奥穂高岳 小豆沢滑走 (直登ルンゼ敗退)
- GPS
- 17:34
- 距離
- 22.1km
- 登り
- 1,896m
- 下り
- 1,891m
コースタイム
- 山行
- 11:48
- 休憩
- 5:41
- 合計
- 17:29
4/9 横尾避難小屋4:25 -- 涸沢9:00 -- 穂高岳14:45-15:45 -- 涸沢17:35 -- 横尾避難小屋20:50
4/10 横尾避難小屋5:00 -- 釜トンネル入り口12:00
天候 | 4/8 11時ごろから雪 4/9 快晴、朝は強風、10時ごろから風収まる |
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過去天気図(気象庁) | 2023年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
直登ルンゼの適期は普通GWぐらいだが、今年は雪解けが早いので4月がいいかもしれないと想像して初めて挑戦してみた。結果的に、カチカチでとても滑れる状態ではなかったため、小豆沢を滑って帰った。風が強いせいか、雪というより氷が付いているため、かなり昇温しないと滑走できるような状態にはならないのだろう。
今回は判断ミスにより下山がかなり遅くなり、下界にかなり心配をかけてしまった。会の人に申し訳ないと思ったが、リベンジを勧めてくださる人が多くてうれしかった。教訓を次回に生かすため、恥ずかしながら、記録と考察を記す。
4/8
午後から天気が悪い予報だったので、早く坂巻温泉を出発した。ひたすら長い歩きで嫌になる。横尾避難小屋はかなり綺麗で快適。水場は入り口の目の前だし、トイレも近い。夕飯のすき焼きが美味かった。早く寝て明日に備える。
4/9
2時起床3時出発のつもりで起きたが、風が弱まるのが10時ごろになりそうだったこと、雪が緩むのは12時ぐらいと考えたことから、二度寝して4時出発とした。朝飯は珍しくパンだった。(後で腹が早く減ったのはそのせい?やはり朝は米に限ると2人とも言っていた)
出だしはシートラ。雪が少なく、なかなかスキーが履けない。微妙に踏み抜くので時間がかかる。横尾谷の、夏に吊り橋がかかる場所の少し手前でようやく履けた。雪が少ないと鬱陶しい。横尾谷を渡った後は沢床に近いところを歩きたかったが、なんだか割れているような気がしたので、なるべく夏道沿いに上がることにする。一部、中途半端にクラストした狭い地形を上がる形になってしまい、シートラだと踏み抜くし、かといって履いたままだとキックターンが多くなり、登りにくい。ここでも時間ロス。Lはなんとか脱がずに済んだが、同行者は早々にシートラに切り替えていた(※1)が、結果的にスキーの方が早かった。こういう場所は切替の判断が難しい。
標高を少し上げた後のトラバース道はスキーを履いたまますんなりと進むことができた。涸沢直前で一本取る。ここで同行者のウィペットの先端の1段が抜けて紛失していることが分かる(※2)。涸沢周辺の斜面はデブリが埋まっており思ったより綺麗だった。GWに向けてどんどん雪崩が落ちてくるのだろう。
ここからは小豆沢を詰めていくが、膝下ぐらいで重い雪のラッセルだった。そのため想定していたよりも時間と体力を消費した。ここの雪を見て、直登ルンゼにも新雪があるのではないかと想像していたが、間違いであることが後に分かる(※3)。穂高岳山荘直前で同行者がシールトラブルに見舞われ、Lが穂高岳山荘に着いたのは12:20だったが、同行者は13:00となった(※4)。Lはなんだか眠気がひどく、同行者を待っている間うとうとしていた。結構疲れていたのだろうが、この時はなぜかそれを自覚できなかった。
穂高岳山荘でシートラへの切り替えおよびアイゼン・ハーネスを装着したが、時間をかけすぎた(※5)。穂高岳山荘からの雪壁はクラストが著しく、アイゼンもピッケルもところによると5cm程度しか刺さらなかった(※6)。同行者と違いクライミングの経験のないLは少し怖かったが、ウィペットと合わせてダブルアックスにして、確実な動作を心がければ大丈夫と判断して前進した。Lの体験した中で一番急・一番硬い斜面だった。
2回目の雪壁を超え、山頂に着いた。Lが奥穂の山頂に来るのは8年前、大学2年生の夏以来である。感慨深い。山頂直前から直登ルンゼのドロップポイントを見た時、明らかにクラストしているのが見て取れた。この時点で滑走は不可だろうとLは思っていたが、山頂で念のため懸垂下降してチェックしたところ、やはり滑走はできそうにない。仕方なく引き返すことにした(※7)。時刻が遅すぎたため余計クラストしていたというのもあるだろうが、あの感じだともっと早い時刻でもだめだっただろう。
奥穂高山荘からスキーを履いて小豆沢を滑る。無駄にシートラで往復してしまったが、山頂までスキーを運ぶのは山スキーヤーとして大事なことである(※8)。涸沢までの滑走はけっこう楽しめた。
