【衄血作戦】田代山・帝釈山【乙24.8】
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- GPS
- 05:16
- 距離
- 10.0km
- 登り
- 882m
- 下り
- 884m
コースタイム
天候 | 晴れ 風あり雲の流れ速し |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
道の状況: 猿倉登山口までの十数kmは落石の恐れある凸凹砂利道。 田代山までは階段状の急な登り。小田代で一息ついて再度急登。 田代山〜帝釈山は残雪が増え、泥濘も深刻化。岩登りもあり。 下山後の温泉: 湯ノ花温泉 木賊温泉 等 |
写真
感想
とあるロングセラーの漫画によると、福島に行くと鼻血が出るそうである。そんなことを言ったら、震災直後の6月を初めとして、その後たびたび浜通りから会津に至るまで福島の彼方此方に行っている私などは毎日のように鼻血を出していてもいいようなものだが、そんな気配は一向に無い。おかしなことだ。
そこで、福島に行くと鼻血が本当に出るのか身をもって確かめようと、遅ればせながら今日も平和な日本のしょうもない騒動に付き合うことにした。
【前夜】
折も折、季節は初夏の6月だ。毎年恒例だが、どこぞに蛍でも観に行こうと思っていたところだ。というわけで、那須の箒川の辺りで蛍鑑賞。東京近郊だと人が多くて落ち着いて見ていられないが、広く宣伝しているわけでもない所なので、私の他は一人だった。
その後、福島へと車を走らせる。塩原の道の駅近くのコンビニに寄らなかったら、その後コンビニが全く無く、夜も遅いのでもしかしたらどこもやっていないのではと焦ってしまったが、道の駅たじまをしばらく北上した辺りにまだ営業しているコンビニを発見。何とか助かった。
当初予定では木賊温泉から川衣ゲート前に肉薄して、そこから歩き始めることとしていた。その前に木賊温泉共同浴場に立ち寄る。硫黄のほのかな匂いがするが色は透明、温度はちょうど良い。気持ちの良い湯で体も暖まる。外気温が8℃とか9℃とかだったので生き返った気分だ。惜しむらくは混浴なのに中高年男性ばかりだったことくらいか。
温泉で身も心も暖まり、川衣へ。狭い道を注意深く進むとゲートに行き当たる。しかしながら、あちこちに「入山禁止」の看板が。つまり、山菜を勝手に盗るなということで、山歩きする分には関係無いのかも知れないが、やはり瓜田に履を入れずとの故事もある。これは痛くもない腹を探られるよりは正攻法で行こうと、猿倉登山口に転進することとした。
一旦湯ノ花温泉に出て、山の方に向かうのだが、登山口までの十数kmが舗装されていない凸凹道で落石の危険性もあるので緊張を要する。でかい石があったり、デカイ窪みや段差があったり。しかも夜間。やたらと長いグネグネ道を過ぎて猿倉に着いた頃には日付が変わっていた。
翌朝は早いのでさっさと寝たのだが、暫くすると寒さで目が覚める。関東では初夏といえども東北はまだ春先のような感じだ。先程の麓で8〜9℃だったから今は5〜6℃くらいだろうか。寒い寒い。関東の山に登るのと同じ感覚で来てしまったが、これは誤算だった。着替えとして持ってきた服も重ね着し、最後は暖房を付けて何とかしのぐ。辛うじて睡眠は確保できた。
【田代山へ】
夜が明け、空を見上げると予想よりも雲が多い。これはまあ朝だからやむを得まい。ゆるゆる歩いていれば山頂に着く頃には晴れるだろうと歩き出す。
風があり冷たい。薄着で行った9月の谷川岳を思い出す。
道は丸太を並べた階段状の上りが続き、直近雨が降ったとは思えないほど泥濘も大したことなく歩きやすい。比較的早めに周りの展望が開けてくるのもグッドだ。
小田代を経て広大な田代山の湿原にいたる。6月はこの辺りの春に当たるといっても良いのだろう。小さくかわいらしい高山の植物が彼方此方に花開いていた。
【帝釈山へ】
帝釈山へと山頂標識よりも高い所にある避難小屋(弘法大師堂)の裏手に回ると、それまでになかった雪の堆積が。標高2000mでもこんなに残っているとは、さすが東北。何箇所か雪の上を歩くことがあるが、斜面ではなく滑らないので問題ない。ズボッと踏み抜くこともない。
問題はそこからの雪解け水で、所々水が流れたり、グッチョグチョにぬかるんでいたりする。特に泥濘は酷く、泥はねを起こさないよう慎重に歩む。他には木の根と大きな岩。岩は帝釈山に近づくほど大きくなり、山頂直下では身長以上の高さで補助ロープを頼りに上っていく。
登りきった先が帝釈山で、東西南北、ほぼ360℃の展望を得られる。今回は山域を田代〜帝釈に決定したわけだが、北方に雪を戴く会津駒ヶ岳は当初候補に挙がっていたが、美しくもあまりの積雪具合に、遠くから眺めるくらいでよかったと思う。燧ケ岳も美しい。日光は行き帰りの渋滞が心配でなかなか行かないが、そろそろ一山くらい行ってもよかろう。
