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Yamareco

記録ID: 547036
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アルパインクライミング
日光・那須・筑波

那須 朝日岳東南稜

2014年11月15日(土) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
4.4km
登り
501m
下り
489m

コースタイム

8:00 峠の茶屋駐車場出発
8:50 取り付き点
10:20 ゲート(筆者が勝手に命名、写真参照)
10:30 撤退検討地点
11:20 懸垂下降のギャップ
12:10 山頂直下のスラブ
12:20 山頂
12:30 朝日の肩
13:00 フランケン岩(筆者が勝手に命名。直方体の岩塊が特徴的な岸壁で、一般登山路はこの岩の西側を下ります。)
13:10 恵比寿大黒(剣が峰への直登/トラバース分岐点)
13:30 峰の茶屋跡避難小屋
13:45 取り付き点
14:30 峠の茶屋駐車場
天候 吹雪、地吹雪、晴れ間あり
過去天気図(気象庁) 2014年11月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
大丸温泉ゲートが12月1日より3月31日まで閉鎖されるため、閉鎖中は大丸温泉駐車場が駐車場所となります。大丸温泉から峠の茶屋駐車場までは車道を横切りながら高度を稼ぐショートカットの登山道があり、標識も整備されてます(その標識が積雪期に見えるかは確かめてません)。

今日降った雪の影響で路面が凍結すると思うのでノーマルタイヤでの峰の茶屋駐車場へのアクセスは危険です。
コース状況/
危険箇所等
1.取り付き点は一般登山道の「こんなところに高山植物が」の案内板です。
ここから砂防ダムへ向かって降り、稜線に取り付きます。
2.とにかく風が強い場所です。強風で有名で、一般道、無雪期でも風による事故が発生しています。取り付き点で自信がなければ撤退したほうがいいでしょう。
3.直登が無理と判断した場合、東側の斜面に迂回できる場合があります。懸垂視点のあるギャップの前の斜面と、懸垂支点下降後の登りについては今回は迂回しました。
4.今日の時点では雪はパウダー状態でしまっていませんが、地面そのものが凍結しているため、予想以上にアイゼンは利きました。

その他周辺情報 トイレは大丸温泉駐車場、峠の茶屋駐車場にあります。そこから上にトイレはありません。
有名な温泉地なので、ゲート付近の大丸温泉、殺生石そばの鹿の湯、をはじめ日帰り温泉は多数あります。なお三斗小屋温泉には立ち寄り湯はありません。
今日の東南稜を一般道下降点から眺める。
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今日の東南稜を一般道下降点から眺める。
東南稜下部。最初はこんな感じのところを登った。
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東南稜下部。最初はこんな感じのところを登った。
ゲート(筆者命名)。今回はゲートの間を通って登はんした。
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ゲート(筆者命名)。今回はゲートの間を通って登はんした。
ゲート通過後の岩壁。あと少しが登れない。撤退を考えたころ。
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ゲート通過後の岩壁。あと少しが登れない。撤退を考えたころ。
東側に迂回して先へ進めることを発見。この先が有名な懸垂支点。
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東側に迂回して先へ進めることを発見。この先が有名な懸垂支点。
懸垂支点のギャップを過ぎると(登りは迂回した)ざれ地。雪がないのは風がものすごいから。簡単なのに前に進めない。
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懸垂支点のギャップを過ぎると(登りは迂回した)ざれ地。雪がないのは風がものすごいから。簡単なのに前に進めない。
山頂へ続く道と、山頂直下の岩壁。道に見えた白い筋は吹き溜まりであった。
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山頂へ続く道と、山頂直下の岩壁。道に見えた白い筋は吹き溜まりであった。
山頂。朝日岳の神様。ありがとうございました。
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山頂。朝日岳の神様。ありがとうございました。
山頂から朝日の肩へ向けての藪の様子。
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山頂から朝日の肩へ向けての藪の様子。
朝日の肩。谷から吹き上がる風に浮き上がりそうになったり、吹雪で道が見えなかったりと、困った場所。
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朝日の肩。谷から吹き上がる風に浮き上がりそうになったり、吹雪で道が見えなかったりと、困った場所。
一般道の鎖場のトラバース。雪がどっさり。ただし吹き溜まりは風は弱い。
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一般道の鎖場のトラバース。雪がどっさり。ただし吹き溜まりは風は弱い。
登山道入り口にいる狛犬。那須の神様、無事の下山を感謝いたします。これからも精進してまいります。
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登山道入り口にいる狛犬。那須の神様、無事の下山を感謝いたします。これからも精進してまいります。

