ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 5048463
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
日高山脈

ペテガリ〜コイカク

2022年12月26日(月) ~ 2023年01月01日(日)
 - 拍手
GPS
152:00
距離
76.5km
登り
3,956m
下り
3,708m

コースタイム

あともう一度、もう一度だけ山に行こう。本物の山に。

DAY1(12/26):上野深(12:45)元浦川林道ゲート(15:15)林道上(17:30)=C1
快晴 街で楽しいクリスマスを過ごし、始発のバスに揺られて荻伏、上野深へ。荻伏からはペテガリからラッコまでが遠く美しく見える。まずはゲートまで15km1ピッチ。だんだんと山に入っていく。日高から十勝へ。俺たちがやりたいのは”旅”なんだ。Google mapでは5時間半らしい。ああ重い。神威山荘までの予定だったが、対岸に渡るあたりで暗くなり、2人とも体から壊れる音がしはじめたので行動終了。
効率的なことは必ず美しいことだろうか。

DAY2(12/27):C1(5:30)渡渉(7:30)ペテガリ山荘(14:00)=C2
晴れ ラテルネつけて早出する。重すぎる。神威山荘のところの渡渉はまた間違えた。2本目を左折だっていつまでたっても覚えねえなこのタコ!脛ラッセルで大量の汗をかきながらベッピリのっこし。全然はかどらない。西尾根を少し上げるつもりだったが山荘に入ってしまう。昨日も今日も計画通りに進まずつらい。
でもこれがやりたかったんだ。街での暮らしや自分の嫌なところを、体から流す一滴一滴の汗が落としてくれる気がする。

DAY3(12/28):C2(6:30)・1050(9:30)・1273(12:00)Co1210コル(14:45)=C3
晴れ⇒雪 夏道沿いに歩きだすが、すぐに不明瞭となる。Co1050までシカの足跡を使いながら登る。村井は体力的にしんどそうなので、Co1160肩地形のところで分かれる。無念。西尾根上は比較的快調。ところどころ脛程度のラッセルがあるが思ったより進み、1日目と2日目の負債を完済する。朝は晴れていたがテンバにつく頃には大雪になった。テンバでは歯が欠けた。
お前は人間の心を失ってしまった。最近複数人からそう言われる。俺は本当に冷血動物になっちまったんだろうか。

DAY4(12/29):C3(7:00)Co1550(9:00)=C4
雪 どこまでいけるかわからないが、とりあえずペテガリのheart break hillに取り掛かる。4日目にして筋肉が感覚を思い出したようで、よく歩ける。風は弱いが視界がとにかくない。結局この日はよくならなさそうなので樹林限界で泊まる。予報では1/1から5まで寒気が入るそう。つまり明日明後日が勝負。天気悪くルベツネまでもいけないくらいなら敗退だ。突っ込みすぎないか、日和りすぎないか、不安と葛藤が渦巻くが、今はとにかく明日の好天を祈って眠るだけ。
村井の引き返しと、自分のこれまでの登山ついて一日中考え、ノートに書きつける。だんだんこの山行の意味が分からなくなってくる。

DAY5(12/30):C4(6:30)ペテガリ(7:00)ルベツネ(8:30)1599(11:30)1569先コル(13:15)=Ω5
曇り、視界50→∞ 視界が全然ないが風もない。まずペテガリまで行ってみる。毎度このピークではなんも見えん。回復傾向なので北へ。向かい風に加え、視界が100も無く辛い。なんも見えないから楽しくもなんともない。何事もなく初のルベツネを踏む。日高の主稜線で名前のあるピークはこれが最後。順調に進むのはいいが、稜線がこんなにもあっけなく終わっていくのには寂しさが...。下りで一瞬EP。1599,1569周辺のリンゴ畑も全然大したことなかった。僕にとっての北海道の冬山は終わってしまうんだという喪失感。(そんなことはない.今までやってきたジャンルにおいてひと区切りついただけ.なんなら早大尾根もある.2023/2追記)今日が冬の日高で過ごす最後の夜になるかもしれない。せっかくなのでルベツネを望む位置にイグルーを掘った。作成40min。寂しさを紛らわすためにラジオに送ったメールが今回も読まれる。北18条の4回戦ボーイ。
今日も本当にいろいろと考え、文字にした。あまりにもクサすぎてここには書けない。