時間が遅いため涸沢から先はけっこうクラストしていて、トラバースしにくかった。このあたりで同行者のもう片方のストックもいつの間にか先端部が抜けて無くなっていた。日没を迎えたあたりでシートラに切り替え、ヘッデンを点けて歩くが、疲労もあいまってかなり嫌になってきた。腹も減った。また、Lのヘッデンはどこか接触が悪く、振動を与えると消えるというトラブルに見舞われる(※9)
意気消沈しながらひたすら歩き、横尾避難小屋に着いたのは夜9時。Lは完全にエネルギー切れとなり、会社を休んでもう一泊することを決意する(というより余儀なくされた)。同行者は頑張って出勤すべく、10時に横尾を出て、Lの車を使って一足先に帰った。
4/10
Lは5時に横尾を出て、途中大正池を散策したりしながら、のんびり中の湯のバス停まで歩いて帰った。13:05発のバスに乗り、自宅に着いたのは18:00ごろ。L自身の下山連絡が言葉足らずだったためまたしても下界に混乱をもたらしてしまった。長い週末だった。
※1:(時間について)横尾から涸沢まで雪が少なく、想定より時間を要している。帰りも時間がかかることは想定できたはず。引き返す時刻に反映すべきだった。
※2:(装備について)ストックのスノーバスケットが無かった同行者はラッセルがやりにくかったはず。ラッセル時はストックを融通すべきだった。
※3:(時間について)もともと穂高岳山荘11時、直登ルンゼドロップ12時ごろを予定していたのに対し、この時点で2時間遅れている。その事実を踏まえて行動方針を決めず、とにかく前進するという判断をしてしまった。穂高岳山荘を13時に出て、仮に直登ルンゼを首尾よく滑走できたとしても、涸沢着は16時ごろ、横尾着は20時ごろとなり、日の入りまでの余裕が少なすぎる。時間管理が甘い。
※4:(雪質について)昨日から風が強かったため、稜線には雪は積もっていなかった。理屈としては分かるが、ここまでとは思わなかった。やはり3200mの稜線はぜんぜん違うということのようだ。
※5:(時間について)自分の経験上、疲れていると動作が緩慢になり、気づいたらかなり時間が経っていた、というふうになる。疲れている本人は自分の動作が遅いのに気づかないので、時計をもっと頻繁に見るよう心がけるべき。腕時計を手袋の下にするのは次からやめる。
※6:(雪質について)穂高のあたりの雪質をよく知っていれば、雪壁を登る時点で直登ルンゼの雪質も予見できただろう。3000m超えの雪質の知見が足りていなかったため今回は仕方なかったが、次からはもう少し想像が働くはず。
※7:(時間について)タイムリミットが迫っている中で、往生際悪く滑走できるチャンスを見込んで時間をかけるのはよくなかった。スノーバーで支点構築して2人順番に懸垂下降して雪質チェックするよりは、安全側に判断してさっさと引き返すべきだった。
※8:(下界への連絡について)この時点で下界に一報を入れるべきだった。この先徳沢まで電波は入らなかった。
※9:(装備について)ヘッデンはBDのicon700。何度か叩くと治ったが、配線が露出しているタイプは構造上脆いように思う。明るいので今後も使うとは思うが、バックアップのヘッデンは必ず持っていくことにする。
反省
- 時計をもっと頻繁に見る。予想タイムとくらべて早いのか遅いのか、それを踏まえてその後の行動にどう反映するか。引き返す時刻は常に念頭に置いておく
- 最後の最後まで「行ける!」という気持ちを強く持つのは大切だが、引き返すべき材料が揃った時はさっさと帰る。今回は気持ちが強いというより調子に乗っていた。気持ちに飲み込まれてはいけない
- 現場で必死になっていると下界のことが頭から抜けがちだが、不必要な心配を下界にかけないこと。そもそも、必死な状況に陥っている時点で負けである
- 装備1つが壊れると他の装備も次々と壊れる傾向がある。1つ壊れたら2つ壊れると思うべし
- 疲れている時にそれを自覚できるようになる。「疲れていない」という自己暗示が効く時もあるが、いつでも体力でゴリ押せるとは限らない。
行動中、たぎる情熱、熱意の傍に沈着冷静な判断、その一里塚となったかな
最初その理由が分からなかったのですが、金曜日の大雨で濡れた雪が、土曜日に一気にやってきた寒波で凍った?と想定してるのですが、どうでしょうね・・・?(金曜日はFreezing Levelが3,500越えてた記憶があるので、アルプスも雨だったんじゃないかなと)
金曜の大雨の後、プチ冬型となり、栂池の上の天狗原ですら、カチカチアイスバーンでした。
暖気が入る、雨が降るということは、その後の気温低下で氷化するということでもあります。
以前は3月といえばそんな極端なことはほとんどなかったんですけどね。
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