装備

個人装備
保温材入り冬靴 12本爪ワンタッチアイゼン スノーゲーター ピッケル ヘルメット 目だし帽 ゴーグル 手袋(3組 2組は替え) オーバーグローブ ハーネス カラビナ2枚 安全環付きカラビナ エイト環 120cmスリング2本 ザイル30m 化繊下着上下 ウール厚手ソックス タイツ フリースパンツ 山パンツ レインパンツ 長袖シャツ フリース レインジャケット ダウンジャケット タオル 行動食(チョコレート ドライフルーツ ビーフジャーキー) 湯沸し道具一式 水1L
備考 強風で体温が奪われて簡単に凍傷になるので肌の露出を防ぎ、風をシャットアウトできる装備、目だし帽、ゴーグルなどが必要です。雪が吹き付けて目が開けられなかったのでゴーグルなしでは歩くのは困難だったと思います。

感想

10月の紅葉時期に無雪状態での東南稜下見をするつもりだったが、アキレス腱の痛みで断念してしまった。この冬は那須でトレーニングするつもりだったので、コースの下見を雪が降る前にしておこうと思って那須に向かったのであるが、峠の茶屋駐車場に来るとうっすらと積雪がある。しかも、那須岳名物の烈風が吹き始めた。冬山トレーニングのための下見のつもりが、トレーニング本番になってしまった。

「新雪や薄氷に覆われた岩は、アイゼン、ピッケル等の装備があってもほとんど意味を成さず、岩稜歩きは極端に困難となる」(今年10月の穂高山荘登山情報より)というわけでこういう条件での登はんは厳冬期と違った難しさがある。2週間前に西穂ー奥補縦走で悪戦苦闘して、またかよという苦笑いが出てしまった。

しかも、今日は降りたてのさらさらの乾雪。いっそ今回はやめようかとさえ考えた。一般道から分岐する取り付き地点でアイゼンをつけ、斜面の下りはじめでアイゼンの利きが悪かったらやめようと決めて踏み出した。そうしたら案外アイゼンは地面をしっかりと捉えてくれるし、岩で足がぐらつくことも少ない、ということで砂防ダムを二つ渡っていよいよ憧れの東南稜線に取り付いた。

今回はとりあえず朝日岳山頂につくことと、コース全体の様子を見ることを目標とした。気がついたことは、砂防ダムを稜線取り付きから懸垂下降のギャップ前までの岩場は意外と丸っこくて冬手袋ではつかみにくいことであった。アイゼンの前爪は利くのだが、ホールドが危なっかしくてあと3,4手というところが登れなくて断念したルートがいくつもあった。無雪期に使っているゴム引き手袋のタフレッドなら登れるかもしれないが、あの風が通り放題の手袋ではあっという間に凍傷になってしまう。一旦は撤退も考えたが、あちこち調べていくうちに、東側の斜面を迂回できる箇所がいくつかあり、直登は冬いっぱいかけて研究することにして、まずは登頂を目指すことにした。

そして、有名な懸垂ギャップ。懸垂下降の支点はしっかりした鎖があったが、よく見てみると鎖なしでも降りられないことはないようで、降りる手順、足順を決めてから降りることで何とか下降に成功した。登り返しについては、迂回の誘惑に負けてしまった。またこのギャップが風の通り道になっているため、登はん中にあおられるのを嫌ったといういいわけもある(下降の前にもずいぶんとあおられたが、岩に張り付いて風のやむ瞬間をひたすら待った。下降中風止みで待ち疲れたために登りはさぼったという面もある)。

ギャップを巻いてしまうと、あとは山頂直下に向けて踏み跡状に積もった雪が見えた。ところが実際に歩いてみると、踏み跡に積もったというよりも、風の加減でそこに雪が吹きたまったというほうが正解だったようだ。山頂から続く稜線は昨年春に山頂から下っており、見当がついていた。そのときは山頂直下のスラブがちょっといやらしく感じたのであるが、今回はアイゼンでも案外すんなり登れてしまい、1年間の経験値の向上を感じさせるものがあった。

しかし、帰りは楽勝というわけには行かなかった。まず風がすごい。烈風が荒れ狂っている瞬間は歩けないので耐風姿勢で待たなければならない。登はん中は風を避けるルートをなるべく選んでいたのと、一般道がある稜線が東南稜に対して多少は風防の役割を果たしているようだ。一般道には西側からの季節風が斜面を駆け上がるようにして吹き付けてくる。気をつけないと体が浮き上がってしまいそうだった。そして道迷い。朝日の肩からの下山路がわからない。朝日の肩からはいかにも下山路ですよという感じのきれいな尾根筋があるのだが、筆者の記憶では確か肩からはがれ地の下降だったはず。その踏み跡が積雪と激しい地吹雪のせいでよくわからず、ルートファインディングに時間がかかった。このときには登はんとは別の意味で背筋が冷たくなった。あんな烈風のなかではビバークできない。

