北岳登攀合宿 北岳バットレス第4尾根主稜・Bガリー


- GPS
- 15:14
- 距離
- 11.3km
- 登り
- 1,960m
- 下り
- 1,949m
コースタイム
- 山行
- 2:10
- 休憩
- 0:12
- 合計
- 2:22
- 山行
- 10:24
- 休憩
- 0:47
- 合計
- 11:11
- 山行
- 1:29
- 休憩
- 0:08
- 合計
- 1:37
天候 | 9/3 雨 9/4 晴れのち曇り 9/5 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
|
写真
感想
アルパインクライミング新入生向けとして剱岳南壁の登攀を先週に敢行したが、2年生以上向けとして北岳バットレスの登攀を計画した。剱岳の登攀に引き続き、こちらも全学山岳部と医学部山岳部の合同企画である。北岳バットレスは本邦では富士山に次ぐ標高を誇る北岳の、東面に落ち込む標高差約600mの大岩壁である。前から登りたかった壁であり、メンバーもそれなりの練度を持つメンバーで敢行した。
上部岩壁は第4尾根主稜を登攀し、下部岩壁はBガリーを登攀した。下部岩壁から数えて全部で11ピッチ。充実した内容の登攀だった。
9/3
広河原に昼前に着いたが、すでに霧雨が降っていた。この日は多少の雨は割り切って行くことにしていた。しかし途中から本降りの雨となる。雨具に染み込み、蒸れて猛烈に体力が削がれた。このため、予定していたBガリーの出合までの偵察は中止し、白根御池のBCで体力を回復させることを優先した。
9/4
【Bガリー~ヒドンスラブ~4尾根取付】下部岩壁
未明に出発する。前日に偵察ができなかったため、ぶっつけ本番で闇の中でBガリーを見つけられるかが心配だったが、事前の下調べや丁寧な読図の結果、迷わずにBガリー出合を見つけることができた。Bガリーは踏み跡こそあるが、まるで沢登りをやっているかのような草付斜面やガレを登る雰囲気だった。
空が白んできたころにBガリーの核心であるBガリー大滝に到着する。全部で2ピッチのクライミングとなった。Bガリー大滝は大滝とは云っても普段は枯れ滝であり乾いた岩壁らしいのだが、前日の雨で濡れており4尾根よりも難しく感じた。
Bガリー大滝を越えた後はCガリー方面へトラバースする。Cガリーへ降り、再び登り返すとまもなくヒドンスラブがCガリーの右岸に見えた。フリーソロで登ろうと考えていたが、こちらも濡れており危険を感じたのでロープを出した。これを越えるとまもなくバットレス第4尾根主稜の取付テラスに出る。
【北岳バットレス第4尾根主稜】上部岩壁
クライミングシューズに履き替え、登攀を開始する。マッチ箱と云われる岩峰までの4ピッチとマッチ箱からの懸垂下降1ピッチはkouWがリードした。詳細は彼の感想の項を参照して頂きたい。マッチ箱のてっぺんから10mほど懸垂下降し、残りの3ピッチを私がリードした。
6p目
マッチ箱との凹角からリッジにでる。マッチ箱との凹角に体をねじ込みながらズリズリとよじ登る。リッジに出るまではランナウトし、怖い。凹角は広すぎてカムが効まらない。
7p目
リッジからトラバース気味に登り、城塞ハングの真下に出る。難しくはないが高度感がすごく、足がすくむ。数100mも切れ落ちているところで微妙なスタンスに足を乗せる。枯木テラスの崩壊跡は凄まじかった。一軒家分の岩が崩れたそう。昔はここにテラスがあり、楽に稜線に抜けることができたらしい。
8p目
有名な「城塞ハング」を登る。標高3000m以上でハングを越えるクライミングをしなければならない。下部岩壁からの長い登攀で疲れきっているのに、最後で酸素が薄い中でのハング越えは身体に厳しい。クラックに手を突っ込み、ステミングとドロップニー(キョン)を駆使して攀じ登る。雄叫びをあげながら何とか突破。ハイマツでアンカーをとる。