それまで人がいなかったのが、山頂には何人かの登山者がいた。反対側の馬坂峠から上って来たようだ。馬坂峠から山頂まではすぐなので、登ってきた人は続々と田代山方面へと下っていく。私も東京へ戻らないといけないので戻ることにした。すると、帰り道、対向者が続々とやってくる。あんな悪路をよくこんなに人がやってくるものだと思ったが、確かに降りた後の駐車場には数十台の車が停まっていた。他にタクシーで来る人もいるようだから大人気の山と言えよう。擦れ違う人達と挨拶以外にあれやこれやと言葉を交わすのもまた楽し。
雲は増えたが、私が歩いているうちは青空が続き、これも帝釈天の加護の賜物であろう。うつくしま福島に思いを僅かばかりながら寄せた私に対し、田代〜帝釈はじめ福島の山々が大慈悲でもって応えてくれたものと信ずる。国敗れて山河あり。福島ここに健在なり。
【まとめ】
というわけで、福島に行ってきたわけだが、今のところ鼻血は出ていない。
ジャーナリストの山路徹氏の言うように、もしかしたら鼻血が出るという人がいるのかもしれない。では、その鼻血が出るという人は一体どこに?前の双葉町長で『美味しんぼ』にも出ていた井戸川氏は鼻血が出ると主張し、ネット上に鼻血をアップしたりもしているようだが、彼は色つきの政治活動家なので、その発言は割り引いて考える必要があるだろう。好奇心旺盛で、以前は「こんな所で高線量が〜」とはしゃいでいたマスコミも、何故か今回ばかりは「こんな所に鼻血を出す子供達が〜」ということはやらない。
問題の一つ目は「放射能を浴びると鼻血が出るのか?」。
これは、高線量被爆をした場合にあり得るとされているが、原発作業員で鼻血が出るという話も聞かないので、原発から遠く離れた所に住む人が原発から排出される放射線で鼻血を出すということは、素人目で見ても考え難い。朝日新聞に「鼻血は出る!」と主張する学者の記事があったが、「塩を食べたら死ぬ」というレベルの話に過ぎない。そりゃあ一度に大量の塩を摂取すれば死ぬだろうさ。
問題の二つ目は「鼻血は放射能のせいか?」。
先に放射能→鼻血の流れについて述べたが、今度は逆の流れ。鼻血が出るとして、それは果たして放射能のせいなのかということである。これまた朝日新聞だったかに子供がよく鼻血を出すという主婦の声が載っていたように思うが、鼻血の原因など生活上幾らでもある。相関関係と因果関係を混同する人は多いが、今回は相関関係があるかどうかも怪しい。ただ、「福島→鼻血」という図式のみが一人歩きしている。それが無駄に人々の不安を煽っているのだ。『美味しんぼ』が掲載されている雑誌は福島で売り切れ続出だったそうだが、それは人々の不安の現れであり、まだ自信を回復し切れていないことの証左である。
問題の三つ目は「調査は適切だったか?」。
『美味しんぼ』作者の雁屋氏はちゃんと調べた結果であると主張しているが、どうもヒアリング調査以上の突っ込んだ調査をしていないのではないかと思われる。今時、基礎的な文献と聞き取りだけで調査をやったと称して許されるのは小学生までだ。柳田國男だって聞き取りのみで書物を著してはいないだろう。況や科学的事象においてをや。
問題の四つ目はマスコミの動き。
今回不思議に思っているのは大手マスコミの静けさである。かつては「何ミリシーベルト」というのをわざわざ単位を落として「何千マイクロシーベルト」とやっていたマスコミが、魚や植物から放射能が検出されるたびに「何百万ベクレル!」と騒いでいたマスコミがやけに大人しい。NHKのクローズアップ現代でもテーマは「原発に関する表現の難しさ」。誰も深く突っ込まないのは何故か?雁屋氏の主張が荒唐無稽だからだろうか、それとも東京オリンピックが決まってこれから稼ぎ時だから、臭い物には蓋をしておこうと各社で申し合わせでもしているのだろうか?いずれにしても公器として職務怠慢と言わざるを得ないだろう。
最近、新聞やテレビで震災直後の原発事故対応についての回顧的な特集がされることがあるが、そんなものは数十年後だってできる。今知りたいのは、今どうなっているのか、この後どうしていくのかということである。漫画雑誌が売り切れたのだって現在と今後に不安があるからだろう。
そういった点で、大手マスコミは視聴者・読者のニーズに応えた報道をしているのだろうか?という疑問も湧く。
いや、もしかしたら、非常に残念なことに、これが福島以外の、つまり大多数のニーズを踏まえた報道姿勢なのかもしれない。
今、サッカーワールドカップが近いため、「一つになろう」というフレーズがバンバンCMで流れているが、福島も含め日本全国津々浦々、大地でつながり、空でつながり、かつまた海でもつながっている。そうした自然としての一体を感じつつ、各地を、特に福島については「ともにある」という気持ちを強く持って行脚していこう。
以上が、今回の福島山行の総括である。
〜おしまい〜
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