夕張山地 シューパロ岳(1436m)南稜 初登攀
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- GPS
- 56:00
- 距離
- 43.4km
- 登り
- 1,539m
- 下り
- 1,524m
コースタイム
5月5日 C1(5:40)→・934の尾根末端の二股を右股に入り稜線へ→稜線(7:50)→△1009への分岐ピーク(10:00)→バットレス基部(11:30)→シューパロ岳(12:10-40)→△1009への分岐ピーク(14:00)→C1帰着(16:20)=C2
5月6日 C2(7:30)→日向沢川→林道入り口(14:00)
過去天気図(気象庁) | 2014年05月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
林道の雪は少なく、スキー要らず。法面崩れで車はほとんど入れない。 谷の雪崩は落ち着いている。林道終点あたりより奥はちょうど雪がブリッジになっていて徒渉可能。 稜線の雪はほとんど消えていた。薮はホールドとして都合よく、登りをそれほど阻まない。雪がもう少し多ければもっと快適かもしれない。但しセッピやラッセルになれば苦労する。冬季ならば、キノコ雪もある。 バットレスは東面の急雪面を巻いた。岩登るなら下半分薮で、上半分を1.5ピッチくらいか。左脇に緩傾斜ルートがありそう。 |
写真
装備
個人装備 |
スコップと鋸 1
スキー一式 1
メット+ハーネス+登攀具 1
アイゼン 1
アイスアクス 2
その他冬山宿泊個人装備 1組
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共同装備 |
ツエルト 1
ストーブ 1
鍋セット 1
ザイル40m8mm,9mm 1
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感想
シューパロ岳は、芦別、夕張山脈の西列にある鋭峰群のひとつ。南北の衝立みたいな細いリッジに10以上のピナクルが尖って最高点シューパロに続く。山頂手前には100mほどの岩壁バットレスもある。山深いので積雪期に目指す人はいないし、無雪期は尚更。登攀記録は見た事が無い。シューパロ岳に登るなら、このリッジが正面玄関だろうと、8年前から計画をしていた。
北大山岳館で海外登山史編纂の座談会を終えて、つるで飲んだあとサイトー宅で前夜泊して、夕張川に向かう。シューパロダムはサイトーが90年代に地質調査で何度も通ったところだそうだ。今は大きなダムになって、上流の村落は水没していた。シングーは30年になる旧友だ。最後に一緒に登ったのは98年の針ノ木岳西稜だった。あれも、誰も行かない鈍い光を放つ美しいルートだった。その後ソロモン群島の地質調査などしていて、もう何年も日本にいなかった。
雪と土砂崩れでシューパロ川林道はすぐに車で行けなくなる。林道20キロ。むかし長い林道入山は嫌なものだったが、広い夏道だと思えば楽なものだし悪くない。車が通らなくなって久しい林道は、足元にも優しいし、きれいなものだ。まして春、芽吹きや雪解けの水や、遠く残雪の山を垣間見ながらゆく林道は楽しい。鳥の声も、露頭の中生代の層理面も。スキーは要らなかったが、誰もデポしようと言い出さず、とうとう20キロ運んでしまった。始めは雪があればはいたりしたが、無くても潜らないので面倒くさくなり、シートラのままになった。
林道終点は法面崩壊で笹薮急斜面になっていたが、雪解けの水流で岸辺が無いからまだ沢底には降りられない。薮を漕ぐと、先に林道が地図通りまだ続いていた。その行き止まりCo600mでC1とする。イグルー作るには雪の密度が重く気温が高過ぎなので、壁3段積んで、下2段掘って、屋根は開きにできるツエルトをタープ状にして小屋掛けする。この時期無理にイグルー作っても屋根はすぐ落ちるし、雨で雫が垂れるので残雪期イグルーはこれで良い。張り綱止めるのにスキーが唯一役立った。アクスも二本ずつあって止めるに困らない。焚き火ゴンゴンで肉を焼いてバーボン。北斗七星が真上だ。シングーが紙巻きタバコを巻いて配る。焚き火の脇では、昔のように喫煙者になる。先月別れた彼女の置き土産らしい。明日の稜線は未知だ。歯が立たずスゴスゴ帰るかもしれない。行ってみなくては分からない。
4時には明るい。右岸雪の上を行く。水流は減っている。ほどなく標高700m二股、ここから東の沢に入る。べったり雪でスタスタ高度を稼ぎ、稜線へ。南方、夕張岳や西岳が見えて来た。稜線間際の笹薮下にアイヌネギ群落発見。匂い立つが、これから未踏ルートに向かうとき、山菜採りの気分にはならない。稜線は基本、雪が無い。いくつもの小ピークを上り下りしながら、掴み易い薮を掴んで進む。ハイマツの弾性も協力的だ。一カ所だけもろい岩、高度感ありブッシュ切れの数mをザイル出すが他は全部ノーザイルで延々行く。