城塞ハングを越えたら登攀装備を解除して登山靴に履き替え、山頂への踏み跡を辿る。間もなく日本で2番目に高い山、北岳の山頂に着いた。雨が午後に降る予報だったので写真を撮ってエネルギー補給をした後にすぐ下山を開始する。白根御池小屋のテント場に予定よりもかなり早く帰営することができた。
9/5
朝から快晴。テント場から北岳が朝日を浴びているのが見えた。幕営装備をまとめて、2時間もかからずに広河原に下山した。
今回は部の活動として北岳バットレスを登攀できたことが何より嬉しかった。また、日本で2番目に高い山の頂に、クライミングで立てたことも嬉しく、達成感が大きかった。3人パーティーでかなりコンパクトなタイムで機動力のある登攀ができたのも普段の練習と積み重ねた経験の成果であると思っている。これからも、部員同士の個人山行ではなく、計画書をしっかり提出した部の活動としてアルパインクライミングを続けていってほしい。
追記
共同の食料をスーパーで買ったら、その金額は偶然にも3193円となった。何が言いたいか、分かるだろうか。
準備
今年に入ってから山行頻度が少なく、体力面が心配だった。加えてメンバーsoichi1114は山行経験が少なく本チャンも今回が初だった。準備期間は少なく、トレーニング自体は30キロを背負って2回の歩荷と、八甲田でsoichi1114、kouWで山での歩荷訓練を1回実施した。直前2週間ではロープワークの訓練を弘前の近郊岩場で4回ほど行った。
山行記録
1日目 初日は広河原から白根御池を目指す。雨で樹林帯の中を登り標高を上げた。東北であまり見たことがないツガ林の中を上がる。下のレイン、ズボンを撥水処理したおかげで下はほとんど濡れなかった。スパッツをつけずのぼったせいか登山靴が浸水した。上のレインは撥水処理もむなしく浸水した。生地が傷んでいると撥水処理をかけても長時間の雨には耐えられないことが分かった。濡れた装備の水をふき取る際に、SWIMタオルがかなり役立った。
2日目 初日は早朝に起き2時30頃に出発。樹林の隙間から星が見えた。自分が先頭だった際、大樺沢二股で右俣に入り込みそうになった。地図に沢線を引いて事前確認をしていれば防げたと思う。二股の左俣を進むと左岸側には踏み痕がある。ヘッデンだと雨の流れた跡踏み痕が見分けにくくところどころ踏み痕を外しながら歩いた。枯れ沢であるヒドンガリーを過ぎある程度歩くと、バットレス沢出合いに出る。目印は出合から10mほど入ったところ?にある大岩である。バットレス沢も普段は枯れ沢らしいとブログで見たが、一日前の雨の影響で水が流れていた。とりあえずバットレス沢―C沢の中間稜を目指してバットレス沢を右岸沿いに上がる。沢沿いにルートを取りすぎると、ヌメりと崖で少し危ない。頼れるブッシュも少なく上がりずらい。しかもアザミがズボンとシャツを貫通してきて痛い。中間稜側のブッシュ帯にルートを修正しながら右岸の崖沿いを少し上がると踏み痕らしきものを見つけた。ここから立木やブッシュ伝いに踏み痕を上がる。この時点で4時30ごろだっただろうか。まだ足元は暗く気は抜けない。ある程度歩くと沢が詰まって岩壁が見えてくる。写真で見た滝よりも大きく、高度感もあり不安になった。左側は柱状節理?または層が縦に伸びる断崖で登れそうにない。ザイルを出して2ピッチをMtasukuがリード。空が少しずつ白んで足元も少しずつ見えてくる。向かいの白峰三山の稜線の上にもヘッデンの光が見える。登山靴で左寄りのクラックを登る。ビレイしているとロープがすれて落石が飛んでくるため、上から全く目が離せない。逃げ場は少ないができるだけ落石のルートから外れてビレイする。