DAY6(12/31):Ω5(6:45)ヤオロマップ(8:10)コイカク(10:00)札内ヒュッテ(13:15)=C6
快晴 イグルー出ると全見え歓喜の舞。昨日までの暗い気分が吹き飛ぶ。朝日に燃え、城塞のごときヤオロマップに1599の影が映える。息を切らして駆け上がる。ピーク直下100mで急になったのでEPにする。這い上がるようにしてヤオロに登りきると真正面に39が。振り返るとようやくペテガリも見える。コイカク に向け、ナナシの吹上げに身を傾けながら歩くとヤオロの窓付近でワンゲルOBの3人とスライド。「どうせ飯田だと思った」とはなんと嬉しい誉め言葉か。窓の下から夏尾根頭まではスノーシューで。次第に風が強まり、夏尾根頭につく頃には23はガスに隠れてあたまだけが見える。この極上空間には再びCo1500を喘ぎながら登らなければ来られないんだと、名残惜しい思い。直下の下りは氷化していて過去最怖。膝を思いやりCo1100までEP、末端まで後ろ歩きをしながら降りる。消えかかった彼らのトレースをたどりヒュッテへ。歩くほどに遠ざかる稜線。寂しさのあまり何度も振り返ってしまう。ヒュッテはストーブが不良で使えずガン萎え。ココア味の汁粉(視覚で脳がバグってあんこの味がする)とカップそばで年越し。
静かにこの一年と日高での6年間を振り返る。「敗れざる者たち(沢木耕太郎)」の[クレイになれなかった男たち]が痛いほど刺さる。

DAY7(1/1):C6(8:30)路上(12:30)
晴れ 朝方、強風で小屋がガタガタ言っていて起こされる。PUFFYを聴きながら荷物をまとめて小屋を出る。街へ近づくというよりも、山から遠ざかる感覚のほうが大きい。冬晴れの十勝の空にまっすぐな道。牛を眺めながら一休み。そうだ、これになりたかったんだずっと。あと3時間くらいでこの時間も終わってしまうんだな、と思いながらも立ち上がりまた歩き出す。すると後ろから3人の乗った車が。あまりにさわやかで咄嗟に乗ってしまう。突然の終わりと車のあまりの速さに正直戸惑う。