幸いにも下山路はじきに見つかり、なじみの鎖のトラバース、フランケン岩、恵比寿大黒と、強風のため途中何度も耐風姿勢で停止しつつも下山した。このあと、本来なら剣が峰を登るのが正しい冬道だが、まだ積雪が少なく、雪崩の心配はないだろうということで、夏道のトラバースコースを選んだ。ここは風がほとんど吹かずに助かった。そしてトラバースを過ぎて避難小屋が見えてきたときにはほっとした。もっとも避難小屋までの100mくらい、また烈風にあおられまくってよちよち歩きの末の到着だったが。

小屋の中では10人程度の先客があった。隅の場所を借りて、荷を降ろし、板チョコをかじった。避難小屋に入って板チョコをかじると、登山って感じがする。これでアルコールランプでお茶でも沸かせば完璧だが、すでにトイレに行きたくなってきていて、早く下まで降りたいという気持ちが勝ってしまった。

下山中、取り付き地点近くであいさつした登山者の方に「東南稜行って来られたんですか?」と問われてうれしくなり、しばし東南稜談義。確かに、ヘルメットピッケルはともかく、ハーネスつけていたら、わかる人にはわかるであろう。この方は那須岳常連さんで、さまざまなバリエーションルートを歩いていらっしゃるとのことであった。

思いのほか早く下山に成功したが、最後に大きな難関が待っていた。自動車である。甘く見ていたのでノーマルタイヤで登ってきたのである。もう駐車場は完全に雪が
積もっている状態。たった6時間程度の間に、10cm以上のツララも車体下部に成長していた。くだりの道も雪道であろう。車を暖めつつ身支度している間、じき下山してきた常連さんにも心配されて、大丸温泉付近まで筆者が降りてきてるかどうか確認しながら先に走ってくださったのであった。ありがたかった。

最後に、今回は荷が軽かった。先回の北アルプスは今回の荷物にテン泊装備一式、おまけにそれが雨で濡れてとんでもなく重くなった。今回は濡れはなかったし、持ってきた荷物はほとんど身に着けてしまったので、まるで空のザックで歩いていたようであった。

アルパインクライミングというにはまだまだだな。

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コメント

那須 朝日岳東南稜を登攀
こんばんは。

わたしも20年位前の11月下旬に、那須 朝日岳東南稜を登攀しました。同じように、核心部分の2か所(懸垂下降、ギャップの岩壁登攀部分)は東側に迂回出来るところを発見し迂回してしまった。2週間後に再訪し、完登。その後季節を問わず訪れ
10数年前より、「独り合宿」と称し登攀後は、三斗小屋温泉・大黒屋に縦走し1泊、翌日は、井戸沢を遡行して1泊、計2泊3日の三斗小屋温泉・大黒屋泊の山行を何度か実行しています。今年は悪天続きで残念ながら実行できませんでしたが。2泊して沢登りもするとなるとザックの重量も増えて少しは?重厚な登山?

近年、自身でボッカ力が落ちてきたの感じます。軽量化の追求をしていると、担げなくなる・歩けなくなることが早く(人並みに?)やってくるのではないか、と個人的に思っているので何とか、これを食い止めたいと思っています。
2014/11/27 20:58
Re: 那須 朝日岳東南稜を登攀
piscoさんこんにちは。コメントをありがとうございます。2週間後に再訪・完登、ってお気持ちよくわかります。私も車が冬タイヤはいたら那須に通う予定です。東南稜に限らずなるべくたくさん歩いて経験値をあげたいと思っているところです。

井戸沢、いいですね。三斗小屋温泉の露天風呂から裏那須連山を見て、翌日井戸沢からその裏那須連山の稜線に飛び出すルートがダイナミックで、歩いた経験はなく話に聞いただけなのですが、いつか行ってみたいところです。

ボッカですが、今は何キロくらい背負われてますか?私はもともと縦走暦が2年ほどなのであまり背負えず、20kgだともうよたよたとしか歩けません。つまり冬山テント泊と登はん両方の道具を普通に担ぐのは無理なのが実情です。
2014/11/29 15:19
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