スタンスもホールドも大きいが大滝は昨晩の雨でぬれていてコンデションが悪かった。2ピッチ目を切ってから少し崖を上がるがここも怖かった。ここから少しガレを上がるとガリーが細くなってくる。私たちはフィックスロープが出てきた当たりに踏み痕を見つけガリーから右岸の立木とブッシュが濃い稜に出て、うまくCガリーに降りた。Cガリーは岩の積み木のようで落石が頻発する。トラバース気味に素早く通り抜けCガリーを右岸沿いをほんの少し上がると右岸側の崖を2、3m上がったあたりにヒドンスラブが見えた。ヒドンスラブとりつきには4の赤ペンキがある。ヒドンスラブはMtasukuがザイル1本でリードし、後続がそれを伝って登る予定だった。しかしチャートかつ逆層で濡れているスラブでロープを片手に持って登るのは危険だと考え、ロープの途中に結び目バタフライノットを作り確保してもらった。
7時頃に登攀開始。私は取り付きからマッチ箱の手前まで4ピッチリードした。
1P目 クラック~優しいスラブ
出だしはキャメロットの#3、#2が効きそうなクラック。クラックは3m程。出だし1m程は立っている。この先天候が下り坂であるため、時間を優先してA0で足を上げる。クラックに足を突っ込んだり、左側の壁のリスに爪先を効かせて突破。フットジャムが効き、危なげなく登れた。クラック左の壁の残置ハーケンに1つ、クラックの出口のハーケンに1つ中間支点を取った。クラックを抜けた先のスラブは優しくハーケンもしっかりある。ロープ30m程伸ばした。
終了点はリングボルト2本でとった。
2P目 ブッシュ~リッジ?右のスラブ
この頃から少しガスがわき出しそうな空模様に。出だしはハイマツのブッシュ帯を少し登り、リッジ?に乗り上げずフェース右のスラブに逃げた。できるだけロープを伸ばそうとしたがスラブの途中でロープ残り5mのコール。スラブの途中で残置ハーケンを探し一段下がってピッチを切る。引き上げていたザイルが所々落ち絡まった。ロープは45m程伸ばした。
終了点は残置ハーケン3本から取った。
3P目 スラブ~リッジ小垂壁の手前まで
リッジ右のスラブを登りリッジのすぐ横に上がり小垂壁の手前までロープを伸ばした。
ハイマツで終了点を取った。
ロープは30m程伸ばした。
4P目 小垂壁~リッジマッチ箱まで
小垂壁は3m程。左側に走る細い割れ目には残置ハーケンが多数打ってある。出だしで右側と左側の残置ハーケンにクイックドローを取り、少しあがってまた支点を2本取ってA0をして突破しようとしたがすぐに登れず、小垂壁の途中から右のカンテを伝ってリッジに乗り上がった。プロテクションを小垂壁でかなり使ってしまったのでリッジ上でプロテクションをほとんど取れず、少し時間をかけて慎重に登った。リッジは高度感はあるがホールド、スタンスはあると感じた。マッチ箱手前でハーケンから中間支点を1つ取り懸垂支点まで行き後続を確保した。リッジ上で中間支点がほとんど取れなかったため後続にも危険なリッジ上の登攀をさせていたのかもしれない。
終了点は軟鉄性の残置ハーケン、リングボルト2本に繋がった残置オーバルカラビナ付きの捨て縄より取った。
5P目 懸垂下降
50mダブルロープ1本で下降、リングボルト2本から固定分散で取ってある残置支点にロープをかけ、マッチ箱の左側気味に垂壁を下降。下降途中マッチ箱のコルに良さそうな支点を見つけ仮固定し少しトラバース気味に登り返してピッチ切ろうとしたが上手く届かないことに気付き、そのままマッチ箱左側の垂壁を20m弱程下降して、スラブ途中小テラスに降りた。リングボルトと残置ハーケンから支点を取った。
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