でも、まあこれでいいんだ。
また旅に出よう。
天候 詳細後述、https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/wxchart/quickmonthly.html?show=202212
過去天気図(気象庁) 2022年12月の天気図
アクセス
利用交通機関:
バス
帰りはバス停まで歩いていたら、後ろから来た野村さんデリカに乗っけてもらった。ありがとうございました。
コース状況/
危険箇所等
クリスマス前の湿雪の影響か、雪の状態は非常に良かった。
その他周辺情報 インデアン敗退、ヨーカドーの定食屋
ひまわり温泉
ラッコからルベツネまで見える荻伏のバス停
2022年12月26日 11:30撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/26 11:30
ラッコからルベツネまで見える荻伏のバス停
「稜上イグルーほれそうっすね!」←4年目にもなるとこの距離で分かるんだなあ
2022年12月26日 12:27撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
2
12/26 12:27
「稜上イグルーほれそうっすね!」←4年目にもなるとこの距離で分かるんだなあ
果てしなく遠い
2022年12月26日 13:16撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
1
12/26 13:16
果てしなく遠い
入場門
2022年12月26日 14:20撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/26 14:20
入場門
この作業よりしんどいことがわんさかある社会だったら、社会に出たくない。
2022年12月28日 07:20撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
2
12/28 7:20
この作業よりしんどいことがわんさかある社会だったら、社会に出たくない。
パッとしないが進むには進む。
2022年12月28日 12:28撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/28 12:28
パッとしないが進むには進む。
うげぇ...
2022年12月28日 14:48撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/28 14:48
うげぇ...
いっつもこう。
2022年12月30日 06:59撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
3
12/30 6:59
いっつもこう。
ルベツネ北峰
2022年12月30日 08:22撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
1
12/30 8:22
ルベツネ北峰
2022年12月30日 08:41撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/30 8:41
ちょい細い。が、ちょい細いだけ。
2022年12月30日 09:13撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/30 9:13
ちょい細い。が、ちょい細いだけ。
ヤオロマップ南面が深い。
2022年12月30日 09:23撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/30 9:23
ヤオロマップ南面が深い。
そんなにあっさり終わらないでくれよ。
2022年12月30日 10:02撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
3
12/30 10:02
そんなにあっさり終わらないでくれよ。
パイパンリンゴ畑だった...
2022年12月30日 12:29撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/30 12:29
パイパンリンゴ畑だった...
Ωとルベツネ北面
2022年12月30日 14:12撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
2
12/30 14:12
Ωとルベツネ北面
この日のヤオロマップはずっと雲の中。
2022年12月30日 14:14撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
1
12/30 14:14
この日のヤオロマップはずっと雲の中。
こいつウサギなん??
2022年12月30日 16:24撮影 by  iPhone 8, Apple
12/30 16:24
こいつウサギなん??
朝。
2022年12月31日 06:44撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
3
12/31 6:44
朝。
カチポロはどこにいても見える。
2022年12月31日 06:44撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
3
12/31 6:44
カチポロはどこにいても見える。
楽しそう。
2022年12月31日 06:44撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
2
12/31 6:44
楽しそう。
2022年12月31日 06:55撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
5
12/31 6:55
2022年12月31日 07:03撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
8
12/31 7:03
時代を越えて、何人もが見てきた景色
2022年12月31日 07:03撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
7
12/31 7:03
時代を越えて、何人もが見てきた景色
写真には写らない美しさがある。
2022年12月31日 07:03撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
8
12/31 7:03
写真には写らない美しさがある。
とっても楽しそう。
2022年12月31日 07:04撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
4
12/31 7:04
とっても楽しそう。
語彙力が追い付かない。
2022年12月31日 08:11撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
10
12/31 8:11
語彙力が追い付かない。
ペテガリはヤオロマップピークでようやく見える
2022年12月31日 08:11撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
5
12/31 8:11
ペテガリはヤオロマップピークでようやく見える
西川尾根とカムエク南西稜。ひいき目だけど西川尾根も綺麗じゃん。
2022年12月31日 08:11撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
6
12/31 8:11
西川尾根とカムエク南西稜。ひいき目だけど西川尾根も綺麗じゃん。
HUWVの3人衆
2022年12月31日 08:27撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
6
12/31 8:27
HUWVの3人衆
Photo by R.Nomura
さあ、帰ろう。
2022年12月31日 10:04撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/31 10:04
さあ、帰ろう。
次第に遠い世界に。
2022年12月31日 11:53撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/31 11:53
次第に遠い世界に。
この木好きなんだけどわかる??
2022年12月31日 12:35撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
1
12/31 12:35
この木好きなんだけどわかる??
2022年12月31日 13:04撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/31 13:04
2022年12月31日 13:11撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
12/31 13:11
なんでもない景色だが、GOLDEN ERAの俺たちだけが知っているたくさん思い出がフラッシュバックする。
2022年12月31日 13:11撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
1
12/31 13:11
なんでもない景色だが、GOLDEN ERAの俺たちだけが知っているたくさん思い出がフラッシュバックする。
まだ帰りたくない。
2022年12月31日 13:24撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
2
12/31 13:24
まだ帰りたくない。
退場門
2023年01月01日 09:40撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
1/1 9:40
退場門
ずっとこれが見たかったんだ。
2023年01月01日 11:29撮影 by  COOLPIX W300, NIKON CORPORATION
5
1/1 11:29
ずっとこれが見たかったんだ。

装備

個人装備
米スパ130 乾物適当 味1かけ ラード1本 ゆかり ビスケットorかりんとう1袋 あんぱん2こ レーズン少々 柿ピー少々 砂糖75 マリーム50 茶っぱ2つ ココア(嫌いなので不要) ガス缶冬用430ml2本(1本で4-5日持つ) 湿布 アスピリン つま先カイロ
共同装備
テント EPI めっちゃ吸うタオル ランタン
備考 新調したベガのインナーが快調

感想

僕は北海道に来て、AACHに入って、日高を知ることができて本当に良かった。
僕に本当の山登りを教えてくれて、こんなに楽しい6年間を過ごさせてくれた、AACHと日高にありがとう。
このままいつまでも美しくあって欲しいと心から願います。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:1795人

コメント

日高にご挨拶に行きたくなりました。自分なりの方法で。
2023/1/2 12:52
nikonikoaokazuさん
日高はいつでも僕らを待っています。厳しくも優しく。
2023/1/2 13:06
卒業してから足が遠のいていましたが、この記録見ると行きたくなりました。ありがとう。
2023/1/2 17:29
2015gutiさん
自分に山を教えてくれた方々にそう言ってもらえるととても嬉しいです。「あの瞬間」は追憶の対象として留めておくにはあまりに大きすぎて、迷子になってしまいます。
2023/1/3 12:38
あ、おれ仕事やめないともうコレ出来ないんだ。
2023/3/30 15:45
Iida_2017さん
仕事やってても余裕でできます。
2024/1/8 0:05
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

無雪期ピークハント/縦走 日高山脈 [3日]
ペテガリ岳・神威岳
利用交通機関: 車・バイク
技術レベル
5/5
体力レベル
5/5

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら