前穂高北尾根、ついに行けたワンデイで
- GPS
- 09:58
- 距離
- 25.9km
- 登り
- 2,137m
- 下り
- 2,185m
コースタイム
06:05 明神
06:50 徳沢 〜 07:00
08:00 松高ルンゼ出合 〜 08:10
09:05 慶応尾根乗越 〜 09:10
10:05 前穂高北尾根最低鞍部
10:15 北尾根取り付 〜 10:30
11:40 八峰 〜 11:50
12:25 七峰
12:40 7・6のコル 〜 12:55
13:25 六峰 〜 13:35
14:20 五峰 〜 14:30
15:10 四峰
15:20 3・4のコル 〜 15:35
16:15 三峰
16:20 二峰
16:40 前穂高 〜 17:00
17:20 紀美子平
17:30 ライチョウ広場
17:50 岳沢パノラマ
18:10 カモシカ立場
18:50 岳沢小屋 〜 19:00
20:00 風穴≒7号標識
20:35 岳沢登山道入口
20:50 上高地バスターミナル 〜 21:00
22:05 釜トン入口
22:25 釜トン出口
(地図のルート作成は、スマホの「山旅ロガー」のログデータです。
緯度経度データはそのまま使っていますが、時間は変更しています。)
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
写真
感想
【ついに行けた、の心】
数年前、上高地から入って5・6のコル経由で前穂高北尾根を日帰り、と言う記録を見た。
自分もやってみたいと思った。日帰りの北尾根にあこがれた。
同じ行くなら最低鞍部から8・7・6峰と全部を楽しみたかった。
ただ、このコース、初発バスで上高地入りしての日帰りは到底不可能だ。
それで、夜中に釜トンを歩きはじめて、2時頃に上高地を通過しようと試みた。
けれど夜明け前の眠たさに勝てず、奥又白谷でツェルト被って寝てしまう、そんな失敗が2回あった。
どうにも睡眠調整がうまくできない。
ならば、と、翌年、上高地・小梨平にベースキャンプを張って睡眠調整をして夜中に出発した。
この方法はうまくいった。
とうとう上高地から北尾根をワンデイで前穂高の山頂に立てた。
嬉しかった。
山頂で、もう登ることはない北尾根に向かって万歳して帰ってきた。
それから月日が経つにつれ一つの疑問が・・・
確かに小梨平は上高地だ。けれどベースキャンプを張ったのなら涸沢から登るのとの何が違う?
残念ながらそこに違いを見いだせない。
やはり、夜中に釜トンを出発する方法で実現するしかない。
幸い、昨年、南アルプスの幾つかの山を夜明け前に出発して日帰り登山をしたので睡眠調整のコツが少し分かったように思う。
行けるかも、と、先月(7月)に釜トンを夜中に歩き始めた。
けれどやっぱり夜露に濡れたようになって身体が重く、徳沢で撃沈された。
夜中は無理だ、諦めよう、と思ったが、このときは、厚かましくも前穂高からの下降に明神岳を縦走してこようと思っていた。
明神岳5峰西南稜の下降で日没はイヤだけど、岳沢登山道まで下れれば暗がりでも大丈夫、と言う計画だった。
と言うことは、初発バスで上高地入りして数時間遅れで、北尾根を登り、重太郎新道の下降なら日没になっても道をロストすることはない。
初発バスで行けるのか!?
最後のチャンス、もう一度トライしたい。
ただ、今年は、天気が・・・
晴れるような、雨のような、そんな日の先週、降らないのを期待して登ってみた。
北尾根の最低鞍部まで登ってみたが、小雨。しかも、2500m以上は黒いガスが朝から取れない。
これでは無理だ、と帰ってきた。
でも行ける見通しはたった。
きっと晴天を掴んで行くぞ、と待っていたら、台風が通過して、一日だけの晴天を作ってくれた。
この日を逃す訳にはいかない。
前夜、沢渡の月は煌々と輝いていた。
ワンデイで行く前穂高北尾根、昨日まで一体何度失敗を繰り返してきたことか。
明日はきっと行ける!!