1009分岐のピークを超えると、西側の急斜面に雪が残って繋がっている。ピナクル上り下りを避けて、この雪で巻いて行く。バットレスの手前のピナクルの手前で稜線に戻ると、バットレスのルートが見えた。サイトーが振り向いて、「もらった!」とひとこと。右側、東側の雪を巻いて行ける。初めて貫徹のメドが立った。記録無く、地図だけ見て来た計画だ。先がどうなるか分からない楽しみだ。バットレスの基部から見上げる。もし直登するなら、1、2p分の壁だ。西側のリッジが弱点に見える。東側急雪面のトラバースは、個々に孤独に登る。偽ピークを越えて最高点へ。8年越しの計画貫徹だ、うれしいなあ。北に中岳が初めて見えた。芦別夕張の主脈が並列している。懐かしく、美しい山脈だ。1989年の4月、端から端までスキーで歩いた稜線を目で辿る。1415峰の北西面の断崖が凄い。
下りは高度感ある急斜面の下り延々。バックステップで下る事多し。1009分岐から南西の沢へ、アイゼンもハーネスもとっ外してシリセードで高差300mを一気に絶叫ダイビングする。途中で急停車してアイヌネギ収穫も忘れず。谷の雪は標高700m二股で登路と合流するまで繋がっていた。西日の差し込む谷。逆行の若葉の中をベースキャンプへ。北上5キロ、南下3キロの未知のナイフリッジを、手際よくしとめたのではないだろうか。天気は後半悪い予報だったが、一日持った。風は強かったが直射日光が無く助かった。夜、焚き火のとき雨が降り始める。イグルーの壁は一日でずいぶんガタガタしていたので直す。酒飲んでネギ汁飲んで疲れて眠る。
下山の日、林道の雪は更に少なくなっていた。サイトーとシングーは頻繁にスキーに換えて歩くが、僕は面倒でシートラで通す。若葉の芽吹き、雪解け、蛇行の浸食、アンモナイトの中生層を見ながら下る。腰を下ろして30年ぶりに地質学教室の先生方の名前と顔を話題にしたり。延々20キロを黙々23キロ担いで歩くと、自動で動く自分の二本の足が、驢馬の馬車で、その荷台で揺られて運ばれている心持ちになる。考察や思索も進む。一日林道歩きとはいえ、林道が無ければこの増水河川のアプローチ、一日では不可能だし、足という名の乗り物に載ってしまえば楽なものだ。
湯の元温泉に浸かり、三笠のみよし食堂でジンギスカン定食をガツガツ食べる。タカシノさんちに寄ったら丁度誕生日とのことで、ホタテやウニやおいしいものをたくさん食べさせてもらった。誕生日僕と一日違いなのね。札幌のサイトー宅でC3すると、ユキちゃんがモツアルトのトルコ行進曲ソナタを弾いて、計画貫徹と50の誕生日を祝福してくれた。
コメント
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昨年シューパロ岳に登った時、ピナクルが連なる南稜から登ったら痛快だろうなと思った。
そこを登った記録に拍手を送り、拝読させていただきました。
ヤマキチさん
昨年の記録みました。5月後半でも雪多いですね。今年も、もう少し残っていてくれたら、雪稜楽しかったのになあ!と思いました。この夕張山地の裏側地帯、とてもよい山域ですね。山深くて良い山頂がたくさんありますね。創造的なラインがいくつも浮かびます。
yoneyamaさん、他、みなさんお疲れ様でした。
自分にはまったく想像出来ない登山なので、その難しさ、苛酷さも今一つ切実に感じてませんが、手巻きタバコの画像に甚く感激してしまいました。
自分も数年前にタバコを止めるまで、10年以上もずっと手巻きタバコの「DRUM」だけを吸っていました。
まだ、いらっしゃるんですねぇ〜、こういうニコチン、タールをストレートに吸引しているかたが・・(笑)
なんか、久しぶりにまた、喫煙してみたくなってしまいました・・
これからも、みなさん、怪我や健康に気をつけて楽しい山登りを続けてください。
タビオさん
むかしは、男という男は喫煙していましたねえ。ぼくは、普通の暮らしの中で切れたらおちつかん中毒者みたいに吸って、臭い息の人は嫌いですが、焚き火の傍らでだけ、今も吸う事があり〼。
手巻きタバコは、いっぽんいっぽん大事に吸う心がけになって、いいものですよね。焚き火の時は、葉巻をやる事もあります。
忙しそうに、イライラして吸うタバコはいけません。
米山さん、50歳のお誕生日おめでとうございました
こういうスタイルは私には無縁ですがステキですね。
煙草は百害あって一利なしと言いますし、私もそうは思うものの、
だからと言って否定し切れないロマンのような物を感じてしまいます。
私は、喫煙者の弟や旧友と
珈琲でも飲んでいるときぐらいはもらい煙草をします
焚き火のそばでだけ吸う煙草はうまいだろうなー!
ミズタマさん
焚き火のそばでしかできないことに、焚き火の燃えさしでタバコに火をつけるってのが、これまたなんていうんですかね、いいですね。
火事を恐れるあまり料理でさえ火を使わない日常が増えるのは、これはいけません。時々やけどしながら、火を扱わないとねえ。
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