは大変ですが、慎重に行かれたらそれほど難しいことはないかと思います。
皆さんに助けられながら歩いてきました。鬱蒼とした森、トラバースやアップダウンの連続、その先に岬の灯台がある。
私ひとりが道迷いをしてしまいました💦。もし行かれるなら一人ではない方がよいでしょう。岬までほとんど展望のない孤独な山歩きになりますw
yamanekoさんから声を掛けて頂かなければ岬歩きの面白さを知る事は無かったかと思います。
大きな蒼い海を傍に感じながら歩くのはワクワクします😊
今回の半島歩きもなかなか面白いルートだったようですね
半島の先端はあまり展望が無いかと思っていましたが、意外にも良い景色が広がっていたのですね
ナオジローさんの「また山猫さんに嵌められた」というボヤキから、標高216mの半島歩きはアップダウンが多く、その標高差からは予想もつかないくらいハードだった事がうかがえます。
今回は、所要により参加できませんでしたが、また次回、ご一緒させて頂きたいと思います。
お疲れ様でした
確かに灯台からは展望はないのですが、急峻な尾根を先端に向かって下降すると写真のような展望があります。しかし、ここはかなり足場が悪く危険なのであまりお薦めは出来ません。
南東の小さな岬は周囲が皆伐されており、そのお陰で抜群の展望です。
それから#21-24の写真にあるように、所々に岩場があり、茫洋とした日本海の海景が広がります。
こちらこそ今回は残念でしたが、またの機会によろしくお願いします。
冒険心にくすぐられ、yamanekoさんの巧妙なナビゲーションで行ってまいりました。
漁港から半島を一望した時に呆然としたのでした。急峻なアップダウンがいくつも見えるのです。ポロっと口が滑りました
辛いことの後にはよいことがある‥。
急峻な三角点峰をズルズル滑りながら登ると海が見えだし、最後のピークを乗り越えるとヤッターという感じです。
また次回を楽しみにしております。
そうなんですよね、ナオジローさんのボヤキ通りです😅
ヤマネコさんの山歩きは普通のコースじゃないのですからある程度覚悟はしているつもりなのですが。。。
次回は御一緒出来る事を楽しみにしています。
4月の常神岬に続いての成生岬。山本コータローの歌声が耳元で蘇ってきそうな岬巡りの旅。折角お誘い下さったのにとても残念に思っておりました。
歌のようにバスで行ければ楽ちんですが、道なき尾根を歩いて訪ねる岬は大変ですね。#1写真のギザギザを見ただけで、ハナさんの悲鳴とnaojiroさんの呻き声が聴こえてきそうです。
それにしても常神半島で見た深い碧い海といい、naojiroさんが先日訪れられた蘇洞門しかり、若狭湾の美しさは感動ものですね!
ヤマネコさん、また魅力的な山行(海行?)のプロデュース、よろしくお願いします😆
岬巡りのバスはー走る🎶窓に広がるー…。懐かしい歌をウリさんもご存じとは。距離は短いですが常神半島よりはアドベンチャー感満載です。でも岬の素晴らしさは倍増でした。
蘇洞門は小門から外海に出られるようです。ヤマネコさんによると取って置きのコースがあるようですよ🤣
振り返ってみれば、それなりの海景に恵まれたのですが、前半・・・どころか黒地に至るまで全くといってもいいほど海の景色は見られず、強烈なアップダウンをこなしてももしかして最後まで海を眺めることは出来ないか・・・とも思っておりました。こういう全く情報がないところは、労多くして益少なし・・・ということも十分にあり得ますから・・・
海景の写真を見せただけでも家内は大いに食指が動いたようで、ここは家内を伴ってまた改めて訪れたいと思っています。(今度は別のルートから)
来月には次の(とても地味な)山行を考えております。お花に出遭えない山行でも宜しければお付き合いください。
お察しの通りギャーギャー喚いておりました💦
若狭湾の深い碧い海は本当に美しい!
何度も写真を見返しては幸せ気分を振り返っています。
naojiroさんが訪れられた蘇洞門も素晴らしいですよね。
蘇洞門も行きたいなぁ。
uriさんもそう思いますよね?😁
草川啓三さんの著書「海をながめる山歩き」に大浦半島・成生岬が載っていたので、2023/5/2に行ってきました。もちろん、このヤマレコのレポも参考にさせてもらいました。成生漁港から東側の破線道は荒れていて最後はなくなっているとのことだったので、最初から尾根を歩くことにしました。P168→P108→P166と標高点を歩き、▲213.4m(点名:黒地)を越え、展望地からさらに小ピーク(ca180m)を越えたところにはナツエビネが咲いていました。そして旧軍事施設の残骸を通過して灯台に辿り着きました。
灯台の北側を少し下ったところの岩場に立つと、成生岬先端が見えましたが、ちょっとビビる場所でありました。それからは、山猫さんたちがランチをとった場所(展望地)まで行き、私もランチタイムとしました。天気もよく、心地よい風が吹いており、展望も素晴らしかったので1時間も長居をしてしまいました。
帰路は、ca180m→▲213.4m→P166を戻りましたが、P108へは行かず、その手前の谷筋を下って海岸に降りてみることにしました。この谷筋は湿地のようになっていましたが、登山靴で十分歩くことができました。降りた海岸は砂浜ではなく、石がゴロゴロしている海岸でした。その後は、地形図の破線を辿りましたが、道はすでになくなっていて、荒れた谷に沿って登っていくことになりました。途中にひとつだけ5mほどの滝がありましたが、左側から簡単に巻くことができました。最後は往路であった祠のところに出てきたので、ここに通じていた山道(参道)を下ってみると、成生漁港の民家の裏手に出てきました。往路は、ここから少し谷筋を進んでから右手の尾根に登り、山道に出会ったというわけです。
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