【登山中の印象】
13日(水)、特定日でもないのに普段より20分早く沢渡からのシャトルバスが運行された。
ありがたい。バスまで、今日は私を味方してくれる。
明神を過ぎて徳沢まで一気に歩く。
徳沢から涸沢へのパノラマ新道はまだ閉鎖されたままなので新村橋を渡る人は誰も居ない。
奥又白谷に入って松高ルンゼの出合で小休止。
早くもアミノバイタルゼリースーパースポーツを1本飲む。
水は、1Lあれば充分だと思うが、今日は長丁場、念のため、ペットボトル3本(1.5L)汲んで慶応尾根へと向かう。
前日までの雨、足元の石は苔っぽくて滑りやすい。
慶応尾根の乗越から北尾根最低鞍部(屏風のコル)は見えるが、イヤに高く感じる。上を見ないよう、息を切らさないようトボトボ歩くが、南面の斜面、もうかなり暑い。
最低鞍部の少し先になる八峰の取り付きまで行って、小休止する。
2本目のアミノバイタルを注入し、これから藪漕ぎになるのでレインウェア上下を着た。
パノラマ新道が涸沢に向けて右に下降する所から、そのまま尾根筋の藪に突っ込む。
確かに藪には違いないが、昔は多くの人が登ったのであろう、踏み跡ははっきりついている。
風があるからか、もう木の葉に雨露は付いていない、乾いているし、あまりに暑いので早々にレインウェアは脱いでしまった。
2520m付近から這松になる。
這松とは闘っても勝ち目はない。右手の涸沢側の急斜面に付いている踏み跡を行き、這松が切れた所で尾根に戻り、もう少し藪を漕ぐとニセ八峰に出る。
本物の八峰はもうすぐそこだ。
八峰は、気持ちの良い大きなピークです。
正面七峰から先の景色も良いし、奥穂高から北穂高、槍ヶ岳の見晴らしも素晴らしい。
今年は、花も咲いている。
この心和む山頂の雰囲気は、5・6のコルから北尾根を登ったのでは味わえない。
しばし、景色を楽しむ。
七峰へは、途中三つの痩せた小ピークを越えていく。
冬場のであろう、古い残置ロープが出始める。
痩せていても忠実に稜線上を行く。
6・7のコルの直前で、10m足らずの懸垂下降の残置のロープが束になっている。
ここは懸垂をせずに、5m程戻って、厳冬期同様、涸沢側を巻いてコルに出る。
ここでヘルメットをかぶる。
コルから5〜6mチョットした岩登りになる。
あとは、頑張って、高度を上げるのみだが、なんか今回は、ブッシュが多い気がする。
そんなブッシュから解放されないまま6峰の有名なオブジェ、タヌキ岩に着く。
大きなタヌキのお腹をポンポンと叩いてもうあと一踏ん張りで2794mの六峰に立つ。
上高地からもう1300m程登って来たことになる。
かなりしんどい。
さらに目の前の五峰、四峰、三峰はまだまだ高い。
この調子で前穂高に辿り着いても日没近いかも知れない。
5・6のコルから涸沢へ下れるのか雪渓の様子を覗き込む。
逃げたい、と弱気が起こる。
その弱気、織り込み済みだ。
計画段階から逃げ出さないようにと5・6のコルからの雪渓を下る簡易ピッケルと簡易アイゼンは持ち込んでいない。
七月は、持ち込んでいたが、今日は最初から退路は断っている。
行けッ、ひるむな、と気合いを入れる。
六峰から5・6のコルへは70m程の下りになる。
どうも今日あたり付けられたと思われる足跡が八峰から続いている。
同じように、先行く人がおられると思うと勇気づけられる。
5・6のコルから先はメジャーなルートと言っても良いだろう。
適当に踏み跡を追えば五峰に辿り着く。
その目の前の四峰はこれまたデッカイ。
今日はどこから行こう?と眺めながら3本目のアミノバイタル。
前回、奥又白側に入ってザレで怖い思いをした。
もう四峰のザレはイヤ。
今回は、涸沢側から登り始めて、稜線に出た。
稜線上はヒョコヒョコ歩ける。
大岩の下まで登って、奥又白側にトラバースに入る。
どうも踏み跡はそのままザレっぽいところを奥又白側に抜けきっているようだが、ザレはイヤだと右へ大岩の上へと登っていったが結構厳しかった。
四峰頂上で、左下からの踏み跡と合流した。
北尾根で一番苦手な四峰を終えてホッとした。
3・4のコルでクライミングシューズに履き替え、スリングでハーネスを作って登っていく。
足は上がるが腰がもう重い。
三峰から二峰はすぐそこだと記憶しているが、今日はやけに高く感じる。
二峰の下降は懸垂だ。
この懸垂のためのみに20m x 8mm の軽いロープを買い、この懸垂のためにのみここまで担いできたロープを使う。
いよいよ目の前が本峰。
ついに登った。
こんな時間、誰も居ない。
風が強い。少し寒い。
靴を履き替え、ザックを整理する。
水はまだ900ml以上ある、そんなにはもう要らない。500mlは山頂に戻す。
ここからは全部下降、ヒザサポータを着けた。
ヘルメットは被ったまま。
何とか明るいうちに岳沢小屋に一歩でも近づきたい。
ついにやれたワンデイの前穂高北尾根の感動なんて感じる余裕など全然無い。
さあ下ろう。
紀美子平の少し上でテント張っている人が居る。
なんとしても今日帰ろうとする私、ビバークと称して気ままに泊まる人、山の楽しみ方は人それぞれだ。
紀美子平にも三人の人が居る。
なにやら真剣に話しして居られる。
一声掛けて止まらずに降りていく。
振り返ると二人の人が下降し始めた。その歩行は遅い。到底明るいうちに小屋には着きそうもない。
ねじれた梯子の先で振り返るともう後続の二人の姿はない。
こちらも余裕があれば、付き添って下ってあげるが今の私にそんな余裕はない。
日没と競って下っていく。
一歩の休みもない。
カモシカの立場まで下ってきた。小屋はまだ遠いがテント場は意外と近くに感じる。
もしかしたら、明るいうちにテント場まで下れるかも知れない。
頑張ったお陰でヘッドランプの世話にならずに小屋まで降りてこられた。
助かった。
本日5本目のアミノバイタルを飲む。
4本目は山頂で飲んだ。
いつもなら、上高地で、下山のメールを家族に送る。
今日は上高地では遅すぎる、今から4時間かけて車まで降りるが、もうやばい所は終わった、と電話した。
そんなことをしているわずかに10分程で暗くなってしまった。
ヘッドランプをつけて歩き出す。
ヘッドランプで足元を照らし、そこだけを見て下っていく。
よそ見などしても何も見えない。
かえって安全に歩いてる?と思わなくもないが、日没直後でランプの周りに虫が集まってくるのには閉口する。
綺麗に整備された道は一歩も間違わずに梓川林道まで下ってきた。
やっぱり道はありがたい。
真っ暗な上高地バスターミナルのベンチで、6本目のアミノバイタルを飲み、5分程寝転がって足を休ませる。
車道といえどもずっとうつむき加減で足元を照らしながらひたすら歩く。
やっと釜トンの明かりが見えた。
スマホのGPSを切る。
そして残り1310mの釜トン。
抜けた。
ついにワンデイで帰ってきた。
沢渡の駐車場で翌朝8時過ぎまで爆睡していた。
【日帰りとワンデイ】
普通、日帰りと言えば、家を出たその日のうちに帰ってくるのを言う。
これでは地元の山しか日帰りの山は存在しなくなるので、自分なりに日帰りやワンデイに縛りを掛ける。
各自が好きにルールを作ればよい。
誰かに強制する訳でもないし。
私は、上高地のように、初発バスで入って、終バスで降りていくのを「日帰り」と言うようにした。
けれどこれでは間に合わないと、夜中に釜トンから歩いて上高地を通過したり、今回のように終バスに間に合わず、歩いて釜トンを出て車に戻ったりする場合を「ワンデイ」と呼ぶようにした。
上高地のように自家用車規制があれば、日帰り登山とワンデイ登山の区別は起こりうるが、通常、車、バス、タクシーが入れる所が同じ、新穂高や白馬の登山基地猿倉などでは日帰りとワンデイに違いは起こらない。
これは私が自分に勝手に付けた縛りでしかない。
各自の縛りで良いのだと思う。
ps; 個人的感想
このヤマレコの山行記録、実に書きにくくなりましたね。
atosukoshi さん、初めまして。
北尾根日帰り、大変だったと思います。さらに下山してから、上高地から中ノ湯までの歩き、うんざりするところです。
最近の IV 峰付近は、崩壊が進んで通りにくいような話を聞いたことがありますが、III 峰も IV 峰も、問題なさそうですね。
今夏、ここを計画していましたが、お天気が悪くて流れてしまいました。
日帰り。24時間以内に自宅に戻ることを基準にしていますが、アルペンルートのように、朝遅くて終わりが早い交通機関の場所は例外にしています。東京から沢渡までの往復運転を一人でやるのは、結構辛いです。
私は「のこりわずか」という感じです。シビアなところに行かれるレコ、これからも楽しみにしています。
misuzu さん、コメントありがとうございます。
一度は終わったはずの北尾根日帰り、また行くことが出来てありがたいと思っています。
その後も天気が悪かった性もあって山には向かわず、余韻に浸っていました
atosukoshiさん、こんばんは。
初めてメッセージ入れさせていただきました。
じっくりレコを拝見させて頂きましたが、これは大変な山行でしたね。
釜トンネルから日帰りのこだわりに、敬服いたしました。
ここまで自分に厳しくなれるものでしょうか?
今後も、atosukoshiさんのレコを楽しみにしております。
bicycle さん、コメントありがとうございます。
> 自分に厳しく
というような美しいことではなく、単に、
行ってみたい、きっと行ける、と欲望丸出しの山です
山友からのお誘いを断ってばかりで、不義理してしまっています。
それだけに、このようなコメントいただけると嬉しいです。
ありがとうございました。
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